SMART PANEL -13ページ目

きけんなあなた

 

テンテンコ/THISTIME RECORDS
 「なんとなくあぶない」っていう言葉は、誰かを指していたり、自分だけが察知したことをそっとつぶやく言葉だった。コビッド19以降、疑問を持ちながら混んでる電車に乗っているし、旅行へ行きましょうみたいなキャンペーンを不思議な気持ちで見てたけど、私、泣いたりするのは違うと感じてた。世界には、夜歩くだけで理由なく襲われ、それも寿命だったとしなければいけない街もあると聞きます。そんな街は with バイオレンスなのでしょうか?犯罪や政策など人間が原因の危険は別問題で、慣れてはいけない、無視できないと思います。「許さない!」と勢いで叫ぶ歌よりも、「なんとなくあぶない」という歌が街に必要な気がします。

 

メウリー

 

Her knuckle/independent*
 ハーナックル『メウリー』の「吐き出したアイス」は胃液混じりでなく、道端で笑わせあって口から出ちゃったシーンが浮かぶ。緊急事態宣言解除後の学校再開で、制服の集団が通学路に戻ってきた。始業式は9月から、という議論が消えたのは、新しく変えるより、元に戻る事が望みなのだろう。今年は無効にして来年もう一度、同学年をやってはどうかと制服の集団を見ながら妄想はするけど。では目に映らない浪人生は?結局、無理しても予定通り次へ進むのか。気持ちが塞いで、酷くイカれて誤魔化して、あしたは来るなんて馬鹿みたいだと思っても、それを話せる相手が一人でも居たら敗北じゃない。泣いて笑わせ合ってアイス吐いて欲しい。

 

サマー

 

CY8ER/SMAR  

 『サマー』は、ずっと君に語りかける歌詞が過去のへの手紙のようで、もう話せる場所に居ないのにいつか会える約束に思えて切ない。バンドサウンドでなく、EDMのトラックで「レスポールで下手な歌を聴かせて」とか、構造がカッコよくサイバー空間に漂う寂しい余韻アリアリです。ハンドクラップとキックのドドンが無限ループをいざない、これはかかってたら踊るでしょう。なんなら、音頭に通じる振り付けでもリズムに合っているでしょう。2019年の夏をこんなに振り返る予定じゃなかった。2020年の夏が、新型コロナ禍でこんな事になっているなんて想像もしなかった。お台場の海の水はきれいになってオリンピックのトライアスロンをやっているはずだった。

 

マンガみたいな恋人がほしい

 

ナナヲアカリ/SMAR
 王道の逆張りは目立つためにやっている様でいて、自分でも気づかないDNA発露のサバイバル行動だ。全ての生物は、生きようとする。「消えたい」とつぶやく者でもその気持ちで臓器を止めることはできない。生物は、より生き延びる選択の為に、多くの同族が良しとするものを良いと思い込むようになっている。みんなが選んでいるものだから、聴いてみよう、観てみよう。自分で判断できない人は、そうやって生き延びる可能性を掴んでいく。ただ、自分で良し悪しを判断できるようになると、みんなには従えない。みんなの多くは、みんなが選んだことを理由にしていて、良し悪しは判断していないからだ。そんな種明かしをしてみせる私が言う『逆走少女』いい曲です。

 

ノーメイク、ストーリー

 

杏沙子/ビクターエンタテインメント
 ちょっと辛い出来事があって寂しい歌ばかりを聴いていました。でも、ショッキングな言葉は抱えたくないし、絶望を突きつけられるのは嫌。それでいて、のしかかってくるつらい気持ちのノルマを消費できる程度に自分を責めたい。そんな時に『見る目ないなぁ』を聴きました。自己を省みる「見る目ないなぁ」という言葉自体の響きがもつ諦め、慰め、情けない週末がこの歌の味覚。まみむめも、なにぬねの、は発音すると口元に甘い共感覚が発生する。ねぇねぇママあのね、なになにそうなのね。昔そこにあった、母との会話のような感触が「がんばったけれどダメだったよ」を、まずいお酒よりも懐深く包んでくれる。魔法の言葉が「見る目ないなぁ」だった。

