筋少の大車輪

筋肉少女帯/トイズファクトリー
冒頭『これでいいのだ』の絶叫コールは ニッポン放送ライブでボヨヨンロックも熱唱してた伊集院光。赤塚不二夫の漫画、バカボンパパの決め台詞「これでい~のだ」のイントネーションが再現できずに何度もNGを出し、最後は投げやりになったオーケンが「もうバカボンパパじゃなくていいや」と諦めたとの後日談。オールナイトニッポン大槻ケンヂ水曜一部時代に、二部がオペラの怪人こと伊集院。イタリアのパヴァロッティの元で何度も挫折しそうになったが、噴水公園を見ながら固いパンをかじって頑張ったオペラ留学。その経歴全てがウソだったと私が知ったのは数年後。歴代筋少ギタリスト大集合で全員が順番で超絶のギターソロを弾く『大釈迦』が圧巻。→
TO-Y オリジナル・イメージ・アルバム

PSY・S、GONTITI、AMOR、くじら、楠瀬誠志郎、BARBEE BOYS、The Street Sliders、鈴木賢司、ZELDA/SONY RECORDS
ビデオアニメになった『トーイ』サントラ。サイズの松浦雅也が1987年の良きソニーレコードを切り取ったコンピ。楠瀬誠志郎、ゴンチチ等「サイズ プレゼンツコレクション」関係者が被る。バービーボーイズはめちゃめちゃ時代を感じる唯一無二のスタイルと世界観だ。レーベルの壁や制作費の限界はあったにせよ、この漫画絡みなら吉川晃司とレベッカは絶対入れるべきだった。入って無いのが残念。本編は発売当時に一回見たけど、江口寿史の『エイジ』と記憶が混ざっている。エイジは川村かおりだったな。→
旅荘カリフォルニア

掟破り軍団・見良津健雄&おたっしゃCLUB/コロンビア
日本語ロックの王様とか、アニメタルの路線。水戸黄門のメロディでどんぐりコロコロを唄う様な、複合の究極モデル。ディープパープル『ハイウェイスター』に合わせて『夢の中へ/井上陽水』を唄う。『スモークオンザウォーター』のイントロから『旅の宿/吉田拓郎』が始まる。極めつけは、エリッククラプトン『LAYLA(愛しのレイラ)』に合わせた『赤ちょうちん/かぐや姫』。「レイラァー!」のとこが「れいこ~!」に、センス良いのか悪いのか。気になって、掟破り軍団・見良津健雄&おたっしゃCLUBのディスコグラフィーを調べたら、企画物1枚「幸福の雅楽」というCDが出てた。タイトルでだいたい内容は分かる。→
Then

小谷美紗子/UNIVERSAL
主人公が、片思いのときめきで始まった唄が終盤にさしかかると、実らない恋を確信してたり、終わった恋の回想だったり。時に残酷な結末が、美しい情景になっているのは、誰かを想い続けた事による成長や、純粋の極みが描かれているから。自身が消滅するほどの献身。裏切られる背中で、犠牲と引き換えの積極。その点でわりと少女漫画のように感じることもある。ロマンスだけでない、えぐるような少女漫画です。生物としての人間に、なぜ「恋愛」なるものがあるのか、その部分の解答が小谷美紗子の「ラブラブではないラブソング」にあるように思う。ワンレイヤー上の議論、脳科学者茂木健一郎によると、恋愛は解明できない脳のバグ、ともいえるそうです。→
Love Vibration
Seiko Kobuchi/chaos souls records
ハミングのみで1分弱の小品やインストが入ってる辺りは、さらりと技を魅せてます。横ゆれ乗りのボサノヴァ系ポップス。ボーカルは語尾を張るもの、機械を通したもの、ウィスパーものなど、小渕世子引き出しバリエーションが聞ける。「人生、生きる」がテーマの唄とかは、もっと聞き逃せる程度のお手軽ハッピーな単語に置き換われば、全編通した時のウキウキ度が増すとみたが、歌詞の重みはあえて正面突破を測ったという印象。軽めの歌では、陽のあたる二人暮しのテーブルが見えてくる『幸せになろうよ』の路線が一番すき。カプコンの音楽制作部にお勤めでキョンシーとか功夫キッズ好きのWEBを運営していたね。→
発光トルネード

