君はQueen
ぷにぷに電機/PARK
COVID19で1年。行列に並ぶバツの悪さ。外出や帰省も断罪される日々。人が集まる場所に集まりすぎる問題が緩和されて有難い。過剰な集客広告は最適に落ち着いた。自分だけが知っている誰も話題にしていない夜景スポットなど、そんな場所を持っている人たちの勝ちです。私以外来ないで欲しい。「本当のリア充はSNSをしない」と言ったのは誰だったか。「取って置きのお気に入りの場所」と連れてってもらった夜のペデストリアンデッキ。開放的な広場のオブジェの陰で「大きく息を吸うと焼肉の匂いがするよ」とふたりで深呼吸した。君は下々の暮らしの灯りを見下ろすQUEENだった。この場所にみんなが集まってしまわないようにタグ付け投稿無用だよ。→
SUMMER SHOT
ストロオズ/MIDI Creative
2000年リリースの『MAZY REPEATER』は、豊かなストリングスアレンジと同時に、レトロピアノ弾き語りバージョンが存在していた。どちらもすごく小さい場所から溢れ出し、どこかへ向かいたい思いが渦巻くサウンドだった。しばらくして『MAZY REPEATER』の数字譜が出回った。古典楽器、和楽器などで演奏する楽譜で、ポップスの数字譜が珍しかったことから古典楽器の入門者が弾いていた。それは一瞬、ストロオズの存在を離れて親しまれていたと思う。2020年、時代的にオフィシャル動画など無いと思っていたら、今、演奏しているライブ動画があった。祝高校卒業とか雑誌記事になってたあの子が唄っていてくれた。→
JAPRISON
SKY-HI/avex trax
ミニ四駆、ベイブレード、そんなポケットの中の熱血バトルのひとつが仮想空間のガンプラバトル。まぁ、ネトゲだけど。現代、アニメのオープニングでも「悪の帝国をぶっ潰せ」「男なら泣くな強くあれ」などの、特定の価値観を前提にして子どもを先導するワードに関して誤解が無いように作詞も気をつけるという。そこで言葉を扱うSKY-HIが、ガンプラバトルの少年少女たちへの投げかけが「No.1を愛せ」だ。最高じゃないか。一番は誰かひとり「No.1を目指せ」じゃない。目指すのは各自の選択。しかし、一番を愛する視点を持つとそこに関わるたくさんのものに理解と尊敬が生まれる。がんばっている人を愛すと自分もがんばる力が湧いてくる。→
A Lovely Way to Spend An Evening
Ann Burton/アブソードミュージックジャパン
曲や人や楽器を紹介する機会を何年か続けているうちに、自主盤手売りだった人がテレビに出ていたり、世界的大スターを思い出さず忘れ去り、世間も変わる。ビートルズの曲を誰もが知っている日本ではないし、知る人ぞ知るジャズシンガーの知名度など地下アイドルに等しい。買わなくてもいい聴き放題にその曲があり、一回触れば音が流れるのに誰も聴いていないとしたら、語られていないということでしょう。AIはいまのところ結局、反響が集まってない事象をレコメンドできないので、まだ人間が語ることの一次情報が大事。みんな、語ったほうがいいよ。知る人ぞ知るジャズシンガーのビートルズカバー、アン・バートン聴いてねー。→
夢耳心地
ビン笛合奏団 Laマーズ/NIPPON CROWN
マスクしながら合唱や運動をしている人らは、ウイルス感染防止ではなく、心の安定の為でしょう。何もしないで寝てるのは感染防止にも環境問題にも有効だけど、認めてもらえない寂しさがある。世の中のルールが変化しつつある今、私にはいい体験もあった。映画館は隣に人が座らない方が良いし、ライブも時には静かに熱い拍手のみでいいと思った。積ン読の小説を読むのは今、いつか聴き返すために所有してたレコーディング作品を聴くのは今。複数名でガラス瓶をホウホウ吹く合奏をリクライニングチェアで聴いている。高円寺の駅前で彼らを見た時に『結婚行進曲』を吹いてもらったことを思い出した。それは今でもCD未収録曲ですね。→
