狭心症や、心筋梗塞は、心臓を栄養する大事な冠動脈がつまり、血流が途絶えます。すると、心筋は壊死となり、その後、線維性の物質に起き変わります。つまり、もとのような筋肉の塊ではなくなるので、その部分の動きは悪くなります。冠動脈造影をすれば、閉塞している病変部分を、決めることができます。

心臓の底は、尖った形をしており、ここを心尖と呼びます。精神的ショックや、重い外傷をうけて、強いストレスなどが体にかかると、血圧を上げる物質であるカテコールアミンが、急増します。それは、ストレスに耐えようとする生命現象ですが、この時、同時に、血流がとだえやすい心尖部分に負担をかけるようです。従って、ショックを強く感じる女性で、このタイプの心疾患の病気がおきやすいです。たこつぼ型の心筋症と呼ばれます。更年期に特徴的な心疾患であるようです。
 
日本では、震災などによりストレスにさらされるとおきやすい心臓の病気とされていますが、女性の病気として位置付けは、欧米に比べ、後退しています。女性の病気として紹介している論文や、解説文は少ないです。

以前から、女性は、れん縮型の心疾患(細い心臓の末梢の栄養血管が縮まることによりおきる、冠動脈造影をしても、病変が発見できない)が多いとされていました。虚血の程度は、一過性の事が多く、線維化の後遺症(心臓が固くなり動きが悪くなる)を残すことは少ないようです。このため、女性の原因のはっきりしない胸痛は、シンドロームXと呼ばれたりしていました。この中には、このタイプの心筋の病気が含まれています。こうした病変が起きるのは、女性のきゃしゃな心臓構造に起因するものではないでしょうか?

欧米では、ストレス型の心筋症(タコつぼ型)は、女性に特徴的な病気として位置づけています。ドイツからの報告で、欧米の7か所の専門機関で、診断されたストレス性の心疾患の実態についての報告です。JAMA. 2011 Jul 20;306(3):277-86.  PMID: 21771988

ストレス型の心筋症(タコつぼ型)は、女性の更年期に多く、全体の8割を占め、若い女性が1割、男性は1割と、報告されています。

ストレス型の心筋症患者256人の患者のうち、 全体の81%の女性207人は、閉経後の女性でした、8%(n = 20)は、50歳以下でした、そして、11%(n = 29)は男性でした。 ストレスの引き金は、182人の患者(71%)で特定されることができました。 心血管磁気共鳴映像法は、239人[93%]に行いましたが、4パターンの心室膨隆がありました。 先端(n = 197[82%])、双心室(n = 81[34%])、中央心室型(n = 40[17%]、そして、基部型(n = 2[1%]でした。 左室駆出率は減小していました。

すべての患者で、心血管磁気共鳴映像は、 左室機能不全の典型的パターンで、心筋浮腫、壊死/線維症を欠く心筋炎症がありました。 CMR画像を追跡したところ、左室の駆出は正常化しました。全患者で、線維化の後遺症はありませんでした。PMID: 21771988
 
たこつぼ心筋症ノネーミングは、世界で使われています。
 
2007年の、日本の吉田先生の報告では、(Eur Heart J. 2007 Nov;28(21):2598)が、心的あるいは、肉体的に強いストレスを感じた時に、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのカテコールアミンの急な上昇に伴い、心尖部の心筋が運動機能を失い、心筋が虚血状態となり、心筋が障害される病態を指摘しています。
 
急性期のカテコールアミンの上昇を証明し、心筋の崩壊を示す、トロポニン、Dダイマーの上昇を、認めています。さらに、心筋組織を細かく調べて、炎症所見があることも証明しました。つまり、交感神経系の興奮により、心臓の電気伝導系に破たんが生じたことを報告しています。
 
PETなどを用いて、心筋の虚血を証明していますが、冠動脈には、はっきりとして狭窄は認めていません。

分娩後の女性に、突然の心不全、肺浮腫(肺に水分がしみ出す)アクシデントがおこることがありますが、その原因にひとつとして、タコつぼ心筋症が、韓国から報告されています。韓国でも、タコつぼは、更年期女性の特徴的な病気との記述があります。Korean Circ J. 2011 Feb;41(2):101-4