SMART PANEL -53ページ目

adore

adore

小谷美紗子/HIP LAND MUSIC
 ピアノ中心の路線から、いわゆる鍵盤ロック、バンドサウンドへの移行は抵抗なかったというか、割と関心無かったのですが。新宿タワレコのインストアライブを見に行った時、『まだ赤い』のイントロがドガガ!ドガガ!と鳴り始めた時に「これだったのか!」とゾクゾクした。ピアノのアルバムアーティストという守備力が強いゲームキャラに例えたとして、今回身につけた武器や旅の仲間は、CDファンにはどう届いているのだろうか。私はライブで受けた波動で、ズバッっと打ち抜かれ、CDでもその鳥肌を想起されました。世界観は変わらず、恨めしさと寛容の振り幅は、光っては消える火花のよう。一曲ごと「まだ、聴いていたいのに」と、終わる。

DEGUNG BALI

DEGUNG BALI

I Gusti Sudarsana/RICKS RECORD
 インドネシア旅行のお土産に友人が買ってきてくれたもの。ジャケットにちりばめられたバリの楽器がー、とか言いつつ、聴いてると、あれ?あれれ?なんだか音質が最小値と最大値が狩り揃えられたように平坦。ライナーノートをよく見ると「Midi Prog」の文字が。なんだ!バリ島までいって、MIDI音源の自動演奏かい?ダメダコリャ!でも、現地にしてみれば、最先端のプログラムミュージックなのでしょうか。お土産屋に置くんだったら生演奏の方が価値があるぞ。そんなことより、瞑想の場でヒーラーと呼ばれる祈祷師に、催眠術のようなものをかけられガラスのコップをバリバリ食べたという友人の土産話に夢中。

OCEAN WONDERS

OCEAN WONDERS

Bernie Krause/WILD SANCTUARY
 波の音だけ入っているようなCDは珍しいジャンルでは無い。しかし、作品として仕上がっているものは少なく、その大半が「やすらぎ」をジャケットに記述し、ザーザーと波の音を録っているだけの退屈なものなので注意!『Ocean Wonders』はひと味違う。邦題は『不思議の海』。サラウンドで構築されたこの音は、波でなく海の世界をみごとに表現。岸辺の鳥、群れなす魚、海獣、多種多様な細かい海の音が次から次へと移り変わってゆく。「キキー」「グワーオー」と、鳴声が響いてくる、これも正しく海。遊園地のライドの様だ。シリーズで、森の音ではじまりジャングルのアニマルノイズを収録したものもあるらしい。

Quarternote

Quarternote

小谷美紗子/ユニバーサル
 4th『宇宙のママ』までのベスト盤。アルバム未収録3曲『STAY』『Quarternote』『帰ろう』が入ってるので捕獲。「一体どこのイケメンが、あたしに見合う相手かしら」なんて恋愛ゲームを歌ってる連中に爪を煎じて飲ませてやりたい。小谷美紗子の詞は、その愛も自省も、人同士の算段のもっと奥底の気づきを孕んでいる。「あなたのために、全ての犠牲もいとわない」そいう人に皆が出会えたらいいですね。出会う前にそういう風に生きていないと、出会える善人は不足する。幸せになっていいはずなのに、幸せを前にすると、私が幸せになって欲しいと願う人は今どうしているか真っ先に気になる。それは苦しいけど、そんな歌に共感できて良かった。

M.U.O.A.E.I.N.M.

M.U.O.A.E.I.N.M.

 

倍音S/VIONS DEN
 「べうぅー」ホーメイ、トゥバ、「びおんびおん」口琴、「うぎゃー」雄叫び。倍音盛りだくさん。伝統という古くさい権威無しで、単純にスゴイパフォーマンスとして、芸術的にホーメイが私の目の前にあらわれたCDがこれでした。雄叫びばっかりの曲も入ってる、こんなCDこれまで無かった。過去ライブ見に行った時には、頭から布を被って「顔はいいから声だけ聞いてくれ」って人とか馬頭琴弾きながら倍音の声で「サーンキュー」とかMCする人など変わり者の超絶ライブ集団だった。

