1970年代から1980年代前半まで活躍したイギリスのプログレッシブ・ロックのグループや個人(ソロアーティスト)の中から、私個人の独断、偏見、趣向により、以下のグループ、個人を紹介します。
ちなみに、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの始まりは、イングランドの裕福なミドル・クラス出身の恵まれた環境で育った子どもたちが、パブリック・スクールなどのエリート校へ進学した時に出会った音楽好きのクラスメイト同士親しくなって結成された、かなりマニアックな若者たちを中心メンバーとするいくつかのバンドが、1970年頃に創り出したムーブメントです。
そして、それらのグループが、彼らの恵まれた生い立ちから、貧乏を知らないがゆえに、商業的成功をほぼ無視して、各々が独自の趣味的な音楽を自由に追求していったことで、生み出された新しいロックのジャンルなのです。
その特色は、クラッシックとロックの融合、ジャズ・フュージョンとロックの融合、民族音楽とロックの融合、そして、当時先進的だったシンセサイザーなどエレクトリックな機器・楽器の使用、加えて、哲学的で内省的、あるいは、文明批評的・政治的な歌詞が多いことなどです。
この記事で後述・紹介するバンド、ソロアーティスト以外では、元祖プログレ・グループである〝王者〟キング・クリムゾンなども活躍しました。
ちなみにキング・クリムゾンのリーダーであるギタリストのロバート・フリップも、13歳からクラッシック・ギターを学ぶ傍ら、ボーンマス&プール・カレッジで政治学を学び、優秀な成績で卒業した経歴の持ち主です。非常に知的で教養の深い人で、ギターを持った大学教授という風貌の人物です。
また、この1970年という時期は、ベトナム戦争の真っ只中で、戦争反対の気運が高まり、学生運動や前衛的な芸術運動が激しかった時期でもあります。
こうした時代背景もあって、保守的な社会に反抗的な、知性と教養ある若者たちが、プログレッシブ・ロックの担い手であったということです。
そういうわけで、1970年代前半は、前衛的・先進的なバンドの活躍するプログレッシブ・ロックの興隆期だったのです。
〈ELP(エマーソン、レイク&パーマー/Emerson, Lake & Palmer)〉
シンセサイザーを初めてステージ上で楽器として使用した天才キーボード奏者であるキース・エマーソンを中心に、ボーカル・ギター・ベース担当のグレッグ・レイク、ドラムス担当のカール・パーマーの3人が、1970年に結成したプログレッシブ・ロックのスーパー・グループです。
代表作は、1971年にリリースされたライブ・アルバム「展覧会の絵」です。ロシアのクラッシック作曲家ムソルグスキーのピアノ組曲「展覧会の絵」を基にしたロック・Liveです。特に、日本では、異常に人気の高かったアルバムです。
その他、1970〜74年の5年間に4枚のオリジナル・スタジオ録音アルバムを制作して、それぞれ、かなりの売上をあげています。
1974年のアメリカ・ツアーを最後に、グループは活動休止状態に入ります。ですから、1970年のデビューから1974年までがグループの全盛期です。
バンドの活動は1977年に再開されますが、もはや時代遅れをオールド・ウエーブと批判され、活動はうまくいかず、1980年に正式に解散が宣言されました。その後、バンドは1992年に再結成され、1997年まで活動が続けられました。さらに、2010年にはロンドンで一夜限りの再結成演奏が行われています。
2016年には、キース・エマーソンとグレッグ・レイクが相次いで亡くなり、バンドは完全な終焉を迎えました。
〈ピンク・フロイド(Pink Floyd)〉
1965年に、ロンドンのウエストミンスターの建築学校の22歳の同級生同士で、ベースのロジャー・ウォーターズを中心に、キーボード奏者のリチャード・ライト、ドラムスのニック・メイスン3人で結成されました。
1967年にギターのシド・バレットが加入しますが、過度のLSD接種によって異常をきたしたバレットが1968年に脱退し、代わりにデヴィッド・ギルモアがギタリストとして加入することになります。
その後、1970年にアルバム「原子心母」が全英1位を獲得し、翌1971年のアルバム「おせっかい」も全英3位を記録して、ピンク・フロイドは、プログレッシブ・ロックを代表するグループとして認知されるようになります。
1974年にリリースされたアルバム「狂気(The Dark Side of The Moon)」は、全世界で5000万枚を売上、翌1975年にリリースされたアルバム「炎〜あなたにここにいてほしい(Wish You Were Here)」も全英・全米1位を獲得し、フロイドは世界的なスーパー・グループとなりました。
その後、1970年代後半には、ブリティッシュ・プログレッシブ・ロック自体の人気が低迷しますが、フロイドの人気は根強く、1979年にはアルバム「ザ・ウォール(The Wall)」が全米1位を記録し、全世界で3000万枚を売上ました。
ここまで、1970年のアルバム「原子心母」のリリースから、1979年のアルバム「ザ・ウォール」リリースまでが、ピンク・フロイドの活動の全盛期と言えます。
しかし、その後も、断続的にグループの活動は続けられ、その人気は2000年代になっても衰えませんでした。最終的に2015年にグループの活動の終結が宣言されるまで、紆余曲折はありながらもバンドは存続しました。
〈ジェネシス(Genesis)〉
