今まで、がん、更年期障害、精神疾患。アレルギーなどについて、断片的ながら、医学トピックスと思われる話題を提供してきました。
一見、散漫な展開なのですが、学とみ子は、これらの話題には、共通する課題があると考えています。その課題とは、人は、なぜ、病気になってしまうの?という素朴な疑問です。この疑問は、とりもなおさず、なぜ、健康が保たれるの?という疑問でもあります。学とみ子は、ブログを書きながら、この問題を考えています。そして私自身も学びながら、健康保持のしくみを考えています。人は病気を通じて、初めて、健康が保たれるしくみにアプローチすることができると考えています。
 
だれでも、重大な病気を得た時には、とまどい、なぜ私が?という怒りがおきます。その人にとっては、それまでの健康が当たり前だったからです。病気は、健康を維持する複雑なしくみが破綻した時におきます。しかし、破たんのしくみを知ることで、人は病気に対する怒りを克服(悟りか?)に近づくような気がします。そして、治療がうまくいかない仕組みも理解できるようになります。健康の仕組み、病気の仕組みを考える時、人の免疫をもっと知りたいと思うようになります。
 
人の免疫を勉強する材料として、最も適した場所は腸管です。なぜなら、腸管は日常的に、腸管に入ってくる危険な病原因子と、栄養になる食物成分を、巧みにみわけることができるからです。腸管には、昔から、赤痢やチフスなど致死的な病気多くあり、人類を苦しめてきました。しかし、汚染していてもエネルギー源として食物をとっていかなければなりません。そうした苦しさを克服した現代でも、現代病のストレス性腸炎や、食物アレルギーが増えてきてしまいました。

今回は、話題の中心を腸管に、人の免疫の見えざる側面について考えていきましょう。
動物は皆、食べ物からエネルギーを得ていますから、腸管に入ってくる食べ物をうまく見分ける能力を持っています。実際の食べ物は、さまざまな細菌やウイルスに汚染されています。昔なら、知らずして毒素物質の混入もありました。大腸菌0157、ノロウイルスの名はすっかり有名になりましたが、人間は、こうした極小の病原体を目でみることができません。見たりにおいをかいだりの五感を働かせます。しかし、汚染した病原菌をみわけられるほど、五感は発達していません。病原体に言わせれば、見つからずに腸内に入り、そこで増殖をしたいのです。腸管は、どうやって病原性のある物質と病原体ではない食べものをみわけているのでしょうか?この研究分野は、常に新しい研究成果が出てきています。
 
この分野を学ぶことは次の病気の理解につながります。
食物アレルギー
現代病である過敏症腸炎 潰瘍性大腸炎 ストレス潰瘍
セリアック病(小麦アレルギー)
 
食物アレルギーの話題は、今後のブログでも話題にしていきたい課題です。医学、疫学の発達により、この5年位の間で、かなり考え方が変わりました。小児科領域では、最も考え方が変化した領域と言っても良いでしょう。赤ちゃんの腸が、いろいろな物質を受け入れやすい時期は、限定した期間であることがわかってきました。はしかやおたふくが、小児では軽く、大人では重症化するのと同じ理屈です。
 
米国小児科学会が、2005年位から、除去食の有用性を否定する方向に動き出したのです。欧米では、2000年の初めころから、乳児期免疫の研究が盛んに行われ、乳児が異物蛋白を最も受け入れやすい時期は、離乳食のトラブルがおきにくいという事実が示されました。すなわち、この時期とは、離乳食が完了する1歳位までの時期です。異物である離乳食を、赤ちゃんが拒絶しないで、受け入れるにふさわしい時期が示されるようになりました。
 
今の赤ちゃんはいろいろなものに反応しやすくなってしまいましたので、除去食が積極的に行われた時代がありました。以前は、病気が無くても、予防的に、この除去食が勧められたことがありました。そして、過剰な食物制限は、アレルギーが高まる子どもを増やす可能性が指摘されるようになりました。
 
腸内細菌の話題から、この面を考えていきましょう。
今は、食物アレルギーは、積極的に食べて治す時代に入りましたが、個人差が大きい病気であることはかわりません。実は、乳児の腸内細菌は、生後1年を契機に大きく変化することが指摘されています。生後1年の乳児は、その後とは、異なる腸内細菌層を持つことが分かったのです。すなわち、人間の赤ちゃんは、腸内細菌がかわることで、食物の受け入れの状態が変化するのです。言い換えると、生後1年位で離乳食を完了できるように、腸内細菌が腸の発達に貢献している可能性があるのです。ですから、この時期に離乳食を完了することが、赤ちゃんへの負担が少ないと推定されるようになりました。腸内細菌の研究と食物アレルギーは、いろいろな角度から、研究が進められています。
 
実は、腸内細菌にどんな種類がいるのかは、まだ、十分にわかっていません。腸内細菌の数はとても多く、10の14乗個位と言われています。そして一部の腸内細菌を除くと、どんな種類の細菌が腸で増えているのか、人類はまだ見たことがありません。
どうしてわからないのか?と言うと、まず、取り出すことが難しいこと、腸の限局した深い場所で繁殖していて、他の菌に影響されることなく取り出すことが難しいのです。目的のものだけをつまみあげようとしても、余計なものがくっついてきてしまうことを想像ください。もうひとつの困難さは、人工的培地に培養できない種類の菌だからです。人類は、この菌を取り出して増やしてから観察することができないのです。
 
培養ができない場合、どのような種類の菌がいるのかは、遺伝子検索をして、見つけることができます。今はやっている方法は、それぞれの菌が持つ16S ribosomal RNAを調べることです。すると、未知の菌でも、多種の菌の混合状態をある程度、私たちは知ることができます。
同じ遺伝子検索の方法を用いて、池や川の水とか、土とかに、どんな種類の細菌がいるかもわかります。こうした場所から得たものから、細菌由来の遺伝子断片を調べ、実際に繁殖していた細菌の状態を推定します。ここで、興味深いことに、腸内から取り出した物質には、池にも土にもいない、そして人類にとって、まだ見たこともない菌が多数いることでした。
 
そして、腸内細菌は、人と共生関係にあることが明らかになってきました。共生とは、互いに栄養素などを分け合って生命を維持する相互協力関係です。共生動物としてよく知られるところでは、サンゴなどがあります。
 
人は、腸内の共生細菌に安定したねぐらを提供してきました。では、共生細菌は、人に何をしてくれているのでしょうか?
 
