イタリアのアニサキス過敏症研究チームのまとめたイタリアのアニサキス症の実態を示します。

お刺身を食べる日本人では、魚についている寄生虫のアニサキスに、過敏反応を起こす人がいます。血液の検査で、アニサキスに対する特異IgEは、測定可能です。しかし、注意することは、RAST検査で陽性になっても、必ずも症状が出るわけではないということです。おそらく、以前に、アニサキスが体内に入り、IgE抗体を作ったものの、症状がはっきりしないまま、アニサキスは排除されてしまうのだと思います。
 
このデータでは、皮膚反応が陽性な人(特異IgE抗体を持っている)の中で、実際に症状が出たことがある人は、案外少なく14%であるとの成績が示されています。

Allergy. 2011 Aug 18.  PMID: 21851362
イタリア全土の異なる地域で、診断されたアニサキス過敏症をまとめました。 方法: 34のイタリアのアレルギー・センターで、既往歴を問診し、アニサキス抽出物による皮膚プリックテスト(SPT)を行いました。アニサキス過敏症の有無を調査した対象の人数は、合計10 570人でした。このうち、474人(4.5%)は、皮膚の反応が陽性でしたが、実際にアニサキス過敏症がある人は、66人(皮膚反応の出る人の14%; 全体調査対象の人の0.6%)でした。 マリネードにつけられたアンチョビは、アニサキス過敏症で最も多い原因食品でした。
 
 34人の(52%)患者は、アニサキスが単独で反応しているアレルギーでした。アニサキス過敏症の発症率は、地理的な違いが大きく見られました(範囲: 0.4-12.7%)、アドリア海とテレニアン海岸では、自家製のマリネードにつけられたアンチョビは伝統食品であり、罹患率も高く、北イタリアの内陸のセンターでは、住民の数が関係しました。ミラノとトリノでは、およそ60%のアニサキス過敏症の人は、南イタリアから、または、非ヨーロッパ諸国から来た人たちでした。
 
 結論: アニサキス過敏症は、食習慣と関係し、マリネードにつけられたアンチョビを良く食べる地域は、この種の食物アレルギーが多く、そして、内陸大都市での発症が多いのは、新しく導入される食品(生食魚のカルパッチオまたは寿司を)を食べることと関係するようです。
Peanutsは、ローストして食べることがあますが、それにより、よりピーナッツに反応してしまう人がいます。
 
加熱により、ピーナッツアレルゲン蛋白質は、立体的な構造を変えます。蛋白の立体構造が変化すると、アレルゲン性(アレルギーをどの位の強さで起こすのかの能力)に影響が出ます。 実際の料理の中で、中華料理として炒めたピーナッツなら大丈夫だが、料理に入らない炒ったピーナッツであると、反応を起こしたりするのエピソードが現実にあります。その機序は、まだ、十分には解明されていないのです。
 
今回の研究では、熱や糖を加えることにより、ピーナッツがアレルギーを起こす能力を、変化させることが調べられています。ピーナッツ蛋白のうち、Ara h 1とAra h 2/6(ピーナッツ2Sアルブミン成分)の蛋白のアレルゲン性が、どのように変化するのかを調べています。ピーナッツを、乾いた環境で熱を加えるのか(炒るのと似た料理をする)、他の炭水化物成分と一緒に加熱することかによって、ピーナッツのアレルゲン性が増強したり、減弱したりすることがあるようです。論文を紹介します。

Clin Exp Allergy. 2011 Aug 1. PMID: 21801247
Ara h 1、Ara h 2/6は、生ピーナッツから抽出しました。ピーナッツをブドウ糖を加えて加熱(145度で20分)する場合(R+g)、あるいは、ブドウ糖を加えない条件で加熱する場合(R-g)の、異なる条件でピーナッツを加熱処理した後、ピーナッツ可溶性成分を抽出しました。
 
12人のピーナッツアレルギーの患者から得た血清を用いて、ピーナッツ成分のIg結合性と脱顆粒の能力を調べました。
 
ドライな環境での過熱すると、Ara h 1、Ara h 2/6は、加水分解しました。 しかし、ブドウ糖と共存させると、Ara h 2/6に比べ、Ara h 1 は、凝集塊を形成しました。Ara h 1のIgE結合能は、ブドウ糖の存在下では 9000倍に低下し、ブドウ糖の存在無しの条件では、Ara h 1のIgEの結合能は、3.6倍に低下しました。しかし、単独Ara h 1 と比較して、脱顆粒能は、増強しました。
 
