嚥下(えんげ)障害による肺炎の発症
救急・急性期病院の退院と回復期リハビリ病棟のある病院への転院を5日後に控えた日、祖母は、急に息苦しさを訴えました。体温を測定したところ、39℃まで上昇していました。病院は、直ちに、様々な検査を実施し、発熱の原因を探ろうとしました。救急・急性期病院での治療期間、プリンやゼリーあるいはミキサー食といった経口による食物摂取が開始されてから、37℃代の微熱が続いていましたが、39℃まで体温が上昇したのは、今回が初めてでした。発熱の原因究明のための検査のうち、胸部X線検査で肺の一部が炎症を起こしていることが判明しました。さらに、発熱と肺炎の原因は、食べたものの一部が、胃ではなく肺の中に入り込む嚥下障害による肺炎の発症であることが明らかとなりました。そこで、経口摂取による食事をやめて、点滴輸液による栄養・水分補給に切り替えましたところ、38~39℃の高熱は2日間ほどで治まり、また胸の息苦しさや呼吸困難の症状は治まりました。今思えば、点滴による栄養輸液とゲル状の食べ物の経口摂取の併用が開始された時から生じていた微熱は、軽度の嚥下障害による肺炎が惹起されていたものなのでしょう。その時点で、病院は、微熱の発症について特に気に留めることもなく、通常の治療と看護を続けていました。いずれに致しましても、回復期リハビリ病棟への転院の5日前に、このような嚥下障害による肺炎が生じてしまったため、予定されていた転院は延期されることとなりました。この転院の延期は、その後の、リハビリ治療や介護の選択肢(居宅介護か老人ホームかという選択)に大きく影響することとなるのです。これについては、後のブログで紹介しますが、ここでは、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害で、なぜ嚥下障害が生じ、また肺炎を起こすのかについてお話します。
嚥下障害
嚥下障害とは、食べ物や水分を口の中に取り込んでから飲み込むまでの過程が、正常に機能しなくなった状態をいいます。「食べ物を食べる」ことは、食べ物を認識し、口に入れて、噛み、飲み込む(胃の中に送り込む)、という一連の動作によって行われます。この一連の動作のうち、「飲み込む」動作を嚥下(えんげ)といい、この動作に障害が起きている状態を嚥下障害となります。
正常な嚥下は、口腔期、咽頭期、食道期の3つの段階に分けられます。最初の段階は口腔期です。口の中で食べ物を一時的に口腔内にため、かみ砕きます。かみ砕いて塊にした食べ物を食塊といいます。食塊は、舌の運動により上顎の奥(軟口蓋といいます)に押し付けられ、口から食道へ送り込む力を使って、口腔から咽頭に送られます。咽頭期では、気道が閉鎖され、食塊の食道に入る通り道がつくられます。その後、食塊は咽頭から食道に送り込まれます。
閉鎖される気道系は3つあり、①鼻腔と口腔との間、②声門、③気管の入口、です。鼻腔と口腔との間の閉鎖は、食べ物が鼻腔に逆流しないようにするためです。気管の入り口は、咽頭蓋が下がることによって閉鎖されます。これにより、食べ物が気管の中に入るのを防ぎ、それと同時に食べ物が食道の中に入ります。さらに、気管の入り口よりも奥にある声門が閉鎖されることによって、2重に食べ物が気管の中に入り込むのを防ぎます。このように、正常な嚥下の咽頭期では、食べ物は気管の中に入ることができず、食道へと運ばれる仕組みとなっています。なお、食道に移行した食べ物は、食道の蠕動運動によって、胃まで運ばれます。これを、食道期の嚥下といいます。
この一連の嚥下には、嚥下にかかわる多くの器官で、神経や筋肉が協調して動くこととなります。ところが、どこかの段階で、神経や筋肉が正常に働かないと、嚥下障害が引き起こされることとなります。嚥下障害の主な原因は、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害による麻痺、神経・筋肉系の疾患及び加齢です。脳血管障害は、嚥下障害の大きな原因となっており、嚥下障害の原因疾患の約40%が脳卒中であるといわれています。脳出血や脳梗塞を発症した患者さんの2人に1人は、嚥下障害が引き起こされます。脳血管障害では、運動障害(左側・右側半身麻痺)、知覚障害(痛さ、熱さ、冷たさ等が感じにくい)、高次脳機能障害(認知、思考、判断力、記憶、感情などの障害)、失調(手足などは動くが、スムーズに動かない)などが認められます。脳血管障害によって、このような運動や知覚の障害が生じますと、嚥下障害が引き起こされることとなります。脳血管障害による片側半身麻痺は、外から見ても麻痺していることが容易に分かるのですが、嚥下障害では、咽頭部や食道といった体の内側の障害ですので、外から見ても、嚥下障害が生じているか否かの判断はできません。半身麻痺の場合、首の中心にそった外から見えない内側も麻痺していると考えた方がよいでしょう。脳出血を起こした祖母は、左側の手足が動かない片側半身麻痺の状態となりました。祖母の嚥下障害についても、このような神経や筋肉の麻痺に原因しているものと思われます。
摂食嚥下障害による誤嚥性肺炎
回復期リハビリ病棟への転院を、間近に控えた祖母でしたが、突然の高熱の発症により、転院が延期となりました。発熱の原因が、胸部X線検査等から肺炎であることが判明し、この肺炎は、嚥下障害による誤嚥性肺炎であることが分かりました。脳血管障害で嚥下障害が生じますと、食べた物は食道ではなく気管の中に入り込みます。食べ物にはさまざまな細菌が含まれます。また、口腔内に生息する口腔内細菌が、咀嚼の段階で食べ物に混在しますと、それらの細菌が、嚥下障害によって肺の中に送り込まります。肺の中に送り込まれた細菌が、肺炎を起こす起炎菌であれば、細菌性の肺炎が生じることとなります。このように、摂食嚥下障害で生じる肺炎を誤嚥性肺炎といいます。誤嚥性肺炎の症状は、高熱、激しい咳き込み、息苦しさ等です。高熱を呈した祖母は、まさに誤嚥性肺炎を発症したこととなります。
脳出血、脳梗塞、くも膜下出血等の脳血管障害の発症で、救急病院へ搬送されますと、入院後約1ヶ月間は、口から食べ物を全く摂らず、ひたすら点滴輸液による水分と栄養の供給が行われます。この期間は、ほとんど、嚥下障害や誤嚥性肺炎は生じません。しかし、入院後1ヶ月ほど過ぎますと、点滴輸液と併用して、プリン、ゼリー等の軟らかい食べ物が提供され、口からの食物摂取が開始されます。その後、普通食をミキサーにかけたミキサー食が追加されることとなります。入院後1ヶ月半ごろには、点滴輸液も外され、水分と栄養の供給は、口からの飲食のみとなります。祖母の場合、食べ物の経口摂取が開始されてまもなく、37℃程度の微熱が続きました。病院は、この微熱につき、特に問題視しませんでしたが、今思えば、この時点で既に軽度の嚥下障害が生じていたものと思われます。嚥下障害は、食べた物全てが気管に入るのではなく、食べた物の一部が気管に入ることについても、十分に留意する必要があります。
脳出血を起こした祖母の救急・急性期病院での治療も順調に進み、次のステップである身体左側の麻痺の回復に向けて、回復期リハビリ病棟への転院を控えた数日前の突如の誤嚥性肺炎のために、その後の介護計画が大きく変わることとなりました。これにつきましては、次回のブログで紹介します。
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