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愛すべきものすべてに

SMART PANEL-愛すべきものすべてに

尾崎豊/ソニー
 雨宮処凛の『バンギャルアゴーゴー』文庫の2巻は、バンギャルが北海道の実家を出て、中央線の中野で自活を始めるまで。東京の子と文通できて、実際に会ったらダサい子だったけど上京の夢を運んできた。V系に心酔し高校のクラスに馴染めなかったけど、文化祭バンド男子との急接近。そして、娘を全否定し何もかも取り上げた母との固執が、若者の代弁者と呼ばれたカリスマロッカーの急死をきっかけに打ち解ける。狂信的ファン同士、出会えば友達も親子も共感し合う。でもバンドがテレビに出ても新聞に載っても、バンドと共に伝説を作った気分になっても、ファンはお客さんの一人に過ぎないという現実が、インディーズの黒歴史「PV撮影川飛び込み溺死事件」で描かれる。

LIVE LIVE LIVE TOKYO DOME 1993-1996

SMART PANEL-LIVE LIVE LIVE TOKYO DOME 1993-1996

X JAPAN/Polydor Records
 雨宮処凛の『バンギャルアゴーゴー』文庫の3巻は、V系成熟期の有名事件をフィクションに包み総括する。ボーカルが宗教に入信、総理が政党のテーマ曲にヴィジュアルバンドを起用、数万人のファンが集った築地本願寺の葬式、東京ドームのラストライブ。北海道から夢の東京生活を始め、バンドマンに貢ぎ、ドラッグ・風俗に堕ちた少女が、それでも自分を檻から解き放ってくれたロックに対し、ファンとしてのケジメをつける。破滅的だけど、彼女たちは生まれてきて、好きなものが見つかって全力で走った。一生のうち振り返れば4、5年かもしれない。本当に好きなことに夢中で、気が狂っていた期間だけが悔い無き思い出と後で知るだろう。

新人

新人

筋肉少女帯/トイズファクトリー
 ジャケットは浅田弘幸の描いた七曲町子。オーケンの青春小説『ロッキンホースバレリーナ』の表紙でもある。18歳で夏でバカだったバンド少年と元ミュージシャンの中年マネージャーとゴスロリバンギャルの三つ巴から「バンドの復活」を書いた長編。なぜバンドを始めたか?ロックに撃たれたからだ。ボンクラ野郎の弱い心を励まし、強く優しいものに変え、差別無く若者に夢を与え、友達を作り、天空まで高くほうり投げてくれたロック。ロックは必ず人を救う。だから逆に、ロックによって一度でも救われたことのある者は、自らもロックを奏で次世代のボンクラ野郎どもを導く義務がある。そして、Band is back!筋少もこのアルバムで復活した。

バンドブームとかそのころロック!

SMART PANEL-バンドブームとかそのころロック!

じゃがたら、有頂天、アンジー、ニューロティカ、マサ子さん、人間椅子、たま、ジッタリンジン、山瀬まみ、レピッシュ、FLYING KIDS、他/avex
 バンドブームコンピ。D[di:]の描くガールイラストはオーケンの自伝的小説『リンダリンダラバーソール』の表紙。バンドブームの後日談とサブカル少女との恋愛。全然社会性無いくせに「あたしは君のコト心配だからついて行くんだよ」スタンスで世間的な説教言うコマコ。演劇界とか美大生に居たよ!不思議君を修正する言葉を持ち、心を鷲掴みにする不思議ちゃん。唐突なラストを毎回忘れて読み返す度に感動。デビュー前のピエール瀧が「俺は変わらない」と言い、現在全く変わらないまま大河ドラマ俳優とかカッコ良すぎる。

蔦からまるQの惑星

蔦からまるQの惑星

筋肉少女帯/トイズファクトリー
 ジャケット浅野いにおじゃないか。この女の子のイラストは文庫版のオーケン短篇集『ロコ!思うままに』の表紙。ロコ!はバンド特撮の曲で、筋肉少女帯では唄ってない。おかしな相互関係になっている。父親と二人で暮らす少年ロコは、出ていった母の悪口を聞きながら密室で育てられる。喋る人形が出てくので、妄想ファンタジーかと思ったら、ありえる異常環境の殺人事件を現実舞台にきっちり書いた作品。虚実の皮膜を文章にする大槻ケンヂの才能が光る。悲惨な事が起きる現実、それを生きる為の底辺の勇気に救われる。どこへ行ってもアウェーの連続というこのアルバムテーマは、今時の社会人は皆感じてるはず。上がどかないと俺たちの時代なんて来ない。