ネイティブ形と比較して、熱処理によりAra h 2/6は、IgE結合能、脱顆粒の能力共に、600-700倍に低下しました、しかし、ブドウ糖があると、これらのアレルゲン性のロスが抑えられました(アレルゲン性を維持したという意味)。
結論 ピーナッツ成分により、熱に対するアレルギー性の変化の様相は異なっていました。加熱をするとAra h 2/6では、アレルゲン性が減弱するのに対し、一方のAra h 1では、加熱によりむしろ、アレルゲン性は増強する結果でした。加熱時に、ブドウ糖の存在の有無によっても、ピーナッツの各成分のアレルゲン性は、異なってくることがわかりました。
 
ピーナッツのアレルゲン性の評価は、IgEと結合する能力で評価するだけでなく、脱顆粒の能力の変化も、評価されるべきと思われました。
ある子どもに治療効果があったことが、他の子供には、マイナスになってしまうことを経験します。
そうした背景には、人の反応性の違いがあります。いわゆる体質が違うと、病気の出方も、治り方も違ってくるのです。そうした体質との関連についてのご紹介です。
 
ビタミンDは、人の免疫調節に大事な役割をはたします。ビタミンD欠乏が、食物アレルギーと関係するのではないかとの仮説があります。今まで、ビタミンD欠乏のある子供に、食物アレルギーが発症する、あるいは、食物に対してIgEを作りやすいかどうかを調べた疫学研究がありましたが、結果はばらつき、結論は出ていません。遺伝子の型、すなわち体質の違いは、その後に起きてくる免疫調節の違いに影響を与えます。

今回、紹介する論文は、 臍帯血のビタミンD欠乏状態と、その後に、食物に対してIgEを作りやすいかどうかとの関連を調べたものです。そして、子供たちのビタミンD関連遺伝子や、食物アレルギー関連遺伝子検査を調べました。ビタミンD欠乏状態がある一部の子供たちだけが、、その後に食物アレルギーが関係してくるのかを調べました。
 
そして、遺伝子変化のある子供では、ビタミンD欠乏が、食物アレルギーを招きやすいことがわかりました。ビタミンDをとることの効果が期待できるかどうかは、人により違うということでした。妊娠中の、ビタミンDのとりすぎは害がありますので、ご注意くださいね。
 
子供たちの遺伝子型が違うと、ビタミンDと食物アレルギーとの関連にも違いが生じてくるのかを調べました。対象となったのは、出生後より追跡している米国ボストンコホート集団に属する649人の子供たちです。Allergy 2011; DOI: 10.1111/j.1398-9995.  PuMed 21819409

乳幼児期に8種の食物アレルゲンのどれかに、IgEが0.35kUA/lを超える数値となった子供を、食物アレルギーがあると定義しました。ビタミンD欠乏は、臍帯血25(OH)Dが 11ng/ml以下と定義しました。
 
 IgEと、25(OH)Dに関与している11の遺伝子検査を行い、単ヌクレオチド多型性(スニップ、SNP)の有無を調べました。 関連性の検討には、ロジスティック回帰を用いました。
 
結果: 649人の子供たちの臍帯血の44%に、ビタミンD欠乏がありました、そして、子供の37%には、食物IgEが陽性でした。 全体の子供たちでは、ビタミンD欠乏は、食物アレルギーと関係していませんでした。
 
しかし、一部の子供たちでは、関連がありました、遺伝子のSNP検査で、IL-4遺伝子多型(rs2243250)を持つ子供では、ビタミンD欠乏があると、食物アレルギーとなりやすくなるとの結果が得られました。 Cc/CT遺伝子型のある子供たちの間で、ビタミンD欠乏と食物アレルギーが関連しました。
 
