損小神無恒の間違いだらけのMAZDA選び

損小神無恒の間違いだらけのMAZDA選び

巨匠、損小神無恒が走る白物家電を断罪する!

 

今の車ではスイッチが入らない

 

石井町の三輪トラック収集家、元木和豊さんの言葉である。元木さんは古い車を再生することにおいては右に出るものがいない(であろう)名人であり、さだまさしとキャッチボールしたことがあるという異色の経歴を持つ。元木さんは気さくないい人で、私の急な訪問にも快く応えてくれた。

 

↑元木和豊さんのご自宅。普通の住宅地の中に突如、昭和のクルマたちが現れる。

 
 
元木さんが自動車好きになったキッカケは、少年時代に見たダンプカーだそうだ。吉野川堤で出会ったそれはとてつもなく大きくて、気怠そうにハンドルを切る運ちゃんがまた格好良かった。 当時の徳島は馬車(といってもばんえい競馬みたいな馬)が歩いていて、自動車はというと、石井ー池田間のおよそ60kmですれ違ったのはたった2台。まだまだ戦後復興の中にあって、さしずめ異世界の怪物だったダンプカーは、元木少年の心を鷲掴みにした。それ以来、元木さんは自動車整備一筋ウン十年の道を突き進む。今、元木さんを虜にするのはとりわけ戦中、戦後のバタンコや三輪トラック。少年の頃の原風景だ。
 
 
 
↑ホープスター・SY型(左)とジャイアントのバタンコ(右)。
 
 
いったいバタンコや三輪トラックの魅力とは何なのか。
元木さんは今でも、バタンコを運転するときはとても緊張するのだそう。バタンコは動くのに必要な手順がとてつもなく多い。まずは①燃料と空気の混合比を右のレヴァーで調整しつつ、②点火タイミングを左手で調整し、③時折後ろを振り返って排気の色を確認しないといけない。そこまでしてやっとこさ出せたスピードが40㎞/hで、なおかつブレィキは効かないのが当たり前というのだから、もはや修行である。目をつぶってたって勝手に止まるのが現代のクルマだ。元木さんからすると現代のクルマは簡単すぎて、どうにもやる気スイッチが入らないらしい。
 
 
 

 

庶民を支えたMAZDA

↑マツダ・GLTB型と思われる車両。
 
↑マツダ・D1500。1.5リッターの直列4気筒に過ぎないが、迫力満点のエンジン音であった。
 
↑恐らく1t積のマツダ・クラフト。
 
↑マツダ・GA型あるいはGB型か。
 
↑材料不足が深刻な中、戦後の生産再開は素早かった。社員が汽車に乗って、九州までタイヤを仕入れに行った。
 
↑3つ並んだMマークはいったいどんな意味があるのだろう。
 
 
三輪全盛の昭和30年代、気を吐いたのがダイハツとMAZDA(当時:東洋工業)である。私はMAZDAの復興と成長を支えた三輪に出会えて感激した。三輪の魅力は機械的な洗練とは対極の魅力であるが、それを男らしいとか無骨という言葉ひとつで済ませるのは早計だと思う。三輪を見ると、親子の会話が無いとか、兄弟が疎遠だとか、そういうことがうそみたく思えてくるのである。貧しいは貧しいなりに幸せな時代だったのだろうなと、懐かしさと同時に少し寂しいような気持がした。
 
 
↑マツダ・K360、通称ケサブローとダイハツ・ミゼットの2ショット。惜しくも二人ともお眠中である。
 
↑ケサブローは見た目もそうだが、内装も華やか。当時からMAZDAはデザインが上手だった。
 
↑マツダ・T1500。最大級の三輪で、1970年代まで生産された。
 
↑こちらは再塗装されたT1500とホンダ・N360。改めてでかい。
 
↑T1500の内装。標語のステッカーが交通戦争時代を物語っている。
 
↑なんとT1500は排出ガス48年度規制を通過している。
 
 
 
実に素晴らしいクルマたちであった。しかし、元木さんは嘆いておられた。古いクルマに対してさらなる税金を課すとは何事か、と。十三年落ち以上のクルマは自動車税と重量税が上がってしまう。私だって今月、45400円の督促に難儀しているところなのだ。古いクルマに乗るというのはそんなに悪いことなのか。物持ちの良さはむしろ褒められてしかるべきだろうに。
 
 
 
↑ダイハツの三輪トラック。こちらはバー・ハンドルである。
 
↑こちらのダイハツは大阪城のエンブレム。なかなか貴重だという。
 
 

↑どうしても目に付くベントリィ。ドアを開けると、木の匂いがかぐわしくて、クルマが本当に生命を宿している感じがする。

 

 

 

 

損小神無恒、旧車に感動。

昔のクルマは本当に凄いものだ。これらの殆どが動態保存されているというのがまた凄い。その上、これら全ての面倒を一人でみているのだから、元木さんは秋の褒章に値する大人物だと痛感した。それなのに私はお昼のうどんまでご馳走になってしまって、お礼の申し上げようもない。とりわけマツダ・D1500のエンジンがかかった時には感動しました。たった1500ccとは信じられない轟音で、力強くて、頼りがいがあって、元木さんの大きくて頑丈そうな手そのもののようなエンジンでした。この時私は決めたのです。顔なら五代目圓楽、エンジンならD1500のOHV4気筒を目指してこれから生きていこうと。断捨離なるものが流行して久しいが、捨てない生き方というのもあっていい。黒門町の伝七が紫の十手を、め組の辰五郎親分が纏を、定年を迎えたからといって簡単に捨てていいわけがない。商用車を捨てた今のMAZDAにはよくよくこの記事を読んで、自らの過ちを反省していただきたいと思う。