1967年に、イングランド南東部のサリー州の主に裕福で優秀な子どもが入るエリート寄宿学校であるパブリックスクール「チャーターハウス・スクール」の同級生同士で、当時、17歳のピーター・ガブリエル(ボーカル)を中心に、トニー・バンクス(キーボード)、マイク・ラザフォード(ベース)らと共に結成されました。
1970年に、後にリーダー的存在となるフィル・コリンズがドラマーとして加入しました。
1975年に中心メンバーのピーター・ガブリエルが、あまりにも強烈な個性ゆえに、メンバーとの軋轢を生じ、プライベートでの結婚や妻の妊娠などもあって、グループを脱退しました。
これ以降、ボーカルはドラマーのフィル・コリンズが務め、1978年のアルバム「そして3人が残った」は、全英3位を記録しました。それ以降も、1990年代まで、グループはヒット・アルバムを制作し、旺盛な活動を続けます。
1984年にリリースされた代表作とも言うべきアルバム「ジェネシス」は、全英1位、全米9位を記録し、当時、フィル・コリンズは、世界のスーパー・スターへの最後の階段に足をかけていたところでした。
ここまでが、プログレッシブ・ロックとしてのジェネシスの存在が感じられる時期です。
この後、ジェネシスは急速にポップス化していきます。
バンド自体は、紆余曲折はありながら、断続的に活動は続き、2022年現在も活動が続けられています。
〈ピーター・ガブリエル(Peter Brian Gabriel)〉
ジェネシス脱退後、1977年にソロ・アーティストとして活動を再開し、地道にアルバム制作、ライブを続けていきます。
1980年に、名作アルバム「ピーター・ガブリエル Ⅲ(通称Melt)」を発表し、その思想的な内容の深さから、世界的に大きな反響を呼びました。特に、アルバムのラストを飾るバラード曲「ビコ」は、アパルトヘイト下の南アフリカで活躍し、刑務所で政府に殺された黒人意識運動の提唱者スティーブ・ビコの死について歌った曲で、反アパルトヘイト運動を象徴する曲として、1980年代後半には世界的に知られるようになりました。
一方で、ピーター・ガブリエル本人については、1985年5thアルバム「So」が、全英1位・全米2位と世界的に大ヒットし、世間にその名が知られるようになりましたが、私としては、あまり興味の持てないアルバムでした。80年代らしい洗練された綺麗な音だな、とは思いますが…。
〈イエス(Yes)〉
1968年に、ボーカルのジョン・アンダーソン(24歳)とベースのクリス・スクワイア(20歳)が出会い、意気投合して結成されました。
1971年の4thアルバム「こわれもの(全米4位・全英7位)」、翌1972年の5thアルバム「危機(全米3位・全英4位)」は、代表作とされます。
アルバム「こわれもの(Fragile )」からは、オープニング曲の「ラウンドアバウト(Roundabout )」が、シングル化され、全米13位を記録しました。この曲は、グループの代表曲とされています。
その後、バンドはメンバー・チェンジを繰り返しながら活動は断続的に続けられました。そして、1983年に、自身もイエスのファンを自認するプロデューサーのトレヴァー・ホーンの手腕で完成したアルバム「ロンリー・ハート(90125)」は、久々に大ヒットとなりました。加えて、このアルバムからシングル化された表題曲「ロンリー・ハート」は、イエスの楽曲として、唯一、ビルボード・シングル・チャートで1位を記録しました。
その後も、イエスの活動は、細々と続けられ、中心メンバーであるジョン・アンダーソン(2008年脱退)・クリス・スクワイア(2015年死去)がいなくなった今も、バンドの活動は存続しています。
以上、ここまで解説してきた4つのバンド、および、1人のソロアーティストの曲から計14曲を紹介します。選曲は、私の独断と偏見、独自の趣向によります。
〈ELP〉
①賢人(The Sage)
作詞作曲 グレッグ・レイク
◯アルバム「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition )1971年/Live/全英3位・全米10位・日本2位」初収録。
グレッグ・レイク作の名曲。グレッグ・レイクのクラシカルなアコースティック・ギターと透明感のある歌唱が素晴らしい。そして、グレッグ・レイクの書く詞は、哲学的・文学的で、とても意味深く美しいです。
「私は、振り払うことのできない旅の埃を身に抱えて、旅を続けている。その埃は、日々、息をするたびに吸い込んでいるために、私の内に深く棲んでいる。あなたと私は、昨日の出した答なのだ。過去の地球は、新しく生まれ変わるのだ。時の河に侵食されて、今の私たちの有する姿へと造形される。私の命の息吹と躰とを、共に分かち合おう。そして、私たちの生命の奔流を、私たちの時代の流れる時間に委ね、命を時に重ね合わせよう。輝かしい無限の時の流れの中で、私たちの個人的で些細な事情は、大きな運命の流れに呑み込まれ、消えていくのだ。」
I carry the dust of a journey
That cannot be shaken away
It lives deep within me
For I breathe it every day
You and I are yesterdays answers
The earth of the past come to flesh
Eroded by times rivers
To the shapes we now possess.
