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JELLY TONES

JELLY TONES

 

KEN ISHII/R & S Records

 宅録から世界を制した日本人。ベルギーのテクノレーベルから発信された説明不要の名盤。時を経って、単なるヒットアルバム以上に革命だったと認める事ができる。4つ打ちといっても、ポツポツといったクリック程度の音。当時はクラブの現場処理で重低音の調整をし、シャツが振動するほどの音をアンプから出していた。ライブで鍵盤も弾かず、レコードを回すでも無く、ミキサーのツマミをひたすらねじっている様子を見て「この人は何をしているのか」と疑問だった。だが、『EXTRA』を完成形で再現するためには、ツマミの並んだミキサー卓、ボディソニックと呼べる大音量装置、照明も、スクリーンも全部必要だったんだ。1995年。

 

 

 

ジェリートーンズ

ジェリートーンズ

 

ケンイシイ/ソニーレコード

 ぶっちゃけボツ曲じゃないの?という日本盤のみのボーナストラック2曲の存在もファンには楽しみだ。その1『Rusty Transparency』は演奏感覚のあるエレピのリフにスプリング音が印象的。その2『The Sign』はシンセパッドにアナログ秒針を思わせるクロックサウンド。特典といえば、何よりも別ディスクで『EXTRA』のCD-Romがついている。ケンイシイ本人が天ぷらを食べながら登場するPV。フロートバイクでぶっ飛ばすSF街アニメは制作森本晃司。ジャケットは紙の印刷シアン&イエロー版に、マゼンタ&ブラック版のカバーフィルムケースを被せると、4色掛け合わせフルカラーになる凝ったアートワーク。1995年。

 

 

 

Best of Fantastic Explosion

Best of Fantastic Explosion

 

Fantastic Explosion/Beautiful Challenge

 サンプラーを手にしたテクノキッズたちが、ドリフやファミコンを数十秒づつ取り込んでミニマル化する一方その頃、高級サンプラーを手にした大人たちはこんな事をしていた。ビデオが一般家庭に普及していない頃からビデオデッキを所有し録画をし続けていたネタを、ここで払い戻したか!クールなリズム&シャープなホーン、そして70年代CMやドラマ。木曜スペシャルのUFO特集を長い尺でコラージュするその手法をして「サンプリングじゃ無いよ、うちはダビングだよ」って公言するトランソニック魂。ボンヤリとヒヤリをくり返す、遊び心の底にブルジョワジーな空気漂うドラムンベース。2000年。

 

 

 

友情

友情

 

山、社長、Super Family、ASHITA/All Japan Records

 全日本レコードのコンピvol.1。はぐれテクノレーベル、レイプで培った友情、スペシャルサンクスJASRAC、等ジャケットに意味なしコピーが並ぶ。おもしろテクノの多くの後続者がオタク臭を漂わせる中、先駆者にして王者、全日本レコードは常にフロアの熱気を漂わせていた。モンキーマジックもカントリーロードも、マスタリング調整無し、高音荒いコレの初期バージョンが一番好き。ドリフ、北斗、ファミコン曲の以外にロボット甲子園、ヤワラちゃん、ビーバップ、稲川淳二の怪談などゼンニチのキーワードを声のみ無造作に収録。ネタものサンプリングの全国バトル開戦前夜。1998年。

 

 

 

Interdimensional Transmissions From Beyond

Interdimensional Transmissions From Beyond

 

I-F、Sluts'n'Strings & 909、The Krooks、Shake、UNI、Synapse、Le Car、Flexitone、V.A/Disko B

 テクノコーナーにCDは増えても依然として情報は薄く、リスナーは購入の目安に自分へのサイン、アイコンを欲した。インベーダー、巨神兵、ジャケ内には、戦闘モードに目を尖らせたナウシカ、大胆な引用アートワークジャケ。made in USAだが詳細不明の海外コンピ。TB-303とTR-909のシンプルな構成のアシッドハウス、エレクトロ。音のサンプリングは無いが、ロボ声が入ったり。シンプルなものをレゾナンス&カットオフで耳障りを与えるという303好きの定番スタイル。1998年。

 

 

 

Golden Delicious Hour

Golden Delicious Hour

 