 

 

 
 
 

風情のあるクルマが一番だ。

 

ところで、風情のあるクルマとは何だろう。それは、このうえなく風流で詩情に富み侘び寂びの精神をもったクルマである。つまり、俳句が似合うクルマなのだ。

 

クルマと俳句。こいつはお互い不可分の関係にある。俳句が詠めないクルマなんて、それはもはや家電なのである。

 

 

 

 

 

イチョウチューリップひまわりハイビスカスやしの木イチョウガーベラチューリップひまわりハイビスカスひまわりチューリップイチョウガーベラハイビスカスやしの木チューリップ

 

 

 

 

 

 

名月をとってくれろと泣く子かな

小林一茶の句。けなげな幼子がまるでそこに居るかのように、中秋の一場面を切り取った一茶らしい句である。ここはオートザム・キャロルといきたいところだが、キャロルには生活への土着感が薄く、なによりあざとい。市井の生活を感じさせるのは、いまいちデザインがパッとせず、デザイナーが設計要件に悶え苦しんだようなクルマがいい。おめでとう、デミオ(2代目)である。こいつはとにかく、キャンバス・トップがいい。背伸びしたイタリアンがなんとも無念で健気なのだ。

 

 

 

 

 

咳をしても一人

 

 

尾崎放哉。小豆島でのひとり暮らしは気ままであれど寂しくもある。放哉は結核だった。結核の人の咳はひときわ身体にこだまするというが、そのこだまが放哉に孤独という現実を直視させたのだろう。孤独というとゴミ箱行となった「クサビ(楔)」を思い出すが、アレは虚しいだけだから、ここは「RX-500」としたい。ロータリーの歴史は男の自慰行為のようなもので、ひたすら孤独で意味がない。いくら改良を施そうと構造上の問題はいかんともし難く、燃費は悪いのだが、それでも続けるMAZDAっていったい。本能に忠実としかいいようがない。後年になって評価される点でも放哉とRX-500は似ている。

 

 

 

糞汲が蝶にまぶれて仕廻けり

ウンコに蝶が集うという一茶ならではの美しさを宿す句である。ロータリー×バス「パークウェイ・ロータリー26」も捨てがたいが、ロータリー×俗という相反性をない交ぜにしたコスモ(3代目)に軍配が上がるだろう。

 

 

 

 

それでは、私から。

今のMAZDAに対する不満がまっすぐ伝わる秀句をひとつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シトロ―エン・C5X SHINE PACK

 

 

 

 

↑2022年に乗ったC4でPHCを初体験。第一印象は「それほど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨匠はシトロ―エンがお好き

 

編集部(以下、編):テスラには感動しました。正直言って、他のメーカー何してんだって感じですよ。

 

損小神無恒(以下、損):大層な物言いであるな。

 

:なんといっても他を寄せ付けない近未来感!インパネだけでも他のクルマとは全然違います。アメリカでは既に赤信号で勝手に止まってウインカー出して曲がってくれるみたいです。

 

:日本の道路はゴミゴミしていて危なそうだ。

 

:昔は「先進性」と「個性」といえばシトロエンでしたが、今は間違いなくテスラですね!

 

:いま、お主はクルマ好きの半分を敵に回したな。

 

:ええっ、何故ですか?

 

:旧くからシトロ―エンはマニア垂涎のブランドである。大概のクルマ好きはポルシェかシトロ―エンを最後のクルマに選ぶ。悟りの境地に達したクルマ好きにとって、ポルシェが極楽浄土ならシトロ―エンは涅槃だったのだ。

 

:へえ、そうなんですね。

 

:シトロ―エン・マニアはいちど怒ると中々許してくれない。謝罪の菓子折りを持参してなお門前で土下座すること三日三晩、ようやく門番を通じて口をきいてくれるという超が付く頑固者なのだ。

 

:とはいえ、僕は譲りませんよ。そりゃあ「DS」とか「CX」とか、過去のシトロエンを偉大だとは思いますけど、今のシトロエンはその栄光にすがって遺産を食いつぶしているようにしか…。

 

:はっきり言って、今のシトロエンは「プジョー」と一緒ですよ!

 

:歯に衣着せぬ物言いは立派だが、この瞬間、お主は全世界から命を狙われることになった。枕元には武具を備えて用心しておくように。

 

:いやいや、まるでミッキーマウスなみのタブーじゃないですか!

 

:隙ありだ。必殺逆さ十字固め。

 

:ぎゃあ!何するんですか…ってアンタが犯人かい!

