ダイハツ・コペンに乗った。
以前から身の丈に合ったオープンカーとしてコペンが気になっていた私だったが、ついにレンタカーを試乗する機会を得たのだ。
今回は、そんなコペンの試乗記をしたためる。
~ダイハツ・コペン セロ S 試乗記~
↑先代譲りの丸目を持つセロ。
まずは第一印象であるが、こいつが中々に好かった。梅雨時分であるのに天気は快晴、受付のお姉さんは美人と、いい事づくめで私の気分は上々。実際に目にするコペンは写真以上に愛らしく、キュートであった。意外にも軽規格一杯ではあるのだが、低い車高のお陰で図抜けて小さく感じる。
一方、車内は意外に広い。勿論横幅は限られており開放的という程ではないが、うさぎ小屋と貶す程でもない。同じく軽スポーツのS660はボクサー・パンツの様なタイトさであったものだが、このコペンはL寸トランクスくらいの広さがある。
~内装はどうか~
シィトはS専用のレカロシートで、当たり前だがサポート性が高く質感も好い。だがドアトリムは如何にも軽といったクォリティで、シフトレヴァー周りもプラスチッキーで安っぽい。おまけにCVT車はシフトパネイルの表記が見づらいのが興ざめだ。
↑センタァコンソールの細さにケイを感じる。
もっと残念なのはメーターパネイルである。数字が大きく見やすいのは良いのだが、縁を彩るイルミネイションが蛇足だ。スズキ・ハスラーを見てもそうで、軽メーカーはこうしたメーターパネイルの下手な加飾を止めるべきだろう。個人的にはタフトのものと変えて頂きたく思う。
↑画竜点睛を欠くとはまさしくこのこと。
↑シンプルで見やすいタフトのメーター。周りのオレンジは取り払うべきだが。
ああ、気分を壊してしまった。気を取り直して走り出そう。
~ハシリはどうか~
最初は少し恥ずかしいので屋根を閉じてハシル。おお、排気音が勇ましい。低温が響き、如何にもスポーツカーである。そして勢いがいい。アクセルが足を乗せるだけで敏感に反応する特性なので少し気を遣うが。
しかしまあ、ブレーキが好いナ。リニアに速度が調節でき、剛性を感じる。同じくダイハツのタント(3代目)とは大違いだ。あっちはスカスカスンのカックンだったから。
市街地から抜け出して郊外の山坂道へと入ると、コペンの素性の良さがよく分かる。ハァンドリングは安定志向であり決してクイックではないのだが、接地感が高く、高い速度でも安心して切り込んでいけるのだ。舵は私好みの適度な重めなので文句のつけようがない。
いや、乗り心地には一言物申そうか。硬すぎる、のだ。ほんのわずかな凸凹でも大きく跳ね、衝撃がドシンバタンと伝わる。ウウム、どちらかというとGT志向のコペンなのだから、もっと柔軟なアシにしてもらいたかったナ。
さ、ここでお待ちかねのオープン・タイムと洒落こもう。2箇所のロックを外し、ボタンを押せばあっという間に屋根がなくなってしまう。この動作を人に見られるのは少し恥ずかしいが、一人悦に入るには格好の代物だ。
開放感は抜群である。タルガトップのS660は当然凌駕するとしても、あのロードスターよりも良い。魂動のマツダは必要以上にAピラーが垂れていて思ったよりも空が狭いから駄目だ。
コペンで山道をのこのこハシルと楽しい。車体が狭いので狭い道でもライン取りが自由自在で、自然と一体になる感じが心地よかった。
~まとめ~
色々とケチをつけてきたが、このオープン・エアを味わうと全て返上したくなった。大体デヴューが2014年と古く、現代のケイたちと比べてしまうのは気の毒なのだ。そして、そ奴らはいくら頑張っても得られぬハァンドリングの確かさ、オープンの楽しさがあるのだから200万という値付けも決して高くはないだろう。(チョイと足してSにすればmomoステアリング、RECAROシィト、ビルシュタインダンパーといったハシリ屋御用達装備がついてくる。)
また以前に乗ったS660と比べると見た目が緩く、気負うことなく乗れるのが好い。あっちはケイのスーパーカーといったナリだからいつまでも気恥ずかしさが抜けなかったのだ。こう見えても私は恥ずかしがり屋なのである。
そこで、もし私が買うとするならば、素のセロを5MTで、カラーはブリティッシュ・グリーンを選ぶだろう。秋の夜長にチョイとオープンで出かけ、信号待ちに虫の声で一句捻る、といった楽しみ方が理想だナ。
おおよそモディル末期のコペンだが、次期型があるかは今のところ不明である。後輩のS660が安全性の問題で買えなくなってしまったようにコペンには自動ブレーキの類は一切ついていないので、ポッと消えてしまうやもしれぬ。欲しい人は今のうちに買っておくべきだ。
それにしてもホンダは何をしたかったのカネ。昨年マイナーチェンジしたばかりのS660がいつのまにか受注終了していた。こいつは生産規模の小ささによるものだというが、生産終了が来年の3月と発表されていたから悠長に構えていた方も多かろう。シビックやらオデッセイやら、改良してあっという間に生産終了とはホンダは売る気が無いのだろうか。2040年までにEV、FCVをフルラインナップするのは良いが、既存のクルマたちがおざなりなのはいかがなものかと思う。ま、当事者のホンダはこれまでも女心と秋の空のような歴史を歩んで来たから、ある程度予想はついたが。これに付き合うホンダ・ファンには相当な根性が必要だろうナ。
ああ、私がマツダびいきでよかった、と思う一幕である。