より弱い相関は、MS4A2(rs512555)、FCER1G(rs2070901)、CYP24A1(rs2762934)のスニップ頻度で、観察されました。
 
全4つのスニップを持つ子供では、臍帯血のビタミンD欠乏と、その後に、食物アレルギー(IgEを作ってしまう)体質が、高い頻度で起きてくることがわかりました。
 
結論: 特定の遺伝子型を持つ子どもたちでは、臍帯血でビタミンD欠乏があると、その後に、食物IgE抗体を作りやすくなるというデータが得られました。
調整性T細胞は、リンパ球の仲間ですが、このタイプのリンパ球は、過剰なアレルギー反応を抑える働きをします。食物を食べてすぐ反応が出るタイプのIgE型の即時型食物アレルギーがありますが、健康な人では、アレルギー反応が起きないように、調整性T細胞が活躍しています。
 
しかし、複雑な人の調整性T細胞役割は、不明な点が多いです。人間の病気を研究するためには、動物に似たような病気を起こさせますが、動物に、人工的に即時型食物アレルギーを起こすのは、結構、難しいのです。動物にとって、食べるという大事な働きを、人工的に狂わすことは、なかなかできないということです。
 
マウスにミルクを飲ませて、ミルクアレルギーを作ろうとしても、症状は軽く終わってしまうのですが、その時、この調整性T細胞の働きを抑えると、ミルクアレルギー症状がでやすくなります。
 
調整性T細胞は、必要な時に、自然に増加してくる細胞です。人が精神的に落ち着いている時、免疫細胞も、じょうずに働いてくれますので、アレルギー反応は抑えられます。調整性T細胞の働きをマウスで証明した論文を紹介します。nt Arch Allergy Immunol. 2011 ;156:387. PMID: 21829034

調整性T細胞(CD4+CD25+調整T細胞)が、β-ラクトグロブリン(BLG)(牛乳の主要アレルゲン)アレルギーに、どのような影響するかを、C3H/HeOuJマウスを用いて実験しました。
 
方法: ミルクをマウスに与えただけは、マウスにアレルギーを起こさせることはできないので、マウスにミルクアレルギーを誘発するために、ミルク蛋白(BLG)にコレラ毒素を加え、何度もマウスに飲ませました。 一部のマウスは、ミルクアレルギーを起こす前に、調整性T細胞を抑える物質を入れました(CD25モノクローナル抗体を入れる)。腸管アレルギーを評価するために、Th1/Th2-タイプ・サイトカインや、マスト細胞の 働きを見ました。
 
結果:調整性T細胞の働きがあるマウスは、ミルクアレルギーの症状は軽度でした。調整性T細胞の働きが低下させたマウスは、ミルクに対して強い反応を示しました。IL-4、IL-5、IL-13とIFN-γ生産の増加、総IgEとBLGに特異IgE、IgG1、IgG2aが増加し、粘膜肥満細胞プロテアーゼMCP-1は増加しました。
 
結論:ミルクアレルギーになる時には、腸管のTとB細胞反応が増強して、肥満細胞顆粒が増加しますが、そうした反応を、調整性T細胞が抑えていることを証明しました。
食物アレルギーは。食べて治す時代になり、全国の子ども病院が治療の軸となり、“食べて治す”治療が進んでいます。その結果、長い間、除去食をしていた子どもの多くは、除去食から、解放されていきます。しかし、一部には治療がうまく進まない、治らない子どもたちがいます。
 
食物アレルギーとしての病気は治まっていても、子どもの脳に、メンタルトラブルとして、食べれない状態から抜け出せない子どもいます。アレルギーは、本当に治っているのか?はたまた、メンタル症状によるものなのか?は、見極めが困難な場合があります。嘔吐、腹痛、口中違和感などの自覚症状は、子どもが不安を感じれば、アレルギーは無くとも、自覚症として出現してきます。
 
しかし、“食べて治す”治療は、100%安全と保障されるものではなく、経過には個人差が大きいです。時に、食物成分が、I型アレルギー反応より、さらに複雑な免疫反応を引き起こす場合もあります。そうした病気に、好酸球性食道炎、セリアック病、食物関連慢性腸炎などがあります。

今回は、好酸球性食道炎の論文を紹介します。
 
アレルギーが、難治化している年長児に起きてくる病気に、好酸球性食道炎があります。アレルギー専門雑誌には、スペインやフランスから、この病気の子供たちの症状の報告があります。多くは、食物アレルギーや、その他のアレルギーのある子どもたちが、アレルギー症状の軽快が望めず、アレルギー遷延化と共に、この病気が起きていきます。食道炎となる体質的な因子は推定されるものの、その機序は不明です。
 