腸内で新しく発見されたセグメント菌という奇怪な姿をした菌は、最近の腸免疫の話題です。この菌姿は、とても細いフィラメント様の構造体でユニークな形になっています。それが多数、小腸の細胞にはりついているのです。このセグメント菌の研究には、日本人の研究者も多く貢献しています、このセグメント菌の大事な役割は、腸内の免疫細胞の教育係であることです。この菌がいることで、腸内のリンパ球が成熟することができます。成熟とは、リンパ球が病原体と戦うさまざまな能力を獲得したり、腸内に炎症物質を増やして、病原体を退治することができる能力を獲得することです。リンパ球は、精鋭隊を編成することができるのです。セグメント菌は小腸において、IL17という炎症を起こす物質をふやすことができます。この菌は、私たちが病原菌と戦う力を高めてくれるのです。
炎症というと、熱が出る、痛くなるなど、マイナスのイメージがありますが、炎症は、病原体から身を守るためには、大事な体の反応なのです。
 
赤痢やチフスは、人間に重い病気を起こしてしまうので、人にその存在を見破られてしまいました。その結果、抗生剤が発見され、菌は繁殖の機会を減らしました。しかし、腸内細菌は、人に病気を起こさないために、みつかりにくいのです。
 
腸内細菌は、人の健康を守る大事な環境を提供しているわけですが、発展途上の学問分野で、未解決な問題が多くあります。サプリ業界、機能食品業界など、データの拡大解釈や拡大広告が氾濫している現状があります。
学とみ子は、以前にネーチャーの論文を紹介しました。今回は、論文ではなく、論文紹介のための記事を紹介します。この記事は無料で配信されており、誰でも読むことができます。但し、記者が論文の紹介として書いているので、その記者の見解が入ります。さらにそれを日本語に訳した記事が、各新聞社から紹介されますが、そこにも書いた記者の見解がはいります。それぞれの新聞社は、元の論文にアクセスして、内容のエッセンスを紹介しているのですが、新聞社ごとに違いが出てきます。
 
学とみ子が入手可能な手元のニュースソースには、各新聞社の紹介記事が載っていましたので、それを下記に書きます。
 
毎日新聞は、日本の学者のコメントをのせていて、論文内容がわかりやすく書いてありました。各新聞社ごと、比較するのも興味深いかもしれません。
 
 
日本の各新聞社の記事です。
 ・毎日新聞  http://forcast.emailalert.jp/c/aemwanft3Ex46Caf
 ・読売新聞  http://forcast.emailalert.jp/c/aemwanft3Ex46Cag
 ・産経ニュース http://forcast.emailalert.jp/c/aemwanft3Ex46Cah
 
私は、ネーチャーの記事を少し、紹介します。このオリジナル論文の著者は、Joseph Eckerらで 所属はthe Salk Institute in La Jolla, Californiaです。記事では、論文の著者Eckerらのコメントも載せています。それ以外に他の研究所の生物学者の見解なども載せています。
 
論文で、Eckerらは、iPS細胞,ES細胞では、DNA塩基の配列は一致していても、遺伝子発現に影響を与えるDNA構造が一部で異なっていることを報告しました。この構造の違いは、エピネテティクス と呼ばれる領域のことです。エピネテティクスとは、塩基配列以外の遺伝子の構造変化のことで、例えば、DNA塩基に結合する物質の状況が異なることを指します。代表的なものは、メチル基の結合で、これにより、遺伝子の転写が進まなくなります。それで、この部分の塩基にメチル基がつくと、遺伝子の働きに大きな変化が及びます。
 
Eckerらは、4個のES細胞、5個のiPS細胞、iPS細胞が由来する元の大人の細胞、及び幹細胞から分化した細胞のそれぞれについて、このエピネテティクスの構造の違いを調べました。そして、iPS細胞において遺伝子の端と中央部分で、遺伝子構造物に結合したメチル基の違いを指摘しました。Eckerは、「ちょっと見では、同じ様だが、サインが違っている」と言いました。
 
Chad Cowan氏 (ボストン マサチューセッツ ジェネラル病院の研究者)は、この研究の共同研究者ではないが、現時点でのiPS細胞では、幹細胞として使用するのはむずかしいだろうと述べました。
 
Richard Young氏 (マサチューセッツ ホワイトヘッド研究所の研究者)は、一度、生命体から離して培養した細胞は、再度生命体にもどしてもうまく機能しないようだと述べました。
 
補遺
エピジェネティクスの最も代表的なものはDNAのメチル化です。遺伝子のプロモーター領域に多く見られるCpGアイランドと呼ばれる部分に存在する塩基シトシンの5’の位置にメチル基が付加されると、プロモーターは不活性となり転写は抑制されます。メチル基があるかないかにより、遺伝子の発現とその抑制が可能になります。 その他のエピジェネティックな現象には、ヒストン蛋白のメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化などがあります。
昨年、12月29日のブログなどで、学とみ子は、何度か、生体における女性ホルモンの多彩性についてかきました。そして、閉経後は低めの女性ホルモンが女性の健康をサポートすると言ってきました。今回は、外国での医学論文を紹介しながら、この問題を考えていきます。女性に知ってほしい話ですが、勉強好きな男性にも読んでいただいて、女性たちに情報提供していただけると、ありがたいです。http://gakutomiko.web.fc2.com/

外国では、乳がんは、日本よりずーと多く発症します。女性を乳がんから守るために、研究・調査がさかんです。米国では、BCSC (The Breast Cancer Surveillance Consortium)という組織が、15年以上、活動しています。一般向け、および専門者むけ、両面から乳がんについての情報提供を行うためのサイトです。医学情報の提供に加えて、乳がんの患者登録を行い、患者名、病院名をすべて匿名にして、研究者などに情報提供なども行っています。
 
