SMART PANEL -57ページ目

CPU

CPU

Cat-rat/independent*
 ぽろろん叩くピアノの縦糸に、弦楽器の弓を引くような歌声の横糸。ピアノ一台と感じさせない彩り。意味不要な信号・暗号を、計算で含めていってるのなら、なんという危ういっぷり。無意識だったら、なんという才能。日本の宵月の詩が、ウィーンの朝の音楽にのっている「実は対極の融合」。縫製の見当たらない完璧なドレスを不思議に思いつつ、美しさに見とれる気持ちです。文系、理系みたいないい方ならば奇蹟系。一曲でしっとり一つの季節を過ごさせるくらいの名曲ぞろい。『高円寺ペンギンハウス Live CD』『吉祥寺スターパインズカフェ Live DVD』がファンの間で出まわっており、音源化していない代表曲はこれで聴ける。

花降る午後

花降る午後

 

ぱぱぼっくす/ドリーミュージック

 ビブラートじゃ無くて震えてるような声は、明るく唄っても悲しいし、悲しい歌でも明るく聞こえる。よくぞこういう人がいて、歌を唄う運命にのっかってくれたと思う。生まれ持ったものと音楽が合致したナチュラル味。ありがとうと言いたい。誰かの思い出みたいな歌と余韻を膨らますアコースティックサウンド。『花降る午後』などは、歌詞がほんの少しなのに、曲中いっぱいセンチメンタル。昼間てきとうに取り込んだ洗濯物を、夕方、きれいにたたみ直したくなる気持ちになります。ええ、胸いっぱいで冷静に。もうすこしだけそばにいて、っていう言葉も手をつないだりしているよりも、一緒に洗濯物を畳んでるイメージがあるんですが、これはなんだろう。

 

 

 

翔

ジャー・パンファン/パシフィックムーン
 おい、ジャーよ!やればできるじゃんか!二胡演奏はたしかに世界の頂点として凄いけど、アルバム作品として面白いかどうかで、私にとって退屈だった賈鵬芳。これ、いいよ!曲はパシフィックムーンレコードつながりの城之内ミサ。伴奏に次々入って来る楽器から、伸びやかな二胡の引き立て具合まで、一連のジャー・パンファン漢字一文字シリーズでは最高傑作です。中学生からおばあちゃんにまでお勧めできるアジアン・アンサンブル。中華飯店のBGMは十二人の女子坊に任せて、軽く世界を飛んじゃっている。これが二本の糸と馬の尻尾から出てくる音か。翔という一字が現す通り、フワフワとした浮遊でなく、起動も雄々しいくっきりとした飛翔感。

ふたりのイエスタデイ+9

ふたりのイエスタデイ+9

 

Strawberry Switchblade/KOROVA

 スコットランド産のエーツー。トミーフェブラリーのコピーで「やっぱり曲いいよね」と思っているのだったら「本家を聴け」と教えてあげたい。アナタにもチェルシーあげたい。90年初頭のシンセポップ。デジタルドラムなのにポッポポーの木管楽器が北国っぽい。今でも水玉の服着てる人を見ると2人並べばいいのにと思う。ところで、1997年くらいにnanaさんという人がつくっていた「ストロベリー・スウィッチブレイド」なるイラストメインの個人ホームページがあって、ある時、閉鎖しますと片足キックしてる女の子イラストの更新を最後にして消えた。あの人の作品好きだったんですが、どなたか御存じありませんか?

 

 

 

一期一会 Sweets for my SPITZ

一期一会 Sweets for my SPITZ 

 

椎名林檎、羅針盤、松任谷由実、ゲントウキ、中村一義、ぱぱぼっくす、セロファン、LOST IN TIME、奥田民生、つじあやの、POLYSICS、GOING UNDER GROUND、小島麻由美、他/ドリーミュージック

 スピッツ好きだけど一枚も持って無い。ベストを買おうと思ったけど、いつでも買える感じが買わない答え。この人選だったら、スピッツリスペクトで煩いコアファンも納得でしょう。椎名林檎、ぱぱぼっくす、ゲントウキあたりが良かったです。ぱぱぼっくす聞いたのは、ソーファーソングス以来。声が好きで気になってて結局、正体不明のバンドだった。詞曲が良すぎで誰が歌っても良い部分もあるけど、夢のコラボ感も見えてそういうところ気が利いてるよな。