 

:不肖損小神無恒、『ユーノスと共にシトロ―エンを考える会』の顧問としてマニアの末席を汚させて頂いている。

 

:ゲホッゲホッ、そんなん初めて知りました…。

 

:そんな私をしても、「C5 X」には賛同しかねる。

 

:…「CX」の焼き直しというか、劣化版ですからね。

 

:シトロ―エンならではの先見性や独創性が希薄で、終始驚きが無かった。

 

:言わせてください!「C5 X」はSUVなのに背が低いので、頭をぶつけそうなくらい窮屈です。これは昔の「カリーナED」みたいな国産ハードトップ軍団と同じで、スタイリング優先の悪しき時代に逆戻りしています。もはやシトロ―エン独自の高邁な設計哲学なんてどこにもなく、つまり過去のデザインにすがり付いてるだけなんですね。

 

:…。

 

:おまけにエンジンは眠たいしで。も~う期待外れでガッカリしました!
 

:さりとてPHCは中々うまくやっておる。快て~きだ。

 

:「快て~き」?

 

:「~」が重要だ。シトロ~エンって感じになるのが穏やかでいい。楽しくていい。

 

:そうですか。それじゃJRのお買い得定期券と同じだなと思って。

 

:お主だって「も~う期待外れ」と言ったじゃないか。「~」の部分があたかもハイドロ・ニューマチックの響きじゃないか。

 

:損小神語は理解に苦しみます。

 

:そうなのか…。

 

:じゃ、「カニ食べいこう~~~~」はシトロエンですか?

 

:ウウム、このうえなくシトロ~エンだ。ついでに「乗ってくれHa~Ha~」もトレビア~ンである。

 

:それはアリエ~ヘンですね。僕が思うに、PHCみたいな技術はもっと安価な、例えばC3なんかに採用すべきですよ。というかシトロエンには高級ブランド「DS」があるのに、なんでC5 Xをシトロエン銘柄で売るのか。いまひとつブランドの確立が出来てませんよね。

 

:いや違う。PHCのような鷹揚な乗り心地は小さくて軽いクルマには似合わない。

 

:いずれにしても、シトロエンは木を見て森を見ず。絶対的な先進性でテスラに完全敗北です。

 

:ま、みんな違ってみんないい。ここはひとつ、勝ち負けは忘れて平和にいこうじゃないか。

 

:先生は輸入車に縁が無いからそういう事が言えるんです!

 

:だって金が無いんだもの。

 

:今話題の中条きよしから借りたらどうですか?

 

:馬鹿言え。利子でロードスターが買えてしまうわ。

 

:…南無阿弥陀仏。

 

神奈川県はF.ドリーム平塚へとやって来た。

 

私はカートに乗りたかったのだ。レーシング・カート、それはもっともスポゥティでなおかつプリミティブな、究極のドライヴィング体験とされる。MAZDA・ロードスターにてスポゥツカーに開眼した私は、いちどその究極とやらを味わってみたかったのである。

 

遡ること三年。私は高知県の『交通安全こどもセンター』にてゴゥカートを駆り、『新ハイスピード・ドライビング』(著:ポール・フレール)仕込みのドライヴィング・テクニックを披露、見事キッズを綺羅星にした。このとき私の人生は頂点にあった。ところがそれ以来、カートに触れることも無く平凡な毎日を惰性で過ごした。果たしてこれでいいのか。スラックスのボタンを飛ばすメタボ腹。

 

いけないであろう。このままではもう一人の私(レーサーの私)にも失礼だ。自分の中の可能性は摘むものじゃない。育むものである。父方のおばあちゃんの教えを胸に、究極のドライヴィングマシンでタイムを究める覚悟を決めた。

 

いつの間にか成田に降りた私は、いつの間にかカートの運転席に埋まっていた。いつの間にかスタートの合図。すかさずアクセルを踏み込む。ぐんぐんとスピードに乗る。おや、これは、なるほど速い。さらに踏み込む。すごい、とんでもない韋駄天だ。あっという間に第一コーナー。つい癖でブレィキ踏みそうになるが、ここで早まってはいかん。先だっての注意ビデオで「初心者はノンブレーキで」「踏めば…わかってますね?」念を押されたばかりである。確か「わかってますね?」の部分が色っぽい声音だったのでよく覚えている。余談だが、私はアナウンサーが好きである。特に、ラジオ深夜便のお姉さま方が好きなのだ。ところがラジオを聞いて「これはいい」と思っても、顔がイメィジと違うというのはよくある話だ。これだから声のみでは判断ならないのだが、そこにあはれみを感じたりもする。もっとも、声はもとより姿形にも信を置けないのが最近ということで、何を隠そう私は、スラリとした美人に会ってみるとどっこいドラえもんだったというパネルマジックの犠牲者である。おおっといかん、第二がすぐ目の前だ。一寸の煩悩が五分のミス。すかさずブレィキ…だが時すでに遅しか。すると衝撃が走る。

 

シャアプでクイック、そしてダァイレクトなのである。視界がぐるぐるバットするやいなや元に戻り、と思えばちゃんと曲がっていた。限界は高そうだが、滑るときは一気だろうから注意が必要だ。縁石を踏みつつ最短距離でS字をパス、続くヘアピンはエイペックス目がけてフル・ブレーキ。パンッパンッ。どでかいアフターファイアに戦慄しつつも、軌道に乗せてフル・スロットル。やんややんや。

 

それでも怖いのは変わらない。最高時速60km/hに達するスピードは、体感だとその3倍とされる。となれば60の3だから180km/h。さらに老人仕様のアイズも相まって200km/hは固い。私はセナの男気をもって最終コーナァをノンブレィキでパス。