2002年、7月にWHIにより、ホルモン補充療法と乳がんが関連するとの報告がありました。これは、世界に衝撃的な出来事でした。女性のQOL向上を望む医師たちにも、大変、ショックな結果でした。確かに研究対象となったのは、閉経期より加齢した女性たちが多かったのですが、女性ホルモンの多様性を、まざまざと見せつけた結果でした。この研究は、現在も追加調査されていて、論文が出てきます。これが世界の潮流です。
 
BCSC組織のホームページにアクセスすれば、乳がんに関する医学論文が多数出てきます。そして、ホルモン補充療法は、がん誘発因子であることに関する論文が掲載されています。乳がんは、乳房の大きな人、肥満の人、ホルモン補充療法をした人で、リスクが高まります。又、ホルモン補充療法を止めると、その後のがん発症リスクが低下します。

この論文ファイルの中から、いくつかを紹介しましょう。
 
1)Journal: J Natl Cancer Inst 2007;99(17):1335
ホルモン補充療法は、乳がんの予後に、どのように影響を与えたかを調査した。ホルモン補充療法を受ける女性の数は、2000-2002年にかけて7%、2002-2003年にかけて, 34%程、減少した。
 
50-69歳の603411人を対象に、スクリーニング検査としてマンモグラフィーを行い、3238人が乳がんと診断された。ホルモン補充療法が減少した年度と一致する2001年から2003年にかけて、浸潤性乳がんは、各年ごとに5%減少した。
2000年から2003年にかけて、エストロゲン受容体陽性の浸潤性乳がんは、年間13%減少した。しかし、軽症乳がんの数は変化がなかった。この事実から、乳がんが減少した理由として、乳がんの検査数が少なくなったと考えることは妥当ではなく、浸潤がんそのものが減少したと考えるべきであろう。
 
2)Journal: Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2007;16(12):2587-93
マンモグラフィー検査により、乳房密度の高い人の方が、乳がんにリスクが高くなる。一方の乳がんがある女性では、他方も乳がんになりやすくなるが、タモキシフェンなどの女性ホルモン剤の働きを抑える薬により治療が功を奏しやすい。
 
3)以下のの論文は、体重の多い群では、正常体重群に比べて、乳がんの発症率が高く、かつ浸潤性の高い(悪性度が高い)乳がんが発症しやすいと、統計学的な裏付けの数値と共に示されています。
 
Kerlikowske K ら、Journal: J Natl Cancer Inst 2008;100:1724-33
1996-2005年の間に、287,115人の女性に614,562回のマンモグラフィーを行い、対象となった女性のうち、マンモグラフィー検査の1年以内に、乳がんと診断された女性は、4,446人であった。女性の体重と身長で、BMI(BMIとは、分母が身長の2乗、分子は体重で算出する, kg/m(2)) を算出し、乳がん女性を、次の4群に分けた。

正常体重群(BMI18.5-24.9),
肥満群 (BMI25.0-29.9),
重症肥満I群 (BMI30.0-34.9), 
最重症肥満II、III群 (> or =35.0)
 
 1000人当たりの乳がんは、正常体重群6.6人 , 肥満群7.4 人, 重症肥満I群7.9 人、最重症肥満II、III群 8.5人
(P < .001、統計学的に信頼性が高いという数値)であった。
 
浸潤性が高いなどの予後の悪い乳がんのリスクは、正常体重群2.3人, 肥満群2.6 人, 重症肥満I群2.9 人, 最重症肥満II、III群3.2人 P(trend) < .001)であった。
エストロゲン受容体陽性がんは、体重の高い群に多かった。
 
4)個人差はありますが、女性ホルモンは、乳房を大きくします。閉経後も、女性ホルモン群では、乳房の密度が高い人が多いようです。
 
Journal: J Clin Oncol 2010;28(24):3830-7 Date: 2010 Aug 20
55-59歳の女性587,369人が、1,349,027回のマンモグラフィーを行い、14,090人の乳がんを診断した。
登録システムであるBIRADSの分類法を用いて、1-4度までの乳房分類を行い、それぞれの群に属する女性において、5年間の乳がんリスクを比較した。ホルモン補充療法は、エストロゲン単独投与の女性群と、エストロゲン+プロゲステロン(黄体ホルモン)群.を投与群の女性であった。

女性で、乳房密度の低い群に属する女性では、女性ホルモン無群が、0.8% (95% 信頼区間 0.6 to 0.9%)であり、女性ホルモン群では、0.9% (95%信頼区間, 0.7% to 1.1%) と、乳がんリスクが上昇した。
 
同じ年齢層の女性で、乳房の密度が高い人では、乳がん発症のリスクが高かった。ホルモン補充療法のない人では、2.4% (95% CI, 2.0% to 2.8%) , エストロゲン使用者では 3.0% (95% CI, 2.6% to 3.5%)、エストロゲン+プロゲステロン(黄体ホルモン)は、4.2%でした。
 
5)卵巣がんは、乳がん、子宮がんなどにくらべて、数は少ないですが、悪性度は高く、5年生存率も低いものです。この卵巣がんも、ホルモン補充療法により増加することが示されています。
 
JAMA. 2009 Jul 15;302(3):298-305.
730万人の女性たちの8年間の観察において、卵巣がん3068人(うち卵巣上皮がん2681人)と、ホルモン補充療法との関連を検討した。
対象として、ホルモン補充療法を受けていない90万人の女性と比較した。
ホルモン補充療法群の女性は、治療をうけなかった女性と比較すると、卵巣がんは、1.38倍となり、卵巣上皮がんは1.44倍となった。
ホルモン補充療法中止後、2年目までは、卵巣がんのリスクは、1.22倍とまだ、やや高いが、2-4年では0.98倍となる。さらに4-6年過ぎると、卵巣がんが0.72倍と減少する。ホルモン補充療法群では、1000人あたり0.52.非ホルモン補充療法は0.4であった
昨日の続きです。

