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SPANNERS

SPANNERS

THE BLACK DOG/eastwest records
 1995年。グルーヴ機材じゃなくてシンセで丁寧に作っている時代の良さ。ゴリ押しのないふわーっとしたトラック。ジャケットの三頭一胴犬のCGもサウンド同様に過剰じゃなく、夏の日のそうめんの様にツボをついてくる。『Tahr』に聴かれるように、シャッフル気味のリズムがどこかお寺や神社でやってる夏祭りっぽい。宇宙的怪奇音と人の声が別の風景を見せる。2曲目『Bolt 1』の変則的な妙なリズムはサルサの拍子らしい。テクノボッサはあるけど、テクノサルサは世界初?とかソニックプレートのタケさんが言ってたと露骨さんに聞いた。テクノではないビートとアシッドベースの組み合わせが古いのに新しい。

ガラクタ

ガラクタ

螢/イオタ
 「小沢健二がLIFEの頃、なにしてた?」が、元オリーブ少女との表文化の確認だとしたら「何歳までQuick Japan読んでた?」が裏文化の確認。1999年スカスカの薄っぺら商業音楽CDが100万枚売れた時代。とにかく本物のテンションが詰め込まれた音を聞きたい、という時にQJ誌上に登場したのが、螢の自作詩の朗読。当時13歳の消え入りそうな声には恐怖感や絶望があって、年上の聴く者たちには弱者を守りたい思い上がりが存在しライブはカリスマ化した。その熱は少女の個人一点へ向かうものでなく、蛍の様な自滅少女のキャラが成仏できる世の中を作る方へ向かわなかればいけなかったはず。少女の詩は誰かを引っ掻いたはずなのに、世界は窮屈なままだ。

流行歌(はやりうた)

流行歌(はやりうた)

前川清/GUSS
 君はホントにアッコが好きか?和田アキコの再評価って結局、小西康陽やクレイジーケンバンドの鵜呑みでしょ。私は日本のソウルシンガーだったら前川清をアピールしたい。うぉうぉうぉうぉ~。その声は、歌謡曲や演歌という文脈を切り離しSoulとして自分の耳で確かめよ!このベスト盤に集結した名曲『東京砂漠』『そして神戸』『長崎は今日も雨だった』。内山田洋と前川清が区別がつかなかった頃に聴いた曲たち、覚えてる!なかにし礼『花の時、愛の時』も覚えてる!。糸井重里+坂本龍一=『雪列車』を初めて聴いたのは「オレたちひょうきん族」のYMO主演の時代劇コント「三匹の用心棒」だった。そのコントにはシーナ&ザ・ロケッツも出てたんだよ。覚えてる!

Delsole

DёL SoLё

DёL SoLё/Wonder of The Record
 強烈なストリートミュージシャンを前にしていつも「私はおカネを払う人になるぞ」と。感動しましたとか言って、路上の本人捕まえて音楽談義とかウソだ。話しをしたくて、悪く言わない人が褒める言葉とか、もう私は絶対口にしないで、開いたギターケースに千円札をホイッと入れるよ。それで音源持って帰って、おカネを払った立場で、誉めたり貶したりするよ。デルソルはインストバンドで、高円寺の高架下で通りすがりに惹きつけられた。人間性に触れている様なバイオリン体験は初めてだ。楽器の相性が凄く良いのだろうか、擦弦ひとつの憂いが感情として溢れてくる。ヒーリングほど澄んでない。どの曲も夕焼けが似合うのだ。

2046 オリジナル・サウンドトラック

2046

梅林茂、Nat King Cole/レントラックジャパン
 川田社長が『恋する惑星』のビデオ持ってきて「ほらこいつ、オンフェイじゃないか!」。腕時計に埋めるダイヤを香港企業はよく偽のガラス玉で納品してきた。初期ロット以外全部欠陥とか。社長はよく抜き打ち検査で中国へ行き、香港で遊び歩いた。女の子がお酌をする飲み屋でママに「この子はこれから芸能界デビューするの、よろしくね」と紹介され、社長がツーショット写真を撮っていたのがフェイ・ウォンだった。『夢中人』は日本で愛されラジオが繰り返しオンエア。次の職場で私はDVD『2046』販売展開の店頭デザインを担当するんだけど「あ、こいつオンフェイだ」って叫んで、偽ダイヤと川田さんを思い出していた。

