Sweetest Day - Romance For Strings

金原千恵子/Grand Gallery
別フロアのDTPオペレーター女子、思った事全部言いたがりの夕子が「あたし葉加瀬太郎のあの曲が好き」とバイオリントーク振ってきたので、そうですかと。ライトサーベルを持つ様な金原千恵子のイントロ立ち姿から、セクシーパスタ林蔵の激弾きまで、ポップスバイオリンの考察をぶった後で、夕子がタレント葉加瀬太郎の、TVでちょっと聞いた曲が好きで、バイオリン自体には何の好みも無いことを、その目の光がみるみる消えてゆく様子から理解した。大切なのは引き出しでなく頷き。赤文字がっかり女子には共感の相づちを。バイオリンが本当に好きな貴方には、キングコブラと呼ばれたソリストの美しい擦弦の軌跡を!夕子の名言集はまた次回。→
街灯の下で
小谷美紗子/UNIVERSAL J
アルバム発売の開く期間に、たまーに昔のシングルを発掘している。『Then』の時期のアルバム未収録2曲の内の1つ『Un Deux Trois』は、故郷のお母さんに対して独り言を想うように始まる誰かの私小説。元彼に悲しい仕打ちを受けたこと、仕返ししようとしてやめたこと、素敵な相談相手がいること、昨日そのひとに好きですと言えたこと。仕事場で未来が無いと感じたこと。お母さんに教えられたことがいつも自分を助けてくれること。過去に『四季』や『crotchet』で唄われた悲恋のあの娘たち、好きな人の幸せを願うだけで良しとした主人公の誰かが、やっと大きな声で「好きです」と言えたようで、これはいい短編小説だった。→
Indigo Blue
りょう/WEA Japan
1996から1998年、音楽活動していた時の2nd。一体何がしたいのか分からないとの酷評が気になったものの、試聴できる環境が見つからず、どんなものか確かめたくて結局購入。1stと迷ったが決め手はジャケ写がカラーの本作。さて、答え合わせだが、おしゃれ目な朝本浩文ワークス。あなたわたし、愛情優しさ微笑み、どんな単語も、私小説に感じられない。でもこれ、メッセージを求める聴き方がナンセンスだよ。りょう自体が世俗離れした存在なんだから。求めるのはそこじゃない。りょうがジャケットやってるCDを自分の部屋のラックに置きたくて、おまけで中身も本人が唄ってると考えたら、なんというサービス!ってコトで需要供給成立でしょう。→
rie tomosaka best +3
ともさかりえ/EMIミュージックジャパン 「カレー部へ入ろーう!」「わーい!なんつって入るかーっ。ドーン!!」「あーれー」てな具合で、バタバタと活動している時に買わなかったタレントものCDを10年位寝かせて買ったりするのは、自伝本よりも本人がコントロール出来ない、ひどい歴史とか、曲提供者が自分では出来ないことをやらせていて奇跡的な曲が残っていたりするから。『エスカレーション』的なアイドルファン向け方面でなく、『少女ロボット』からのシーナ・リンゴ提供曲が+3のタイトルの意味。後になって解ると、仮歌の椎名林檎をいかに真似るかというチャレンジが、かっこよさの正体というこれはこれでともさかもいい仕事している。けど、カレー部に入る気はない。→
火の鳥2772 愛のコスモゾーン

樋口康雄/コロムビア
アニメのサウンドトラックだと、メインテーマを何パターンか弦が弾いてるだけの、なんちゃってオーケストラが多いけど、2772の完成度は遙かに高い。木管から、高弦低弦、と指揮者の全身での棒振りが伝わってくる。ソリストが17歳の頃の千住真理子、PROUDのTVCMばりの繊細で伸びやかなヴァイオリンを聴くことができる。火の鳥が謎の生命体として描かれ、コードナンバー2772はその怪物に対する名称、一つの惑星に化けたり、宇宙船よりも大きく翼を広げたり。アニメーションにとってそれが硬いか柔らかいかは音で決まる。エネルギーの羽毛で覆われた無敵の怪鳥が、どれ程のスケールで主人公に迫ったかは、このサントラのシリアスさが訴えている。→
EDENA 創世期「火の鳥・望郷篇から」