転写因子とは、遺伝子として働くDNA塩基配列の手前にある塩基配列(プロモーターと呼ばれる)に結合する蛋白質で、遺伝子の働きを制御する物質です。このプロモーター部分に、多数の転写因子が結合すると、遺伝子DNAからメッセンジャーRNAへと転写が始まります。C/EBP、CREBは、代表的な転写因子で、多くの蛋白質の合成に関与します。C/EBPは、遺伝子塩基のCCAAT (シトシン、シトシン、アデニン、アデニン、チミン)の配列に結合する転写因子で、一方、CREBは、遺伝子塩基の (cAMP response element binding protein)と呼ばれるプロモーター部分に結合する転写因子です。
今回、ネイチャー論文で話題のインスリン様成長因子IIの蛋白合成の場合も、C/EBP、CREBが主要な転写因子として働きます。インスリン様成長因子は、肝臓など他に多くの臓器に発現していて、体を大きく成長させるために働きます。脳内インスリン様成長因子IIの役割は、現在解明中ですが、記憶以外にも多彩な働きが推定されます。
 
もう少し、論文の内容を見てみましょう。記憶を強化していくためには、何度か思い出し、記憶の再強化をくりかえすことが必要です。そこには、新たな蛋白合成を必要とします。著者らのグループは、過去の論文で、動物が危険を避ける行動を記憶する時、転写因子のC/EBPβが脳内で増加することを見出しました。実験では、C/EBPβは、6-9時間で、ピークとなり、28時間まで続き、48時間で消えました。トレーニングをした動物を5時間後に、C/EBPβの蛋白合成をとめるアンチセンス物質を海馬に注入すると、記憶が失われました。次に、インスリン様成長因子IIのアンチセンス物質を用い、海馬の遺伝子発現を抑えてしまうと、トレイニング後24時間後の記憶は失われてしまいました。そして、48時間後のインスリン様成長因子IIの蛋白量も減少しました。
これらの実験は、条件をつけた群に属する動物と、条件をつけない群に属する動物の違いをみて、記憶物質の役割を調べていきます。もう、少し解説を続けます。
 
トレイニング直後と8時間後に、アンチセンス物質で海馬のインスリン様成長因子II遺伝子発現を抑えてしまうと、動物の記憶が失われてしまいましたが、再度、動物にトレーニングを施せば、記憶を回復させることができました。
 
トレイニング直後に、両側海馬にインスリン様成長因子IIを注入すると、7日後にも、24時間後と同程度に、記憶が保持されていました。
 
トレイニング後24時間経過した後に、インスリン様成長因子IIを注入する群と、非注入群の動物において、注入直後には、記憶の差がありませんが、さらにそれから24時間後(トレイニング後48時間)のテストでは、注入群の動物で、記憶が保持されていました。
 
これらの記憶効果は、インスリン様成長因子I(1)の注入では起きませんでした。海馬以外の脳内扁桃体にインスリン様成長因子IIを注入しても、記憶の増強はおきず、記憶の保持は、海馬の役割が重要であることが示されました。
 
この実験においては、記憶の保持は、2-7日までで、14日後には、インスリン様成長因子II注入群と、非注入群の動物間で、記憶の違いはありませんでした。

こうした実験をつみかさねて、著者らのグループは、海馬におけるインスリン様成長因子IIの記憶への役割を証明しました。
つい先日の新聞報道で、ネーチャー(2011年1月27日版)に、インスリン様成長因子II(IGFs;Insulin-like growth factorsII)が、脳の記憶を保持するだけでなく、シナップスにおいても記憶を増強する因子であるとの論文紹介されました。この因子が、脳の海馬において記憶を保持するために重要であるとのエビデンスがまた、ひとつ加わったことになります。遺伝子から合成される蛋白が記憶保持の本態であることは、1990年ごろから、知見が重ねられてきましたが、今回は、危険回避のトレーニングを受けたラットが、、それを記憶する能力を保持するためには、インスリン様成長因子が関連することが示されました。この研究では、実験動物(ラット)脳内に、インスリン様成長因子IIを高めたりつぶしたりすると、それに応じて記憶が変化することを示しました。今回は、マウントサイナイ医科大学のChanら(著者ら)のグループの仕事ですが、この分野は、世界の脳科学者がしのぎを削っています。

インスリン様成長因子IIは、脳に豊富に存在し、加齢と共に、この物質は減少することがわかっていました。しかし、シナプス(過去ブログ参照)における役割ははっきりしなかったのですが、今回、シナップスにおいても、記憶の保持と増強に重要であることが示されました。海馬のスライスを用いた実験において、インスリン様成長因子が、その受容体を介して、シナップスが記憶の増強に機能することが示されました。インスリン様成長因子IIが、シナプス後電位活動を高めること、この増強効果は、インスリン様成長因子I受容体に対する抗体でブロックされることを示しました。神経シナップスでの記憶の保持のさらなる詳細なメカニズムは今だ、わかっていませんが、次第にベールが薄くなり、記憶を保持するドンピチャ物質の発見につながると思います。つまり、認知症などの治療薬としての人類の希望がつながるわけです。

現在、これらの記憶の研究は、マウスやラットを用いたものが主流です。脳を取り出して、いろいろな蛋白物質の発現をみる研究なので、人間を用いてはできないわけです。記憶の研究には、いろいろ手段がありますが、今回のネーチャーでは、床に電気ショックをあたえてラットに危険があることを教え、それを避ける行動がとれるかどうかで評価しています。記憶が維持されていれば、危険を思い出し、床に電気ショックを避ける行動になります。動物を危険にさらし、それを回避するトレイニングをして、動物に記憶を作らせ、脳内でどのような物質の変化と関係するかをみるわけです。
 
