ホンダ・ビート 試乗記  ・行きはよいよい、帰りはコワい・カー | 損小神無恒の間違いだらけのMAZDA選び

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巨匠、損小神無恒が走る白物家電を断罪する!

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ご機嫌よう、損小神無恒である。

 

私はこの間、大阪の松竹座へ芝居見物に行った。

そのついでに、京都のレンタカー屋でホンダ・ビートを予約したのである。

 

30年も前のクルマに乗る、こいつは私にとってちょっとしたタイムスリップであった。

 

 

 

 

 

~ホンダ・ビート試乗記~

 

 

 

 

小さく、軽く、そしてキュート

 

まずもってビートは小さい。

 

旧規格の軽自動車は現代の軽と比べると、長さで10㎝、幅が8㎝小さく、ビートは背が低いのも相まって随分と小さく感じる。車重は760キロと、まさしくライトウエイトである。

 

S660はランボルギーニ・チックなデザインだったが、こいつはイギリス調。いわば、昔のオースチンやMGといったライトウエイト・スポーツに見られるキュートさである。ホンダはビートを上手くデザインしたと思う。小学生の上履きのように野暮ったく鈍重なNSXとは全く異なる傑作だ。でも実は、ビートのデザインはピニンファリーナによるものらしい。残念ながら当時のホンダにはデザイン力が無かったのだ。それは90年代から2000年代にかけて、アコードやシビックが無国籍・カーになってしまったことからもよく分かる。

 

 

 

↑デザインを失ったクルマたち

 

 

 

 

・乗り降りが気になれば、年を取ったということだ

↑リアからの眺めはどこか喪黒福造に似ている。

 

着座位置は非常に低く、S660といいとこ勝負だろう。乗り込んでしまえば楽。正面が回転計の3連メーターはいかにもスポゥツカーで、8500rpmからのレッドゾォンがやる気にさせる。センターコンソゥルがスラントしているので開放感があり、狭苦しさは無い。身長175㎝の私でも頭上に余裕があった。ただ、隣に人が乗ると流石に窮屈か。特にサイドブレーキの操作が相手の膝に干渉してしまうことだろう。

 

 

 

 

 

・久しぶりのノンパワステに戸惑った

↑よく見ればNSXに似ているインテリア。ルームミラーは共通だ。

 

クラッチは繋ぎやすく、意外にトルクがあって発進は容易であった。でも、パワステなしが辛かった。ミッドシップなので前軸重量が軽いとはいえ、最近の生ぬるい電動パワステに慣れている五十肩ジジイにとって、こいつは最も辛いことである。

 

 

さて、レンタカー屋から出発。京都市内は交通量が多く、思う様に楽しめない。私のように四国に慣れた身にとっては、あまりのクルマの多さに辟易した。やがて亀岡市に脱出して峠道に入り、のびのびとしたハシりが出来るようになる。よし、ここぞとばかりにフル・スロットルをする。…すると伸びの良い加速、エンジン回転が高まるとサウンドの粒が揃ってきて、6000rpm付近では大迫力のレーシング・サウンドとなる。軽トラ・サウンドに終始するS660とは大違いだ。ワインディングではフロアやステアリングを通して全身で路面状況が感じ取れる。そこをショートストロークのシフトでリズムよく流すと実に愉しい。…これこそがプリミティブというものだ。何もかもが電子制御された今のクルマでは決して味わえない、濃密な一体感なのである。

 

 

 

 

 

:まとめ:【確かに楽しい。でも何だかなア…】

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ビートは楽しかった。小さいクルマだが、精一杯汗水たらして走らなければならない。ホンダらしく硬派なクルマだ。だからこそ、大都会では疲れる。寄る年波ではノンパワステなぞ耐えられぬ。ビートは田舎で乗ってこそヨシなクルマだから、京都よりも四国や山陰などに置いてもらいたいものだ。

 

それはいいとして、これはS660でも感じたことなのだが、私はどうやらホンダ・スポゥツカーと相性が悪いらしい。両車とも最初は楽しいのだが次第に飽きてきて、返す頃には気重になってしまう。奥行きが無いからだナ、こいつらは。スポゥツカーならば走りに特化する、親(ホンダ)がそんな考えだから子(クルマ)が短絡的になってしまうのだろう。それが私は面白くないと思う。

 

 

人間は意外性があるから面白い。喜劇役者の三木のり平が舞台でひょうきんな笑いを提供する一方、私生活では寡黙なお父さんだった(長男 のり一 談)というのは実に意外で、格好良くもある。そうした"ギャップ"が魅力になるのである。

 

 

クルマだってそうだ。600馬力もあるアウディ・RS6が普段は優しい乗り心地のワゴンというのには参ってしまう。爪を隠した鷹というか、羊の皮を被る狼というか、ギャップがとても格好いいではないか。

 

 

だから、ホンダ・スポゥツカーにはギャップを求めたい。

「昴」や「群青」で人々を感動させる谷村新司が、実はビニ本マニアだった、的なギャップである。

 

 

 

~おわり~