megaphonic
YUKI/ERJ
昔のレンタルDVDにあった特典映像。映画公開時の舞台挨拶、メイキング映像、アイドル女優のインタビュー。配信の時代、無くても困らないコダワリが消えていく。だが、捕獲者には有利な初回生産限定盤を発掘購入しやすいメルカリ時代の到来。YUKI『megaphonic』はBOXケースから出す紙ジャケが左右観音開きの8面アート写真。左右からCDとDVDを抜くとスリーブ内側にもアートワーク。展開すると大判ポスターになる歌詞カードが2枚。収納するときにヌルっと収まる感触は写真では伝わらない。愛おしい中央線の銭湯ソング『2人のストーリー』も全5分20秒収録。YUKIの男装と加瀬亮の女装に、10年の歳月がジェンダーな意味を与えたよね。→
Rokket Khaos
HAL FROM APOLLO '69/TOSHIBA EMI
このバンドが世界を塗り替えると、本気で思ったことはありますか?広告費とかプレス枚数、大衆音楽のマナー、そんなことまだ分からなくて、受ける衝撃が全てセンスの血肉となった吸収期。「このバンドが世界を塗り替える」とゾクゾクして過ごせた時間は最高だった。CD EXTRAをMacintoshで開き、防毒マスクが必要でドラッグ漫画で覚醒する近未来を覗き見た。「あとは知られるだけ、先に気づいた我々は選民なのだ」という自覚から、布教のつもりでMDを渡した友人は私を差し置いてライブに行き心酔していた。それが今のヨメです。愛娘の名前はHAL-Aです。ハルフロムアポロ'69からつけました。→
Valentine
ACO/AWDR/LR2
ラジオから『揺れる体温』が流れたら休憩することにしていて、2020年の今でも不意にあるブレイクタイムです。そうしている私にとってACOは休憩サインをささやく精霊。J-POP試聴機で見た、よくFMで聴く、やがて携帯プレーヤーで詞よりも耳の感触を繰り返し。それが、深く自分の一部に変わったのは、これからどうなるのか誰もが不安で答えの無かった2011年3月末の深夜、ラジオで鈴木謙介が選曲した『バラ色の世界』だった。助かった。先頭で旗を振るリーダーでなく、ずっと同じ環境に居た透明な精霊が、瞬間目に見えたような希望。年月が過ぎ、同じ環境に居た精霊もこの段階、これからの若い子たちに対する愛情を『未成年』で歌ってくれた。→
MATOUSIC
竹内アンナ/テイチクエンタテインメント
最後には、感じのいいものが勝つ。そういう時代をつくるために力を貸してほしい。ビッグデータから最適なものが導き出される。東大入試を通る程度の知能を道具として、ポケットに入れ持ち歩く世界はもうすぐ。お互いが損しないよう、得するようにAIが厳密に判断し、条件を擦り合わす折衝は無人で行われる。だからこそ我々は、人と接したときの切り札として、感じの良さを評点として尊ばなくてはいけない。竹内アンナの音楽の、この感じの良さをデータ分析せず「なんかイイね!」といい続け、人間が定める価値とすることで人間でいる。星は3でも5でもない。クールかわいいにピンを刺さない。竹内アンナは、なんとも言えずなんかイイ!のだ。→
MISS UNLIMITED
PassCode/ユニバーサルミュージック
その昔、お茶の水ディスクユニオンに通いデスメタルを漁っていた。デスボイスと重鋼鉄、人の叫びから無機質な響きまで、それは怒涛。全方位に鳴ってると思っていた。それが、細分化の果てミクスチャの先端に、パスコードが登場して分かった。女の子の声は鳴ってなかった。男女平等といいつつ閉塞的男性社会である世間に気づけなかった時代、男スタイルをなぞったフィメールボーカルのスクリーモに「不足」と言ってた過去の自分を謝罪。男形を演ずるのでなく、女の子はそのままであらゆる表現をやることが本然の魂。指先で風を切る、見得が決まった笑み、全身で大気を揺らす、音色では無いが空気の振動。ダンスさえも音圧。全て鳴っている。→