過去の実験では、記憶ができあがった時点のタンパク合成をみると、9時間位で蛋白がつくられ、24時間は保持され、48時間位で消えてしまうとの論文にありました。細胞の核内でなく、神経細胞のシナップスにおいても、インスリン様成長因子IIは、記憶の増強に働きます。シナップスで、GSK3βと言う物質を増強させます。これらの物質が協力して、記憶の長時間の増強に関係します。インスリン様成長因子II の合成には、CREB、C/EBPと呼ばれる転写因子が必要で、これらの物質は、インスリン様成長因子IIの遺伝子プロモータに結合して、インスリン様成長因子IIタンパク合成します。こうしたつくられた記憶を保持する蛋白も、記憶が保持されるためには、あらたなタンパク合成が必要になるわけです。つまり、生体内で蛋白合成の努力が続けられなければ、脳内記憶として保持されないわけです。

簡単に言うと、記憶とは、脳内神経細胞で特定の物質がつくられて保持され、神経細胞のシナップスにおいて、記憶が操作されているらしいということだと思います。そして、海馬のインスリン様成長因子IIが大事なんですね。
 
以下に、簡単に転写因子について書きます。転写因子が何者かがわからないと、ちょっと、この文章を理解するのは難しいかもしれません。さらなる解説については、ウキベディアなども参考にしてください。CREB (cAMP response element binding protein) とはcAMP応答配列結合タンパクで、蛋白合成の時に必要な転写因子。神経細胞ニューロン間の恒久的接続を確立するタンパク質を、転写・翻訳するのに必要である。
C/EBPは、遺伝子の調節領域のCCAATという配列の領域に結合 して,転写を調節する転写因子
女性の更年期の本態は?それは、喪失感ではないでしょうか?
 
更年期問題については、女性ホルモンが下がるからの話題を意識的に除きましょう。なぜなら、この問題は、医学的には証明されていないからです。それより、なぜ、体の具合が悪いと感じてしまうのか?それぞれの女性ごとに、分析し、評価し合ってみるのはいかがでしょうか?それは後悔であったり、不運をなげくものであったり・・・・。人生、楽しいことばかりでなかったにしろ、それらの時はすでに失われてしまいました。そうした喪失感が、女性の体を不調にしてしまうような気がします。輝かしい時が過ぎて、周りからの評価が低下したと感じること、そうした喪失感が女性の気持ちを、ひどく落ち込ませているのではないでしょうか?誰も聞いてくれない!そんな時、女性は身体症状となってしまいがちです。以前には、意欲があったのに、今は無いとあせった気持ちは、そうした喪失感を背景に出てくるような気がします。
 
世の中には、不調を治すとするさまざまな商品が氾濫し、女性の不安感をあおります。人は生きていれば老化し、体のあちこちが痛んできます。でも、まだまだ新品同様に使える時期、それが更年期といえます。いわんや、プチ更年期など、女性が病気がない時期です。
 
女性の体調を悪くしている、喪失感にはどんなものがあるでしょうか?人それぞれに異なる喪失感!、それについて、皆で語り合ってみませんか?学とみ子は、このホームページから、知り合い同士の女性で、そんな喪失感について、話し合うことをお薦めします。すると、何かに気づくはずです。
 
そうすると、自分自身のことでなく、家族、夫、恋人のことで、心をくだいてきたことに気づくでしょう。他人に期待してうらぎられたと感じる、この種類の喪失感は、悩んでも出口のみえないものです。だから、これ以上、深みにはまらないようにしましょう。
出口のみえない喪失感とは。多くは他者に関連します。
子どもが誇らしかったけど、最近は、親を悩ます。こんな子どもになぜ、育ってしまったのだろうか?この子のことで、どんなに努力してきたことか、・・・・。
夫が会社でしかるべき立場にいた時、もっと私も充実していた(夫のおかげで、女性も評価されていた・・・

人に知られたくない大事なことは隠してもいいです。隠している自分自身から、見えてくる何かがあるはずです。
むしろ、喪失感を自分自身にむけてみると、新たなものがみえてきませんか?

若い時に、がんばっていたけど、成しえなかったこと 私は才能が無かった!努力が足らなかった!運が悪かった!ついてなかった!あの時、・・・さえあれば・・。
こうした悩みは、無駄にはならないと思います。もう、1回、チャレンジしましょう。
自分の人生の選択を評価していく方向で考えて行きましょう。
 
それまでの人生でなしとげてきたことを大事にしましょう。それは、あなたでなくてはできなかったことです。ちょっとやそっとではめげない毎日をおくっていきましょう。
 
このブログの下に、宣伝サイドが入りますが、私のブログ内容とは関係がありません。無料運営のサイトであるため、自動的に入ってしまうのかと思います。漠然としたものに頼ること、これが、かえって、女性の不安を高めるような気がします。
 
このブログ、女性に限らず、悩める女性の夫などにも、参考になってほしいな!ダメモトでも、誰かの参考になればうれしいです。下記のホームページもよろしくお願いします。http://gakutomiko.web.fc2.com/
B子さん
まあ、誰にでも失敗はあるよね。
遺伝子が変わった形をしていると、そこからつくられる兵士は皆、戦闘能力が低くなちゃうので、もうがんという悪をやっつけなられなくなるわけだ。

C輔君
そうなんだよ。もう理解できたみたいだね。だから、がんが心配な人は、その人自身の遺伝子が異常かどうかを、調べるんだね。だけど、遺伝子って、ひとつ、ひとつ、見ていったら30億か所もあるんだ。

B子さん
じゃ、がんの検査って、そのうちのどこを調べるの?

C輔君
それが、このBRCA1遺伝子とRCA2遺伝子をしらべるらしいね。
ここには、日本人を対象にした研究結果が書いてあって、乳がん、卵巣がんの人が多い家系では、BRCA1/2遺伝子の変異があるのは、約、2-3割で、他の国々での報告と同程度とあるよ。
 
特にね、こうした遺伝子を持つ人は、
乳がんや卵巣がんを若い年齢で発症しやすい。
70歳までに乳がんを発症する割合は36~85%と書いてあるよ。
数に幅があるのは、遺伝子異常の中身とかが関係するのだろうね。

A美さん
やっぱり、私検査を受けた方がいいの?