 

 

 

macky and maron

macky and maron

masataka nasu/nas reco
 ほわーんとしたたぶん1音源で作られた架空の映画サントラ「マッキーとマロン」ということですが、物語りのサントラというより、ある場所のBGMっぽい。例えばUFOキャッチャーから定期的に流れてくる音楽や、デパートの屋上のキッズ向けのりもの遊具が動いている間に流れる音楽のよう。私的には相模湖の遊覧船乗り場の前にある型オチの筐体のならぶゲームコーナーの風景が浮かんだ。作者のファンタジックなこだわりなのだろう、ジャケットの四隅が丸くカットされている。そういうところ、好きだなぁ。パッケージは相当こだわっているのにCD-Rはあまり質がよくなく「プツプツ」と電子ノイズが乗って聴けなくなってしまいました。

EXHIBITIONIST

EXHIBITIONIST

ジェフ・ミルズ/AXIS
 通常2台のターンテーブルを3台で、ミニマルテクノをDJプレイする様子を複数の定点カメラで収録し、DVDマルチアングル形式でリリースしたDJ-MIX。完璧としか言いようのない挑戦とその結果。CD盤は収録限界で時間がDVDよりも短くなっているが、そのプレイに不足感は無く、こんな人間が実在したという偉大な証明になっている。DVDには真上からのカメラもあり、ダンスフロアからは見ることの出来ない視点で、何を操作し音を変えているのか、アナログレコードやフェーダー、つまみに触れる手元が見える。30秒くらいづつを無駄無くつなげてゆく凄さよりも、カッコイイことと精神的な深さと、体の反応する音がすばらしい。緻密であり開放的。

Avant La Pluie

Avant La Pluie

Mondialito/l'azur-record
 オールフランス語の電子モナムール。いったい、どの地区を舞台にどのシーンで盛り上がっているのか不明なのだが、知る人ぞ知るなのか海外でも発売されている、静穏系電子ウィスパーPOP。『僕たちの失敗/森田童子』をフランス語カバーしているユニットといえば一番雰囲気が伝わるだろうか。ドラマの経過を感じさせず起承転結の「承転、承転」を繰り替えし、もやもやした感情に浸りたいもやもや族に満足感を与える単館上映のムード。平日、水曜日の夜に見た映画が結構よかったみたいな充足感。ハリウッド大作ではない「この映画かなり好きだけど、えっここで終わるの?だけど余韻が…もう一回観たい」あの『ニキータ』タイプです。→

The Analogue Years

The Analogue Years

The Loop Orchestra/P&C Endless Recordings
 地鳴りの様な低い震動や、何か物体の接触する音や、かろうじて音楽といえなくもないサウンドの連結がスピーカーから聞こえてくる。もちろんこれだけ聞いていても、充分、簡素な私の部屋の空白を埋めるに足る音源なのだが、これは、別の音響系CDと組み合わせてかけたら、さらに効果を発揮する周波数帯が鳴り続けているのではないかとひらめいた。このCDによってしばらくの間、2CDプレイヤー4スピーカーで、静寂音響系アルバムを同時にかける試みに目覚めた。よくもまぁ、このような音がパッケージ化され、海外から輸入され、CDラックに陳列され、家のオーディオから再生されるものだな。

瘡蓋クリック(復刻版)

瘡蓋クリック(復刻版)

エーツー/オフィスギャフン
 私もはじめにエーツーを知るきっかけになった初期カセット作品がついにCD化。なんと『サウンド&レコーディングマガジン』ばりの本人による全曲解説付き。制作時の参加スタッフの事から、結成当初にいたというマネージャーの事まで語りまくり。読めば、彼女らがおよそ詰め込みたかったものが見事に入っていると感じるし、それ以上のゾクゾクする融合が起きている事に納得。無邪気なアイドル性、陰鬱な片田舎のロック性、歌うしかなかったフォーク性が渦巻く。溢れ出る、自分たちに対してのサービス精神。ファンに対してというより、エーツーに対してのリーダーと2号の相棒クリエイティビティ。誰よりもまずミュージシャンたちに愛され、広められた名盤。