Trapeziste

Trapeziste

 

KAHIMI KARIE/ビクター
 フレックスのコア出社時間スレスレ10時に出社する、朝来ないデザイン室の朝子。Yo-Kingが好きなあまり髪型からファッションまでYUKIになったところまでが前回のあらすじ。この朝子、ライバルはカヒミ・カリィ。二子玉川のスーパーでよく見かけるらしく、やれ、肌の張り、髪の水分量、アタシの勝ちだの吹聴するのでハイチューを与えて黙らせた!カムカムごっくん by カヒミ。全部小山田の手柄と言われ腹たったらしいギターを置き去りにエレクトロニカへ。ライブとか、クラブとか、年齢的にもうよくない?!クイーンズ伊勢丹で生ハムとチーズ買って、カロリーヌの絵本めくって家飲みだよ。そりゃカヒミだってスーパーで買物するよ。

Vendome, La Sick Kaiseki

Vendome, La Sick Kaiseki

SPANK HAPPY/キングレコード
 動画サイトにあるスパンクハッピーの『PHYSICAL』のライブ映像に関しては、私だけで100回くらい再生してるんじゃないかと。ライブといっても、菊地成孔は楽器も持たずに岩澤瞳は口パクで、CDに合わせてふたり揃ってゆるく踊るという。チャイナドレスに黒手袋でしゃきっとしないくにゃくにゃした踊りなにあれ!あと、間奏中になんか内緒話してクスクス笑うし。曲の、夢の中にいる感じとここまでマッチするかと感激すら覚える。フランス語展開や女の子の脳内つぶやき系ラップとか、ポップスにして古くならないバックボーンの深さも見え隠れ。ステージで手ぶらで踊りながら、俺のサックス最高とか思ってんのかなぁ。なにこの多幸感。

リニアモーターガール

リニアモーターガール

Perfume/徳間ジャパン
 DTPオペの夕子、会うなり「このあと用事があるから長く居れない」と宣言しておいて、ワイワイ盛り上がったらてめぇが喋って気分良くなったのか、終電まで居るパターンって、あの初めの宣言はナンなの?!帰るタイミング「次の用事が!」で自由離脱って話法だろ?盛り上がり次第で居るとか気持ち悪い。用事あるならお前来なくていいぞ!だよ。集まった人は予定あけて来てるのに。それで自信満々、Perfumeがキテると言ってたが。パッパラ河合ワークスの頃から、ヤスタカ氏は金沢時代から知ってるよ、とか口に出すのヤメて受け流す。上機嫌酔っぱらい女を電車で送る途中、ヘッドフォン半分づつの仲良し並びで聴かされたのがこの鉄道ソングだった。

結晶世界

結晶世界

 

Zemankova/independent*  雨だれの叩く木琴。曲が走り出し、遅れて聞こえてくる呪文のような歌声とハミングで構成された1曲目『Dawn-lullaby』だけが今回唯一のボーカル曲。チャリンチャリンと金属のあたる何かを降っている音だけの2曲目『時計の部屋』。オルゴール仕立てでセピア色の時間を逆回転させてくる『夏の腐れ月』。小さな歯車、振り子が延々と同じ運動を繰り返すコトコトと幾何学的で固い音符。鬼才アフロチカ女史が「岸田今日子がバンドを組んだらどうなるか」という一見奇異なコンセプトを、ボーカル的な語りでなく、インストロメンタルのサウンド面で確実にやってのけたアルバム。岸田今日子ミーツSteve Reichのコラボだ。

白い人 遠藤周作著

白い人 遠藤周作著

 

平幹二朗/新潮社

 もはやCDの内容紹介を放棄して雑談が続きます。音楽だけが大好物でNo Music No Life? そんな訳ないじゃん!日々の私は文学の話しばかり。部屋にはマンガもプラモもテレビも無く、遠藤周作の全作品が詰まった本棚があるだけ。パソコンへ向かう時より、文学に触れる時が自分に戻る時間です。文学は人の長い一生を短時間で知れること。どんな他人にも深い人生があることを忘れないこと。尊敬の無い人間関係は、生活と呼べても人生の時間ではない。2002年発売3枚組『白い人』は何の企画盤だったのか?ドラマではなく長い朗読。年老いて小さい文字が読めなくなっても、遠藤周作の小説を楽しむ準備はコレ。私は生活ではなく、人生の方を生きます。