C輔君
A美さんのおばさんみたいに陰性ならいいけど、陽性だとつらいね。僕には重すぎて、結論が出せないよ。でも、本当に家族にがんが多い場合、多いことは事実としてあるわけだから、一歩踏み出した方が、予防とかができるようになるよね。
ちょっと、待って!。他のサイトには、予防的にがんにならない前に手術をする人が、外国にはいるって、書いてある・・・。

B子さん
なるほど、でも、この問題は、もっと勉強するのが必要だと思うよ。女性にとって、おっぱいはとても大事だから・・・。覚悟をきめる時には、いろいろ知識はあるほどいいもんね。きっと、検査をしてくれるところでは、そうしたカウンセリングをしてくれると思うよ。
昨日のがんの話題のブログ、難しいかったですか?本日は、それを日常会話風に書き変えてみました。いかがでしょうか?かえって、わかりにくいも・・・
 
ネットカフェでの、3人の仲の良いお友達の会話です。
A美さん、B子さん、C輔君が話し合っています。A美さんだけが、浮かない顔です。
 
A美さん
うちの家族って、がんの人が多いのよね。特に女の人のがんが・・・。心配なんだけど・・・」
 
B子さん
やあね。がんになったわけじゃないのに、なんで、そんなこと勝手に想像したりして!
 
C輔君
いやあ、A美さんの話しは、本当に心配だね。
 
B子さん
ええー、やっぱりそうなの?どうして?たまたま、がんの人が多いと考えていた方が、気楽じゃないの。心配するとストレスがふえて、免疫が弱るそうよ。がんをつぶすのも免疫でしょう?
 
C輔君
そうなんだけど、女性のがんって、多発する家系があるらしいよ。世界中でそうしたことが研究されているみたいだ。多分、日本にも、そうした家系の人がいると思うんだけど・・。つまりさ、家系ということは遺伝子だろう?だから、そういうがんを守るのが弱い遺伝子を先祖からもらちゃうんじゃないかな?
 
A美さん
そうらしいの。うちのおばさんはね。がんの危険がたかいかどうかの検査を、私にも受けた方が良いというのよ。そのおばさんは、遺伝子検査を受けて、陰性だったんだって。だから、ほっとしたから、姪の私もそうした検査を受けた方がいいっていうの。
 
C輔君
ちょっと、ネットで調べてみようか?
 
A美さん
お願いします。C輔君は、遺伝子のことは、大学で教わって、大体の知識があるのでしょう?
 
C輔君
いやあ、教養過程で少しだよ。人間の病気のとこまでは知らないさ。この領域は、進歩が速いからね。どんどん、知識がすすんじゃうと思うよ。外国は、がんの人を何年も追跡調査をしているらしいよ。日本も、遺伝子検査は得意だけど、一般の人で知識を持つ人が少ないらしいから、日本では何年も患者さんを追って調べる調査が少ないらしいよ。患者さんが協力しないと、できない調査だからね。
あっ、あったよ。BRCA1遺伝子と、BRCA2遺伝子のことだね。全国、専門病院で調べられるみたいだ。
ちょっと、読んでみるね。
BRCA1遺伝子は、13番染色体に存在している遺伝子で、BRCA蛋白をつくります。この物質は、遺伝子を守る働きをします。同様に、17番染色体に、BRCA2蛋白をつくる遺伝子があります。女性の中には、BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子の形が変化している人がいて、こうした人をキャリアと呼びます。キャリアの女性は、自分の遺伝子を守る能力が低くなるので、乳がんや卵巣がんを発症しやすくなります。BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子は、乳がんや卵巣がんに関連する大事な遺伝子なので、これらの遺伝子異常を持つかどうかを、検査で調べることができます。
 
B子さん
遺伝子って、何の事だか、わからないわ。遺伝子異常があると、どうしてがんになるの?
 
C輔君 遺伝子は、体の中で働く蛋白をつくるんだよ。蛋白の中には、がんにならないように守る役割のものがあって、遺伝子異常があると、それが正しく働く蛋白ができなくなっちゃうのさ!
 
B子さん
どうして、がんが出てきてしまうの?それを防ぐのって、どうやって?
 
C輔君
体の中の細胞は、古いのが壊れて、いつも新しく入れ替わっているだろう。古い皮膚は垢で落ちるのがみえたりするよね。腸の細胞も1週間以内で入れ替わっているよ。それが便に出てくるんだけどさ。食べ物のカスと一緒に腸の細胞が一杯、便に混じりこんでいるそうだよ。知っている?ちょっと、脱線したかな?
 
B子さん
そんなことない。わかりやすいわ。細胞の入れ替えがうまくいかないと、がんに進んでいくのが、なんとなく、理解できてそう。それから?
 
C輔君
新しく細胞を作る時に、古い細胞を複製するのさ。同じ性質のもので入れ替えないといけないからね。その時、複製しそこなっちゃうことがあるのさ。つまり、細胞の元となる遺伝子の複製をうまくできなくなってしまうのさ。がん細胞は、こうしてできてしまった死なない細胞なのさ。がん細胞は、栄養を血管からもらって、ふえていってしまう能力を獲得してしまった怪物さ。がん細胞は、血管を作りだす能力とか、移動する能力にも長けているのさ。
 
B子さん
そしたら、誰でも、自分の細胞の複製をくりかえすわけだから、皆、がんになってちゃうじゃない。
 
C輔君
実はね、そんなことが勝手に起きないように、遺伝子を複製する時に、見張っている役目の物資があって、この物質が、遺伝子の複製ミスを元に戻す働きをするんだ。この蛋白質は、遺伝子の守護神と言うべき役割さ。当然、その守護神たる物質を作るのも遺伝子だよ。それをがん抑制遺伝子と言う。
 
B子さん
要するに、遺伝子が正常に複製されるように、見張りの兵隊がいるということなんだ。その見張りの兵隊を作り出すのも、遺伝子なんだね。
 
C輔君
そういうことだね。遺伝子がせっかくがんばって作った兵隊でもさ。以前はうまくつくれて精鋭部隊だったけど、今度は失敗しちゃったなんでことがでてくる。前の兵隊と同じような精鋭部隊がつくれなくなってしまうことがあるのさ。親からもらった遺伝子が、精鋭部隊をつくれないタイプのことがあるんだよ。             走る人続く
以前のブログ(1月21日)に触れましたが、遺伝子異常とがんについて書きます。

