SMART PANEL -12ページ目

ラムネの向こう側

ラムネの向こう側

 

洸美/Shine On Music Co., Ltd.

 ハミングしながら茶畑の丘を越えていったら台湾に着いていた様なhiromi『一杯茶・イベイツア』の軽やかさよ。ポットのお湯に入れると花が咲くように膨らむ茶葉なんて知らなかった!目で鼻でお茶を楽しむなんて知らなかった!他に知らないこと、あいうえお五十音や鼻濁音と和製英語以外の自分で発せられない語感や12音階の間の微分音。その心地よさを知ること知らせることがJ-POPのアップデートの一つの方法でもある。「台湾系J-popシンガーソングライター」なるラベルを見たときのワクワク。台湾系J-POPのもたらす和み溢れた慕わしさは、スウェーデン系J-POPには出せない茶の味でございましょう。

音幻燈

音幻燈

 

Limeism/independent*

 偶然通った場所でアジアフェスティバルを見た。フードトラックに衣類雑貨の出店。ステージでは、中国、ベトナム、台湾のダンスやバンド。その中、チベット山岳民族が遠距離通信の手段としてつかう高音歌唱をピアノ弾き語りしていたのがリーメイズムでした。日本の街角で、生でこの歌を聴ける事が奇跡的。アジアの某大国が、ある小国の文化や種族を根絶やしにしようとする現実があるなら、平和な街のイベントで両国の歌が披露される生活を失ってはいけない。歌い手が存在する意義。『くじらざめ』では小さき者が交錯して行く別れを大きな運命に委ね、諦めも良しと自分の道を行く。自分の果たすべき使命を固く信じる者の詩として聞こえました。

ポンコツのうた

 

麻緒/independent*

 『ポンコツのうた』のミュージックビデオがマルチバース。ギターを持つシンガーが「わかるよ。大丈夫、大丈夫。おっと変なやつが来たっ!」と寄り添うけど、主人公の女性には見えていない。これは、聴いている歌が人間の姿で生きている世界と、私たちが重なって存在する多元宇宙。居ないけど関わってる。見えないけど影響している。時間も場所も超えて聞く人の心に働きかける歌は単なる音のデータではなく、実は隣を一緒に歩いている人なんだとビジュアル化されていて、「がんばれ!」だけでなく「私にもおせんべいちょうだい」とか関わってきてくれる。神様でもカリスマでもないのが良い。歌人格だって自分の夢を聞いてもらったらなんだか嬉しそうだ。

水面へ/僕らは飛べるようにできてる

水面へ/僕らは飛べるようにできてる

 

みねこ美根/POWERPOP&Co.

 歌を唄う人が気になってネットで検索したときに、音楽以外の活動が並列、あるいは渾然一体となって発信されているとワクワクする。踊って唄い、弾いて唄うのと同様に、歯科医になって唄ってもいい。みねこ美根のMV、実写コマ撮りのクラフトアニメーションがiPhoneでの自作なのも惹かれる。クラフト作家として映画作品をテーマに指輪を創作する『映画の指輪のつくり方』のコラム連載を持ち、溢れ出るカルチャー紹介やクラフト魂は、その文体とともに本人を知れる楽しさがある。唄う人が歌詞について、喉の調子について毎日しゃべり続ける総配信時代。甘えなく手のひらで作り出した作品で魅了し、音楽に目を向けさせる作家がここに居ます。

君はQueen

君はQueen

 

ぷにぷに電機/PARK

 COVID19で1年。行列に並ぶバツの悪さ。外出や帰省も断罪される日々。人が集まる場所に集まりすぎる問題が緩和されて有難い。過剰な集客広告は最適に落ち着いた。自分だけが知っている誰も話題にしていない夜景スポットなど、そんな場所を持っている人たちの勝ちです。私以外来ないで欲しい。「本当のリア充はSNSをしない」と言ったのは誰だったか。「取って置きのお気に入りの場所」と連れてってもらった夜のペデストリアンデッキ。開放的な広場のオブジェの陰で「大きく息を吸うと焼肉の匂いがするよ」とふたりで深呼吸した。君は下々の暮らしの灯りを見下ろすQUEENだった。この場所にみんなが集まってしまわないようにタグ付け投稿無用だよ。