アレルギー反応の起きている場所、食道には、白血球の成分のうち、好酸球と呼ばれる細胞が集まっています。この細胞は、傷を修復をする働きがあるのですが、一方で、傷を深くする作用もあります。
食道に、好酸球という白血球の仲間が増えてくると、線維化(固い傷を残している)という病変が起きます。線維化してせまくなってしまえば、嚥下困難なども出てきます。
 
この病気が診断されるのは、アレルギーの病気が長引いている、9歳位の子どもに多いです。そして、特徴的なのは、男児に多いと言うことです。アレルギーは、一般的に年少の男児におおく、5歳をすぎてくると、やや男女比が縮まってきます。年長児のアレルギーの男児対女児は、6:4位になるのですが、好酸球性食道炎は、8―9割が男児です。スペインやフランスなど、国は違っても、男性の優位が目立ちます。
 
J Invest Allergol Clin Immunol 2011;21:59
平均年齢9歳、17例(男児14名)の好酸球性食道炎の症例を集めて検討した論文です。現在、アレルギーがあるのは、15名、過去に食物アレルギーがあったのは、6例です。アレルギーのある食品は、卵、牛乳が多いです。卵は、現在のアレルギー12名、過去のアレルギー3名です。又、セリアック病という小麦アレルギーの合併者が、5名います。除去食や特殊食により、17名中9名が、食道炎が軽快しています。吸入用のステロイドを、飲み薬として治療に使う試みがあります。
 
日本でも、難治の食物アレルギーは、男児に多いのですが、世界的に、母親は、男児に対して、食物解除に慎重になってしまい、食物制限が長引いてしまうのかもしれません。一般的には、年長児になると、アレルギー疾患、特に喘息では、女児が多くなっていきます。
 
食物アレルギーの難治化は、何が影響しているのでしょうか?最近は、離乳食として導入される食物に、反応してしまう乳児が増えてしまい、離乳食も遅れる傾向にあります。昭和から平成にかけて、厚労省がまとめた離乳食導入時期、完了時期の数値を、グラフ化しました。
 
食物アレルギーがある子どもには、除去食が進められてきました。導入を遅らすことは、子どもの食物アレルギーを、さらに複雑化してしまうであろうと考えられています。すなわち、できるだけ、除去食の期間を短くし、異物の受け入れが容易である年少時期に主要食品に慣らしていくことが、世界中で勧められています。
 
図は、厚労省栄養調査で公表して、離乳食の導入時期の変遷です。緑の線が、平成17年、赤が平成7年、開始と完了が、右にシフトしています。遅れてきているのです。
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親子・姉妹などの家族内に乳がんの人がいる方は、乳がんの発症リスクは、たかくなります。高くなる発症の確率は、家族歴のない人にくらべ、どの程度でしょうか?米国の乳がん検査の結果に基づき、1等身(親と姉妹)の家族内に、乳がんの発症者がいる人は、家族内に乳がんがいない人と比べて、何倍に発症のリスクがあるかを調べました。Breast Cancer Res Treat. 2011 Apr;126(3):671-8

乳がんは、受容体の状態により、タイプを分けました。受容体の種類は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER2受容体の3種です。すべての受容体が陰性の乳がんは、トリプル受容体陰性乳がんと呼びます。このタイプは、全体乳がんの20%未満ですが、BRCA1の突然変異のキャリヤーに多いサブタイプです。HER2+ とトリプル陰性の乳がんの患者は、腫瘍がかなり小さくても、高い再発や転移のリスクがあるようです。

 1,054,466人の女性の2,599,946件の乳房X線写真から乳がん調査コンソーシアムがデータを評価しました。今回は、トリブルネガティブ乳がん、エストロゲン受容体ER+陽性乳がん、ホルモン・レセプター陰性ER-/PR-で、かつHER2を表しているER-/PR-/HER2+乳がんにおいて、比較しました。

検査を受けた40-84歳女性のうち、15%の女性に乳がんの家族歴がありました。 それぞれ診断された乳がんの数は、トリブルネガティブがんの女性の数は 705人、エストロゲン受容体陽性(ER+)の数は、10,026人でした。ER-/PR-/HER2+タイプの乳がんの数は、308人でした。