BRCA1遺伝子は、13番染色体に存在している遺伝子で、BRCA蛋白をつくります。この物質は、遺伝子を守る働きをします。同様に、17番染色体に、BRCA2蛋白をつくる遺伝子があります。女性の中には、BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子の形(塩基の並び)が他の人と同じ形でなく、変化している人(遺伝子異常を持つ人)がいます。こうした人をキャリアと呼びます。キャリアの女性は、自分の遺伝子を守る能力が低くなるので、乳がんや卵巣がんを発症しやすくなります。遺伝子は親から引き継ぐので、家系的にがんになりやすい人たちがいるわけです。BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子は、とても大事な遺伝子なので、現在、これらの遺伝子異常を持つかどうかを、検査で調べることができます。
 
がんの発症は、さまざまな素因、環境因子の影響を受けます。その中でも、BRCA1、BRCA2は、がんとの関係がよくわかっている遺伝子ということになります。今後も、がんと関連する遺伝子異常は、いろいろ発見されていくと思います。がんに関連する多数の因子の中で、遺伝子は塩基の配列の違いを証明できるため、がんとの因果関係を具体的に示すことができます。

それでは、実際にどのようなデータがあるのか、ここに少し紹介しましょう。
がんが多発する家系の人を集めて、遺伝子を調べる方法があります。Miyoshiらは、日本の乳がん多発する家系の女性の遺伝子を調べました、そして、BRCA1遺伝子異常を13.3%、BRCA2遺伝子異常を18.6%に見出しました。遺伝子異常の内容(塩基の並び方にどのような異常が入っているのか?)によっても、がんの発症危険度は違ってきます。例えば、BRCA1遺伝子については、コドン 63(3塩基の並びをコドンと呼ぶ)のナンセンスミューテイション(変化の種類につけられた名)、BRCA2 遺伝子では4塩基脱落などがある人で、がんが発症しやすくなると報告されています。PubMed  11977534に詳細があります。
彼らによると、この家系の女性たちで遺伝子異常のある女性は、生涯乳がん発症率が80%、卵巣がん発症率が40%とのデータが紹介されています。
 
 
他の研究を書きます。日本人のBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子と病気との関係を調べた成績です。この成績では、遺伝子異常の確率が、がんの条件で上昇することが示されています。つまり、早期のがん発症で、がんの家族歴がある人では、遺伝子の影響が大きいことが示されています。
この日本人データでは、本人に乳がんがあり、一等身(親、兄弟、子供)にも、乳がん、卵巣がんがある人たちです。この人たちを対象に、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子を
調べました。BRCA1遺伝子異常は、13.3%の女性にみられ、BRCA2遺伝子異常は18.6%の女性に見出されました。さらに条件をしぼり、どのようなタイプの女性に、BRCA1遺伝子、又はBRCA2遺伝子遺伝子に異常があるかを調べました。その人たちは、次のようでした。

家族に3人以上の乳がんがいる女性たちでは、遺伝子異常が36%の確率でみつかる。
40歳以下で乳がん発症した女性たちでは、遺伝子異常は8%にみられる。
両側乳がんになった女性たちでは、遺伝子異常が40%の確率で見つかる。
つまり、すでに乳がんの人で、かつ遺伝子異常も持ち合わしている人はどのようなタイプかは、
家族に乳がんが多い人、乳がんが若年で発症した人、両側の乳がんになった人でした。遺伝子異常の種類によって、病気の予後が良いかなどにも、影響を与えます。PMID: 11149425
 
 
他のデータです。
最近報告された日本人を対象にした研究結果によると、BRCA1/2遺伝子の変異が検出されたのは約27%(36/135症例)で、他の国々での報告と同程度以上でした。
BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子のどちらかに遺伝子変異がある女性と、変異がない女性を比較すると、以下のような傾向でした(海外データ)。
 
BRCA1遺伝子又はBRCA2遺伝子に異常を持つ人は、持たない人に比べて
乳がんや卵巣がんを若い年齢で発症しやすい。
70歳までに乳がんを発症する割合は36~85%
(別の海外データでは、90歳までに6割というのもあり、人種、条件により数値はばらつく)
70歳までに卵巣がんを発症する割合は、16~60%
一方の乳房から、他方の乳房のがんになる確率は、30-40% 
乳がんから10年以内に卵巣がんを発症する確率が高い。
もっと、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子について知りたい方は、次のホームページにくわしいです。http://www.familial-brca.jp/index.html
 
 
カナダの疫学のデータを紹介します。これは、遺伝子異常をもつ女性が、妊娠・出産することにより、がんの発症にどのような影響があるかを、15年間にわたり観察したものです。
 
1,260人づつの遺伝子異常の無いコントロール群と、BRCA1、またはBRCA2遺伝子に異常を持つ人を集めました。15年間、その人たちから、乳がんが発症してくるかを調べました。BRCA1の異常を持つ人と、持たない人において、経産婦(出産したことのある人)と、非経産婦で、乳がんの発症違いはありませんでした(非経産婦1とすると、経産婦0.94、という数値で、意味は経産婦の発がんは6%少ない)。しかし、4人以上の子供をもつ人で比較すると、BRCA1異常を持つ人では、乳がんのリスクが38%減少しました(子供を持たない人を1とすると、4人以上の子供をもつ人は乳がんに発症率が0.62になるという意味です。つまり、子供を4人以上もつと、乳がんの発症が少なくなるというデータです。
一方、BRCA2に関しては、この物質の遺伝子異常を持つ人では、2人以上の子供をもつと、乳がんの発症が、1.5倍になりました。そして、子どもが一人増えるごとに、17%増加しました。出産後の2年間は、乳がんリスクが上昇しましたが、5年たつと、その上昇程度が下がりました。PMID: 15986445 
つまり、BRCA2遺伝子は、妊娠中に大量の女性ホルモンが触れることにより、産後に乳がんのリスクが高まるという結果でした。
 