オルフ:カルミナ・ブラーナ

オルフ:カルミナ・ブラーナ

小澤征爾、ベルリン・フィル、晋友会合唱団/ユニバーサル ミュージック クラシック
 カルミナブラーナは音圧を聴く為に何度かホールへ出向き鑑賞した。と、いっても大学オケだったり、合唱団メインだったり、ブラスバンドだったり。ちゃんとしたCDを一枚、と選ぶといろんな演奏がありすぎて悩む。合唱団「晋友会」は何度か仕事で見ていて「あー、思い出!」と縁あって購入。演奏もとてもいい!だけど、静かな部分と一番出ているところのボリュームの差がありすぎて、オーディオルームなどを持っていない中流ライフでは、全部を通して満足な音量で聴くのが大変。リモコンで大きくしたり小さくしたり(涙)。小澤征爾青年期の旅の自伝『ボクの音楽武者修行』は希望に溢れた名著だよ。

史上最悪オムニバス3

史上最悪オムニバスIII

月刊殺人、わに、肉奴隷、MOTE&SUZU、藁人形、マリコ18歳、KUSOMISO、ANAKLIST、世捨人、池野孝造、KOBAX、毒餌、ニーダカッセラーキルヒベイク、トイレの花子さんバンド、正太郎28号、九七式重戦車、幾見仁貴、DJ!アグネス、ボルティスV、道産子アナル、プチミット、デッドボディーアート/SSKL JAPAN
 中古店の埃の向こうに誰も手を伸ばさない史上最悪くそレーベルのCDがあったら、過去から私への手紙であるに決まっている。くそ音楽の向こう側を見るまでやり抜くコンピ。単純にこれだけの酷い音楽が集結し、CD化される事実、多くの人が渦を作ったそのパワーの証拠がこれ。活動は形にすれば、いつか出会うべき相応しい人に届く。

Indian Vibes Remixes

-Indian Vibes Remixes

Mathar/TOSHIBA EMI
 タブラ、シタール、ダルシマー、タンブーラ。なんという心地よくダラダラした音色の楽器。バザールを思い出す太鼓と弦楽器。インド辺りを特集するテレビ番組では、必ず使うわかりやすい1曲目に始まり軽快なリミックス7曲。いつ始まっていつ終わるかわからないインドの音を、イメージはそのままにカッコイイPOPSにしてある。シタールが醸す幻覚効果がゆらゆら効いてくるYellow Mix。Dawson's Dubはタブラに加えリズムマシンに焦点を当てており、Ballistics In Traffic Mixはシンセベースで応える。Virgin FRANCE 製。あぁ、再度インドへ行く為だけに朝の通勤電車に乗ている。

LOVELY

LOVELY
D・H・Y(Dog’s Holiday of Yawn)/SREVOC
 高円寺にビレッジバンガードが出来てからは、期待して出かける店でなく日常の場所となるこの頃。店内ではJ-POPのカバー集をレコメンドしている。熱狂的トリビュートでなく「この曲知ってる。あの頃懐かしい。イイね!」っていうライトリスナー向けの編曲カバー。CD屋でなく本屋展開での、コアな音楽ファンをターゲットから外している小品と思ってたけど、どうしても気になる。この暖かく届く女声ボーカル、只者じゃない。ついに手にとってみたらquinka with a yawnの別名義だった。『小さな恋のうた』『スターゲイザー』なんかをキンカバージョンで唄われればウルっとくるのは当然。

【Su】

【Su】

 

Quinka,with a Yawn/SOFTLY!

 ミツコさんの詞のコツは集合記憶。自分だけの思い出でなく、海に流れ着いた物を人間誰しもが拾ってしまう様な、猿の頃からの遺伝記憶に訴えるらしい。わかる!根源で肯定されている気がする。怒るや泣くの起伏は、なるほど素直な感情。ウソつき社会の取り繕いこそが人の毒なのだ。「もう二度と笑うふりはやめるの!」という『はるにれ』に猿だった頃の感情が深くうなづき、そのように仕事をしていたら、心から笑う機会なんて見事に全く無い。やがて、言葉さえ浮かばなくなり、逆に休日には延々喋り笑う反動で、顎関節症になってしまった。バランスがどうにからないものか。仕方ないので、リハビリがてら平日の作り笑いだ。