Come share of my breath and my substance
And mingle our streams and our times
In bright infinite moments
Our reasons are lost in our rhymes.
②キエフの大門(The Great Gates Of Kiev)
作詞作曲 ムソルグスキー/グレッグ・レイク
◯アルバム「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition )1971年/Live/全英3位・全米10位・日本2位」初収録。
コンセプトLive「展覧会の絵」のエンディング曲。グレッグ・レイクのボーカル、そして、トリオの演奏が楽しめます。
「展覧会の絵」は、もともと、ロシアの作曲家ムソルグスキーが、親友で画家のハルトマンの死(享年31歳)にショックを受け、その遺作展からインスピレーションを受けて、創り上げた組曲です。
そして、グレッグ・レイクの詞もまた、生と死をテーマとしたものです。
「愛を燃やす薪の中から出てくるがいい。命の火を燃やせ。命の炎を燃やせ。愛を燃やす薪から出てくるがいい。その灼熱の中で、誰もが生き続けることを渇望している。そして、その痛みの中で、無数の新しい生命という報酬がもたらされる。湧き出す塩辛い水がかき混ぜられ、そして、化石の太陽の光が漏れ出す暗く隠された裂け目から、彼らは、その門から送られてきたのだ。運命の潮流に乗って。運命の潮流に乗って。彼らは、その門からやって来た。その灼熱の中で、誰もが、生き続けることを渇望する。そう、生き続けることを。私の命に終わりはない。私の死に始まりはない。死は生そのものなのだ。」
Come forth from love's pyre
Born in life's fire
Born in life's fire
Come forth from love's pyre
In the burning all are yearning
For life to be
And the pain there will be gain
Lots of new life!
Stirring in salty streams
And dark hidden seams
Where the fossil sun greams
They were sent from the gates
Ride the tides of fate
Ride the tides of fate
They were sent from the gates
In the burning all are yearning
For life to be
Oh, To be
To be!
There's no end to my life
No beginnning to my death
Death is life
③ナットロッカー(Nut Rocker)
作詞作曲 チャイコフスキー/キム・フォーリー
◯アルバム「展覧会の絵(Pictures at an Exhibition )1971年/Live/全英3位・全米10位・日本2位」初収録。
Live「展覧会の絵」のアンコール曲。インストルメンタル曲です。
ロシアの作曲家チャイコフスキー作曲のバレエ組曲「くるみ割り人形」の第二曲「行進曲」を、アメリカ人プロデューサーのキム・フォーリーがロック調にアレンジした作品のカバー。
三原順作の漫画「はみだしっ子」の主人公の1人である平素クールなグレアムが、パブのピアノで、キース・エマーソン風のナットロッカーを楽しそうに弾いているというので、それを、実際、どんな風に弾くのか聴いてみたいと言った相手(アンジー)に、「ELPのレコードを買えよ!」とグレアムが照れて言うシーンがあります。
〈ピンク・フロイド〉
④吹けよ風、呼べよ嵐(One of These Days)
作詞作曲 ニック・メイスン/デヴィッド・ギルモア/ロジャー・ウォーターズ/リチャード・ライト
◯アルバム「おせっかい(Meddle)1971年/6th/全英3位・全米70位」初収録。
全日本プロレスで1970年代大いに活躍したNo1ヒールのアブドーラ・ザ・ブッチャーの入場テーマ曲として、当時、日本ではよく知られていた曲です。そのため、日本のみで、シングル化された経緯もあり、多くの日本人にとっては、ピンク・フロイドの代名詞的な曲として認知されています。
ほぼインストルメンタルの曲ですが、特に、曲の冒頭の部分が、あまりにも有名です。
ロジャー・ウォーターズのベースの響きが原初の音のように、心の深い部分を刺激して、落ち着かなくさせられます。
⑤あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)
作詞作曲 デヴィッド・ギルモア/ロジャー・ウォーターズ
◯アルバム「炎〜あなたがここにいてほしい(Wish You Were Here)1975年/9th/全米1位・全英1位」初収録。
アルバムの表題曲で、カントリー調のバラード曲です。詞の内容は、薬物過剰摂取により精神に異常をきたしてバンドを脱退した元メンバーのシド・バレットへのメッセージとも言われています。一方で、ロジャー・ウォーターズは、より普遍的な意味が込められていると言っています。