HANDSIGN

 

HANDSIGN/Universal Music
 『この手で奏でるありがとう』は世界一静かな家庭と表現される手話の一家の歌。耳の聞こえない両親と、聞こえる娘の出来事。「なぜ、うちだけ周りの友だちの家と違うの?」は大小あれど子どもは通過するもの。なんでお小遣い少ないの?なんでゲーム禁止なの?友だちの家ではOKなのに。でも、わが家では日常だった、いつも家族全員揃ってごはん。映画館には行き放題。ありがとうと言ったこともない普通が、みんなの家とは違う素敵な事だったと後で知る。何かが足りなくて、何かが満たされていた。実話が元のMVの家庭の様に、平均中流家庭では「こんな家だけど夢へがんばれ!」と背中を押すでしょう。だからこの歌にシンクロした。

クソリプライヤー

 

有坂愛海/LJS Records
 「行けたら行く」からの「行けなくなった」が裏表なく自然に言える社会になるためには、と誘う側も考えます。来るか来ないかの即断を促す。行けない場合の理由を問わず、貢献度換算しない。結果来なかった人を誘わない。そうも出来ないから難しいのだろう。そこで、有坂愛海『クソリプライヤー』。こんな視点があったのか!その「行く行く、やっぱ予定あった」っていう君の趣味も、好きな食べ物も知らない。これは、すべて本気にして良い個人的関係か、状況でグループに居るだけの非個人的関係か、という分類法。そこで冷静に、私とあの人は非個人的関係だと、一旦落ち着いてから、そこで終わらす?!「本気なら会いにいけばいいんじゃない?」だね!

勿忘草

 

久保詩音/independent*

 普段の勉強がなぜ必要かというと、勉強していないと、初めに出会った魅力的な論理や錯覚を手放すことができないからだ。出会ってしまった何モノかを自分で感じた気持ちは、論理でも錯覚でもなく事実なので、その事実だけを大事にしてゆくのでしょう。友だちにいわせると、どうも私の彼はロクデナシ。でもアドバイスは実感に劣る。ラブソングだけが聴こえてくる。すったもんだがあって、彼と距離おいた時「今思い返せば、あの時の友だちのはなしも一理あったか」それも勉強。ただ、自分の判断のままに生きたことに後悔は不要だよ。魔法の飲み物『9%』の強いお酒で判断力を引き下げて乗り切った結果でも、自分で歩いたライフ。ひとつ勉強ができた。

雪恋華

雪恋華

 

市川由紀乃/キングレコード
 Twitterでは知らないけどInstagramでは有名な人がいるように、tiktokでも17Liveでも、その界隈の情報というのがあり、どんな経路にせよ、あまり自分で情報を掘り下げない私にまで存在が届くということは、いずれ広く知られる人になるのだろうと受け止めています。市川由紀乃のポスターを目にしたのは、カラオケスナック「夜のヒットスタジオどっこい」の店頭。東京滝野川少年少女合唱団ゆかりの地、駒込の情報発信スタジオスナックに貼られるポスターは名前をメモして聴くようにしています。氷の風、雪の華、冷たさが激アツい歌声『雪恋華』には、クレジットがありませんが二胡奏者の野沢香苗さんが美メロ伴奏を弾いています。

double rainbow

 

金丸悠子/danae records

 flawright『吉祥寺』や平賀さち枝『高円寺にて』が好きな理由は曲の良さ、後は勝手に思い浮かべる自分の心象風景だろう。それは『津軽海峡冬景色』よりも自分の歌なのだ。東京の町の子にとっての大自然は広い川だ。小学生は、川を超えて遊びに行ったらダメで、家出は土手を延々と自転車で走り夜に不安になって帰るのだ。「この橋の向こう側は何が見えるのかな」を実体験し、映画館やライブハウスを手に入れる。金丸悠子『多摩川』の水面に映る風景で思い出すのは「芽衣子さんは顧客管理をするために生まれてきたんじゃない」ってふたりで無職になる漫画、浅野いにお『ソラニン』。ふたりで無職暮らしで最後の思い出が、私にもあります。