誤嚥(ごえん)性肺炎

祖母が脳出血で救急・急性期病院に緊急搬送され、入院後2ヵ月ほど経った日、急に高熱を伴う誤嚥性肺炎を発症しました。脳血管障害(脳卒中)後遺症である嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎です。誤嚥性肺炎が発症したのが、救急・急性期病院から回復期リハビリ病棟のある他の病院への転院の5日前でしたので、転院も延期となりました。食べた物が食道に移行せず、気管の中に入り込む状態を嚥下障害といいます。嚥下障害で怖いのは、食べた物に混入する細菌が、気管から肺の中に入り込み、肺炎を起こすことです。これを誤嚥性肺炎といいます。高齢者の死因の第3位が肺炎ですので、誤嚥性肺炎はとても怖い疾患の1つとなります。祖母の場合、誤嚥性肺炎を確認した病院は、とてもその対応に慎重となり、直ちに、食べ物の経口摂取を中止し、点滴輸液に切り替えました。ここでは、脳出血や脳梗塞等の脳血管障害の後遺症である嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎についてお話します。誤嚥性肺炎は、介護する人あるいは介護される人ともに、知っておきたい疾患です。

 

誤嚥性肺炎の原因

誤嚥性肺炎とは、誤嚥(食べ物や唾液などが、気管や肺などの気道系組織内に入ってしまうこと)から発症する肺炎のことをいいます。誤嚥性肺炎の発症には、食べ物等の飲み込みに関係する機能が低下していること(嚥下障害)がその背景にあります。肺炎は、近時日本人の死亡原因の第3位という高い割合を占めています。特に、高齢者の誤嚥性肺炎の発症リスクは高く、80歳代の約80%、90歳以上では95%以上の人が誤嚥性肺炎を発症したとの報告があります。すなわち、後期高齢者の肺炎のほとんどは、誤嚥性肺炎であると考えられます。介護を必要とする人の多くが後期高齢者ですので、介護する人あるいは介護される人とも、誤嚥性肺炎についての知識は十分に備えておく必要があります。病院で、誤嚥性肺炎を起こした祖母は80歳で、誤嚥性肺炎を起こしやすい後期高齢者です。さらに、脳出血の後遺症である嚥下障害が重なって、まさに、誤嚥性肺炎を起こしやすい状況にあったのです。

 

誤嚥性肺炎が生じる発端は、誤嚥(食べ物等が気管や肺に入ること)です。高齢者の誤嚥は、以下の4つの場面で生じることが多いです。いつ誤嚥性肺炎が生じるかは、いつ誤嚥が生じるのかと同じ判断となります。第一に、食事中に飲食物を誤嚥する場合(顕性誤嚥)、第二に、咽頭に残った飲食物が食後に誤嚥する場合、第三に、口の中で繁殖した細菌が、唾液などの分泌物と一緒に誤嚥する場合(不顕性誤嚥)、第四に、食後や夜間睡眠中に、胃食道逆流により胃内容物を誤嚥する場合(胃物逆流誤嚥)、等です。これらの場面で誤嚥が生じ、その結果、誤嚥性肺炎が起きる可能性が高まります。高齢者の誤嚥性肺炎で最も多いのが、「食事中に飲食物を誤嚥する」、顕性誤嚥です。顕性誤嚥では、口の中に含んだ食べ物を咀嚼する間に、口腔内に生息する病原性細菌が食べ物に混じり込み、このような状態で細菌が気管や肺に到達しますと誤嚥性肺炎が発症します。

 

誤嚥性肺炎と口腔内細菌

脳出血や脳梗塞等の脳血管障害で入院しますと、口腔ケアが十分に行うことができません。身体の片側麻痺になりますと、車椅子で洗面所に行くことになりますが、健康な人に比べ、洗面所に行くことはそう容易なことではございません。また、歯磨きを行う場合にも、手指が麻痺していますと、十分に歯磨きやうがいをすることもできません。このような状態が続きますと、口腔内は不衛生な状況となります。脳血管障害では、入院期間中であっても、口の中には、口腔内細菌が繁殖していると考えた方がよいでしょう。退院後の居宅介護にあっては、入院時よりも、さらに口腔内細菌が繁殖していると考えられます。

 

誤嚥性肺炎の主たる起炎菌は口腔内常在菌であり、特に、嫌気性菌の頻度が高いとされています。ですので、誤嚥性肺炎の予防対策としては、病院での入院期間中及び居宅介護期間中を通して、口腔内ケアが必要となります。脳血管障害では、その後遺症対策としての手足のリハビリテーションに加え、高頻度に発現する誤嚥性肺炎の予防の観点から、口腔内ケアも非常に重要であると考えられるのです。

