NHKスペシャル「驚異の小宇宙 人体II」
久石譲/NEC Avenu
なぜオンエア当時、NHK人体という番組に心奪われたのか思い返してみると。知識の欲望はもちろんあるが、学術解剖よりもCGによる人体描写が見事だった。機関、骨格、体液他、まさに体の中に広がる宇宙。CG特有の質感が、生身のそれのように円滑に動く。そして、CGにピタリと合う音楽。メタリックな音色と規則正しいシンセドラムが、生身のピアノ&ストリングスと美しく連動し、生命の力強さと繊細さを見せる。ミクロの決死圏的な劇伴が多いが『OMEGA QUEST』などは人体迷宮のゲームミュージック。体の機能から感情へ。メインテーマ『THE INNERS』のシンセバージョンに始まり、ハープとバイオリン演奏バージョンで幕を閉じる。→
SISTER STRAWBERRY

筋肉少女帯/TOY'S FACTORY
ギター横関敦、ピアノ三柴江戸蔵、メジャーデビュー第一次の完成系だと思う。『いくじなし』の世界観に松任谷由美は文学青年大槻ケンヂをオールナイトニッポンのゲストに呼び、鴻上尚史は全9分をオンエアし大絶賛した。『仏陀L』で凄いのかもしれないという疑惑状態だったバンドは、『シスターストロベリー』で本当に上手くて恐くてちょっと気がふれてしまっている文学ハードロックと認知された。次の3rdアルバムからはピアノが脱退し橘高ギター時代に突入、日本印度化でお茶の間へも進出。その前に、この『シスターストロベリー』という孤高のミニアルバムを聞いていたかどうかで、筋肉少女帯はロックか、コミックなのかの評価が割れた。→
風の声

太田美帆/MusicWeb RECORDS
「声」というタイトル、『アヴェマリア』収録となれば白鳥由美子系の正統派ソプラノ。「風の」とはぴったり多重コーラス。金属なのに木管の分類になる楽器、フルートの様にきもちよく鳴り響く声。ズーンと深いピアノにネコが歩いてゆくようなアレンジ。文芸的に言うなら「I Love You」でなく「あたし、ほんとにあなたが好きなんです、しみじみ思そういます」だ。クラシックとかポップスとかでなく、ジャンル的には、素直というカテゴリー。ウソの無い性格の人の声。癒されるという簡単なものでなく、心の素直を引き出す。メッセージを使わずに声で出来てしまう、ある意味選ばれた人。UAのコーラスやってるのもこの人だろうか。→
rough and ready

ram jam world/wea japan
ジャケットがキラキラ反射のは初回版なのかな。朝本浩文ドラムンベース+女性ボーカル。このアルバムに関しては全編英語。『Planet earth』作曲が森若香織ってすごいな。曲が良いから日本語でもグッとくるけど、あまり日本語詞のコトバの意味がちらつくよりは、英語版で自然に聞き流せた方が好み。空気をコントロールするようなエフェクターのかかり方、潰したりワイドにしたり。激しいクラッシュドラムに哀愁メロディー。えー?!ボーカルのLISAってm-floのリサだったの?知らなかった。上からいうのもヘンだけど「歌うまいなおまえ」ってた思ったよ。タイアップで力が入ってる曲は飛び抜けてキラキラしている。→
sweetie

おかべゆきこ/おかべゆきこんどりあ
吉祥寺駅から歩いていって、井ノ頭公園の橋の向こう側。各週でキーボード弾き語りしてるところで購入。隣にいる人の手をつなぎ、目の前にいる人にありがとう、足もとの子供の頭をなで、言葉の通じない外人さんには笑顔、そんな感じ。紅茶の香りが届く近距離のラブソング集。隣を見るとあなたはウクレレ弾いてて、「牧伸二みたい」とからかっても、二人はお似合いの相棒、みたいな詞。唄い方は余裕が出る前の方が好きだったかも。余裕によって散漫になってる?メッセージソングじゃないから口元ゆるい感じの岡北有由でいいのかな。井の頭公園、花が咲いて平和。ワハハ本舗の人が、着ると全裸に見えるボディスーツで歩き、水生生物園で怒られていた。→
Omni Sight Seeing