 

「すごーい」「速ーい」「さすがは令和のスターリング・モスだ」

さもありなん。あがる歓声、高鳴る200ccエンジン、したり顔。興奮は最高潮に達する。

 

 

さて、タイムはいかに。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、私はグローブを脱ぐ覚悟を決めた。

すごいクルマがあるもんだ。今までの常識が全く通用しない。そんなところにテスラの魅力があるのだと思う。

 

いまやテスラ(モディルY)は全世界で最も売れている。驚くなかれ、テスラがカローラよりも売れているのだ。ところがここ日本では、ことに地方では、テスラはまだ希少である。どうやら日本はかなり電動化が遅れているらしい。

 

クルマという感覚で乗ると痛い目を見る。走るスマートフォンとでも思えば、自分の至らなさにも得心がいくというものだ。なんとなれば、テスラのオプションはすべてがアップデート方式。ボタンを押すだけで自動運転アプリをダウンロード、ハイ一丁上がり。こいつは家で鼻くそをほじりながらでも出来るというアレであり、スマホそのものだ。

 

さて、走りだすとどうだろうか。微小領域では滑らかとは言えないダンパー、ブロックの横剛性が高いハンコック製タイヤ(235/45R18)によって乗り心地は硬い印象だが、静粛性はかなりのものである。強力な前後のモータァのお陰で、アクセルに軽く足を添えるだけでどんな速度域でも忠実に応えてくれる。0-100km/h=4.4秒の途方もない余裕である。

 

そこで私はフル・スロットルを試みた。すべての力を路面へと開放すれば、この日は雨だったが、緻密なトルク制御によってホイル・スピンの兆候もなく、これまでに乗ったどのスポゥツカーよりも速い。

 

といって二度踏み三度踏みしたところで、私は飽きてしまった。少しでもテスラを趣味的に見たいのであれば、ガジェット感あふれるインテリアしかないだろう。

↑ボタン無し、シフター無し、メータァ無し。殆どの操作は15.0インチのセンター・ディスプレイに集約される。月額990円でウェブブラウザや動画視聴が楽しめる。

↑スティアリングはステッチが裏の方にあって、走っていると手触りが気になる。

↑グローブ・ボックスは画面を操作しないと開けられない。

↑二列目にも画面がある。

↑なんとゲームが出来るのだ。

 

 

これを見てしまうと、他のどのクルマも陳腐である。あくまで直感的な操作はしやすく、それはテスラが得意とするところなのだろうが、これでは年寄りは姥捨て山に捨てられたも同然だ。年寄りが「老害」と忌み嫌われる時代に相応しいクルマである。

 

人がクルマを形作るとはよく言ったもので、アンドレ・シトロ―エンはシトロ―エンの先進性を確立し、レース命のコーリン・チャップマンはロータスのイメィジを一代で築き上げた。日本でいえば、本田宗一郎がそれであろう。テスラが良くも悪くも極端なのは、ベンチャー企業ゆえの熱さであり、若さかもしれない。モディル3はイーロン・マスクCEOのイデオロギーそのものだった。

 

だから私はテスラが嫌いである。セルフレジで右往左往している老人を見たイーロン・マスク、果たして何を思うだろうか。

「そうだ、現金決済をなくそう」やがて老人は買い物を諦めるであろう。

 

都会へ行くとテスラをよく見る。都会のコインロッカーは軒並み電子マネー限定である。着実に世界の「テスラ化」が進んでいると感じる。もはや、私のような老人は用済みなのだろうか。

 

やれやれ、つらい時代になったものだ。MAZDAだけは、私の味方でいてくれる。逆テスラでいてくれる。私はそう信じている。

損小神無恒(以下、損):軽トラは日本の心である。軽トラには魂の浄化作用がある。

 

編集部(以下、編):確かにわかります。しかも、今回の「スーパーキャリイ」には自動ブレーキなどの安全装備が一通り揃っていて、エアコン、パワーウインドウも完備。クルマなんて、もう軽トラで十分ですね。

 

:この大たわけ者め!

 

:ええっ、何故ですか?

 

:軽自動車規格は日本固有の規格である。こんな小さな規格の中で大手四社がつばぜり合っている国なんか他に無いだろう。

 

:はい。

 

:軽規格をさらに徹底すると軽トラが出来上がる。軽トラの荷台は「ハイラックス」や「トライトン」よりも長いといえば、その恐るべき空間設計が分かるであろう。

 

:それは凄い。ピックアップトラックと軽トラって、ジャイアント馬場と池乃めだかくらいは違いますよね。

 

:軽トラは世界的な流れとはまったく違うところにある。いわばペリーが来てない日本なのである。となれば、もはや軽トラは江戸時代のようなものだ。天然記念物だ。にもかかわらず、畏れ多くも「軽トラで十分」とは何事だ!恥を知れ、与太郎め!

 

:それは言い過ぎなんじゃ…。日本固有なのは否定しませんけど、単に物を積むためだけのクルマですから…。

 

:グローバル化は世界をひとまとめにしてしまったのだ。今やフランス車だから乗り心地がふわふわとは限らず、田舎だからといってビニ本が落ちているとは限らないだろう?

