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micro

micro

 

Quinka,with a Yawn/Softly!
 どんどん音楽をきかなくなってゆく。嫌いになったのではなく、自分がどんな人だったか忘れてゆく。プレイヤーの過去データをたまたまクリックして、これはいいなと思う程度。3年後にはもっと薄れていそうだ。検索結果、少し時代を遡るとSNS以前のファン語りは激減する。ブログと個人ページが消え去ったからだ。はたして私が音楽を好きだったことが、どこかに残ってるだろうか。探したならばそれ程再生増えていない音源がネットにあり、そこに自分のアカウントで高評価をつけた印があった。あの時の私はもう居なくなってしまったけど、あの年代、ちゃんと好きなものがあって生きていた、そのことが分かる、自分だけに分かる。

紫陽花の庭

紫陽花の庭

 

湯川潮音/EMIミュージック・ジャパン

 休日の天気予報で雨の確率がけっこうたっぷりめに盛られているような気がします。不公平感なく行動を抑制するための施策だったのかもしれません。雨の降り始める時間とパーセントの予報を見て、自然に外出を控え、当日の夕方頃「そういえば、今日雨振らなかったな」とか。住んでる場所によっては、予報通り雨が降っていたのかも知れませんが、東京の真ん中は「結局、晴れてた」というのが令和3年4〜7月の記憶です。曇りの日最高。雨は程々に降って止むのが望ましい。紫陽花の季節に雨が止むと必ず思い出のが湯川潮音「ツバメの唄」です。手を頭の上に上げて振ると楽しくなります。雨上がりは人の居ないところで謎のツバメ踊りをしています。

Boldly+

Boldly+

 

小松原沙織/Paper Rose Records

 楽器の音色のように機能する単語は発見だ。酒がうめえったら酒がうめえ。コロンコロンとスイングするピアノにのった時に、言葉の意味を超えてリフレインを始める。『酒がうめえ』は荒っぽい言い方ではなく、これには江戸の風が吹いている。稼いだ銭をパーッと「宵越しの金が持たない」なんて事はできないけど、その日のしまいに乾杯するのは街にお金を流すこと。そして思ったことを話すこと。仕事帰りに買ったコンビニスイーツ。写真撮って「おいしい!」とあげたら「いいね!」がついた。眠る少し前のそれは、グラスを持った人たちが言い合う「おつかれさま」に似ていた。明日は忘れることだけど、そうやって一日終われてよかった。

Mellow Madness

Mellow Madness

 

O'CHAWANZ/SecondFactory

 青春期の名曲を思い出してカバーしているような永遠のメロディに、未来の自分たちアラフォー女子が独白するタイムライン。仕事で渡米したがズレを感じ帰国した人、今の楽しさや安定を手放せず流されてた人、会社を辞め音楽活動をメインに続けてる人、かつての3MCが20年ぶりに再会すれば、あの頃のマイクロフォン・キャンディーデイズ。神様がくれた心のベストテン第1位は『PAST TIME PARADISE』。近年、大人の女性が幸せのカタチを自分で決めることで社会構造変革の必然を描く映画、ドラマ、小説が発表され続けている。人生は自分のもの。オチャワンズのパストタイムパラダイスも魂の響き合う幸福確認抒情詩。

記憶線

記憶線

 

あみのめ/Karappo Record
 スマホのバッテリー残量が半分以下になってるのに、ゲームの中でパワー回復アイテムを使ってしばらく集中していると、無意識の中では充電が回復していたような錯覚をしていて、バッテリー残10%のアラートにびっくりした。あみのめの「サヨナラ」のPVを見ていたら、ぶらりと出かければ不思議な音楽のライブを毎日あちこちでやっているそんな日常に居るような気分になったが、ニュースを見ればまた外出自体が控えるべき日々が続いている。誰が出てるか知らないけど、高円寺無力無善寺や八丁堀七針にふらりと入って、いいバンドをみつけて、次に出るらしいライブハウスへ初めて行ってみて。その日々は街の記憶、陽射しの記憶、出会いの記憶。

クライザライト

クライザライト

 

