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「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」第二十二集12分頃から。
鄴城の留守を任されていた曹丕は父・曹操が軍幕で倒れたと聞いて馬を飛ばして駆けつけた。

* * * * *

「わたくし(*1)曹丕が大王さまにご挨拶申し上げます。父王さま万歳(*2)。」
「お前の奏表を見たぞ、魏諷が叛乱を起こしたのか。」
「はい。荊州の昔の仲間と組んで反逆を企み関羽に呼応しようとしましたが、こやつらは既にわたくしが処置致しました。鄴城は現在平安でございます、父上どうかご安心を。」
「あと王粲、あの二人の子供はわしは覚えてる、あの王粲は(生前は)お前の友だったろう。」
「わたくしは鄴城(守備)の重任を肩に負っておりますから、私情に流されるわけにはまいりません。」
「もしわしが(そこに)おったら、おそらくあの王粲の後を無くす(殺す)のは惜しいと思うだろう。」
「もしわたくしの処置が不当であったならば、父上どうか(私に)罪を下して下さい。」
「何の罪を下すのだ、お前の処置は正しい。国家を守るには果敢に決断せねばならない、それはわしが日頃からお前に厳しすぎるほどに脅しつけてきた事だな。」
「……。」
見ると曹丕は涙を流している。
「(人前で涙を流すという)失礼を致しました、どうか父王さまおかしいと思わないで下さい。この二十年余りで、父上が初めてわたしを褒めて下さったのです。」
「……。」
曹操は曹丕に手巾を手渡す。曹丕はその手巾で涙を拭う。
「こっちへ来い。うーん…どこへやったかな…。」
曹操は枕の下から詔書を取り出した。

*1 儿臣は王の子供の一人称。中国語では相手に対して自分の位や立場を明確にすることで尊敬や謙譲の意を表すのだ。
*2 千秋無期、万寿無疆は、永く続きますように、永く生きられますように、という意味の決まり文句。



「これは三年前にお前に渡すべきだった。」
曹丕が開くとそこには曹丕を太子と立てると書いてある。
「わたくし決して父王のご期待に背きません。」
「早く鄴城に帰りなさい。鄴城をしっかり守るのだ。」
「わたくし鄴城にて父王さまの凱旋をお待ちしております。」
「楊修が鄴城で天下を統制するべきでないと言いおったが、(私も)そうだと思う。父はお前のために先に洛陽へ行って関羽を倒し宮殿を修繕するが、遷都はお前が行うのだ。父は洛陽でお前を待つ。もし天意で全て成し得たら、我ら父子は洛陽でまた会えるであろう。」
「父王さまは千秋無期、父王さまは万寿無疆でございます(*2)。わたくしはまた父上に付き従い共に出征しとうございます、あなたと共に天下を平定に。」
「人はいつか死ぬ、国もいつか滅びる(*3)。よい、お前は重任を負っておる身、長く離れていてはならん、帰りなさい。早く帰るのだ。」
「父上、(わたくしの望みはただ)くれぐれもお体を大切に、くれぐれもお大事に…。」
「そうだもう一つあった。」
曹操は手招きし隣に座らせる。
「あの司馬懿を、父はお前に残していこう。お前の国家創生に、彼を用いるのだ。ただしくれぐれもよく覚えておけ、たった今この時から、彼はお前の苦難を共にする親友ではない。彼はお前の"臣下"だ。二度と情に流されて事を起こしてはならぬ。孤家・寡人とは理由なく言っているのではないのだ(*4)。」
「わたくししかと覚えておきます。」

*3 直訳:この世に死なない人がどこにいようか、滅びない国がどこにあろうか。
*4 孤家、寡人はどちらも国王の一人称(わし、おれさま)で、一人という意味。曹操は「自分の事を孤家、寡人と呼ぶ者は心許せる友などおらず孤独なものなのだ」と言っている。


* * * * *

曹丕の苦労そして痛切な想いに涙を禁じ得ないこれも名シーン。


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「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」第二十二集冒頭から。
孫権と同盟を結び帰って来た司馬懿。孫権は曹操のためではなく漢天子のために協力する、くれぐれも己が天子だと勘違いするな、と言った。曹操は司馬懿にその時どう返したのかと問う。すると司馬懿は曹操に拝礼を繰り返す。