ちなみに、このアルバムは、デヴィッド・ギルモアとロジャー・ウォーターズが、最も気に入っているアルバムだと言うことです。
「それで、君は、天国と地獄の違いを、青空と苦痛の違いを、理解できるのかい? 君は、緑の草原と冷たい鋼鉄のレールの違いを、微笑みと顔を覆い隠すベールとの違いを、ちゃんと認識できているかい? 見分けられるのかい? そして、君は、君のかつてのヒーローたちを亡霊たちと、燃え尽きた熱い灰を緑の木々と、熱風を涼しい微風と、気休めにもならない慰めを変化と、交換することに応じたというわけだね? そうして、戦場で端役の道を歩む人生を、檻の中で主役を務める人生と交換したんだね。ああ、君が、ここにいてくれたらなあ。僕らは、金魚鉢の中をぐるぐる泳いでいる、二つの失われた魂さ。来る年も来る年も、お馴染みの旧態依然とした世界を駆け回り、そうして、僕らは何を見つけた? 昔から変わらない恐怖があるだけだ。君がここにいてくれたら…。」
So, so you think you can tell Heaven from Hell, blue skies from pain.
Can you tell a green field from a cold steel rail?
A smile from a veil?
Do you think you can tell?
And did they get you to trade your heroes for ghosts?
Hot ashes for trees?
Hot air for a cool breeze?
Cold comfort for change?
And did you exchange a walk on part in the war for a lead role in a cage?
How I wish, how I wish you were here.
We're just two lost souls swimming in a fish bowl,
Year after year, running over the same old ground.
And what have we found?
The same old fears.
Wish you were here.
⑥アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(Another Brick in The Wall)
作詞作曲 ロジャー・ウォーターズ
◯アルバム「ザ・ウォール(The Wall)1979年/11th/全米1位・全英3位」初収録。
◯シングル(1979年/全英1位・全米1位)
ピンク・フロイドの楽曲の中で唯一のシングル・ヒット曲です。
とても衝撃的で扇状的な歌詞です。
尾崎豊の「卒業」は、学校という組織の支配構造を歌っていますが、この曲では、社会そのものの支配構造を歌っています。
「僕らに教育は要らない。僕らに洗脳(思考支配)は要らない。教室での教師たちによる生徒への辛辣な皮肉や嫌味やあてこすりも要らない。先生たち、子どもたちを、放っておいてくれ! つまるところ、それは、壁に塗り込められた一つのブロックに過ぎない。結局、あなたも、壁に積まれたブロックの一つに過ぎないのさ。僕らに教育は要らない。思考統制も要らない。教室で浴びせられる辛辣な皮肉もあてこすりも要らない。先生、子どもたちを放っておいてくれ! つまるところ、そいつは、壁に塗り込められるブロックに過ぎない。結局、あなたも壁に積まれるブロックに過ぎないのさ。」
We don't need no education
We dont need no thought control
No dark sarcasm in the classroom
Teachers leave them kids alone
Hey! Teachers! Leave them kids alone!
All in all it's just another brick in the wall.
All in all you're just another brick in the wall.
We don't need no education
We dont need no thought control
No dark sarcasm in the classroom
Teachers leave them kids alone
Hey! Teachers! Leave them kids alone!
All in all it's just another brick in the wall.
All in all you're just another brick in the wall.
"Wrong, Do it again!"
"If you don't eat yer meat,
you can't have any pudding.
How can you have any pudding
if you don't eat yer meat?"
"You! Yes, you behind the bikesheds,
stand still laddy!"