木屋響子/ジーベック音楽出版
一体、誰?!ジャケット見直したのは、アレンジャーやプレイヤーを確認するため。スペースオペラとしての壮大なシンセオーケストレイションと多重コーラスの「これはなんだ!」という驚きの高いカタルシス。火の鳥の中でアニメ化手付かずの『望郷篇』は、別の星へたどり着いた二人から違う文明が発達し、やがて故郷地球へ帰郷する物語り。ブルガリアンボイスとも中東旋律とも知れない、日本人が漫画に添えて創り上げたアディエマス。スタッフ記載は、作詞・作曲・曲・演奏・歌、全て木屋響子。アディエマスはフルオーケストラとクワイヤの大合唱だが、このサウンドを彼女一人で創り上げたことは、手塚治虫が一人で描いた漫画の水準に値するのではないか。→
Phoenix
SYSTEM7/WAKYO Records
「火の鳥」関連音楽で、チェンミン&チェコフィル起用も興奮したけど、今度はSYSTEM7が演るってだけで激震。彼らのアルバム12枚目として、この作品が世界に出回るのか。どこか東洋感覚漂うシンセパッドのイントロから、4つ打ちテクノと相性の良いスティーブヒレッジのギターがギュンギュン唸る。遥か未来と太古の日本を行き来するシリーズ通した漫画のストーリーそのまま。タイトルからして太陽編の『Wolf-Head』はその集大成か。ボーナス収録のPVも2007年クオリティのCGで、宇宙も時空間も一羽の母性が取り込む感じがすごい。サントラと違いイメージアルバムなので、唐突に流れを遮る小品も無いのがまたいい。→
火の鳥(NHKハイビジョンアニメ)

チェン・ミン、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、諫山実生、米倉利紀、中島美嘉/東芝EMI
しなやかな二胡+オーケストラ。二胡のCDとしては話題にはなったのでしょうか?数ある二胡演奏家のCDの中でも私はNo1で好きだ。ベートーベンの『悲愴』も憂いがあり、フルオーケストラの描く情景の中を、チェンミンのソロが優雅に飛翔し羽たたみ休める様子は壮大かつ野性味もある。ドラマチックさと、火の鳥のもつ母性の生命感とでもいうのか、描かれるテーマと強くマッチしている。擦弦の魅力。あ、2004年リリースものの悪夢CCCD仕様じゃないか!パソコンのドライブを壊すという、これ通常版で再販すべきでしょ。漫画『火の鳥』は全巻持ってます。一番好きな話しは未来編。 →
火の鳥 宝塚歌劇・花組公演

安寿ミラ、真矢みき、森奈はるみ、愛華みれ、他/宝塚音楽出版
火の鳥探しにフローラという星へ、途中アンドロイド星でロボットと心と愛みたいなテーマに触れるなど、解説を見るとオリジナルストーリーらしい。燃える愛、歓び、命、基礎表現力が尋常でなく高いトップスターたちが、ちょっと昭和っぽいメロディーでフィーっと歌い上げる。踊りながらのコーラス歌唱。高い、高すぎる。ヒョウタンツギのテーマまで用意されて「なんじゃろなんじゃろ」唄っている。劇中にメンバーの点呼をとるのだけど、サファイア、メルモ、トリトン、マグマ大使とか呼んで「ハイ!」と応えてる。ど、どんな衣装とメイクなんだ。『ベル薔薇』『ゆかりこ』にしても漫画原作の宝塚はキュンとするものがある。→
Best Selection Album「S」

北野井子/avex trax
1998年。X JAPAN YOSHIKIプロデュースによるデビューを飾った北野井子。現在では入手困難な7センチ短冊シングル盤の2枚を完全収録したベストセレクションアルバム「S」。全日本レコードの社長イワキさんがBBSのやり取りで「社長の娘がOLで入社してきた。扱いづらい感じ」と評した違和感が蘇ってくるビッグ感。『Begin』の時は、いろんなことを歪んだギターで煙に巻いていると思ったものだ。大人の事情が絡み合う素材をどう料理するのかという点で『薔薇と緑[Y.P.MIX]』はヨシキピアノアレンジで良作。しかし、シングル時A面扱いは[Y.P.MIX]で、またまたギターで濁しているなと思った。そこも聴き所。→