* * * * *

「わたくしは孫権に言いました、(天下を治めるという)天命が我が王にあるならば、新王朝の創始者である周の文王のようになるでしょうと(*1)。」
「…その通りだ。人はその一生でやるべき事(に限り)がある、わしは漢臣としてやってきた。後世の史書に、漢の裏切り者と(文字で)批判されたくはない。まぁこれはしかし後世の人がするに任せよう。もしわしに(天下を治めるという)天命があるなら、わしを周の文王のようにしてくれ。」
「大王さまの胸の内は、昔から今まで誰も及ぶ者はおりません(誰よりも素晴らしい)。」
「お前はわしの胸の内を媚びへつらって(推測し)言うが、わしが何度お前を殺してやろうと思ったか当ててみろ。」
「!……。思い切って言ってみますと、六回でしょう。」
「ハハハ。どうやらお前はわしの気持ちを少なく見積もっているようだな。間違いだ、今日を合わせて七回だ。」
「大王さま、わたくしが今回東呉へ行き孫権と共同で関羽を討とうと勧めたことで一回と数えるのなら、一回減らしていただかないと(*2)。」
「わしが言う今日の事とは、ある夢を、三馬同槽の夢を見た事を思い出したからだ。ただ三匹の馬が同じ槽(飼葉桶)で食っているのだが、目覚めてからその意味をどれだけ考えても解らず(気になって)食わず眠れずだ。本当は楊主簿に訊きたいところだが、残念ながら今やその機会はなくなった。お前の知識策略は楊修にも引けを取らぬ、わしに替わって(夢の意味を)解いてみてくれ。」
「夢、ですか、大王さま。」
「夢だ。」
「……わたくしは周礼を学びましたが不精でして、夢解きというのは、実際わたくしの得意とするところではございませんでして…。」
「おい、立て。夢解きだぞ。田んぼのへりにいる農民ですら何か(推測して)言えるもんだ、お前も何か思ったこと何でも言ってみろ。この三匹の馬とは誰を指すのか言ってみろ。」
「ではわたくしは、では、では思い切って言ってみますが、変な事を言うかもしれません、もし間違いでも、どうか、大王様お許しください。…夢は、心から生まれるもの。その槽ですが、それはすなわち魏国の政権でしょう。ええっと…大王様は今日この時、ちょうど関羽と戦っておりますから、この劉・関・張の三兄弟が、大王様の夢の中で三匹の馬となって現れたのかも。」
「でたらめな事を言うな。劉・関・張と馬が何の関係があるというのだ。馬だ馬、馬!」

*1 殷王朝の臣下だった姫昌は反王朝派の諸侯のリーダーとなって殷と戦い、彼の死後、殷王朝を倒し周王朝を興した武王が父の姫昌を文王に追号した。姫昌は自ら王を称えず最後まで殷臣であった事から、ここでは曹操が死ぬまで漢王朝の臣下であり続けるつもりだと言っている。
*2 呉との同盟が曹操の怒りを買うとは思ってなかったのでそれは回数に計上しなかったと反論している。



「…西涼の馬氏!馬騰、馬超、馬岱。きっとこの三人です、ええ。でも馬氏一族は既に大王様によって滅ぼされました。この馬超、馬岱は夢で憂うほどの武士ではありませんよ。」
「馬騰、馬超、馬岱。馬という姓か。司馬も、馬だな!」
「大王様…。司馬というのは、わたくしもその姓です。もしそれ(馬姓)を馬と言わないのならこれ(司馬姓)も驢馬でも馬でもありません。ましてや大王さま、わたくしは一人でございます(三人はいない)し、ええと、大王さまの万馬といる軍の中で、わたくしは大王さまのために馬革に屍をつつむ覚悟(*3)で犬馬の労(*4)も厭いません。どうか大王さまご明察のほどを!」
「ワッハッハッハッ。本題をすり替える能力は優れとるな(*5)。隠れる者を、人は知ることができぬが、知る者を、人は隠してはおかぬ(*6)。この世でわしに七度も殺意を抱かせ、まだ生きているのは、お前だけだ。」
「大王さま、わたくし決して二心はございません、大王さまこのような(殺意を抱く)事は最後にして下さい。」
「(これが最後になるのは)お前は、わしの余生が長くないと見ておるからか?」
「大王さま、決してそのような事は!そのような意味ではございません大王さま、大王さまは千年無限、ずっとずっとずうぅぅっと無限を生きられますよ大王さま!」
「ハハッこの世にそんな無限を生きる人間がどこにいるというのだ。こっちへ来い、来い。」
曹操は司馬懿の肩に手を置く。
「お前は聡明な奴だ。その聡明さのためにわしはお前を殺せず、その聡明さのために子桓はお前を手放さない。だが聡明な者の多くが皆自己を守ることに走り、向上しようと努力する(攻める)事をせず、危機が迫った時にかえってうまく治められない。今天下は三分しているが、合わせるべきは兵力と内政。兵力で言えば我が魏国は最も強いが、内政を言うと我が魏国は最も乱れておる。わしはお前に子桓を手伝わせ、子桓の夢を実現させたい。だからな、お前には向上しようと努力する(攻めの)気概と度胸が必要なのだ。わしが達成できないこの業、この天下を我が魏国が統一するために。」
「わたくし心得ました。子桓公子もまた、よくお分かりです。」
「子桓が、子桓がか?子桓…子桓は?子桓はどこへいったのだ、我が子…わしの子、子桓が来たのか、わしの太子子桓…。」
ふらふらと歩きだした曹操はその場に倒れる。
「大王さま?大王さま、大王さま!大王さま!誰かーッ!!」