〈ジェネシス〉
⑦ママ(Mama)
作詞作曲 フィル・コリンズ/マイク・ラザフォード/トニー・バンクス
◯アルバム「ジェネシス(Genesis)1983年/12th/全英1位・全米9位」初収録。
◯シングル(1983年/全英4位・全米73位)
ジェネシスのシングルとしては、全英最高位の4位を記録した、記念すべき曲です。
堕胎されようとしている胎児から母親への訴えが歌詞になっています。キーボードとシンセサイザーのみの伴奏で始まる前半から、徐々にドラムとギターがより激しくなっていく後半までのアレンジが秀逸です。
「僕にはママが見えない。でも、もう我慢できないんだ。ママに触りたい、ママを感じたい。僕は離れているなんてできないよ。街の熱気と奔流の中、それが僕を走らせ、僕は止まれない。だから。僕を助けるって言ってよ、ママ。だって、とても苦しいんだ! 今は、僕はママと一緒にいられないけど、でも、いつもママがそこにいるのは知っているんだ。ママは耳を澄まし、僕に触る。僕は、ママの内側にいて、ママが気遣ってくれているんだ。だから、僕のそばに、ここに降りてきて。ママ、どこにも行かないで。僕はママを傷つけたくない。でも、とても苦しいんだ! ママ、僕がここにいるのがわからないの? ママ、ママお願いだよ。僕の心臓の鼓動を感じないの? 聴いてよ、ママ! 僕の最後のチャンスを奪わないで。僕の心臓の音が聴こえないの? 暑い、暑すぎるよ、ママ。もう我慢できないんだ。僕の眼が燃えているよ、ママ。身体が震えているんだ。痛いんだ、何とかしてよ。ママを傷つけたくないのに、でも、どうにもならないよ、ママ。」
I can't see you mama
But I can hardly wait
Oh, to touch and to feel you mama
Oh, I just can't keep away
In the heat and the steam of the city
Oh, it's got me running and I just can't brake
So say you'll help me mama
'Cause it's getting so hard
Now I can't keep you mama
But I know you're always there
You listen, you teach me mama
And I know inside you care
So get down, down here beside me
Oh, you ain't going nowhere
No I won't hurt you mama
But it's getting so hard
Can't you see me here mama
Mama mama mama please
Can't you feel my heart
Can't you feel my heart
Can't you feel my heart oh
Now listen to me mama
Mama mama you're taking away my last chance
Don't take it away
Can't you feel my heart?
It's hot, too hot for me mama
But I can hardly wait
My eyes they're burning mama
And I can feel my body shake
Don't stop, don't stop me mama
Oh make the pain, make it go away - hey
No I won't hurt you mama
But it's getting so hard - oh
⑧ザッツ・オール(That's All)
作詞作曲 フィル・コリンズ/マイク・ラザフォード/トニー・バンクス
◯アルバム「ジェネシス(Genesis)1983年/12th/全英1位・全米9位」初収録。
◯シングル(1984年/全英16位・全米6位)
ジェネシスのシングルとしては初めて全米ビルボード・ベスト10圏内に入った曲です。この曲も、アレンジのセンスが抜群に良いです。
歌詞の内容は、情熱的なラブソングですね。
「自分で考えている通りに、うまくいっていたんだ。その判断が正しいと思い込んでいた。ところが、自分が間違っていることに気づいた。いつもおんなじさ。恥ずかしい話だが、それだけのことさ。俺が昼と言えば、お前は夜と言う。それが白だと俺が知っているものも、黒だと言うがいいさ。いつもおんなじことさ。恥ずかしい話だが、それだけのことだ。俺は、別れようと思えば、いつでも別れられたが、俺の心がそうしろと急かせても、俺はそうしなかった。今じゃ、頭のてっぺんから爪先まで、俺は何も感じなくなった。だが、お前が俺を見ている時でさえ、俺がお前を見ていると、いつも、思われてしまうのはなぜだ? いつも同じさ。恥ずかしい話だが、それだけのことだ。俺をその気にさせたり、うんざりさせたり、俺がまるで欲望の塊のように感じさせる。お前といっしょに暮らすのは、年中、お前に振り回され続けるってことだ。浮気をして、一晩中帰らない。つまみ食いする代わりに、いっそのこと、全部食べてしまえよ。お前と暮らすのは、年がら年中、そういうことに振り回されるってことさ。出て行くことはできるが、そうする方が簡単だと知っちゃあいるが、俺は、そうしない。頭の先から爪先まで、もう何も感じないのさ。だが、お前が俺を見てるのに、なぜ、いつも、俺がお前を見ていると思われるのか。いつも同じさ。恥ずかしい話だが、それだけのことさ。本当のところ、俺は、自分でそうなろうと望んだわけじゃないが、お前を愛しているのさ。隠そうとしたって無駄なんだ。お前以外には、誰も、俺にこんな風に感じさせる女はいない。死ぬまで一緒だって言ってくれよ。」
Just as I thought it was going alright
I find out I'm wrong, when I thought it was right
It's always the same, it's just a shame, that's all
I could say day and you'd say night
Tell me it's black when I know that it's white
Always the same, it's just the shame and that's all
I could leave but I won't go though my heart might tell me so
