SMART PANEL -9ページ目

CITYGIRL

CITYGIRL

 

TOKYO HEALTH CLUB/OMAKE CLUB

 『CITYGIRL』はどこのシティ?MVは渋谷で歌詞を追うとかなり漂っています。家に帰るより渋谷に居たい。やくしまるえつことボブ・マーリーは名前を出す事で思想を表明しているが「グレープフルーツちょうだい」には国分寺市のゆらゆら帝国が隠されている。「明日も働かなきゃなんない、朝から」という事実を反復し、お気に入りの音楽をシャッフル再生しつつ不夜城の繁華街をブラつく。一日夜まで働いて寝る前には、気晴らし後の印象で終わる脳内ハッキング。「明日も働かなきゃなんない」そう、生活の行き詰まりの原因はだいたい労働。労働環境と労働条件が豊かであったなら。その充実の余裕で他人も自分も許せる。

 

 

 

亡國トライデント

亡國トライデント

 

トリィ/おんこう(noble mama record)

 海に沈んだ国、日本という國があったらしい。海の底から発掘した三味線を入門書を見つつ弾いてみた録音。沖縄三線のトダ、ギターのネリザベス、三味線のイヤーンが弾き語り。toda、riz、iyaanでtri=鳥居。神社マニアを漂わせる和楽器旋律はいいのだが、楽器を持って2週間くらいの辿々しさ。少しだけ霊験あらたかな音楽トリィの『亡國トライデント』。2分前後の録音22曲、その後に21分のアンビエントの大曲『引越し海底都し』が収録されているが未成との表記で発表。このエレクトロ楽曲に弦楽器の演奏が乗った状態が完成形だったが、楽器演奏の習得が間に合わなかった。…という筋書きも全てコンセプト。

わたしは部屋充

わたしは部屋充

 

のん/KAIWA(RE)CORD
 ハイスペックMACに買い換えようと時期を伺っていましたが、捨てられかけていたPCをMACの横に並べたら色々解決した。古い製品ながらもテレビ番組が録画できる。2台でもクラウドを使うと同じデータをいじれるし、本体2台強し。これが最近の『わたしは部屋充』です。世界中の自分の部屋にいる人たち。出会いもマッチングアプリからお食事へ…よりもリアルに会いもしないメタバース誕生です。ってネトゲ、アメバピグ、セカンドライフつまりアバターで自己表現。実態の美醜について語れない時代にキタコレ。アバターにも趣味はにじみ出る。あんな髪型やそんな名前のキャラには近づこうと思わない。でも協力プレイから始まる長い関係もあるよね。

 

 

 

マイエンフェルト+ニンチェンタンラ

マイエンフェルト+ニンチェンタンラ/nrt-EG

 

nrt-EG/おんこう(noble mama record)

 小鳥やヤギの声がする、動物の歩調を音楽化したアース系の電子音響。1~10曲までの21分を1台目のCDプレイヤーで再生。2台目のプレイヤーで11~20曲目までの21分を同時スタートすると、4チャンネルの音響作品になる。1~10は「マイエンフェルト」西洋の山からの旅、11~20は「ニンチェンタンラ」東洋の山からの旅。8と18曲目だけは共通の副題「海獣島」ここで旅する命は邂逅する。ラストトラックには4チャンネル音響と8人の生演奏で一度だけ実演されたライブ音源も収録。成田EGのCD「マイエンフェルト+ニンチェンタンラ」。なんだかよくわからないけど普通に再生できないなんてすごい。

Bedroom Pop

Bedroom Pop

 

anzu/徳間ジャパン

 1995年ケン・イシイ『Jelly Tones』を遡り、寝起きする部屋で制作した曲をヨーロッパのレーベルに送り1993年にはR&Sから既にデビューしていた経緯を知ると、ベッドルームテクノという定義にテクノクリエイターは沸き立った。やがてPCでの作曲が標準になり、ベッドルームという単語は忘れられていたのだが。2020年最年少でグラミー賞4冠を受賞したビリー・アイリッシュが繰り返す言葉「今自分の部屋で曲を作ってる少年少女たち、まだ見ぬベッドルームの天才たち、そのままでいい、なんだって可能なんだ」。都市のロックダウンと配信アップロードの末、2021年にデビューしたアーティストは、自分に対する大歓声をまだ知らない。

 

 

 

