SMART PANEL -70ページ目

12の花

12の花

 

吉田知加/GIZA studio

 メジャーレーベルの見えない鎖といいますか、操る糸が見え隠れすると聴き手に思わせてしまったら、演出についていけてなくなっちゃうよ。いろいろ不利だよな。タイトルやイラスト、最後は引退メッセージまで本人の筆文字で雰囲気ある。バンドサウンドで歌謡系で刹那系。これがライブハウスでの出合いで見つけたならば、感情移入も素直だったと思うが。大メジャー販促から振り下ろされると「自作自演系のあれに似てるな。あれの後追いだな」と分類されてしまう。宣伝費が潤沢だった事が想像できるインタビュー番組や無料配布の多種ステッカーも。このブックレットを作り上げたデザイナーの丁寧な仕事ぶりのほうが気になる。違う場所で出会いたかった。

 

 

SQUALL

SQUALL

 

高原兄/taurus RECORDS

 完全無欠じゃなかったロックンローラー、アラジンのうた担当。島田紳助による『風よ、鈴鹿へ』は鈴鹿8耐イメージソング。チーム紳助の鈴鹿8耐への挑戦は無謀だったが「一緒にやってくれ、応援してくれ、報酬は無いけど終わったら絶対に一緒に泣けるから」その言葉だけで、ファン、スポンサー、多くの人が動いた。経過を深夜ラジオや活字で追いながら熱くなったのを思い出す。3度目の挑戦で完走した時のがむしゃらに泣きまくってた、いい歳した大人たちの青春風景が忘れられない。リアルタイムのTBSラジオ「スーパーギャング」は眠気でほぼ聞けなかったのに、断片でもその熱気に動かされ、本、ビデオ、このCDとあの頃の記憶が残っている。

 

 

海月

海月

 

KURAGE/independent*

 極東アジアっぽい印象の聴かせるメロディーと、気持ちのいいザクザクとしたギター。過剰なアレンジや、いかにもポップス的な曲展開もかなりビシっと決まっている。ドラとか「ジョワーン!」と入るし。ただ、詩ののせ方が残念。東洋音階っぽい音符の一個一個に一文字一文字のってるのが、何を唄っても学校の優等生っぽい。たぶん、正直な人なのだと思う。声には説得力あるしアレンジも厚いので、「聞く人にとって他人すぎる特定の私とあなた」に留まらず、もっと大きな事を唄えばいいのにー。グルーヴを作り出すためには、何の要素が必要だろうかと考える。人の気持ちを巻き込むのは、音楽のバックボーンだろうか、あげてしまう愛情であろうか。

弓になって

弓になって

 

山葉/Bad News Records

 印象は無気力に漂うフォークだが、ヤッホーなど気楽な単語にダマされるな。メンボーズを聴いていた頃とは確実に違うところを湿った手で撫でてくる。向こうもこちらも、ココロウキウキ自転車漕ぐだけではごまかせない時間を生きた。戻らない恋の時間を過ごした。「遠いものは遠くあって欲しい、私は幸せで、沼津の空へ全部おいてきた」とかぐっと来る。中村房代の歌声はもう大きな存在だ。世界の仕組みすら知らなくて、目の前の不安は目の前のことを頑張ることで解消できた、楽しくて仕方なかったあの頃を切なく思い出させる。歌詞カードの5と7が入れ代わってるミスプリントを発見。責任がどうこう言わずに「あちゃー」って笑っていて欲しい。

 

 

THE BEATLES TOKYO DAYS

THE BEATLES Tokyo Days

 

THE BEATLES/OVERSEAS RECORDS

 日本人に向けてのインタビューや、アナウンサーが勢いづいて紹介する音声を収録した来日時の記念盤なのだろうけど、海外のコレクターはこういうのもフルコンプリートするのだろうか。聴きどころはコンサートでビートルズが登場する直前の司会。昭和のマジメさ「これより日本で初のビートルズコンサートはじまります。盛大な拍手で迎えたいと思います」。けっこうツボだったのが『ウィー・ラヴ・ビートルズ』というフニャフニャガールポップが入ってる。「あたしったちは~ビートルズ大好きよ~あたしはポールあたしはリンゴ好きよ~」みたいな英語の歌。かき集めた録音を商品化したみたいだけど、ファンは買ったんだろうな。

 

 

 

ボヨヨンロック

ボヨヨンロック

 