山本紗江/independent*

 M-1グランプリは結成10年規定で芸人に辞めるきっかけを与えていたが、10年たったコンビがピン芸でR-1に、ベテランピン芸人が結成初年でM-1に挑む時代。諦めないやり方がいよいよ分かってきた。高度経済成長の様な景気は来ないなら思うまま生きよう。夢憧れに棘の道は覚悟の上、飽きないうちは挫折は無い。次に立ちはだかる最大の試練は数十年後、親の介護かも知れない。諦めない秘訣は、健康な心と体で集中できる時間を確保できるだけの収入を得る労働環境。今どきバンドやシンガーなど皆職業を持ち10年を超えていく。マイクを買いカメラを買い自宅から、諦めない先の先を始めているシンガーの力強い歌がポケットの端末で鳴り出す。

ラムネの向こう側

ラムネの向こう側

 

洸美/Shine On Music Co., Ltd.

 ハミングしながら茶畑の丘を越えていったら台湾に着いていた様なhiromi『一杯茶・イベイツア』の軽やかさよ。ポットのお湯に入れると花が咲くように膨らむ茶葉なんて知らなかった!目で鼻でお茶を楽しむなんて知らなかった!他に知らないこと、あいうえお五十音や鼻濁音と和製英語以外の自分で発せられない語感や12音階の間の微分音。その心地よさを知ること知らせることがJ-POPのアップデートの一つの方法でもある。「台湾系J-popシンガーソングライター」なるラベルを見たときのワクワク。台湾系J-POPのもたらす和み溢れた慕わしさは、スウェーデン系J-POPには出せない茶の味でございましょう。

音幻燈

音幻燈

 

Limeism/independent*

 偶然通った場所でアジアフェスティバルを見た。フードトラックに衣類雑貨の出店。ステージでは、中国、ベトナム、台湾のダンスやバンド。その中、チベット山岳民族が遠距離通信の手段としてつかう高音歌唱をピアノ弾き語りしていたのがリーメイズムでした。日本の街角で、生でこの歌を聴ける事が奇跡的。アジアの某大国が、ある小国の文化や種族を根絶やしにしようとする現実があるなら、平和な街のイベントで両国の歌が披露される生活を失ってはいけない。歌い手が存在する意義。『くじらざめ』では小さき者が交錯して行く別れを大きな運命に委ね、諦めも良しと自分の道を行く。自分の果たすべき使命を固く信じる者の詩として聞こえました。

ポンコツのうた

 

麻緒/independent*

 『ポンコツのうた』のミュージックビデオがマルチバース。ギターを持つシンガーが「わかるよ。大丈夫、大丈夫。おっと変なやつが来たっ!」と寄り添うけど、主人公の女性には見えていない。これは、聴いている歌が人間の姿で生きている世界と、私たちが重なって存在する多元宇宙。居ないけど関わってる。見えないけど影響している。時間も場所も超えて聞く人の心に働きかける歌は単なる音のデータではなく、実は隣を一緒に歩いている人なんだとビジュアル化されていて、「がんばれ!」だけでなく「私にもおせんべいちょうだい」とか関わってきてくれる。神様でもカリスマでもないのが良い。歌人格だって自分の夢を聞いてもらったらなんだか嬉しそうだ。

水面へ/僕らは飛べるようにできてる

水面へ/僕らは飛べるようにできてる

 

みねこ美根/POWERPOP&Co.

 歌を唄う人が気になってネットで検索したときに、音楽以外の活動が並列、あるいは渾然一体となって発信されているとワクワクする。踊って唄い、弾いて唄うのと同様に、歯科医になって唄ってもいい。みねこ美根のMV、実写コマ撮りのクラフトアニメーションがiPhoneでの自作なのも惹かれる。クラフト作家として映画作品をテーマに指輪を創作する『映画の指輪のつくり方』のコラム連載を持ち、溢れ出るカルチャー紹介やクラフト魂は、その文体とともに本人を知れる楽しさがある。唄う人が歌詞について、喉の調子について毎日しゃべり続ける総配信時代。甘えなく手のひらで作り出した作品で魅了し、音楽に目を向けさせる作家がここに居ます。