英雄〜笑って!ショパン先輩〜/ハムカツ黙示録

ハムカツ黙示録

 

BEYOOOOONDS/zetima

 食の情報細分化が進み、もう全ての食物の中で天下を取ることの意味は薄くなった。カツ丼も天丼も牛丼を倒さなくてよい。むしろ、牛丼一筋の企業が親子丼をつくり、広くごはん処として新しい出会いを模索している。日本全国酒飲み音頭が発明した飲食のワンジャンルソングも、ラーメン食べたい、カレーライスの歌という大きな枠の椅子取りゲームはすでに終了している。ここから先はどのメニューを歌うか競争だ。愛好家界隈に届くのか。熱量や尊敬やダジャレは入っているのかが問われる。『ハムカツ黙示録』はジュワーッとくる。ネガティブとも取れるは「はぁ?!ムカつく」のセリフは被害者側の心情で「負けてたまるか!」にポジティブ転換される。

 

 

 

 

カレーのうた

カレーのうた

 

snap/POPTOP

 スパイス料理にハマっていました。ターメリック、クミン、コリアンダー、チリペッパーを安い外国人街のマーケットで購入。ついでに多くのレシピに登場するにんにくと生姜もパウダーで購入。鶏肉やサバなどを煮込んで粗熱を取りジップロックで冷凍保存。弁当のご飯のよこにスパイス料理を入れて出かけるとご飯がすすむ!というわけです。それで、レシピ本をある程度つくってみて気づいちゃったんだけど、スパイスがなくてもそもそも焼けば美味しい肉や野菜に、スパイスあえるとおいしいスパイス料理になる。カレーの歌だって、メロディやバンドアレンジがおいしければ、スパイスを使わなくてもおいしい。スパイスに対して期待と魔法が問われるのがカレーの歌だ。

 

 

 

生まれ変わったら

生まれ変わったら

 

ゲシュタルト乙女/UNIVERSAL MUSIC JAPAN

 『三色菫』はさんしょくすみれ。もしも小さな国日本が侵略され、日本人が地球上にバラバラに逃げた先で、郷に従い暮らしていったら、あっという間に日本語は失われてゆく少数民族の言語です。学んでもメリットの無い言葉。それでも各国の文化系少年少女たちが、漫画を原語で読み、アニメやゲーム音声をオリジナルで聞くために日本語を勉強したとしたら、台湾のバンドがインディーズポップ文法の日本語で唄っているとしたら。日本好きの人たちの存在が、実はかけがえのない日本の血脈です。憧れの東京は、3年前に大量オープンしたタピオカミルクティー店が、台湾スイーツと看板を変えてカステラやゼリーを売っています。

 

 

 

You've Got A Lion

You've Got A Lion

 

BLACKUR0/independent*

 一晩中踊り続ける人たちのクラブパーティーではなく、コツコツ音響をやっている人が出るライブ企画の一夜というのが、都内には割とあった。音量ではない音圧と呼べるものがあって、抑えた音楽なのに服が振動したり、ヌンーという頭への圧迫がファーと開放されるあれは現場独自のおもしろさ。そんな電子音響が配信になったときにはスマートフォンのスピーカーやヘッドフォンで天井の照明や壁のポスターは振動しない。ゲーム機を持つ人たちのSNSの様な、普段からエレクトロニカやエクスペリエンスなEDMを偏愛するオーディオスピーカーを持つ人たちの「見つけた、見つけられた」その歯車で電子音響が鳴り始める仮想空間はどこでしょう。

 

 

 

戦争は終わりにしよう

戦争は終わりにしよう

 

SEVENTEEN AGAiN/KILIKILIVILLA

 「僕はただ居場所が欲しかったんだ」という著作権フリーのセリフを人間関係や環境の描写で肉付けするにあたり、『戦争は終わりにしよう』と戦争がない時に言うことで、あの人との軋轢もマインド的には戦争だったと気づかせる発明であったはず。大きなことをズバッと言い切る、その言葉と同時に収益は寄付しますといった平和活動でもない。まさか2022年に、露骨な侵略戦争の経過を目の当たりにするとは思わなかった。指を加えて見ているだけとはまさにこんな体験のこと。それでも数年前のメロディを思い出して、フフフフンはフフンフにしよう〜♪なんて鼻歌になるこの歌はなに?無力さを迎えにゆく一日、束の間の祈り。