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21世紀への贈りもの ~OFF COURSE Melodies~

21世紀への贈りもの ~OFF COURSE Melodies~

岡本真夜、米倉利紀、山口由子、小谷美紗子、中西圭三、矢野顕子、小田和正、他/ワーナーミュージック・ジャパン
 オフコースのカバー集。今さらのポップスシンガーの一絡げ仕事的な企画感も拭えない。友達の結婚式の三次会で、直接知らない人たちのカラオケを聴いてるみたいな。あのがんばって唄ってる人、自分だけ気分良さそうだね。『言葉にできない』なんかオリジナルを超えられるわけない。小谷美紗子のアルバム未収録『さよなら』1曲の為にこういうのを買ってしまうのだったら、四角いアルバムにこだわらず、マキシもCDシングルも敏感にアルバム未収録曲を買い集めるべきか、そんな謎掛けを迫られる。うーん、他に興味があるのが『時に愛は』のスクーデリアエレクトロぐらい。

Tantras Of Gyuto

Tantras Of Gyuto

 

Tibetan Buddhism/ワーナーミュージック・ジャパン

 「やっぱさー、チベット密教だったらゲルク派 DA・YO・NE!」と知ったかぶって、他に何派があるのかも知りませんが。このアルバムは民謡などではない。数十人の僧侶による低く重い声の読経。チベットの古い寺でライブ録音されている。倍音が響いているかの様な、人の声が織りなす重低音「ヴァー」ボイスによる声楽マンダラ。歴史と伝統と文化とが寄り合わさって、この音声での響き、振動に辿り着き、今なお受け継がれて、若い僧侶から老師までが「ヴァーヴァー」と合唱を奏でるリアル。楽譜ではない、人の体を使った伝承の重みを体感する。数百年前も、同じ声が4000メートル超えの山頂に響いていたはず。

 

 

いつかの少年

いつかの少年

長渕剛/東芝EMI
 私がナガブチと言う時には、途上にあって『泣いてチンピラ』を指しているのであり、出来上がった極道者のことじゃありません。だいたい「ピーピーピー」から「ィヨーソロ」(大麻で逮捕の直前)までよ。黒いカラスよお前は寂しくないか、です。1994年12月1の3枚組ベストは93年の『Captain of the Ship』の後。完全に一区切り、ここでピリオド。集大成ヨーソロー!茶髪で「シャラララ、ララ」の荒野を駆け抜ける金色のライオンは、ちょっと別物というか、今はまだちょっと距離を置きたい。また「ウォウウォウオー」って真っ黒な格好でやる時が来るのでしょうか。ライブ版『ひざまくら』で喋ってるファンの人ずっとファンなんだろうな。

逆転

逆転

長州力/Sony Music
 「キレてない、キレてないですよ。オレをキレさせたら大したもんだ」と、くりーむしちゅー有田のモノマネもお茶の間に発表されつつある昨今。アキレス腱がキレちゃったときの長州力の復帰を賭けたメモリアルCD。長州力レスラー生活20周年記念パーティーのいろんな人の祝辞や、引退問題を語る記者会見を説明無しでそのまま収録、猪木の「長州、出てこい!」、さらに1993.4.6両国国技館の天龍戦の試合実況アナウンスなど。このCDが療養中の長州にどんなにエールを送ったか考えると凄い内容。「俺はまだ死なん!」とばかりにラストに響く『パワーホール』。新日本を出ていった長州が、新日本プロレスのど真ん中に立って、このテーマを響かす。

DEATH TOROIKA

DEATH TOROIKA

トモコDEATH/セレソン
 重機械音のデジタルビートに、岩を絞ってマグマを垂らすようなデスボイス。肝は『Death Toroika』のデス声で呪縛した後に『Clione』の様な力の抜けたウィスパーがくるところだと思う。男のデスボーカルではこうはいかない。1stがスペイン舞踏ミクスチャの「デスカルメン」、2ndが南米山岳民謡「anDEATH」ときて3rd「デストロイカ」。ロシア民族旋律がするりと絡む。いいデザイナーの仕事、印刷の発色が良い。外側が寒色のデジタル加工マトリョーシカで、内側は暖色で素のトモコのフォト。カタカナとアルファベットをシームレスに扱ったタイポグラフィ。この対比と融合のアートワークが、サウンドをそのまま現している。