まんが道/トイズファクトリー

 筋肉少女帯に加入したギター橘高文彦のオーケンワークスの初仕事。大槻の「青春歌謡メタルを弾いてくれ」という注文にみごとに応えている。橘高はこれを最後にトレモロアームを使う奏法を封印している。まんが道の第二段シングルは企画のまま幻となってしまった『セニョールセニョリータ』。「セニョールセニョールセニョリータ、セニョールセニョールセニョリータ、おいらはいつも魚屋さん、おぉジーザスおぉジーザス、オーマイガー」2番は「セニョールセニョールセニョリータ、セニョールセニョールセニョリータ、おいらの父ちゃん高島忠夫、おぉジーザスおぉジーザス、オーマイガー」フォークギターでのパフォーマンスだけが発表されたがCD未発売。

 

 

深い河

深い河

 

松村禎三/Camerata

 この本を読みインドのロケ現場まで聖地巡礼した事もありました。日本映画のサントラで流行の手法なのだろうか、シーンのセリフが少しづつ入っているのがうれしい。クライマックスの秋吉久美子のセリフ、女神チャームンダーのシーンも。大津と成瀬が初めてであう暗いバーで生演奏されていたハープとフルートのアンサンブルなど、ああ、そういえば流れていたなーという曲まで全収録。壮大な暗~いテーマ曲。東京の四ッ谷に始まり、フランス、イスラエル、インドのいいロケーションが目に浮かぶ。ベナレスの街に行き着き死にゆく人に使える仕事の夜、膝を抱え小さくなってむせび泣いた大津は、小説に無い映画だけのシーンで、遠藤周作が良かったと評していた。

 

 

 

SPACE COWBOY SHOW

SPACE COWBOY SHOW

 

布袋寅泰/東芝 EMI

 HOTEI ブランドの完成は、『スリル』のイントロで江頭2:50分が登場してくるお約束が定着した時だと私は確信している。『スリル』ってギタリズム完結してからの第一弾シングルだったのね。後半『サーカス』『ポイズン』とたたみかける1997年時点のベスト的ライブ盤、スペースカウボーイショー。赤いカウボウイハットで宇宙を旅する布袋が、ラストにはキャプテンロックに覚醒するステージ内容。当時の先駆的流行であったCD-EXTRA仕様には、パソコンのドライブに入れたときにだけデータを読み取れる。ステージセットの写真や、クリックで再生するMCトーク音声、アイコンデザインなどオマケ付き。ギター6本のコレクション写真はうれしい。

 

 

SPACE COWBOY SHOW ENCORE

SPACE COWBOY SHOW ENCORE

 

布袋寅泰/東芝 EMI

 コスプレといいますかスペースカウボーイを脱いだアンコールステージ。スペース・カウボーイショーの2部。ポップもデジタルもひかえたロケンロー色濃厚な前半。『ハウンドドッグ』イカス。ミディアムテンポからロックバラッドの後半。長いギターソロ全開。「乾杯しようぜ」シュポーン、シャンパンを抜く音もあり。舞台の裏方さんたちを「たくさんの布袋たち」と呼ぶファクトリー&ファミリー感。映画に出て侍や韓国ヤクザを演じたりするけど、Tシャツと皮パンでどこまでもロックな存在感。男の客が多い男のライブ行きたい。『LONELY★WILD』は何度も聴いてしまう。腕っぷし強い感じで、実のところ、寂しさ優しさを唄って、男たちに届いているのだ。

 

 

 

THE BEST OF RISU>>>PAST FUTURE FOLK SONGS

THE BEST OF RISU>>>PAST FUTURE FOLK SONGS

 

RISU/ENPEROR RECORDS

 長い年月、福間未紗を聴き続けたファン達に、まるで御褒美の様に彼女の在籍したバンド「リス」の音源が復刻された。奇跡。声、若い!CD=タイムマシン、神様、十年前のこのヒトに会わせてくれてアリガトウ。福間宇宙四部作にも唄われている名曲『ねじ』『火星』『クロアゲハ』の原曲がアナログ標本。フェスタマニフェストで「ユリの丘」として唄われた曲は『メビウスアイロン』という曲。同タイトル『ユリの丘』は最長7分半の、丘から空の移ろいゆく様子を描写した歌。ギター、オカリナ、大正琴のアンデス民謡風。人間にとって民謡が時として祭りや儀式である様に、宇宙の仲間との交信というコンセプトはずーっとずーっとあったのだろう。