靈驗アカデミズム/independent*
センチメンタルでガーリーな天然植物エキス配合の和装ポップス。裏山の竹林を抜け、大鳥居をくぐり、ユリの丘から見下ろす未来風景。10年続けたバンド「二年生植物」時代の作品から代表曲をリマスタリングし、結社『靈驗アカデミズム』が発信するファーストアルバムとして世に送り出した、ファーストにして快心のベスト盤。アルバム全編を通じ、ボーカルのアキヨの歌声が、ケンイチウヂの鍵盤と融合、時には反作用し、声音から楽器へ、トラックから空間へと昇華してゆくネオ・ジャパニーズサウンド。信心と狂気の神社マニアックスな詞曲が目白押し。神秘的な21世紀の雅楽団は、この1枚をリリース後、神隠しの如く全ての情報が消えた。→
80年代の筋肉少女帯
筋肉少女帯/UG
1998年発売。ライブ記録ビデオテープからのキャプチャによるメンバーの顔をふんだんに載せたブックレット。収録音源もライブ記録からで、MCも臨場感あふれる。作品としてのテンションもいいが、オーケンがバンドブームを振り返った小説『リンダリンダラバーソール』と照らし合わせると哀愁が湧く。手探りだったけど体当たりの時代から、ファンが付き、手応えと確信の時代へ。大阪ライブでのエディ脱退時の彼のマイク「そんじゃ、俺の曲『夜歩く』」からのインストで終わる。これが80年代の筋肉少女帯。超高校生級のプレイヤーだった彼らが、よく大槻ケンヂの世界観に集ったな。YAMAHA主催の高校生バンドコンテストの常連で顔、見知り仲間だったという。→
EMPTINESS
横関敦/日本フォノグラム
パイプオルガンで幕を開ける宇宙の夜明け。あまりにも自由に伸び渡るギターがテルミン演奏のようにも思えてくる一曲目。やがて地鳴りの様なバスドラからJET FINGER激弾き開始。三柴理による鍵盤はピアノの音よりも、ストリングスやブラス、ヒューマンコーラスっぽいシンセサイザー音色が交わる。激しいドラムと浮遊感漂うシンセサウンドの間をクネクネキュンキュンと高速ギターが炸裂。シスターストロベリー的なパンクメタルではなく、メタルフュージョンといえるような音楽だった。ピックも持たずに目をつぶって陶酔しながらほうきを構えたい!猫背でチュルチュチュ弾かずに、胸を張りのけぞってギュワーンと溜めながらのポーズ。掃除機じゃダメ。→
ブッダ・大いなる旅路
中村幸代/POLYDOR
NHKスペシャル「ブッダ・大いなる旅路」サウンドトラック。大好きなドラマ「はみだし刑事情熱系」のBGMを手がけていた人だった。土着半分、ストリングス半分を織り交ぜた幻想的な音。『一粒の砂』などは、口笛と現地語の伝承民謡を導入に、アコースティックギターのパートにうつってゆく。チェロとピアノのアンサンブルはきれいだが、印象に残るメロディーはない。サントラだからナレーションとぶつからない為だろう。少ない箇所に入るアジアンコーラスのこぶしまわし「あぁあ〜」声帯が、悟りへの世界観を引き上げている。残念なのは『Main Title』で、何箇所かのメロディの続きが脳内で坂本龍一『ラストエンペラー』に引っ張られてしまう。→
イーハトーヴォ日高見
姫神/PONY CANYON
どんな人が好み?「ブラッドピットみたいな」。温かい雪国の人は?「うん、そう言われれば、それも好き」。どんなお話しが好き?「ロードオブザリングみたいな」。児童文学とかどう?「うん、そういわれれば、それも好き」。宮沢賢治の世界は大好きな好みの一番には来ないけど「…そういわれれば、それも好き」。このCDもそんな感じ。取り立てて何かキャッチなものがあるわけでもなく『風のマント』『堅雪かんこ、しみ雪しんこ』など、はじめにヒントありきで、イメージに随分助けられているイメージアルバムだこと。ブックレットは日高見の写真集。これが結構良い、北の民の霊力を放っている。古い学校の教室の写真もうれしい。宮沢賢治は学校の先生。→