 

:…。

 

:けだし、軽トラだけは鎖国状態なのだ。軽トラはアウトバーンではなく、日本の極細農道にのみ特化したクルマだから。

 

:なるほど。軽トラはヨソの国を無視した”純日本車”であるゆえに、我々の生活に最も与した日本車なんですね。

 

:軽トラは日本のトゥインゴだと思う。だから私は軽トラが好きなのだ。

 

:トゥインゴですか…。

 

:第一次大戦前後はイスパノ・スイザみたいな超高級車も見られたが、やはりフランス車の歴史というと大衆車であろう。シトロ―エン・2CVやルノー・4のような、50~60年代の下駄車たちを忠実に蘇らせたのがトゥインゴである。これは日本でいうところの商用車だ。初めの頃の日本車は農家や商人などの事業者に支えられ、やがて自家用へと移ってきたのである。

 

:そう考えると、ハイゼットも、キャリイも、かなりのロングセラーですもんね。

 

:軽トラは地方に土着し、日本の経済成長を地道に支えてきた功労者である。そんな彼らを私は労わずにはいられない。そして今こそ私は問いたいのだ。今の日本車は、いったいどれだけ土着しているかと。

 

:ここ数十年で自家用車は大きく姿を変えましたね。だけどその進歩は本当に我々にとって有用なのか?…なるほどねえ。

 

 

 

 

 

●巨匠、軽トラのリクライニングはアリやナシや。

 

 

 

:そんでもってスーパーキャリイですが先生。

 

:ウム、「普通の軽トラよりもちょっぴり広い」このジャンルはハイゼット・ジャンボが細々ながら奮闘してきたが、ついにスズキも参戦したということだ。中がちょっぴり広い分、ちょっぴり狭くなった荷台をどう考えるかだろう。

 

:これくらいなら、僕ならリクライニングを取りますね。なんてったって眠れますから!

 

:「眠り姫」ならぬ「眠り与太郎」だな。

 

:「与」は余計ですよ!

 

:荷台長が狭くならないように、キャビンの下の方には穴が空いている。こうしたニクイ工夫は今の日本車にはなかなか見られないものである。特にMAZDA車には。

 

:ここに頭を突っ込んで眠れば、アイマスク代わりになりそう!

 

:お主のでかい頭が入るかは知らぬが、是非やってみるとよい。

 

:さすがに冗談ですけど…。でも軽トラって夢が広がるんですよね。何でもできそうなイメージが漠然とあるんですよ。

 

:恐らく、そういうのもあっての「リミテッドX」なのだろう。今流行りのキャンプにも似合いそうな、若い衆向けのデザインをしておる。

 

:キャンプかあ、いいなあ。

 

:そういう外国文化は私は遠慮するが。ま、「軽トラ向上委員会」の委員としては、こうした啓蒙活動は大いに賛成だ。

 

:いつかまた、MAZDAが軽トラを作ってくれればいいですね!

 

:まったくだ。その暁には、荷台で月見酒と洒落込もうではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑しかしながら減点1。こいつは四駆だが切り替えがスイッチ式だ。ここは大仰なトランスファー・レヴァで男らしくいきたいものじゃないか。そして減点2。ダッシュ(特に空調口)が丸っこくて女々しい。いやしくも「菅原文太のキャリイ」であるならば、もっと一番星していてほしいものである。

 

 

 

「CX-30の義については、多目的運動車とあるところ、本来居住空間ならびに荷物置き場は広大なるべきところを、近年みだりに相成り、魂動なる正体不明のまやかし言葉の下、不埒な設計まかり通る段、はなはだおごりがましく候。とりわけ魂動方向指示器に至れば、なべてならぬ大金かかりしも、たえて実用ならぬなまくら物なり。近頃は交差点等で何の断りもなくみだりに点滅し候など、不適不遜の振る舞い目に余るものありて、貧車に乗る者ども皆迷惑いたし候。まれに見ゆる迷惑CX-30ども、なべてならぬ速度にて後方より接近し、貧車を追い立てんばかりのぶっそうなる車線変更、然るに皆挙げて不点灯なり。あまつさへ迷惑CX-30ども、意地悪な車線変更はもちろんのこと、急発進急加速あまたあり、不埒に候。運転手の容貌を見るにつけ、かならずまともな渡世まかりならぬやくざなものばかりなり」

 

「なお今後は、魂動方向指示器をみだりに点滅し候こと相知れ候はば、市中引き回しの上獄門を申し付ける」

 

 

 

 

 

 

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「聞いたかい?CX-30の奴、八丈島へ遠投だってよ。これで江戸の町も少しは平和にならぁな」

 

「行っちまう前に、いちど顔を拝んでおきたいねえ。なにしろいい男みたいだからさ」

 

「こいつ、俺という亭主が居ながら」

 

のんきな蕎麦屋の治助夫婦である。治助はそば打ち一筋三十年の職人だが、若くして先の女房とは死に別れ、後妻のお加代と知り合ったのはニ年ばかり前のことだった。

 

「ウソウソ、CX-30も二枚目だけど、あんたのがずっと上だよ」

 

「ふん、あたりめえさ」

 

治助の声が少し上擦ったようだった。

 

「宵のうちから結構だねえ。お勘定頼むよ」

 

「へい、すみませんで。…十文でござい」

 

「聞けば大将、CX-30はここによく出入りしてたんだって?」

 

「とんでもねえ。確かに柳橋の方にはちょくちょく来てましたが、目的は女でさあ。CX-30は大店の若旦那ですからね、きっとおモテになったんでしょうや」

 

あくまで器量を認めたがらないところに、今しがたのお加代の言葉が尾を引いているようだった。

 

「魂動ウインカーも八丈島では役に立たんだろう。お客がいなけりゃ、天下の助六だって只の男である。…それはそうと大将、今何時かな」

 

「へい、六ツで。…おおっと、その手には乗りませんぜ。最近小さんの『時そば』、大流行りなんですから」

編集部(以下、編):先生、今回はネスタリゾート神戸にやってきました!