 

このような誤嚥性肺炎の原因を考えた場合、口腔内ケアは、脳血管障害合併症といえる誤嚥性肺炎の予防効果を期待することができます。第一に、口腔内ケアによって、口腔と咽頭に生息する細菌の数が減少すること、第二に、継続した口腔内ケアは、要介護高齢者の嚥下時間を短縮させ、誤嚥の予防となること、第三に、口腔内ケアによって、舌や口唇などの口腔機能が改善し、そのため食べる量が増え、栄養状態の改善が図られ免疫力が強化されます。口腔内ケアは、虫歯予防や歯周病予防であると考える人も多いと思われますが、祖母のような脳血管障害患者さんにとっては、生命に影響する疾患である肺炎の対策として、とても重要となります。水でのうがい、歯磨きに加え、殺菌作用のある市販の口洗液の使用も、誤嚥性肺炎の予防対策としてとても有用となります。

 

誤嚥性肺炎の症状

誤嚥性肺炎の典型的な症状は、発熱、咳、膿のような痰、呼吸が苦しい、肺雑音がある、等です。これらの症状は、風邪とよく似ていることから、しばしば誤嚥性肺炎を見落とすことがありますので、注意が必要です。また、誤嚥性肺炎では、これらの症状がなくても、なんとなく元気がない、食事時間が長くなる、食後に疲れてぐったりする、口の中に食べものを溜め込んで飲み込まない、食欲がない、ぼーっとしていることが多い、のどがゴロゴロとなる、夜間に咳き込む、失禁するようになった、体重が徐々に減ってきた、といった非特異的な症状のみがみられることがあります。

 

誤嚥性肺炎のリスク疾患

誤嚥性肺炎は、嚥下障害によって発症します。つまり、嚥下障害が生じやすい疾患が誤嚥性肺炎の原因疾患となります。祖母は、脳出血を原因として誤嚥性肺炎が生じました。脳出血や脳梗塞などの脳血管障害が、最も誤嚥性肺炎を起こしやすい疾患です。その他、誤嚥性肺炎を起こしやすい疾患として、廃用(はいよう)症候群、閉塞性肺疾患(COPD)、心不全、パーキンソン病などの神経変性疾患、胃食道逆流症、胃切除、円背・亀背、認知症等、数多くの疾患が嚥下障害や誤嚥性肺炎の原因となります。

 

誤嚥性肺炎の診断と治療

日本呼吸器学会、医療・介護関連肺炎診療ガイドライン及び成人院内肺炎診療ガイドラインによりますと、肺炎の診断は、以下の①及び②を満たす症例とされています。①胸部X線又は胸部CT上で肺胞浸潤影を認める、②37.5℃以上の発熱、炎症マーカーである血液中CRPの異常高値、末梢血白血球数9,000μL以上、喀痰などの気道症状のいずれか2つ以上が存在すること。これは、肺炎そのものの診断基準ですが、これに誤嚥の直接観察や嚥下機能障害の存在を検出することによって、誤嚥性肺炎の診断が確定します。

 

誤嚥性肺炎の治療は、肺炎の治療と誤嚥の原因となる嚥下障害に対する対策(嚥下指導・誤嚥防止のためのリハビリテーション、口腔内ケア等)の2つがありますが、まずは肺炎の治療が優先されます。誤嚥性肺炎は細菌感染で生じますので、抗菌剤を用いた薬物療法が治療の基本となります。誤嚥性肺炎の原因細菌としては、肺炎球菌、嫌気性菌や口腔内のレンサ球菌、グラム陰性菌が多く認められることから、抗菌剤の選択にあたっては、その重症度や薬剤耐性菌リスクを検討して決定されるものの、薬物治療の主体は嫌気性菌をカバーするものが中心となります。

 

祖母は、80歳という高齢に加え、脳出血を起こしましたので、高い確率で嚥下障害が生じやすい状況にあったのです。また、入院中であったので、口腔内ケアが十分ではなく、そのため誤嚥性肺炎を発症したものと思われます。このようなケースは、高齢化社会である現代において、頻繁に生じるものと思われます。介護する人は、嚥下障害や誤嚥性肺炎のことをよく知っておく必要があります。体温を頻回にチェックし、また、食事の際には、患者の上体を十分におこした状態にし、咀嚼と嚥下をゆっくり行うよう指導することが大切です。口腔内ケアにも留意して下さいね。脳出血や脳梗塞などの脳血管障害を生じなくても、単に高齢というだけで嚥下障害は生じやすくなり、誤嚥性肺炎の発症リスクが高まります。高齢者のいるご家庭においても、誤嚥性肺炎について、しっかりとその対策を考えておく必要があります。

 

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