I can't feel a thing from my head down to my toes
But why does it always seem to be
Me looking at you when you looking at me
It's always the same, it's just a shame, that's all
Turning me on, turning me off
Making me feel like I want too much
Living with you is just a putting me through it all of the time
Running around, staying out all night
Taking it all instead of taking one bite
Living with you is just a putting me through it all of the time
But I could leave but I won't go well it'd be easier I know
I can't feel a thing from my head down to my toes
But why does it always seem to be
Me looking at you, you looking at me
It's always the same, it's just a shame, that's all
Truth is I love you, more than I wanted to
There's no point in trying to pretend
There's been no-one who makes me feel like you do
Say we'll be together till the end
⑨ホーム・バイ・ザ・シー(Home By The Sea)
作詞作曲 フィル・コリンズ/マイク・ラザフォード/トニー・バンクス
◯アルバム「ジェネシス(Genesis)1983年/12th/全英1位・全米9位」初収録。
シングル化されませんでしたが、このアルバムで一番好きな曲です。メロディーラインが印象的で、アレンジがカッコよくて、記憶に残る曲です。
ただ、歌詞はかなりホラーな内容で、まるで「ホテル・カリフォルニア」を連想させるような詞なのです。
「死角に忍び寄り、壁を照らし、夜の闇に紛れて忍び込む。窓からよじのぼり、部屋に踏み込み、左右を確認する。ガラスの破片を拾い集め、片付けて、何かがおかしいと感じる。誰か助けて!私をここから出して! その時、突然、暗闇から声が聴こえる。〝海辺の家へようこそ〟そして、どこからともなく、開いたドアから、上から下から押し合いながら、人のかたちをした、実体のない影が、姿を現した。転がったり、転んだり、滑ったりしながら、彼らはやってきた。進む方向もなく漂い、目に絶望を漂わせて。それから、いっせいに、彼らはため息をついたり、うめき声をあげたりし始めた。誰か助けて!私たちをここから出して!ここで、あまりにも長く、誰も来ないまま、生きてきた。自由になる日を夢見ながら。そう、ずっと昔、私たちが初めて〝海辺の家へようこそ〟という声を聴く前には…。座って、座って。あなたに語ることで、私たちは、自分の人生を思い出すことができるから。悲しみのイメージ、喜びの映像、それらは、人生を作り上げていくもの。終わりのない夏の日、朝の光を待ち続ける長い憂鬱な夜。さほど重要ではない情景、フレームに縁どられた写真。それらは、人生を創り上げていくもの。座って、座って。あなたはもう逃げられないのだから。いいえ、私たちといっしょに、残りの一生を、あなたは、ここで過ごすのよ。だから、座りなさい。あなたに語ることで、私たちは自分の人生を思い出すことができるのだから。私たちに思い出させて。」
Creeping up the blind side, shinning up the wall
Stealing through the dark of night
Climbing through a window, stepping to the floor
Checking to the left and the right
Picking up the pieces, putting them away
Something doesn't feel quite right
Help me someone, let me out of here
Then out of the dark was suddenly heard
"Welcome to the Home by the Sea"
Coming out the woodwork, through the open door
Pushing from above and below
Shadows with no substance, in the shape of men
Round and down and sideways they go
Adrift without direction, eyes that hold despair
Then as one they sigh and they moan
Help us someone, let us out of here
Living here so long undisturbed
Dreaming of the time we were free
So many years ago
Before the time when we first heard
"Welcome to the Home by the Sea"
Sit down... Sit down
As we relive our lives in what we tell you
Images of sorrow, pictures of delight
Things that go to make up a life
Endless days of summer, longer nights of gloom
Waiting for the morning light
Scenes of unimportance, photos in a frame
Things that go to make up a life
Sit down... Sit down
Cause you won't get away
No with us you will stay for the rest of your days. So sit down