 

損小神無恒(以下、損):私は遊園地は嫌いである。言わんこっちゃない、こんなにも人だらけではないか。

 

:まあまあ。今日はKYMCO・UXV450i、いわゆるATV(全地形対応車)に乗ってみようということで。

 

:だからといって、休日の行列に加わるのは御免なのさ。

 

:分かりやすく言えばバギーですね。キムコは聞きなれないメーカーですが、台湾ではもっとも売れているオートバイブランドのようです。

 

:それにしても遠いな。あのゴルフカートに乗けていってもらえんものか。

 

:水冷の単気筒エンジンは443ccで33馬力を発生。車体重量は515kgとかなり重いですから、恐らく動力性能はそこそこでしょう。一方でホイールベースは2メートルを切り、エンジンはミッドシップマウントというので、敏捷性は期待できそうですね。

 

:まったくもって坂が多い。エスカレーターはないのか。

 

:4WDシステムはスズキ・ジムニーと同じパートタイム式です。最低地上高の230mmはジムニーをも凌ぎます。しかもボディはフレーム構造ですから、本格オフローダーですよ!

 

:もう疲れた。そろそろ休憩にしよう。

 

:文句だけは一人前なんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

●巨匠、柄にもなく楽しむ。

↑右のほうがKYMCO・UXV450i。
 

↑トランスミッションはCVTだからお気楽である。
 

↑リアデフがよく見える。エンジンは左奥にマウントしている。

 

 

 

 

 

 

:さて、早速乗り込んでしまったが、どうすればいいのだろう。

 

指導員:各部の操作は乗用車と変わりません。ミッションはオートマチックですから、アクセルを踏むだけで走ります。

 

:HI-LOでいうとHIの方に入れておけばいいのだな。ほんとうだアクセルを踏むと進んだ。

 

:エンジンは殆どバイクですね!すごいバイブレーション!

 

:フロントガラスが無いから容赦なく風が吹きつけてくる。先行車の砂塵が目に入って痛い。

 

:痛たたっ…。ゴーグル借りたら良かったですねえ。ぜんぜん前が見えない。

 

:思った以上に速度が乗るな。カール・ルイスよりも速そうだ。

 

:できればウサイン・ボルトで例えてください。うわあ、今度はヘビーなオフロードですよお。

 

:ためらいなく突入する。おっと、スティアリングを戻し遅れた。

 

:お願いだからぶつけないで下さい!うう~っ、揺れがすごくて酔いそうです。車両間隔は適切に!なおかつインプレッションもお願いします!

 

:難しいことを言うな。ついていくのがやっとなんだから。

 

:ついていくたって、前は若い女性ですよ!あなたはMAZDA評論界の巨匠を何年やってるんですか!

 

:くそう、サイドブレィキはどこだ!

 

:ドリフトでもするつもりですか!バギーでラリーはご勘弁を!

 

:おっと、アールを読み違えた。そして思ったよりサーボが効かないな。

 

:ちょ、ちょっと待ってください。それって止まれないんじゃ…。

 

:大丈夫。

 

:おおお横転するーっ!

 

:大丈夫だ。トレッドは狭くともミッドシップなので重心が低い。まるでラリーカーのようなプロポゥションをしておるから、そうそう倒れることは無いだろう。

 

:冷静なふりしてますけど、脂汗ドロドロですよ先生!

 

:とにかく小さくてすばしっこくて楽しいクルマだった。注文はブレィキとシィトだな。このシィトなら体育館のパイプ椅子の方がマシだ。

 

:冷静にクルマとして見ると、オンロード性能はひどいですね。まあでも、公道は走れませんから。本来は広い農場や牧場などで使われるんでしょうし。

 

指導員:お疲れさまでした。ヘルメットはあちらにお願いします。

 

:1周2km強で約15分のトレイル。いかがでしたか先生?

 

:ひどく疲れた。帰りはあのゴルフカートに乗せてってもらおう。

 

:そうですねえ。って、あれ、すごい!あのカート、無人で走ってます!

 

:これも自動化の波であるな。我が家にも一台欲しいところだ。

 

:そうやって快適に胡坐をかいてたら太りますよ!もう太ってるけど!