1等身の乳がんの家族歴のある人は、すべてのサブタイプの乳がんが発症しやすくなりました。その程度は、次の通りです。
トリブルネガティブ乳がんでは、乳がん発症のリスクは、 1.62倍, 95% 信頼区間 (CI): 1.54-1.70倍,
ER+乳がんでは、1.73倍, 95% 信頼区間: 1.43-2.09倍,
ER-/PR-/HER2+乳がんでは、1.56倍, 95% 信頼区間: 1.15-2.13倍

1等身内の家族に、少なくとも2人の乳がんの家族がいる女性では、
トリブルネガティブ乳がんは、2.66倍で( 95% 信頼区間 (CI): 1.66-4.27倍),
HR(ER+) の乳がんでは、 2.05倍で (95% 信頼区間 (CI): 1.79-2.36倍,
HR(ER)-(/PR)-(/HER2+) の乳がんでは、 2.25倍, 95% CI: 0.99-5.08)に、発症のリスクが高まることがわかりました。 PMID:20814817

男性ホルモンは、筋肉増強として、使われる薬ですが、一方で、強い免疫抑制剤であり、人工的投与による副作用は良く知られていました。しかし、病気によっては、うつ病などで、使用されることが、外国ではあるようです。

昨今の、アンチエイジングの風潮にのって、魔がさすように、人は、ホルモン剤に期待してしまうものです。今回は、テストステロンを投与された男性の話しです。
 
一方、女性ホルモン剤は、日常で、問題視される認識の速度が遅いです。エストロゲンは、若い女性では、多くの効用(血管拡張作用、炎症低下作用)があるため、女性に良い物質としての評価が、いつまでもつきまといます。若く美しくいたいという夢をかなえるという、幻の期待感から、女性は抜けきれません。自分の体を、自分で考えるとスタンスは、男女共に、大事ですが、リスク情報が十分に出ていないのが現状です。特に、受け身の女性で、情報が必要です。
 
閉経後の女性ホルモンは、女性の味方ではないと啓発しても、多くのマスコミは相手にせず、盛り上がりません。むしろ、女性ホルモン力などと言って、閉経に否定的です。女性ホルモンは、いつまでも、女性を若く美しく保ち、それが低下すると、病気が起きるとの幻想が消えないようです。
 
筋力がやや低下した高齢者(平均75歳)への,、6ヶ月間のテストステロン投与治験が行われ、効果、副作用が検討されました。結局、効能はあるものの(加齢した人でも、明らかな筋力増強剤)、心臓などへの負担があり、使用は否定されたのです。それを紹介します。New Engl J Med 2010;363:109

テストステロン濃度の低い65歳以上の男性(平均年齢75歳)の人を対象に、テストステロンジェルを、毎日、6か月、投与しました。対象の男性の8割に高血圧があり、心血管病は、半分に持ち合わせていましたが、その中には、心筋梗塞や、不安定狭心症を除きました。肥満は、半数にあります。糖尿病は、25%前後にありました。
 
テストステロン群は、106名、プラセボ゙群では103名でした。両者とも、8-9割が白人、BMIは、30前後が多いです。薬の前後で、胸、足、手のにぎりなどの、筋力、50m歩行、荷物を持っての50m歩行テストなどについて、測定しました。

テストステロンジェルは、10g(テストステロン100mg)とし、血中濃度が低い場合(500ng/dl以下)は、ジェルを15gに増やし、1000ng/dlを超えている場合には、5gに減量しました。性ホルモン結合蛋白量を測定し、フリーテストステロンを算出しました。

結果 テストステロン群では、心臓、呼吸器、皮膚の症状の出た人は、23人、内訳は、多彩で、死亡1名、心筋梗塞、失神、心不全、心房細動、狭心症発作、末梢浮腫5名などでした。プラセボ゙群では、死亡は無く、失神、ひん脈、高血圧、不整脈などでの5名でした。テストステロン群のリスクは、プラセボ群と比較して、心血管系は、5.8倍、皮膚系は、4.9倍でした。

テストステロンを投与された群では、足や胸の押す筋力、握力が増加し、物を持って、階段を上る力が増強しました。50mを歩く速度も増しました。
1ナノメーターというのは、10億分の1メートルのことで、1mmの1000分の1が1マイクロメートル、その1000分の1が、ナノメートルですね。まあ、すごく小さな粒子であるということです、私たちの吸い込む空気には、有害、無害を問わず、さまざまな刺激物質が含まれています。