As we relive our lives in what we tell you
Let us relive our lives in what we tell you
〈ピーター・ガブリエル〉
⑩ノー・セルフ・コントロール(No Self Control )
作詞作曲 ピーター・ガブリエル
◯アルバム「ピーター・ガブリエル Ⅲ 1980年/3rd/全英1位・全米22位」初収録。
◯シングル(1980年/5th/全英33位)
個人的には、このアルバムで、もっとも印象的な曲です。
「何か食べないといけない。いつもとてもひもじいんだ。この飢えをどうすれば止められるのか、わからない。眠らないといけない。夜にはひどくナーバスになるんだ。この不安をどうしたら止められるのか、わからない。電話しないといけない。どこにでも電話する。誰と話すのでもいいんだ。僕は、今回は、あまりにも遠くまで来てしまった。これまで自分がしてしまったことを考えたくない。その椅子の後ろにはいつも、隠された沈黙が控えている。海岸が透明な時に、彼らは現れる。彼らは動くものは何でも食べる。膝がガクガク震えだす。灯りが点灯され、星々は、ミツバチの群れのように落ちてくる。自己制御ができない。」
Got to get some food
I'm so hungry all the time
I don't know how to stop. I don't know how to stop
Got to get some sleep
I'm so nervous in the night
I don't know how to stop. No, I don't know how to stop
I don't know how to stop. I don't know how to stop
Got to pick up the phone
I will call any number
I will talk to anyone
I know I'm gone too far
Much too far I gone this time
And I don't want to think what I've done
I don't know how to stop. No, I don't know how to stop
There are always hidden silences waiting behind the chair
They come out when the coast is clear
They eat anything that moves
I go shaky at the knees
Lights go out, stars come down like a swarm of bees
No self-control
⑪アイ・ドント・リメンバー(I Don't Remember )※旧邦題「記憶喪失」
作詞作曲 ピーター・ガブリエル
◯アルバム「ピーター・ガブリエル Ⅲ 1980年/3rd/全英1位・全米22位」初収録。
◯シングル(1980年/8th)
◯シングル(1983年/11th/Live/全英62位)
フィリップ・K・ディックのSF小説、例えば長編小説「『流れよ、我が涙』と警官は言った」の世界を彷彿とさせる詞の内容です。
「私には、自分の身元を証明する手段がなかった。自分が何者か、示すための身分証明書がない。だから、君は、私を見つけたその場所に、私を連れて行った方がいい。起こってしまったことは仕方がない。胃袋は空っぽ、頭も空っぽだ。心は空っぽで、ベッドも空っぽなのさ。私には思い出せない。何も覚えていない。記憶を呼び覚ますことができないんだ。一切の記憶がない。」
I got no means to show identification
I got no papers show you what I am
You'll have to take me just the way that you find me
What's gone is gone and I do not give a damn
Empty stomach, empty head
I got empty heart and empty bed
I don't remember
I don't remember
I don't remember, I don't recall
I got no memory of anything at all
I don't remember, I don't recall
I got no memory of anything
-Anything at all
⑫ゲームズ・ウィズアウト・フロンティアーズ(Games Without Frontiers )
作詞作曲 ピーター・ガブリエル
◯アルバム「ピーター・ガブリエル Ⅲ 1980年/3rd/全英1位・全米22位」初収録。
◯シングル(1980年/4th/全英4位・全米48位)
これも、歌詞が非常に意味深長で、サビの部分が忘れがたく、脳裏に刻まれる曲です。
「ハンスはロッテと対戦して、ロッテはジェーンと対戦する。ジェーンはウィリーと対戦して、ウィリーはまた喜ぶ。スキはレオと対戦して、サッチャはブリットと対戦する。アドルフ(ヒトラー)が篝火を積み上げると、エンリコ(フェル二)が、それに火をつける。ホイッスルが鳴ったら、僕らは海岸の砂丘に隠れる。ホイッスルが鳴ったら、僕らはジャングルでヒヒにキスするんだ。〝It's a knockout(欧州の〝風雲たけし城〟っぽいTVバラエティ番組) ”さ。〝Games without frontiers (フランス版番組名)”では、涙を流さない戦争が繰り広げられる。もしも、コスチュームで人を殺せるなら、彼らはきっとそうするさ。国境なきゲームは、涙の流されない戦争なのだから。」
Hans plays with Lotte, Lotte plays with Jane
Jane plays with Willi, Willi is happy again
Suki plays with Leo, Sacha plays with Britt
Adolf builds a bonfire, Enrico plays with it
Whistling tunes, we hide in the dunes by the seaside
Whistling tunes, we're kissing baboons in the jungle
It's a knockout
If looks could kill, they probably will
