北朝鮮という国家は、いずれ滅びるのではないか。しかも、その時は、ある日、突然にやってくるかもしれない。それこそ、急転直下の勢いで、大変動が起こり、跡形もなく滅び去る。例えれば、地獄の釜が開くがごとく。そう感じるのだ。
では、私がなぜそう考えるのか、以下に述べる。

1994〜1998年頃、北朝鮮は深刻な飢餓に苦しんだ。1995年には、配給特権を持つ幹部を除いて、庶民への食糧の配給がほぼ完全に途絶え、建国以来の配給制度はほぼ崩壊した。
それによって、1998年までの4年間で、推定100〜300万人の餓死者が出たと言われる。この数は、当時の北朝鮮の総人口2400万人の5〜12%に及ぶ。
この時期、北朝鮮国内では、餓死者及び殺害した人の死体の肉を食べる人肉事件が頻発した。それでも、体制が崩壊しないのが、独裁国家北朝鮮のすごいところである。
北朝鮮の人々は、この当時の飢餓を「愚か者の粛清」と呼ぶ。他人を気遣い同情心の深い〝愚かな弱者〟は皆死に絶え、後に残ったのは、他人を決して信じず、自分だけを信じて、どんな手段を使っても利己的に生き残る強い者だけだ、と言うのだ。
まさに、〝万人の万人に対する闘争状態〟が、地上に現出しているバトルロワイヤル国家である。
そのような国に対して、国際社会が「体制保障を約す取引を行う」のが正しいとは、とても思えない。恐怖の独裁国家の体制維持に力を貸すことになるからだ。そうした間違った決断のツケは、将来、必ず我々が払わされることになるだろう。

さて、その後も、2010年代に至るまで、北朝鮮では、飢餓が原因で起こる人肉喰い事件が、たびたび報告されている。
飢餓の最大の原因は、軍及び政府による農村地帯での食糧の強奪に近い搾取である。庶民への配給がないのだから、少しでも権力のある者は、自分が生き残るため、弱者から勝手に食糧を奪うのだ。「弱い者がさらに弱い者を餌食にする」という構造だ。
「資本主義化が進んで貧富の格差が増大したことが飢餓の原因だ」とか、そういう問題ではまったくない。人間性の喪失した社会に、健全な資本主義が成り立つわけがないのだ。
北朝鮮で起こっているのは、むしろ「人間性を喪失した剥き出しの権力と凶暴な支配の連鎖によって生じた弱者の犠牲」という問題である。例えてみれば、ちょうど、ゴールディングの「蝿の王」の悪魔的世界に近い。
具体的には、北朝鮮の最大の社会問題は、食糧を断つことによって、人民を慢性的な飢餓状態におき、意図的に自国民の人間性を徹底的に破壊して、餌にだけ反応する動物に作り変えるという、絶対的支配の悪魔的な手法によって生じている。
カンボジアでポルポトが、同じ手法を用いて数年間で行った自民族破壊を、北朝鮮では金王朝が、20数年かけて、緩慢な形でじっくりと行なっているのだ。
多くの脱北者が、「北朝鮮に援助をしてはならない」と、国際社会に訴え続けているのは、その地獄を身を以て知っているからだろう。「『地上の地獄』を生み出した金王朝の体制維持に力を貸すことは間違っている」と、彼らは主張し続けている。
しかも、これまで、日本からは、朝鮮総連、統一教会、パチンコ業界などを通して、多くの資金が北朝鮮に流れてきた。結果的に、日本は、この地獄の維持に力を貸し続けてきたのである。