*3 (昔戦死した者の遺体を馬の皮で包んだことから)戦場で戦って死ぬ覚悟。
*4 犬や馬のように主人のためなら何でもすること。
*5 直訳:左右を顧みて他を言うような能力は小さくない。「左右を顧みて他を言う」は孟子の言葉で、答えに窮して周りを見回し本題とは別のことを言ってごまかすこと。
*6 直訳:隠れることに長けている者を人は知ることができない、よく知る者(知識のある者)を人は隠してはおかない。


* * * * *

私が最も好きなシーン。
曹操や程昱は現在魏の禄を食んでる懿、孚、防の三人を三匹馬と考えたのかもしれないけど、歴史的な流れを見ると懿、師、昭なのかな…。


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「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」第二十一集6分頃から。※ネタバレ注意
魏王が関羽を前にしっぽを巻いて逃げるつもりだという噂が軍営中に広まった。魏王の面子は潰れ、この乱れた軍心を収めるには見せしめが必要だと楊修(徳祖)は死牢へ投獄された。
司馬懿(仲達)は魏王に第三の策を提じた後、楊修の元へ。

* * * * *

「君がここへ逢いに来るとは思わなかった。仲達は最近せっせと俺を見に来るんだな。お前は遷都しなくていい方法を思いついたのか。」
呉と組し羽を討つ。
「…いいかもな。お前にそんなアイディアがあったとは。仲達お前はかつて俺を恐れさせた。残念ながら、俺達は長年の争いで、ただ敵にしかなれなかった。」
「私は一日たりとも、徳祖を敵だとは思ってない。まるで鏡に写したように、徳祖を見るとまるで自分自身を見ているようだった。」
「じゃあ俺達の戦いは何から始まったんだったかなぁ。」
「始まりはあの年、含章殿の前で、(処刑の)刀斧が振り下ろされようとしたあそこで、お前と私が目を合わせた時だ。」
「こんなに長い時が経った。俺は自分の才能を頼みにし、平原侯に替わって曹丕と争い、平原侯に替わってお前と争い、さらには平原侯に替わって大王と争った。しかし争いの最後になって俺は気づいた、俺は自分のために争っていたと。俺は誰よりも三十里早く(考えを)出せると思っていた、そしてちょうどこの三十里(早く考えを出せる能力)が俺の命を左右するとは、俺が争って得ようとしたものは何だろうな。結局俺達は皆ただの、誰かの手の中にある(囲碁や将棋の)駒なんだ。俺達がそこら中でどんな勝負をしたところで、俺達が唯一争えるのは、単に黒を指す方かあるいは白を指す方かということだけだ。」
「私も、本当にそうだと思う。」
「人生において一人の知己を得るとは、ああ、仲達、今もし酒があったなら、俺とお前で一杯飲み交わせば、どんなに晴れ晴れしい事か(*1)。」
そこへ程昱が令状を持ってやってきた。
「主簿楊修、(嘘の)噂を広め軍心を揺るがした、ゆえに即刻斬首とする。」


