motownといえば、やはり全盛期の60年代が素晴らしい。
なんてったって役者が揃いも揃っていた。
デトロイトでは、数え切れない数のアーティスト達が
小さなAスタジオの中で、自らの才能を所狭しと開花させていたに違いない。
僕は、そんな時代を生きられた人たちが、心から羨ましい。
ただ、一つだけ悔やまれる点がある。
当たり前だが、録音が古いのだ。
Motown創始者のBerry Gordy氏は、ミックスマニアでもあったので、
当時としてはハイエンドな音響機材を使っていたと聞くが、
40年という時間の流れとテクノロジーの変化の前では、
当然ながら、到底太刀打ちできるものではない。
それでも、曲の素晴らしさ、パフォーマンスのニュアンスなどは
残されている当時の音源でも十分に伝わってくるのだが、
やはりもっと良い音で聴ければ、もっと感動するのではないか、
そう欲張ってしまうのが人間の悲しい性である。
そんな僕と同じような欲張りな人にオススメなのが、
今回紹介するMichael McDonaldのその名もずばり“Motown”(2003年)。
Mr.Blue-Eyed-Soulの異名を持つ彼が、
motownのヒットナンバーを思い入れたっぷりにカヴァーしているアルバムである。
(しかし、Marvin GayeとDiana Rossのデュエットがあるとは言え、
フィリーソウルの名曲“You Are Everything”をねじ込んでいるのは頂けない気が・・・。)
「オリジナルをなぞるような作品にはしたくなかった」
そのような内容のMcDonald氏の発言をライナーノーツで見たが、
その割には、一部を除き、オリジナルのアレンジを出来るだけ尊重しつつ
ところどころに現代風なアレンジを展開している。
アブラの乗り切ったヴォーカルにより、
キャッチーであることを一番の売りにしたモータウンヒッツが、
一切バブルガムな匂いがしない、所謂AORなっているのが興味深い。
自身が思い入れが深くて入れた、と書いていた
Temptationsの“Since I Lost My Baby”や
かなり原曲に近いアレンジで臨んでいるMarvin Gaye“I Want You”等が
原曲の素晴らしさに全く及ばない、残念な出来に終わっているが、
StevieのSigned, Sealed, Delivered I'm Yoursは
オープニングナンバーにしただけあって、見事な出来だし、
Ain't Nothing Like the Real Thing BabyとAin't No Mountain High Enoughの
Marvin Gaye&Tammi Terrelの大名曲は、
オリジナルバージョンに引けを取らないくらい完成度が高い。
全体を通して、非常に良く出来ていて
何度でも聴きかえしたくなるアルバムである。
ここだけの話だが、僕個人としては
Michael McDonaldという人は、歌唱力に比べて
作曲の能力がどうも追いついていない印象があるので、
大ヒット曲のカヴァー集のこのアルバムは、
他のどのオリジナルアルバムより安心して聴ける。
そういう意味では、この作品は、僕にとって
motownのヒット曲とMichael McDonaldの歌唱力が、
お互いの弱点を上手いこと補い合っているということか。
そう思うと、なんだかお得なアルバムである。