銀吟堂ミステリー

大正九年/KiraKira Records
『ファンタジー・SF・ギャグ』の音も詩も加速ついた感じで勢いがあるとおもったら、コレ出した後、活動休止してた。はぐらかす様な(アホっぽい)のを控えめにして、キッチリ唄ってるし。CMソングとか主題歌とか、曲以外の外的要素が加味されてもピタっとはまりそうな気がする。無意識か狙いかわからないが、まるでアイドルの様な臭気が無敵っぽさを出しているのだと思う。『遊びに夢中な夜に☆☆☆☆☆☆☆』の路線で行って欲しいが…。しょっぱなの短いサンプリングコラージュで「アイラッブユー」みたいに歌っているのの元ネタが何か気になる。ひとりテクノならぬ、ひとりセッションの『拙者』は酔っ払った深夜のパフォーマンスか。→
空飛ぶ日曜日

谷山浩子/ポニーキャニオン
「童話は子ども向けになる前は、本当は恐いお話しなんだよ」その視点を誰よりも先に唄っていた。恋人にふられて凍えて死んでゆく様な歌が多い中、明るい曲調のもあるけど、幼児が平気でトカゲのしっぽをもぐ様なあっけらかんとしたドッキリが潜んでいる。1985~86年前後の作品が好き。成れないものに憧れる姿、願いが叶わない姿、来ない人を待っている少女の姿をメルヘンに包み込んで、やっぱり歪んだ王国の女王様である。国民も居る。彼女に孤独感は無くていつも仲良し風な理解者に囲まれているよね。ビートたけしのオールナイト2部は谷山浩子で「マンガ予告へーん!」とかね。2部はオープニングでなくエンディングがビタースイートサンバだった。→
Time: Space Compilation

Brikha、Quiet Daze、Tony Drake、Microworld、Louis Haiman、Derrick May & Steve Hillage、Indio、The Vanisher、Rhythm Is Rhythm、他/Transmat Records
同じ様な音が鳴って同じ様な曲になっても、上手い人が作ると個性が出る。小刻みだけど静かなテクノ。予想外の展開とか過剰な音色へ移行したりしないのだけど、パソコンのスクリーンセイバーについつい見いってしまうように流しておける。圧迫感が無いので喫茶やバーでかかっていて欲しいのは、こういう古いテクノ。少年達が通路で寝ている『クラブ』でなく、会話ができる程度の音量のバーでね。→
FLIP FLAP e.p.

FLIP FLAP/Ki/oon Sony Records
なんでこの時にこのサイズで出したのかよくわからないミニアルバム。『小さな光り』のスクラッチ等々あいかわらずクラブチックな遊び心ありつつ、やっぱりお茶の間CMソングを目指すのか、線の細いアイドルぶり。そこが良いと言えば良いのだけど。あれ?『バランス』って何かのCMじゃなかったっけ?何だっけ?何だっけ?『旅行に行こう』なんて、どこのリゾート観光局かと思うくらい、タイアップ向けのサビなんだけど、これはCMになってないの?一方で、シングル発売してたCMJKのドラムンベース『たんぽぽ』のアコースティックバージョンが、CMっぽさ無しのボサノバっぽいギターで収録。これはナイスアレンジ。→
JUICE AND TREMOLO -the works of chamber music-