ベランダの岸辺

ベランダの岸辺
のっこ/BMGジャパン
 全部あたたかいアコースティック。だから「のっこ」なのか。アルバムリリース当時、FMで『ベルベット・イースター』『わすれな草』などを聴いて純粋に感動した事だけ覚えていて、ゴーゴーレコードで手に取り「このCDだったか」と今更ながら購入。レベッカ~ソロと、いろいろ獲得してきた後。こういう力の抜けた大きな力を、音楽に閉じ込められる最適な収穫期というのが歌手にあって、その時期に録れたものは、聴かれる時期に左右されない本質的な愛情を放つのだと思う。ひとりの体からひとりの耳へ届く、体温のあるやさしい音。『わすれな草』のことをずっと「ベランダの岸辺」という曲名だと思っていた。歌詞には入っているが、そのタイトルは存在しない。

攻殻機動隊PSサウンドトラック

攻殻機動隊プレイステーションサウンドトラック

 

石野卓球、マイクヴァンダイク、ブラザー・フロム・アナザー・プラネット、ウェストバム、ハードフロア、スキャンX、ジョーイ・ベルトラム、アドヴェント、BCJ、デイヴ・エンジェル、他/ソニーミュージック

 「ゴーストインザシェル」のタイトルにテクノオールスターが集結。ゲームを持って無いのに買ってしまった。キラキラ少なめで結構渋い。あと一要素プラスでもっとアグレッシブになるのに、とよく考えたらゲームのBGMだから、プレイ中は操作音効果音が被ってるハズなのです。これは、ゲームも買ってきて、スタート画面から面クリアまでやったら聞き方変わるだろな。デリック・メイの『To Be Or Not To Be』はずーっとフィルタかかっていてクラクラする。

 

 

OVERROCKET

OVERROCKET

 

オーバーロケット/aten

 バンド名をアルバムタイトルにするタイミングは、デビューアルバムか、レコード会社主導のベスト盤か、自分たち史上最高の到達点。これは到達点だ。POPミュージックを一回りして、マリナーズバレーのある銀河へ帰還した美しい電子音『オーバーロケット』。ひそひそと呟かれるボーカルにも集中力は不要。安心して任せられる浮遊感。「フワー」と全体を包む空間音満載。ナタとかチェーンソーを振り回すやつより、部屋のスミで黒猫を撫でているやつの方が恐い。『Eerie Silence(不気味な沈黙)』がそれだ。聴き飽きる狂気のメロディーよりも、正確な美しい配列をずーっと聴いていると、内側からアタマがおかしくなってくる。そして心地良い。

 

 

 

真昼顔

真昼顔

 

Tsuki No Wa/THINK! POP

 深夜番組のジングルでもFuminosukeの声「ルルラ~」を耳にしました。浮遊する歌声と古美術屋の様なサックス。友人から1st、2ndを借りて、2ndを即自分で購入。その後で結局1stも。『雨音』『モンタギュ-・ヴェローナ』『帰らざる河』お気に入りを上げれば、全部曲名を書いてしまいそうだ。こんなに大人しく静かなCDに、何が詰め込まれて胸を突くのだろう。プロジェクタースライドショー投影のライブに行くと、空、緑、問いかけるキーワードと生音、そして酔っぱらったボーカルで最高でした。ブックレットの最後のページ、thanks to に福間未紗の文字が。いい音楽の予期せぬ番地でまたその名前を見る。

 

 

紫翠水明~遥なる二胡のしらべ~

紫翠水明~遥なる二胡のしらべ~

 

ジャー・パンファン&桑木野宏子/デラ

 ヒーリング専門のレーベルだけあって全曲ゆったり目。二胡のアーティストを全面に押し出した「演奏家CD」よりも二胡が控えめで、管やギターやアコーディオンがスーっと出入りして心地よい。のびてゆらぐ長引きの弓の音が他の楽器の出入りをうまくリードしている。『雨の日海岸で』などはそのアンサンブルの良さが全開して、古典でもポップスでもない現代二胡の情緒がある。二胡奏者二人名義にはなっているが、全曲作曲とシンセの佐野芳彦という人物が総指揮だろうか。ところで、癒しを前面に広告する爽やかなCDのほとんどに、エレクトーン的な骨格が見え隠れするのは何故なのだろう。全伴奏V-Synthで弾いているように聴こえるけど…。