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マウントマッシュルーム

マウントマッシュルーム

MT.MUSHROOM/independent*
 ガリガリの攻撃的なテクノでなく、いわゆる歌ものポップスで機材的にテクノなセット。張らずに高音でフワッと唄う声が、かわいすぎるほど透明感で耳に浸透し、インスト曲にもその精霊のような声が聞こえてくる。インタビューでは「山登るのすき。頂上で聴く用の音楽」と、アウトドア指向っぽい。確かに街の排気ガスとか生活感の部屋ではない、山頂の緑の空気と見下ろす湖のサウンド。あと、すいません、惚れました。山に誘われて不思議なキノコを食べたいです。楽曲もそうだが、パッケージやサイトデザインも洗練されててキレイ。この写真の衣装からNEURONというクラブ系ファッションのブランドを知って、けっこう買い集めた。

night

SMART PANEL-night

小谷美紗子/東芝EMI
 英語の比率多く、ドライブしながら聴けるアルバムとのインタビューだったが、ドライブそっちのけで感涙に浸りそうな「誰かの誠実な生き方」を沢山唄っている。普通の人が集まって悲惨なことが起きる。ほんの少し立派な人を目指そう。コレきっかけに買いそびれていたアルバム揃もえたよ。ピアノデュオのインストでも歌が感じられる。ピアノからにじみ出てくる体温というか湿気。曲も胸に迫るのだが、音楽の魔法を感じる。曲をタイヤにした感情というボディが軽やかに夜のハイウェイのカーブを走っている。ボンネットの向こうに星空が見える。夜空を見たくなる。夜を走っている。看板の明かりもない、夜更けだ。誰に会いたいのか、会えばいいのか、はっきりする。

夏

松田マヨ/MIDI inc.
 エレクトリックピアノの弾き語り。記憶、波打ち際、短い日、夏、恋、水。シンセのモジュレーションホイールに左手を掛けたようなワァァァという余韻ビブラートが残る寂しげな歌声。夏がモチーフだが、夏を回想する時期、心に秋風が吹いた日の様な隙き間風の美学。魅力的なメロディが、1曲として出なく1パートとして耳に残る。6曲中のどのメロディがどのメロディに繋がったか覚えられない。全部通しての組曲っぽいかも。バイオリンもまた寂しげで、寂しい好きにはたまらない美メロ。曽我部恵一プロデュースだが、ドラムなどバンドの音が鳴っていない、これは松田マヨのエレピから溢れでた世界。小泉今日子に曲を提供すれば声質的にもピッタリだと思う。

THE MUSICAL PHARMACY

THE MUSICAL PHARMACY

TOCO TONE、dok-s PROJECT、COVALT VIRGINIA、BAMBOOW、SHOW-KAKI、BAMBOOW、他/Omalu Label
 Omalu Label周辺のバンドを薬局として処方したコンピ。ただ「これの薬は実験です」と説明に書かれた薬品を服用できる人は、勇気ある医学への貢献か、藁をもすがる重病か、健常者ではわざわざ服用しなうだろう。トランポリンタンバリンの歌物『うわのそら』が、グッとくる。はっぴえんど細野晴臣的な叙情派領域。ヨーロッパ盤は若干曲の入れ換えがあった。ノーブルママレーベルからは、Lightningがウクレレ奏者いやーんをフューチャリングした夏の入道雲『サンダー・クラウド』で参加している。

天使の火遊び

映画「天使の火遊び」オリジナル・サウンドトラック

HIDEMASA KONDO/じんのひろあきの秘密基地
 女子高の頃好きだった先輩は、屋上でフルートを吹いていた。ウサギは先輩に憧れつつ、遠くから見てるだけ。毎日吹いているあの曲に勝手に詩をつけて唄ってみた。いつもの曲を吹いている間、こっそり唄っていただけの、先輩と一緒にすごした思い出。卒業後、突然失踪した先輩にウサギはラジオから唄いかける。今、どこかで元気でいますか?という、素人っぽい歌。全般的にDTM音源の薄さが気になるが、バンドネオンのようなロマンチックなイメージを多用している部分は好印象。中野武蔵野ホールに行った人の『天使の火遊び』映画評で「映画じゃなかった」っていう酷評があったけど、アイドルビデオで良いのだと思って見てた。