さて、現在の飢餓状況だが、上記の軍や政府役人による転用、横流し分も加えて、食糧の徴発量が、あまりに多過ぎるので、干ばつのたびに、農村地帯では、食糧を食べ尽くした「絶糧世帯」が、春から秋にかけて、餓死の危機に直面する。北朝鮮の農民は、現在に至るも、江戸時代の水呑百姓以下の動物のような生活を強いられているのである。
その過酷な状況は、今年(2018)も変わらない。それどころか、「今年は、未曾有の熱波による猛暑と日照りのダメージと、その後の大雨による大洪水で、大飢饉の兆しがある」とさえ言われる。国連の世界食糧計画は、今年9月、「北朝鮮では人口の40%が慢性的な栄養失調の状態にある」と発表した。
しかも、このような飢餓状況を、金王朝は、人民支配の手法として、意図的に利用してきたフシがある。特に、政治犯収容所では、飢餓が再教育の手段として実に有効に機能している。体制に反発したり抵抗する者は、家族ごと飢えさせることによって、人格を完膚なきまでに破壊してしまうのである。
政治犯だけでなく、密輸や越境や韓国ドラマを見た人などを収容する一般の教化所でも、一年で収容者の半数は、栄養失調と衛生不良からバタバタと死んでいく。
だから、「北朝鮮では、金正恩時代になって、非常に豊かになり、飢餓の恐れがなくなった」という北朝鮮のプロパガンダは、もちろん真っ赤な嘘である。金正恩の宣伝工作の片棒を担ぐような「明るく豊かな北朝鮮」を宣伝する報道もあるが、それは都市部(平壌とその近郊)のほんの一面に過ぎない。
金正恩時代になって、毎年のように脱北者の数が減っている(*)が、それは飢餓が起こっていないためではない。国境警備が強化され、脱北者を発見次第、容赦なく殺すようになっているためだ。
また、中国で捕まって強制送還された脱北者は、公開処刑されたり、教化所に送られて拷問を受けたり餓死したりしている。

しかも、海外からの食糧援助物資は、まず軍隊や政府機関に入り、残りも転用、横流しされ、一部の政府関係者が私腹を肥やす役に立つだけで、農村の貧困地帯には、まったく行き渡らない。都市部では、食糧が溢れている一方で、農村では、ほんのおこぼれが、微々たる量、入るだけである。
それでも、経済制裁の最中、国際援助団体による人道支援の食糧供給は絶えることなく続けられている。それによって、かろうじて、餓死が防がれているのだ。しかし、最近の異常気象のせいで、大洪水(2011)や干ばつ(2014・2015・2017・2018)が起こると、翌年には収入のない貧困層の餓死者が各地で出るのである。
この状況は、1990年代半ばから20年以上変わらない。まるで、自国民を人質として虐待しながら、世界中から大金を脅し取っているようなものである。
私としては、「海外からの食糧援助がなければ、国民を飢餓地獄から救えない物乞い国家が、核兵器を持ってどうするんだ?」と、思わず毒吐きたくなる。本来なら、飢餓に苦しむ国民を救うはずの国際援助資金で、ICBM(大陸間弾道ミサイル)が開発されているのである。そして、このICBMが、さらなるユスリ・タカリの道具となっているのだ。
こんな極悪極まる「ならず者国家」に、日本は一銭たりとも、経済協力金など払ってはならない。

歴史上、このような非人間的な悪魔的支配が長く続いたためしはない。惨たらしく虐げられ、虫けらのように死んでいった者たちの怨念を、なめてはならない。早晩、北朝鮮(金王朝)は必ず滅びる。そう、私は思う。



*韓国にたどり着いた年間脱北者数
2009年→2914人(脱北者数ピーク/金正恩が後継者に指名される/無理な経済政策で食糧難悪化)
2010年→2402人(金正恩が後継者としての地位を確立する)
2011年→2706人(金正日が死去/金正恩が「最高指導者」「将軍」となる/大雨と大規模な洪水/軍による穀物の収奪)
2012年→1502人(各地で飢餓地獄/北朝鮮社会の市場経済化を容認/人肉の密売流通)
2013年→1514人(政府および軍上層部の粛清が続く/叔父の張成沢処刑)
2014年→1397人(政府および軍上層部の粛清がさらに続く/10年に一度の干ばつ)
2015年→1276人(引き続き、処刑・粛清が続き、恐怖政治が終わらない/文鮮明の三回忌に弔電/100年に一度の干ばつ)
2016年→1418人(引き続き、処刑・粛清が続き、恐怖政治が終わらない/建国以来最悪の洪水)
2017年→1127人(異母兄の金正男をマレーシアで暗殺/2001年以来、最悪の干ばつ)
2018年→(未曾有の熱波と、その後の大規模な洪水によって、記録的な大飢饉の兆し)

ちなみに沖縄では、2011年12月の金正恩の最高指導者就任以来、翌2012年1月8日から毎年、金正恩の誕生日を祝う生誕祭と北朝鮮のチュチェ思想勉強会が開かれている。
そして、今回、玉城デニー氏と共闘した「琉球の風」の糸数慶子氏なども、この生誕祭に参加している。その場で、辺野古や高江の基地反対闘争の報告会なども行われている。
彼らの感覚では、アメリカの基地は悪い基地で、北朝鮮の核は良い核兵器ということになるのだろうか。