*1 直訳:どうして晴れ晴れしい気持ちでないことがあろうか(反語)



程昱の後ろには受刑者に最期に飲ませる酒を持った兵士が控えている。
「仲達、俺の命運は良くなってきたようだぞ、酒があればと言ったら、酒が来たじゃないか。さあさあさあ、酒を持ってこい。…よし、こっちに。」
楊修は酒の杯を受け取りその香りをかぐ。
「本当はお前と飲み交わしたいのだが、しかしこの断頭の酒は、仲達よ申し訳ないが許してくれ、一人でいただくとするよ。」
「徳祖、もし徳祖が嫌でなければ、私はお前と、この杯で飲み交わしたい。」
「…飲み交わそう。」
楊修は酒を半分飲み司馬懿に手渡す。その杯を司馬懿も飲み干した。
「清々しい!さあ俺を連れていけ。」
楊修は牢から連れ出される。
「仲達、大王は疑り深い主、曹丕はそれを写したかのような主だ
(*2)。もしいつの日か曹丕が子建を許さないということがあれば、仲達ができるかぎりのことをしてやってほしい(子建を守って欲しい)、この修は、ただそれだけで満足だ。」
「この司馬懿、しかと記憶に留めておこう。」
「行こう。」
去ろうとする楊修はふと振り返る。
「そうだ、仲達、お前と俺は何が違うかわかるか。」
「お聞きしましょう
(*3)。」
「お前は耐え忍ぶことができる、俺はできない。俺はあっち(あの世)でお前を待ってるから、もしお前が耐えて最後まで行ったら、俺に教えに来てくれ。あの時した事とこの時した事の、何が違ったか。…じゃあ行くよ。」


*2 陰刻とは字の部分を掘るタイプの彫刻。
*3 拝聴する。


* * * * *

憎らしい楊修だけどさすがに涙を禁じ得ないシーン。


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「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」第二十集27分頃から。
強敵・関羽を前に苦戦する魏軍。王の伝令から「鶏肋」の二文字を聞いた行軍司馬の司馬懿(仲達)は、主簿・楊修が魏王に撤退と遷都を進言したと勘付いた。司馬懿は魏国を危機に晒すその策を止めるため楊修の元へ。

* * * * *

「楊主簿。」
「おや珍しい客だ。行軍司馬どのがやって来るとは何事だろう。」
「"鶏肋"。」
楊修は人払いをする。
「仲達はやはり思考が素早いな。もうお前は大王が戦う気が全く無いってことを知ってるのか、ならどうして(自分の天幕に)軍装をまとめ片づけに帰らない。俺のところへ(急いで)やってきて何をしようっていうんだ。」
「楊主簿は大王に遷都の策を進言したのではないか。」
「仲達くん(*1)、(君の)思考の速さは三十里に到らないな(*2)。」
「主簿は本当に魏国の安全を対価にしてまで、平原侯のために世継ぎの座を争うというのか。」
「おかしな話だな。どうして洛陽は魏国の新都にできないというんだ。」
「楊主簿、我々は必ず周りと相談してから進言すべきだとは言わない。洛陽はもちろん新都にできる、ただしそれは将来であって、今ではない。遷都の基本は国内に問題が隠れていないことそして国外に戦乱がないこと。もし今関羽から逃げて洛陽に遷都すれば、必ず軍心(兵士たちの心)は乱れ、魏国は扉を開けっぱなしになり、逃れられない(内外)両面の敵を迎える困難に立たされる。もし今遷都すれば、私もお前もよく分かっているはずだ、魏国将士があっという間に分裂する禍に陥る。楊主簿、お前の考える両全の策(*3)は、魏国の根底を守ることを考えてるのか。」
「お前はこう言いたいのか、もし(遷都して)鄴城を廃したら、曹丕は坐して待つなどできず鄴城を拠点として謀叛を起こすと。」
「主簿の才知は広く非凡である(大変優れている)のだから、功を建てる時だと思うのなら、魏国の大局のために、大王の前でもう一度関羽に対する進退について良策を考えてくれ。」
「俺の両全の策が、仲達くんの言う所の安全の策だ。俺もお前も腹の中でわかってるんだ、大王が亡くなった後(*4)俺達が二人とも生きてたら、魏国はおおいに乱れるだろう。俺達の戦いは魏国の後継争い、二人のうちの一人が去れば、やっと内乱は防げるのだ。これは避けられないし、もう引き延ばせない。だから今この時から、俺達二人は全力でもって(戦い)、生死を決めようじゃないか。どうだ。」
「…私が言えるのはこれだけです、主簿、お気をつけて。」
「司馬仲達、知己とともに交わす酒は、最高だ!」