消化管は、何かを入れると(食べると)、下から出てしまうしくみでしたが、呼吸器は、出口がなく行き詰まりです。すなわち、吸いこんだ有害物質でも、そのまま吐き出す空気の乱流にのって、体外へと出てしまえばラッキーです。しかし、そうならない場合には、そのまま、肺にたまってしまいます。そのため、アスベスト、タバコなど、長い時間かかて、肺に障害をおこしてしまうのです。

ところが、ごく小さな物質であれば、体のそなわったしくみで、外にだしてくれます。そのしくみについて、ラットの吸入実験ですが、ネーチャーに論文がありましたNature Biotechnology, November 8, 2010

小さな粒子であれば、川のように細かに流れている肺内のリンパ流にのって、肺リンパ節に運ばれ、さらに次第に、細かな流れが合流していき、全身を廻るリンパ流となり、やがて体外に、でてくれます。
 
その大きさが決め手で、リンパ流で運べる粒子の大きさが、34ナノメータということです。さらに、6ナノメートル以下で、荷電している粒子であれば、肺から速やかに腎臓に移動し、排除されるようです。

このことは、この大きさ以上の粒子の場合は、分解や処理に時間がかかります。その結果、粒子は肺にとどまり、局所の細胞は、粒子を排除しようとして免疫反応が起きます。その先は、いろいろな種類の肺の障害です。
 
私たちは、いつも大量のカビやバイ菌を吸い込むのですが、それが処理される過程で、トラブルが起きると、有害物質の片づけ作業が手間取り、肺の免疫に失調が起きます。免疫が過剰となると、線維化と呼ばれる肺が固くなる現象が起きます。固くなると、呼吸がしずらくなります。しかし、肺線維症への進行は、原因が分からないことが多いのです。こうした反応は、自覚症がなく、静かに慢性に進行しますので、肺の病気の原因解明は難しいです。

喫煙者の肺では、タバコの黒いすすによって、リンパ流が黒い網目状の模様を形成していますね。また、肺のマクロファージ(白血球)の中に、黒いススが、顕微鏡で良く見えます。こうした黒い恐ろしげな網目模様をイメージするのも、禁煙する人に役だつかもしれません。
狭心症や、心筋梗塞は、心臓を栄養する大事な冠動脈がつまり、血流が途絶えます。すると、心筋は壊死となり、その後、線維性の物質に起き変わります。つまり、もとのような筋肉の塊ではなくなるので、その部分の動きは悪くなります。冠動脈造影をすれば、閉塞している病変部分を、決めることができます。

心臓の底は、尖った形をしており、ここを心尖と呼びます。精神的ショックや、重い外傷をうけて、強いストレスなどが体にかかると、血圧を上げる物質であるカテコールアミンが、急増します。それは、ストレスに耐えようとする生命現象ですが、この時、同時に、血流がとだえやすい心尖部分に負担をかけるようです。従って、ショックを強く感じる女性で、このタイプの心疾患の病気がおきやすいです。たこつぼ型の心筋症と呼ばれます。更年期に特徴的な心疾患であるようです。
 
日本では、震災などによりストレスにさらされるとおきやすい心臓の病気とされていますが、女性の病気として位置付けは、欧米に比べ、後退しています。女性の病気として紹介している論文や、解説文は少ないです。

以前から、女性は、れん縮型の心疾患(細い心臓の末梢の栄養血管が縮まることによりおきる、冠動脈造影をしても、病変が発見できない)が多いとされていました。虚血の程度は、一過性の事が多く、線維化の後遺症(心臓が固くなり動きが悪くなる)を残すことは少ないようです。このため、女性の原因のはっきりしない胸痛は、シンドロームXと呼ばれたりしていました。この中には、このタイプの心筋の病気が含まれています。こうした病変が起きるのは、女性のきゃしゃな心臓構造に起因するものではないでしょうか?