 

 

 

 

 

壇の浦 完全版

壇の浦 完全版 西原鶴真

西原鶴真/independent*
 薩摩琵琶の弾き語り。全身にお経を書き込み、平家の墓場であまたの鬼火を相手に「ベケベンベン!」とやるあれです。耳にお経を書き忘れないように。琵琶の音もかっこよければ、貼った弦の振動をスローモーションで見ているような声の出し方も、楽器と完全一致しています。もちろん平家水軍の物語『壇ノ浦の戦い』も聞き取れつつ「うぃーん、みぉーん」という超周波が発信されていて、イルカやネコがいたら、共鳴して一緒に鳴きそう。「現代に珍しい」でなく「ただいい音!」まどろみながら聞いていると、黄泉の国へ連れていかれる。俳句詠みとのコラボライブを新宿で見たが、この才能をどこで露出したらいいのか、ひとごとながら考えてしまったよ。

国会

国会

談志2REVOLUTION(立川談志)/ULTRA
 ダンシダンシレボリューションの2nd。もう鈴木宗男からのムネオハウスのやりくちはわかったよ…。ネタモノテクノがやってきた手法で、いまさらだよ。立川談志の極めてプライベートで思っちゃったこと全部垂れ流しの動画配信番組「WEW現代の世相講談」を欠かさずチェックしている者としては、特に問題作というオーラはないのだが、談志グッズとして持っておきたい。前作より、談志が唄っているという点で、音楽作品的意味は上がっていると思う。節回しに後からバックトラックをつけてるだけだが。『国会』だけ、なんか音がスゲェと思ったらSEX MACHINEGUNSのパンサーが、ヘヴィメタル魂全開でギター弾いてる。

謎のかに星雲

謎のかに星雲

ハズレッシヴ/ハズレレコード
 これは音楽と呼ぶ前に、これはパワーだ。かけっぱなしにしていると、なぜか、お笑いライブでがんばってる若手芸人を思い出してしまう。歌自体はお笑い的な要素は無く、まったく真正面から大根斬り打法のフォークロック。何かを叫びたくて持て余して「パワー!俺を超えてみろよーっ!」とか叫びの掛け合いをしているあたりが、お笑い戦国時代のがむしゃらさとシンクロする。若者が、悶絶して前つんのめりで向かってゆく、かっこわるさ、雄々しさ。男たちよ、何歳までこれをやってくれるのか。何度目か見に行ったライブで、会場の客席で顔合わせたときに「あ、あの、こんにちは。ボクのこと覚えてますか?!」って聞いてきたけど、君たちを見に来たんだよ!

BALI dua

BALI dua

Jalan Jalan/Pacific Moon Records
 暑くて心地いい場所へつれていってくれよ、音楽。前回の『BALI』同様、激しい密林のバリでなく、潮風と砂浜のバリ。あえて言うなら本物の灼熱のバリよりも、妄想で憧れる夢のバリ旅行。さらに静かに繊細になった楽園音色に、ピアノとシンセが安心感を担当する。熱帯夜の温度も下がるスローテンポな全編がおわりに差し掛かると、CDのものなのか、実際の家の外の音なのか、さざ波の音が聞こえてくる。ファンタジーでなく、現実の範疇の神秘を閉じ込めた絶対夏夜グルーヴ。名前のない安っぽいヒーリングCDではない。これが、Jalan JalanやSORMAが音楽で描くパシフィックムーンブランドなのだ。

心の夜想曲

心の夜想曲

 

遠藤周作/NHKサービスセンター

 本人による講演のCD。話している事はエッセイ『心の夜想曲』『心の砂時計』『心の航海図』などで何度もなぞられている「話し上手になれなかったら、聞き上手になれ」などのお得意の持論です。年の功おやじつぶやき。元気な頃の遠藤周作の長いひとりしゃべりの口調から、イタズラ好きの先生がどんな調子で周りの人としゃべっていたのか想像するのもいいでしょう。本当の遠藤周作マニアには、プレジデント社のビデオ『母なるもの』がおすすめ。あの「沈黙」考察は泣けたなぁ。後から知ったけど、この講演はNHKに映像アーカイブがあり、それのオーディオだけをパッケージ化した商品なのですね。何年かごとに地上波でも再放送をしているようですね。