*1 ~兄は同僚の男性に対して親しみをこめた呼び方。
*2 直訳:(君の)優れた考えは三十里を越えるほど遅く出てこないな。「有知無知三十里」の後、楊修は他人より三十里早い思考を巡らすと自負しているが、ここは「お前の思考も普通の人よりは早いな」の意。
*3 関羽と戦うと孫権や劉備に挟み撃ちにされる可能性があり、関羽から撤退すると防衛線を失い天子を奪われるおそれがある。この二つの難点を解消すると言って提じたのが楊修の両全の策。
*4 王の御代は千年万年続くというのが建前なので、万歳の後は死後という意味。


* * * * *

楊修、この人プライド高すぎて友達いなさそうだけど、結局自分と渡り合えるライバルだけが友達なんだな…。


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「大軍師司馬懿之軍師連盟(全42話)」第十九集19分頃から。※ネタバレ注意
兄を救うためには曹丕から魏王に頼んでもらうより他にない。司馬懿は曹丕の元へ行き黙って土下座する。

* * * * *


「わたしはお前が何を言いに来たかわかっている。だが聞きたくない。帰れ。」
「わたくしは兄の命を救いたいのです、どうか中郎将お情けをおかけください(*1)。」
「(土下座する仲達に)まず起きろよ。」
「中郎将どうか、どうか子建公子と楊修をお許しになり助けて下さい(*2)。それだけが、魏王がわたくしの兄を解放できる方法なのです。」
「わたしがなぜ救う、わたしがなぜ救うとお前は言うのだ。わたしが今何も言わないでいれば、父上は子建と楊修に罪を言い渡し、わたしはまったく順当に太子になれる、そうだろう?」
「はい。」
「そうだ。荀令君と崔尚書、この二人が命をもってわたしを守ってくれた。それは命がけではなく捨身飼虎(*3)だ。お前がこの二人(の期待)を裏切ってはならないと言うのは、そうだからだろう?」
「はい。」
「じゃあお前はなぜわたしに(子建と楊修を)放せと!」
「わたくしは臣下としての道理をよくわかっております、主のためなら自分の家のことなど頭の中から捨てるべきだと。しかし、事はわが長兄の命に関わっております、中郎将どうかお情けを。」
「もしわたしが情けをかけないと言えば?」
「わたくしは兄と(身柄を)引き換えに行こうと思います。」
「司馬懿、お前は大理寺はお前の家が作ったとでも思ってるのか。お前が入りたいと言って入り、出たいと言えば出られるとでも。わたしは今太子の位にこんなにも近くにいて、あと一歩だというのに、お前はそんなやり方でわたしを威嚇するのか。自分勝手な事を言うな。」
「中郎将、わたくしは中郎将に付いて行くと忠誠を誓い、決して二心はございません。わたくしはよくわかっております、中郎将がまさに太子の位への道に在り、ここまで一歩一歩苦しみながら確実にやって来たことを。しかしわたくしの家族の命に対する責任もまた、半歩すら退けないのです。わたくしは覚えてます、中郎将とわたくしが牢獄に囚われた時、中郎将はわたくしにおっしゃいました、その昔曹昂公子が中郎将を抱え馬の背に乗せ、「早く逃げろ」の言葉だけ言った所で矢の雨に射抜かれ亡くなったと。中郎将、あの時二つの目に涙を浮かべてわたくしに言った事、お兄さんと替わってあげられればと思っているとおっしゃった、わたくしと中郎将の思う所は同じです。中郎将どうかよくお計らい下さい…。」
「…出ていけ!」

*1 体恤は心遣いを示す、思いやること。
*2 高抬貴手は人に許しを請う時の常套句。どうか大目に見てください。
*3 捨身飼虎は釈迦が前世で飢えた虎の母子に我が身を投げ出し食わせて救ったという逸話。死ぬかもしれないではなく、死ぬことを前提としているところに搏命との違いがある。


* * * * *

たわいもない会話が伏線として後々生きて来るというこの脚本は本当に見事だと思う。


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