欧米では、ストレス型の心筋症(タコつぼ型)は、女性に特徴的な病気として位置づけています。ドイツからの報告で、欧米の7か所の専門機関で、診断されたストレス性の心疾患の実態についての報告です。JAMA. 2011 Jul 20;306(3):277-86.  PMID: 21771988

ストレス型の心筋症(タコつぼ型)は、女性の更年期に多く、全体の8割を占め、若い女性が1割、男性は1割と、報告されています。

ストレス型の心筋症患者256人の患者のうち、 全体の81%の女性207人は、閉経後の女性でした、8%(n = 20)は、50歳以下でした、そして、11%(n = 29)は男性でした。 ストレスの引き金は、182人の患者(71%)で特定されることができました。 心血管磁気共鳴映像法は、239人[93%]に行いましたが、4パターンの心室膨隆がありました。 先端(n = 197[82%])、双心室(n = 81[34%])、中央心室型(n = 40[17%]、そして、基部型(n = 2[1%]でした。 左室駆出率は減小していました。

すべての患者で、心血管磁気共鳴映像は、 左室機能不全の典型的パターンで、心筋浮腫、壊死/線維症を欠く心筋炎症がありました。 CMR画像を追跡したところ、左室の駆出は正常化しました。全患者で、線維化の後遺症はありませんでした。PMID: 21771988
 
たこつぼ心筋症ノネーミングは、世界で使われています。
 
2007年の、日本の吉田先生の報告では、(Eur Heart J. 2007 Nov;28(21):2598)が、心的あるいは、肉体的に強いストレスを感じた時に、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのカテコールアミンの急な上昇に伴い、心尖部の心筋が運動機能を失い、心筋が虚血状態となり、心筋が障害される病態を指摘しています。
 
急性期のカテコールアミンの上昇を証明し、心筋の崩壊を示す、トロポニン、Dダイマーの上昇を、認めています。さらに、心筋組織を細かく調べて、炎症所見があることも証明しました。つまり、交感神経系の興奮により、心臓の電気伝導系に破たんが生じたことを報告しています。
 
PETなどを用いて、心筋の虚血を証明していますが、冠動脈には、はっきりとして狭窄は認めていません。

分娩後の女性に、突然の心不全、肺浮腫(肺に水分がしみ出す)アクシデントがおこることがありますが、その原因にひとつとして、タコつぼ心筋症が、韓国から報告されています。韓国でも、タコつぼは、更年期女性の特徴的な病気との記述があります。Korean Circ J. 2011 Feb;41(2):101-4
シリーズで、百万人女性研究を、お届けしています。
 
Lancet. 2003 Aug 9;362(9382):419-27.
2003年、WHI発表の翌年に、ランセット誌に載った論文の紹介です。前回と同じく百万女性研究The Million Women Studyです。

50-64歳の英国在住の女性 1084110人おける、ホルモン補充療法と、乳がんの発症に関する論文です。
 
調査は、1996 年から2001年に行われ、結果は、2003年に発表されました。
 
この集団に属する女性では、約半分に、ホルモン補充療法が行われていました。そのうち、 9364 人に、乳がんが発症し、637人が、乳がんで命を失くしました。

2.6 年から 4.1年間の観察期間でした。
疫学的に数値補正後、現在、ホルモン補充療法を受けている女性は、受けていない女性と比べて、乳がん発症のリスクは、1.66 倍[95% CI 1.58-1.75], p<0.0001)、乳がんによる死亡は1.22倍 [1.00-1.48], p=0.05)となりました。
 
しかし、現在でなく、ホルモン補充療法が過去の出来事だった人では、リスクの上昇はありませんでした、乳がん発症は、1.01倍 [0.94-1.09]、乳がん死亡は、1.05倍 [0.82-1.34]。 しかし、エストロゲン単独治療群では、1.30倍 [1.21-1.40], p<0.0001)となりました。,エストロゲン・プロゲステロン剤では2.00倍 [1.88-2.12], p<0.0001),  合成エストロゲンのtiboloneでは1.45倍 [1.25-1.68], p<0.0001),でした。

製剤別の乳がんリスクは、経口(飲み薬)1.32倍 [1.21-1.45];、経皮(貼り薬)1.24倍 [1.11-1.39];、挿入型のエストロゲン単独製剤1.65 倍[1.26-2.16]となりました。ホルモン補充療法の使用が長いと、乳がん発症が増加しました。

10年間、ホルモン補充療法をすると、1000人当たり5人 (95%信頼区間I 3-7) 多く乳がんが発症し、 エストロゲン・プロゲステロンでは、19 人(95%信頼区間15-23) 多く、結局、50-64 歳の英国女性がホルモン補充療法をすると、10年間で、20000 多く乳がん発症し、エストロゲン・プロゲステロン製剤で15000 人を占めると計算されました、