 
他のデータです。
BRCA1遺伝子又はBRCA2遺伝子異常を持つ人は、糖尿病になる確率も高くなるとする論文があります。BRCA1遺伝子又はBRCA2遺伝子異常を持つ女性6052人を、15年間、追跡した。15年間に糖尿病を発症するりすくは2倍(信頼区間1.4-2.8倍)であった。PubMed 21069710
最近、医師の処方箋がなくても買えるOTC薬が増えてきました。以前は処方箋が必要だったロキソニンなども、薬局で買えるようになりました。OTC薬は、医師に行かない時に使う薬ですよね。しかし、OTC薬の選択に困ったら医師・薬剤師に相談とありますね。薬剤師に相談でいいのではないでしょうか?薬局や医療の現場で、しばしばトラブルが起きる原因は、薬に関する回答は、これが正しいというのがないのです。
今日は、これに触れます。
 
熱の有る時、痛みのある時、薬局で薬の相談をした場合、例えば、痛み止などで、
「胃が弱いのですけど・・・、大丈夫でしょうか?」
こうした質問は、薬剤師さんにとっては難しい質問と思います。もちろん、医師にとっても難しいと思います。胃が弱いというのは、いろいろな程度がありますから・・・。このお客さんの言っている意味をさまざまに解釈する程、答えが難しいです(胃が弱いという言葉には、漠然としているので、いろいろな可能性があるわけです)
医師は、薬に不安を持つ人には、病気の内容を考慮して、薬を飲まなくて良いと言ってあげられますが、薬局の場合は、判断が難しく、症状が軽い場合は、医師への受診を勧めるのも難しいですよね。
 
薬局の現場では、お客さんが難しい質問をすることは、しょっちゅうあると思います。
学とみ子は、本日、近くのスーパーの薬局でこんな会話を耳にしました。
(以前は医師の処方箋が必要だった)鎮痛剤ロキソニンを買いたいお客さんと薬剤師さんの会話です。
 
客「ロキソニンの副作用は、何かありますか?」
薬剤師「白血球の少ない方はまずいです」
客「私、以前に白血球が少ないと言われたんですけど・・・」
薬剤師「そうした場合はお医者さんにご相談ください」
客「じゃ、買えないのですか?」
薬剤師「・・・・・。以前から白血球が少ないのですか?」
客「体質的に少ないって言われているんです」
薬剤師「以前からあるのでしたら、問題ないと思います」
 
薬剤師の言うべき正解は、難しいですね。自然に治る事が多いと予想される病気は、薬をのまないで対処する方法をアドバイスした方が無難ですね。しかし、薬局は、薬を売るところですから、お客さんから「売れないのか?」と言われた場合は、なかなか対応が難しいと思います。
薬剤師さんの経験と知識を要しますし、教科書で勉強した知識では答えられません。正解は、「いろいろな想定できることが多いので、私の立場では答えは難しい」と言った方がいいかも・・・と感じた次第です。
 
 
ネットのお薬相談とかでも気になる表現はあります。正しい薬の使い方をしましょうと書いてありますが、正しい使い方というのは、実は、最初は、わかっていないことが多いですよね。とんでもない使い方は、論外ですが、薬の副作用は、正しい使い方をしないから出るわけではありません。薬の副作用がでる原因は、解明されていない問題も多く、研究途上の問題です。薬を代謝する(薬作用後は、無害なものに変換させる)能力が、個人でさまざまなんですね。大多数の人は、その他の大多数の人と同等に、薬を分解できる能力をもちますが、しかし、たまに、それができない人がいます。それは、医師が外から見てもわかりません。一部の人に、発疹がでたり、時には、重大な致死的な症状がでます。さらに、しばしば、薬との因果関係がはっきりしないこともあります。
 
何かあると医師に相談というけれど、体内の複雑な代謝の予想は、医師の能力を超えています。
 
薬が原因で、皮膚に赤味やぶつぶつがでる理由の医学的説明は、とても難しいのです。薬疹はだれでもできる可能性がありますが、特にがん治療中の人や、エイズ治療中の人は、薬疹が出やすいです。この理由もまだ、十分に解明されていません。薬の代謝産物自体が血管を傷めたり、免疫細胞を刺激して血管に炎症を起こすと想定されています。普段、健康な方が、本当に薬の影響ででたのか、必ずしもわからないことが多いです。解熱剤を飲むような時には、いろいろなウイルス感染のこともありますし、こうした場合は、薬とは関係なく発疹がでます。溶血性連鎖球菌(溶連菌)の感染症の時も、溶連菌に対する免疫反応で発疹がでます。薬疹は、薬を飲んだ人自身(免疫反応)で、皮膚の血管の壁に変化を起こしてしまうのです。薬以外でも、さまざまな原因で人は発疹を出すものです。
 
前のブログで、薬を分解する体内の酵素CYPの話をしましたが、この代謝能力にはとても個人差があると言いました。がんに関係すると説明したCYP1B1ですが、この酵素は、エストロゲンを分解する時に使われます。この酵素の遺伝子に変化があると、エストロゲンの代謝産物が多く作られてしまいます。一部の特定の遺伝子の型の人では、体からエストロゲンをなくす能力が低くなるわけです。すると、エストロゲンの持つ細胞の増殖促進作用が発揮されやすくなり、がん化につながりやすくなるようです。こうした事実は、最近、解明されてきたものです。
 
 
動物の命ある限り、その体内では、複雑な生体反応が進行しています。だから、薬のことをもっとよく知ってほしいです。熱や咳が体を守るための反応であることを理解し、薬で抑えることが体にどんな影響があるのか、薬の役割をもっと知りたいですよね。世の中には、体内の悪い物質や毒素を出す薬とか、大量にとると健康になれるサプリとかを謳う広告がありますが、根拠のない話には、振り回されないで欲しいです。又、女性の場合、エストロゲンが多くあると健康だという事を単純に信じないでほしいです。