細野晴臣/EPIC SONY
乗合で知らない人と一緒に同じ場所へ向かう、観光旅行みたいな、自分の旅とスケジュールに委ねる旅気分の半々。そんな気持ちの揺られ感。もっとも熱いギタープレイヤーがスペイン酒場の酔っぱらいオヤジで、もっとも魅惑的な歌手が名も無きアジア山岳民族の小娘であることを、世界の商業音楽が気づきはじめた頃、細野はアラビアに触れた。民族音楽を極めるのでなく、部屋のテレビで世界遺産という贅沢な番組を楽しむように観光気分。バスが青空を走るようなポップス曲を挟みつつ、琉球コブシのような、ヘビ使いの笛のような音が車窓から見える。散歩中に阿佐ヶ谷サンサンレコードで、「なんか買ってあげる」と言われ、きれいな紙ジャケのこれにしました。→
スナップショット

Chee's/ユニバーサルミュージック
【1st シングル】カジくんかよ!カジ(炎)ヒデキ書き下ろし『スナップショット』。フジテレビが仕掛けて、吉田健が育てるガールズバンドは、ドラムもポコポコいってるカジPOPのファーストから始まった。そして、ライブではchocolat(ショコラ)のカジ楽曲『ブルーでハッピーがいい』とかをコピーしてたなぁー。当然だけど、ライブの流れにぴったり合っていて対バンのお客さんも暖かく見ていた。メンバーの持つドラム、ベース、キーボードの赤い楽器揃えて、YAMAHAショルキー「SHS-10」の勇姿を見ることができた。ギターサポート野村義男。テレビの表舞台で活躍する『Pop in Bags』になれる存在だった。→
ガラガラゲッチュ

Chee's/ユニバーサルミュージック
【2nd シングル】森若姉さんかよ!もろゴーバンズメロディは、森若香織書き下ろし。タイトル『ガラガラゲッチュ』とか、姉さんがキュートすぎる。川本真琴の『愛の才能』のとき「岡村靖幸だったらこう唄うだろうな…」と想像した様に「ゴーバンズだったらこう歌うだろうな…」という想像もしてしまう。ライブで叫ぶポイントもわかりやすくある、ギャルバンの王道の様な名曲。「あなた」は「あンなた♪」、「…たい」は「…たンい♪」だ。チーズメンバーが浜ちゃん松ちゃんに雑にいじられた(それがイイ!)『HEY!HEY!HEY!』にもギターサポートとして森若姉さん出演!カメラ目線くれる!そんなサービス精神のうれしいセカンド。→
トモダチ

Chee's/ユニバーサルミュージック
【3rd シングル】今までの流れとまた違ったアレンジ。っていうかセンチバかよ!アレンジャー鈴木秋則(SENTIMENTAL:BUS)による青春ギターパンク。ギターメンバーがオーディションから加入し、唄い方も乱暴になってガシガシいってる。いいじゃんか!このノリで突き進めばいいじゃんか!しかし、ライブが増えテレビの減ったChee'sのロックバンドスタイルでの集客では、いわゆるテレビアイドルファンを動かせなかった。フジテレビ生まれというロケットスタートを返納し、ライブパフォーマンスで勝負。テレビ露出が減ると共に、No.1になるべくして創られたガールズバンドは星に消え、それぞれの人生を歩んでいった。→
虹 RAINBOW

賈鵬芳/PACIFIC MOON RECORDS
ジャーパンファンの割と初期の作品。むきだしな二胡の音の良さではコレが一番好み。後発のも洗練された西洋音楽的でいいけど、東洋の山っぽさ、赤レンガっぽさなら『虹』だ。アコースティックギターも気持ちいい。山々に横に流れて移動している朝もやのようにスーっと風景に入ってくる二胡。技術やスピードに走る事もなく弓奏楽器の漂う心地良さが、聴く者の深呼吸に繋がってくる。テーマ『Rainbow』の最後のアンビエント版『End Of The Rainbow』が、鳥の声、自然音響とミックスされていて、短いのがもったいない。パシフィックムーンレーベルが虫の声で13分やった『亞』みたいに。これは長く聴きたい。→