ホッピー神山/sonore
おとぎの国の住人ふうのかぶりものを着たおばさんジャケ。私の中では「センチメンタルバス」を手掛けたホッピー神山。いやその前から知ってはいたが。このアルバムはバンドでなくCMソングなどのインストワーク集。思いのほか上品でよい。ちょっと中近東っぽいクセのある小オーケストレーション。CM用の曲は、15秒30秒の中でも感情をゆさぶる展開が起こる。弦楽奏と女声コーラスの曲は、プロの声楽の人でなく、形容するならスピッツのファンの女の子のような華奢な声質で「ラララ」と入り、それがまた良い。しっとりとした映画を見るよう。そうこう書くうちに、ホーンもノイジーギターも入りグルーヴィーなプログレ演奏が始まった。歌は入ってない。→
夜光卵子
ピカリンス/independent*
正体不明で他に似たもの無しのアーティストがヒョコヒョコ出てくる京都という土地が不思議。民族音楽、ペルカント唱法等々、挑戦した音楽を完璧に出来て無いのをスタイルにして突っ走っている。妙な音選びとメロディは、詩の世界にちゃんとシンクロ。メンバーそれぞれが曲をつくっているようで、1バンドでコンピレーションなみの曲幅。しかし、手作り歌詞カードのコピー機のドラム状態が悪かったらしく、手で擦るとトナーの黒い粉がつく。つまりそれは黒アゲハの鱗粉か。そこまで考えているギミックだったら大したものだが、コピー失敗ももったいないからそのまま売っちゃう軽いノリでしょう。ギミックでもノリでも、どこかダークな香りがする。→
MODULATIONS

ドナサマー、アフリカバンバータ、ホアンアトキンス、LFO、デリックメイ、ジェシーサンダース、アフロダイト、ゴールディー&ロブプレイフォード、パネセア、池田亮司、コールドカット、トゥロココロット/UPLINK RECORDS
電子音楽のルーツを図鑑化するドキュメント映画「モジュレーションズ」のサントラ。ムーグ博士以降、ジョルジオ・モロダーからリョージイケダまで、どの影響がどの年代にかかり、何のジャンルと融合してテクノの細分化が行われていったかの解説が、このアルバムの収録曲と重なる。ドナサマーとか、「ソードフィッシュ」の曲とか電子音楽イロイロ。デリックメイの名曲『ストリングス・オブ・ライフ』も生け捕り。発明品としてのテクノの姿がある。→
PSY・KICK・WAVE

SLIPPING GEAR/r2records
ハードミニマル工業系なのに、雑なバリバリ音は無いので、なにげなく長時間かけっぱなしできる。シンプルな音数でありながらフィルタによる暴力的可変が高揚感を引き出す。テクノっぽい影像をつくってBGMを探すと、最新のCDではイメージが合わず、結局90年代最後の時期にリリースされたこのCDを引っぱり出して使ってしまう。巨大な未確認物体が天から地面に落下してくるミニマル。巨大な未確認物体が海底から水上に浮かび上がるミニマル。正体不明の好奇心をそそる脅威が、重くてシンプルなミニマルに充満している。PHILIPSのCDRとインクジェットのジャケットで、R-2 RECORDが動き始めたかなりの初期盤。→
四月の魚
高橋幸宏/アルファレコード
大林伸彦監督の『四月の魚』はエイプリルフールのこと。製作、主演、音楽監督、高橋幸宏。高橋幸宏のユーモアセンスが悪い方に爆発したオシャレ映画。初めて見た時、あまりにも面白くなかったので、しばらくたってから、本当に面白くなかったのか気になってビデオで見たら、やっぱり面白くなかった。ユキヒロのお笑いのパートナー三宅裕司も脇役で登場。三宅裕司がメディアに出たのは、ヤングパラダイス以前、ユキヒロのオールナイトニッポンからだろう。音楽とファッションは気取っておいて、キャラクターとストーリーで不条理に崩れてゆく作品コンセプト通り、サウンドトラックの音楽CDとしては、おとなしいBGM。そう、ドラマ性の無い0点のBGM。→
オレンジの地球儀

クレヨン社/NEC Avenue
ビバ!80年代のニッポン放送。「あのころの僕」という、架空の青春ドラマの中で、主題歌にはならなかったけど番組終盤45分くらいのところで流れる挿入歌は『痛み』であり『オレンジの地球儀』であろう。あの頃ぞろぞろデビューしたバンドたち、あの頃のニッポン放送、クレヨン社でイロイロ思い出すのは、私だけでは無い。伊集院光もたびたび口にする。心が痛むような青春のフラッシュバック。ビートバンド全盛に、ドラムレスのシンセストリングスアレンジが映える異色のバンドだったが、圧倒的な少年性の世界観と歌声、音楽の魔法が際立っていた。プロモーション用のSCDで紹介番組を伊集院光がやっている珍し非売品もオークションにてゲット。→