 

:…今日はひとつ、歩いて帰ろうか。

ボンゴはあくせく働いた。

 

小さなもみじ饅頭会社の社員だったボンゴは、一日平均四時間もの残業を苦としないどころか、まだ飽き足らない様子だった。おりしも百年に一度の不況に直面して、会社の売り上げは激減し、社員は続々と辞めていったころである。

 

かくいう私もその中の一人で、頃合いを見計らっていた。

 

「ここは天国じゃあ。わしは死ぬまで働くんじゃけえ」

 

そんな馬鹿な。いくら仕事が好きといっても、仕事に死にたい奴なんかいない。

 

「労働には対価が必要だろう。現金なお前が今の給料に満足しているとは思えない」

 

「そっ、そっ、それはべつに何にも…」

 

一体なんの秘密があるというのか。やけにボンゴは人目を気にするので、場所を移してとっちめる。

 

「…風俗」

 

いきなりで驚いた。どうやらボンゴ、パネルで見た『みゆき』なるソープ嬢に岡惚れして、結婚するつもりでいるらしい。

 

「資金集めじゃ。十二月のボーナスが出たら、その金持って店へ行くんじゃ」

 

「まさか。『みゆき』なんていったら極上じゃないか。お前なんか相手してもらえるわけがない」

 

「なんの。たとえ火の中水の中じゃ。ぜったい逃すもんかあ」

 

ボンゴはこの上なく馬鹿で、そして純粋なやつであった。こいつに借金を踏み倒された人は数多いだろうが、ひとりとして文句は言っていない。すなわち、それだけ人徳があるということだ。やがてこいつはやってのける。私には確信があった。

 

そして言葉の通り、たった半年でボンゴは百万を貯めたのである。

 

「やったやった、貯まった貯まった」

 

その日、ボンゴはとてもウキウキしておった。

 

「馬鹿者、そう騒ぐな。せっかく私が連れてきてやったのにこれでは台無しだ」

 

「旦那、ありがとう。旦那と一緒っていうんで、わしゃ嬉しくて嬉しくて」

 

「いいか、ボンゴよ。百姓上がりのお前は知らぬだろうが、夜の街は昼以上に階級社会である。みゆき嬢なんてのは日本でも指折りだから、なかなか取り合ってももらえんだろう」

 

やがて店の前に来ると、冷やかしなんかお断り、という風情で呼び込みのおばさんに睨まれる。

 

「どちらさん?」

 

「もみじ饅頭会社の社長とその秘書の者です」

 

「知らないねえ、そんな会社。冷やかしなら帰ってお呉れ」

 

「うう、そんなぁ…。もう駄目じゃあ」

 

「馬鹿者。諦めるのはまだ早い」

 

私は帽子のつばをほんの少し上げた。

 

「…この顔を見忘れたかな」

 

しばらくすると、はっという面持ちでおばさん。

 

「これはこれはご無礼をいたしました。毎度ありがとうございます。サァさ、どうぞこちらへ」

 

重々しく扉が開かれ、赤いじゅうたんに迎えられる。

 

「こら驚いた。旦那って何者…」

 

「ふ、只のしがない配送業者だよ。私はいいから、はやくみゆき嬢に会っておいで」

 

「うう、でも、今になって足が震えて…」

 

「馬鹿野郎。今やらねばいつやるのだ。迷わず行くんだ!」

 

「…う、うう~」

 

 

(行けば、わかるさ)

 

 

 

 

 

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(あんたみたいな人はじめて…)

 

 

みゆき嬢は密かに感心していた。

 

「…笑っちゃうわよ。それじゃ何もかも私のために」

 

「そうじゃ、半年で百万じゃ!はっはっはっ…はは」

 

当然ながらボンゴは夜の女王が一夜に手に入れる額を知らない。さらに、いままでボンゴは一度も女を知らなかった。

 

「す、すまん。わしゃとてもじゃないが、あんたとどうこうなんて出来ん」

 

極度の緊張のため、はっきり自分でも何を言っているのか分からなくなってしまった。

 

「これはわしからの気持ちだから、受け取ってくれ」

 

「そんな、それは無理よ」

 

「頼むから…」

 

百万円の包を残して、たまらずボンゴは部屋を出てしまった。

 

 

 

 

 

 

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「濡髪のみゆきはそれは美人だったろう」

 

 

私は尋ねたが返事は帰ってこなかった。ボンゴは口を真一文字にして、今にも滴りそうな涙を精一杯こらえていた。

 

「ま、そういうときもある。さよならだけの人生だもの」

 

恥ずかしながら、私にも似た経験があるのだ。苦い思い出だ。今夜ばかりは、一緒に泣いてやろうじゃないか。

 

「今日は見返り柳も泣いているか…」

 

振り返った柳越しに、かすかにひとりの女性が手を振っているのが見えた。

 

いったいこれはどうしたことか。あれはみゆき嬢だ。なんと、みゆき嬢が立っている。大きな大きなカバンを提げて。

 

「あたし、あんたについていく」

 

「男はからっきしダメ。どんな男も口ばかりで、ことが終われば紐の切れたタコ。まるっきりまともに見てくれない。」

 

「だけど、あんたは違う。こんなに心から好きになれたのは、はじめて…」

 

どうやらボンゴの真心が、みゆき嬢のハートを射止めたようである。

 

 

 

 

 

この後、ふたりは夫婦となり、小さな団子屋を開くとたちまち繁盛した。「みゆき団子」という看板商品は街の名物になり、今では知らぬ者はいないほどだ。

 

 

 

 

 

 

今頃ボンゴは幸せにやっているだろう。ラーメンをすすりながら、そんなことを思い出した次第である。

 

 

 

 

 

 

 

 

編集部(以下、編):新型スペーシア、何気に気になってまして。

 

損小神無恒(以下、損):ハシリについて見るべきものは無いけれど。

 

:違いますよ!誰もスペーシアにそんなものは求めちゃいません。欲しいのは「マルチユースフラップ」、これでしょう。

 

 

 

 

 

:…。

 

:ついに軽自動車にもオットマンですよ!実は僕、密かに憧れてたんですよねぇ~。

 

:…。

 

:まるでプチ・アルファード!タントやN-BOXには絶対に無いゆったり感!極楽です~。

 

:…。

 

:どうして今まで無かったの?って思える装備ですよね!