In games without frontiers
War without tears
If looks could kill, they probably will
In games without frontiers
War without tears
Games without frontiers
War without tears
⑬ビコ(Biko)
作詞作曲 ピーター・ガブリエル
◯アルバム「ピーター・ガブリエル Ⅲ 1980年/3rd/全英1位・全米22位」初収録。
◯シングル(1980年/7th/全英38位)
◯シングル(1987年/20th/Live/全英49位)
ピーター・ガブリエルの代表曲。アフリカン・リズムのバラード。
歌詞は、本当に力強い。まるで、神通力が宿っているようです。Yihla Mojaは、南アフリカの黒人の言語で「魂よ、来たれ」「魂よ、我に来たれ」「魂を引き継ぐ」という意味で、日本風に言えば、吉田松陰の辞世の歌にある「留めおかまし、大和魂」のようなものです。
「1977年9月、ポートエリザベス、天気は晴れ。それは、いつも通りの仕事だった。警察の619号拘置室。おお、ビコ、なぜなら、ビコだから。魂よ、来たれ! 魂よ、来たれ! その男は死んだ。夜、寝ようとすると、僕は、真っ赤に染まった夢ばかり見る。外の世界には、黒と白しかない。そして、死んだのは片方の色だけだ。おお、ビコ、なぜなら、ビコだから。魂よ、来たれ! 魂よ、来たれ! その男は死んだ。君は、ろうそくを吹き消すことはできる。だが、ここで生まれた一つの小さな熾火すら、吹き消すことはできない。ひとたび、炎となって燃え始めたなら、風が、その炎を高く舞い上がらせるだろう。おお、ビコ、なぜなら、ビコだから。魂よ、来たれ! 魂よ、来たれ! 男は死んだのだ。そして、世界の眼は、今、見ている。今も、見ているのだ。」
September '77
Port Elizabeth weather fine
It was business as usual
In police room 619
Oh Biko, Biko, because Biko
Yihla Moja, Yihla Moja
The man is dead
When I try to sleep at night
I can only dream in red
The outside world is black and white
With only one colour dead
Oh Biko, Biko, because Biko
Yihla Moja, Yihla Moja
The man is dead
You can blow out a candle
But you can't blow out a fire
Once the flames begin to catch
The wind will blow it higher
Oh Biko, Biko, because Biko
Yihla Moja, Yihla Moja
The man is dead
And the eyes of the world are watching now, watching now
〈イエス〉
⑭ロンリー・ハート(Owner of A Lonely Heart )
作詞作曲 トレヴァー・ラヴィン/ジョン・アンダーソン/クリス・スクワイア/トレヴァー・ホーン
◯アルバム「ロンリー・ハート(90125)1983年/11th/全米5位・全英16位」初収録。
◯シングル(1983年/全米1位)
イエス唯一の全米No1ヒット曲です。このアルバム完成のために再結成した新生イエスの放った最大のヒット曲であると同時に、1980年代を代表する曲の一つでもあります。1980年代らしい、アレンジに隙のない、ある意味、パーフェクトな楽曲です。
このアルバム全体がそうですが、プロデューサーのトレヴァー・ホーンの色合いが強い楽曲(アレンジ)になっています。
私自身、イエスの楽曲の中では、この曲が一番好きです。
歌詞では、複数の自分が対立し、葛藤する姿が描かれています。
「自分から動くんだ。君は未来について考えることなく、いつも、自分の価値観の枠の中で生きている。自分の能力を示せ。行動が君を造形するのだ。勝つか負けるか、一か八かやってみろ。自分を見つめるんだ。君が登るステップが、君を高めるのだ。君には君のやり方があるはずだ。それが唯一の道なんだ。君自身を揺さぶれ。君の行うあらゆる行動が、君を形成する。こうして物語は進行する。」
「孤独な心の持ち主は、傷ついた心の持ち主よりマシだよ。言いなさいよ、思い切ってやってみる気なんてないって。これまで、たくさん傷ついてきたから。見なさい、ワシが大空を飛んでいくのを。その飛ぶ姿が、どれほど気高く孤高であるか。」
「不安を振り払って、無心でやってみるのよ。いいえ、お願いしているわけじゃない。孤独でいるべき理由なんて、本当はどこにもないのだから。人と交わりたいという、正直な、ありのままの自分自身でいることよ。あなたの自由意志に、チャンスをあげて。あなたは、成功を求めるべきなの、孤独な心の持ち主さん。」
Move yourself
You always live your life
Never thinking of the future
Prove yourself
You are the move you make
Take your chances win or loser
See yourself
You are the steps you take
You and you, and that's the only way
Shake, shake yourself
You're every move you make
So the story goes
Owner of a lonely heart
Much better than a owner of a broken heart
Owner of a lonely heart
Say - you don't want to chance it
You've been hurt so before
Watch it now
The eagle in the sky
How he dancin' one and only
You, lose yourself
No not for pity's sake
There's no real reason to be lonely
Be yourself
Give your free will a chance
You've got to want to succeed
Owner of a lonely heart