斉藤和義/ファンハウス

 ベスト盤『ゴールデンデリシャス』のライブ収録バージョン。夏休み明け、会わない間に髪の毛染めて大人っぽくなっていた同級生みたいに、今になって斉藤和義を聞いたら色っぽくなっててグッときた。初期はふわっとしてたけど、このライブの頃になると繊細かつ骨太で、ボーカルがズンッと響いてくる。キャーキャー言われずに我が道行ってる唄が目潰し照明のようにステージから会場に放たれている。鎖を噛み切れ!首輪を振り払え!『FIRE DOG』BABY!!中盤、ロックンロールショー展開で『ウナナナ』『I'm FREE』。終盤は言わずと知れた名曲『歌うたいのバラッド』でしっとりから一転の幻覚ロック『砂漠に赤い花』のつなぎの流れが鳥肌モノ。

 

 

 

PROFILE - too early to tell

PROFILE-too early to tell

 

小谷美紗子/MCA Victor

 デビューの時にオールナイト2部の誰かの番組で曲が流れて、3時を回った真っ暗の深夜に、どうしようもないやるせなさと、それにあえぐ自分への全肯定に満たされたんだ。誰の曲か分からずに長い間見つけられなかった。若い日本語ロックのバンドがカバーしたくなるのも頷ける程、曲は品があって詩には毒がある。真実を正面で描くと毒になる。こんな歪んだ世の中で私はどうしたらいいんだろうと思わせられるけど、その事実に私以上にもがく彼女が解答をくれるんじゃないか、と人任せに傍観する。さらにその傍観を断罪し、悲しみや歪みを認めつつ、その闇に友情や信念を灯を見せてくれる歌がたくさんの宣言を重ねてゆく。メッセージソングでは無いのに。

 

 

 

Best Harvest

Best Harvest

 

原田知世/FORLIFE

 変型ジャケットきらいな私としては、これを待ってた。変革の予感は『100 LOVE-LETTERS』から。これはシングル買ったよね。I could be freeが新宿渋谷の街中を席巻したシーズンは、まさにCDショップと自分との蜜月期だった。『ロマンス』『シンシア』『恋をしよう』過去数年に渡る変型紙ジャケアルバムに収録された名曲が、通常CDケースにまとめられたベストオブベスト。アレンジの優れたスェーデニッシュポップス時代と、それ以外の曲調の開きがやっぱりあるかな。スエーデニッシュ姉さんの時代の、スイートビターな記憶を思い出してキュンとなります。こんなに、自分のある一時代を思い出す曲になるとは思わなかったよ。

 

 

 

Plantation

Plantation

 

ringo/Sublime Records

 レコード屋にテクノコーナーはなく、少数派の試聴もない。それっぽいジャケに願いを込めて、クジを引くようにCDを買うしかなかった。いわゆるジャケ買い。かじられた林檎にApple Computerを重ね、辿り着いたテクノ草創期リスナーは少なくないはず。正体はススムヨコタ。水晶玉が浮遊するウオーターパレスの冒険のように、静かめにくり返されるジャストなリズム。踊らせるため、より体感的にグルーヴする21世紀のテクノでなく、90年代の精神的なトリップを促していたテクノとはまさにこれ。神聖な石碑。龍宮城サウンド。『Renkon』や『Sumire』はゲームDepthの元ネタなんじゃないかしら。1995年。

 

 

 

96/69~地球あやうし!

96/69~地球あやうし!

CORNELIUS、岡村靖幸、想い出波止場、暴力温泉芸者、砂原良徳、シトラス、ドクロ隊、他/Polystar
 通常盤とリミックス盤、1粒で2度リリースが当たり前になりつつあった1996年。「外国のスゴ腕エンジニアよりも、みんなが知ってる日本人ミュージシャンが料理したものを、楽しみに聴きたいんじゃないの」という小山田圭吾の采配により。コーネリアスの曲を国内の人気者!がリミックス。小西康陽、スチャダラパーは当然といえば当然。他ジャンルの畑から『VOLUNTEER APE MAN』を石野卓球、『HEAVY METAL THUNDER』をhideが手掛けている。この並びだけで興奮、コーネリアスそれほど好きじゃなくても。ツボおさえてるよな!