 

:…。

 

:ねっ、先生!

 

:…0点だな。

 

:ええええぇ?この期に及んで何を言ってるんですか!!

 

:軽なら軽らしく、もっとシンプルであらねばならぬ。

 

:…別人ですか!?この前はなまるうどんで『軽自動車はみんな一緒でつまらぬ。もっと挑戦しろ』って言ったばかりじゃないですか?矛盾してますよ!

 

:じゃあ20点だ。

 

:テキトーすぎる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●巨匠、オットマンに呆れる。

:で何。かき氷がどうかしたのか?

 

:かき氷じゃないですよ!マルチユース『フラップ』!軽自動車初のオットマンですが、角度を変えれば荷物の落下防止にもなるという素晴らしいアイテムです。改めてスズキのアイデア力に感心しました。

 

 

 

 

 

 

 

↑これで卵が割れる心配はもうない。

 

 

 

 

:ふむ。みんな褒めてるけれど、そんなにいいものかねえ。肝心のシィト・サイズがこれまで通りじゃなあ。

 

:そこです!しかーし、こうしてオットマンを出すと気になりません。背もたれだって低いですが、ヘッドレストを上にすれば大丈夫!そんでもって背もたれを倒してみると…。

 

:成程。ま、快適と言わんことも無い。

 

:でしょう?オマケにアームレストまで付いてるんだから言うことなし!これは売れますよぉ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

:訂正しよう。3点である。顔を洗って出直してくるんだな。

 

:…はあ?何言ってるんですか!!

 

:デカい声を出すな。やかましいから。

 

:いやいやいや、出しますよ!意味わからんですもん!

 

:意味は分かるであろう。20点から17点を引くとどうなる。…3点じゃないか。

 

:そりゃ分かって…はぁ。いい加減なことばかり言ってたら叩かれますよ。『トンチキ損小神!、ポンコツ無恒!』って。

 

:嫌われることはいいことだ。かろうじて点があるのは、荷物受け機能が優秀だからである。

 

:オットマンは?

 

:理解はできる。この広大なスペースを活用したかったのだろう。しかし、いささか無理があろうて。

 

:それはなぜ?

 

:そう責め立てるな。例えばこのアームレストはつくしみたいに小さくて細く、貧弱だ。何より問題なのは、背もたれを倒さないと十分に機能しない点である。つまり、リムジン・モードにしないと役に立たない。

 

 

 

 

↑不合格だ。

 

 

 

 

:小さくて貧弱、結構ですよ。これまで無かったものを形にしたことに意義があるんです!

 

:では、そのリムジン・モードはどうなのか。しかしこれがお粗末なのである。ひとつ、頭がリア・ウィンドウに近づきすぎる。ただでさえ軽なのだから、追突されたらどうなるか。そしても一つ。オットマンをすると足が床から離れてしまい、踏ん張りがきかなくなる。やがて体は下にずれていくであろう。もしその状態で衝突すれば、シィトベルトが正常に機能せず、内臓に深刻なダメージを与えかねん。

 

 

 

 

↑追突されたときが恐ろしい。

 

 

 

 

:はあ、そう言われると…。

 

:スズキはそのあたり、ちゃんと検証したのだろうか。ダイハツの不正を思えば不安にもなろうて。

 

:…ちゃんとしているものと信じたいです。でもね、先生。先生のご意見はごもっとも。だけど、やっぱり、オットマンは必要です!秘密装備みたいと目を輝かせる子供たちが居ます。こういった挑戦が軽自動車、ひいては日本の自動車業界を明るくしてくれる!

 

:…。

 

:安全第一は正しいです。でも、最近はむやみやたらに危険と決めつけていませんか?今どきの公園はすべり台くらいしか無いです。こうした過保護はやがて人を縛り付けて軟禁状態にしますよ!

 

:ま、それはそうだが、軽自動車にオットマンというのは大仰すぎるだろう。

 

:僕が子供のころでも今よりはずっと自由でした。自由が子供を育てる!あれこれ怪我もしたけれど、経験が大人にしてくれた…

 

:ま、それはそうでも、軽自動車が快適になりすぎると、それはそれでつまらない未来に…

 

:僕は新型スペーシア全面賛成です。走ってみて?そんなこたあ知りません。軽自動車の二列目を楽しみへと変えたことに拍手を送ります!

 

:ま、25点くらいが妥当な数字だな。

 

:ちょっと上がった!

 

:外国人が乗ればミニチュアみたいで驚くだろう。ケチなゴージャス気分だが、これはこれでけなげでよろしい。

 

 

 

 

↑最広(サイコー)、スペーシア!