SUMMER SHOT

SUMMER SHOT

 

ストロオズ/MIDI Creative

 2000年リリースの『MAZY REPEATER』は、豊かなストリングスアレンジと同時に、レトロピアノ弾き語りバージョンが存在していた。どちらもすごく小さい場所から溢れ出し、どこかへ向かいたい思いが渦巻くサウンドだった。しばらくして『MAZY REPEATER』の数字譜が出回った。古典楽器、和楽器などで演奏する楽譜で、ポップスの数字譜が珍しかったことから古典楽器の入門者が弾いていた。それは一瞬、ストロオズの存在を離れて親しまれていたと思う。2020年、時代的にオフィシャル動画など無いと思っていたら、今、演奏しているライブ動画があった。祝高校卒業とか雑誌記事になってたあの子が唄っていてくれた。

JAPRISON

JAPRISON

 

SKY-HI/avex trax

 ミニ四駆、ベイブレード、そんなポケットの中の熱血バトルのひとつが仮想空間のガンプラバトル。まぁ、ネトゲだけど。現代、アニメのオープニングでも「悪の帝国をぶっ潰せ」「男なら泣くな強くあれ」などの、特定の価値観を前提にして子どもを先導するワードに関して誤解が無いように作詞も気をつけるという。そこで言葉を扱うSKY-HIが、ガンプラバトルの少年少女たちへの投げかけが「No.1を愛せ」だ。最高じゃないか。一番は誰かひとり「No.1を目指せ」じゃない。目指すのは各自の選択。しかし、一番を愛する視点を持つとそこに関わるたくさんのものに理解と尊敬が生まれる。がんばっている人を愛すと自分もがんばる力が湧いてくる。

A Lovely Way to Spend An Evening

 

Ann Burton/アブソードミュージックジャパン

 曲や人や楽器を紹介する機会を何年か続けているうちに、自主盤手売りだった人がテレビに出ていたり、世界的大スターを思い出さず忘れ去り、世間も変わる。ビートルズの曲を誰もが知っている日本ではないし、知る人ぞ知るジャズシンガーの知名度など地下アイドルに等しい。買わなくてもいい聴き放題にその曲があり、一回触れば音が流れるのに誰も聴いていないとしたら、語られていないということでしょう。AIはいまのところ結局、反響が集まってない事象をレコメンドできないので、まだ人間が語ることの一次情報が大事。みんな、語ったほうがいいよ。知る人ぞ知るジャズシンガーのビートルズカバー、アン・バートン聴いてねー。

夢耳心地

夢耳心地

 

ビン笛合奏団 Laマーズ/NIPPON CROWN

 マスクしながら合唱や運動をしている人らは、ウイルス感染防止ではなく、心の安定の為でしょう。何もしないで寝てるのは感染防止にも環境問題にも有効だけど、認めてもらえない寂しさがある。世の中のルールが変化しつつある今、私にはいい体験もあった。映画館は隣に人が座らない方が良いし、ライブも時には静かに熱い拍手のみでいいと思った。積ン読の小説を読むのは今、いつか聴き返すために所有してたレコーディング作品を聴くのは今。複数名でガラス瓶をホウホウ吹く合奏をリクライニングチェアで聴いている。高円寺の駅前で彼らを見た時に『結婚行進曲』を吹いてもらったことを思い出した。それは今でもCD未収録曲ですね。

megaphonic

megaphonic

 

YUKI/ERJ

 昔のレンタルDVDにあった特典映像。映画公開時の舞台挨拶、メイキング映像、アイドル女優のインタビュー。配信の時代、無くても困らないコダワリが消えていく。だが、捕獲者には有利な初回生産限定盤を発掘購入しやすいメルカリ時代の到来。YUKI『megaphonic』はBOXケースから出す紙ジャケが左右観音開きの8面アート写真。左右からCDとDVDを抜くとスリーブ内側にもアートワーク。展開すると大判ポスターになる歌詞カードが2枚。収納するときにヌルっと収まる感触は写真では伝わらない。愛おしい中央線の銭湯ソング『2人のストーリー』も全5分20秒収録。YUKIの男装と加瀬亮の女装に、10年の歳月がジェンダーな意味を与えたよね。