カリフォルニア・ドールズ物語

カリフォルニア・ドールズ物語

 

カリフォルニア・ドールズ/Stickopotamus
 「家が鍛冶屋だったので子どもの頃、鉄を叩く音とか、そういう音が楽しかった」と、NHKで近藤等則と小学生数十人の音響セッションをやっていて、このアルバムを思い出した。東風の露骨さんがすすめてくれた謎のディスク。カリフォルニアドールズは歌っている女の子がコアメンバー。エフェクターを重ねて作った様な工業機械の生々しい音や叫び声、楽譜以外の音で構成されている現代音楽。組み上がった鉄骨の柱を溶接でなく千歳飴の粘着で留めているバランス感。何年かして、ライター吉田アミを知るのだが、声とサウンドコラージュの作品履歴を辿っていったところで、カルフォルニアドールズが彼女のプロジェクトだったと知る。

Kangaroo Paw

Kangaroo Paw

 

カンガルー・ポー/深海レコード
 夜遅くにフワーっと過ごせる曲がよい。それを時間2倍にするとか、他の曲も硬い音を無くして、「フワーっと過ごすためのアルバム」にしてしまうとか、そうして欲しいくらいフワーっとしたものの無時間空間が出来かけてる。できかけていて、次の曲にかき消されちゃうのが不満足に繋がっちゃう。音響っぽいけど、加工声の静音ボーカルが入ってたり。イメージは、トラットリア(定食屋)のコーネリアスでなく、駄菓子屋のコーネリアス的な貧乏臭さが味になっている。ジャケット、タイトルともに意味は不明。これを「スゲー」とか言って聴くにはヒントが無さ過ぎる。荒野だけどピンク。カンガルーの肉球だけど深海レコード。どこを目指しているのだろうか。

Symphonic Suite AKIRA

$SMART PANEL-Symphonic Suite AKIRA

芸能山城組/DEMON RECORDS
 ヨーロッパ盤は一曲づつに切れてて聴きやすい。日本版はもってないけど、たしか全曲が4トラックに結合されていたはず。ジャケもアニメっぽい日本版のより漫画色が強くピクチャーCD。東洋文化のパレット的な能楽や詠いはもちろん、ガムラン、息づかいまで全て未来へと伝承してみせた芸能山城組のスピリッツ。『Battle Against the Clown』は「ドッドー」で有名だけど、誰も知らなくてなにか凄いパンチ力のある曲をかけたいDJ時に『Exodus from the Underground Fortress』を使っていた。疾走感とオリエンタルなパーカッションと囁きコーラスと。映画「アキラ」の攻撃的名曲。

廃園

$SMART PANEL-廃園 Eden

幼虫社/Club Lunatica
 待ちに待った『幼虫社』ファーストCDにして既に進化系。事実上の1stアルバムだったカセット『幼虫期』の曲をいくつも未収録にして、新曲で飛び越えたというのもあるけど、期待の上を軽く超えてくれた。イラスト藤原カムイ。封を開けケース外の帯をジャケットに組み合わせると、ツートンカラーのデザイン形状が完成する。計算されてるなぁ。和装イメージの強かったこれまでを引き継ぎつつ、海の波間や時間の歪みを感じさせる様な、はてしなくオリジナルな音世界。あり得ない様な、見たことある様な、風景の空撮をながめる異世界から来たアルバム。不可思議70%の潤んだ女性ボーカルは、夜中オレンジの小さな灯りで聴くFMラジオの様な質感。

REACH FOR THE SUN

REACH FOR THE SUN

TAKAYUKI SHIRAISHI/NSCOM
 ジャケットを見た時に「リアル・ゼビウス!」と直感したのですが、それほどゲーム質ではありませんでした。シューティング音込みでノリノリだったらよかったのに。ダンスものではないリスニングテクノですが、細かいところで割とハッキリしたメロディーも用いられていて、フュージョン2:電子8といった割合か。お茶を濁すような無駄な装飾音は入って無いので、フレーズはそれを聞くしかない意味で音楽性がある。だからフュージョンぽいのか。スッキリとした味わいで、じっくり展開するのでドラムが鳴ってもおとなしい。何か作業しながらのかけっぱなし。ラウンジでまったく気にならないで鳴っているタイプの最高点が20点の音楽。