HOLIDAY
PSY・S/ソニー・ミュージックレコーズ
サイズの圧倒的な懐の深さを魅せつけられる。1、2曲目で、今回はこんな風なのねとストリングスアレンジが全体のムードをつくるアコースティックなポップス。『Moonshine』には歪んだギターも『最後の楽園』では街のノイズも入っているのに、耳の後ろあたりでシンセの不思議な音が回り込んで柔らかくフワフワしている。メロディ、コーラス、言葉を置くように唄われることで醸成される寂しさと混ざりあった優しさは、まるで眠って見る夢の中の納得。シンプルなイントロから聴き始めてから最後に壮大な風景が広がるなんて思いもしなかった『ひみつ~perspective lovers』は、アルバムラスト1分の奇跡的感動体験。→
BLUE-YELLOW
オッドアイ/おんこう(noble mama record)
DJXの完全記録『DJX1 BLUE-YELLOW』は、1998年発売のYAMAHA DJX PSR-D1、青と黄色のキーボード1台のみで作られた。テンキーで呼出す100スタイルの全プリセットと283ボイスで、思いつく限りのプレイを60分に集約。ダンスサウンドをスタートさせ、直感的な5つのノブ、リボンコントローラー、フットペダルで過剰なサウンド加工とトリッキーなリズムの変化も可能。DJの名を初めて冠したこの鍵盤楽器はチープなグルーヴマシーンと評されたが、実際の功績は家庭向けポータトーンの流通経路でテクノ、ハウス、ヒップホップの重低音バスブーストを体験させた意欲作であった。→
手塚治虫講演CD集 〜未来への遺言〜
手塚治虫/日本音声保存・エニー
CD6枚組の手塚治虫トーク集。医者になった経緯を面白く話す。戦争中で医者不足。死体はあるので医者見習い5人に1体くらい割り当てられ、よく知る前に解剖してた。医者になるつもりは無かったが身体小さくよい兵隊にならないとみられてた。出会い似顔絵書いた先生に呼ばれ医師になった。冨永一郎先生らとスペイン旅行のはなしとエロマンガ島へも行ったエピソードはオリジナルの落語としてレパートリー化してる感じ。漫画ブームが来て自分だけ5日徹夜できるのでバリバリ仕事をこなしたという。成人式の講演では、国際化社会になってゆく、小さい組織の肩書で調子に乗るな、誰に対しても威張るな、そして「君たちが選挙へいくのは仕事だよ」と言う。→
SILVER-RED
オッドアイ/おんこう(noble mama record)
DJX IIの完全記録『DJX2 SILVER-RED』は、2000年発売のYAMAHA DJX II、銀と赤色のキーボード1台のみで作られた。パターン0~69の全プリセット、全ライブエフェクト、本体機能のスクラッチ、アクティベーター、思いつく限りのプレイを60分に集約。ディレイ、ディストーション等をオンオフレバーで、エフェクトの深さをツマミで、BPMやノイズをスクラッチパッドで演奏。初代DJXが家庭向けポータトーンとして初年度販売予定台数10万台に対し、IIはテクノ、ハウス、ヒップホップ、ダンスグルーヴサウンドを即興で演奏する先鋭的マシンとして5,000台販売された。→
SIGNAL
PSY・S/ソニー・ミュージックレコーズ
アルバム『Non-Fiction』『ATLAS』『SIGNAL』が最も心酔した3枚。解散後は、LIVE PSY・Sの音源収集のためVHSテープを探し回った。ライブでノッてるチャカの歌+コーラスはCDを超える表現力だった。個人的にDVDや音源データにして楽しむ中、『SIGNAL VICTORY TOUR』が手に入らなかった。高円寺線路下レコード屋RAREで見た時に5,000円以上したので「そのうちDVDで発売される?」なんて期待もあって救出しなかった。今なら…今はVHSデッキを失ってしまった。偶然動画で見た『GIMMICK』はCD品質の電脳都市でなく、恐竜暴れる丘に音楽で戦う魔術の様だった。→
即興の都市計画
swallow park/おんこう(noble mama record)
公園に座り周辺の光景を指揮者とする野外即興演奏部のonoと高円寺テクノフリーセッションのTokyoによるパフォーマンス。電子楽器の全シンセサウンド、ドラムマシン、ループサンプラーでお互いが全パートを次々と入れ替える。イベントでは、上映した公園の映像に合わせ即興演奏を行った。スタートの5拍子は人の手が加わっていない自然で、移行する4拍子は人の決めた生活サイクル。自然の中に人が街を作る『都市計画』20080615西麻布 Bullet's、近代化する都市の中に公園を作る『人工庭園』20080823八丁堀 七針。緑と人間の関係の変化する経過を2度のステージで描いた。→
踊り子
Vaundy/SDR
TVCMもPOPSも変化した数年後、新型コロナも旧型になったら『踊り子』は「あの頃」を彩った代表曲。CD盤は無く、MVは2021年の小松菜奈。熱くはない愛の歌、それでいて愛は永いものだと疑わない。叫ばないライブは居心地が良く、僕の前で踊るあの子に強引はダメだ。土足で踏み込むこと無く、好意を表明し、共感を得やすく自己演出。あの子に選ばせるし、選ばれるよう努力する。今を生きる感覚では、お互いの違う意見をぶつけ合うのは疲れるのだという。争わない、奪わない、大切な相手に合意を得るのは性に合ってる。この年、バウンディは20歳の大学生。黙食を強いられマスクの下を知らないディスタンスで、大学生たちは優しい恋に落ちたろうか。→
Sweep Station Depth Live
Terata Mina/おんこう(noble mama record)
泳ぐイルカを操りテクノサウンドを即興演奏するプレイステーションソフト『Depth』は1996年発売。2007年のジョン・C・リリー博士追悼イベントでは、寺田美奈操るデプスの美しい海中探検の画面を巨大スクリーンに投影しライブプレイ。CDJサポートメンバーが声ネタを重ねるミキシングはまさに海賊。CD化の際に機材解説のおしゃべりを加え、全クルーズステージを網羅する2章構成に。『太陽』冒頭のトークが、YMOロンドンライブを紹介するFM番組のオマージュだと。『霊』中盤の精霊が現れるフレーズが、hideの死後zilchが出した「SKYJIN」オマージュだと誰が気づくのか。→
ノスタルジック・ハイウェイ
TENDERLAMP/OCHAMED Records
2021年の不要不急の外出を控えた日々の中で、商業音楽の作詞家は出口のセレモニーと時期を考えた。あるグループは2022年の春頃に「もう閉じこもることはない。我々は勝利した」という歌をリリースした。そんなムードが次の感染拡大を手伝ったのではないかと。再度、緊張の夏。現実、最もふさわしいドライブソングは、物理的な移動距離を伴わないイメージの中の『ノスタルジック・ハイウェイ』。暗闇に横になり瞼の裏では高速道路を走っている。いろんな風景を見たはずなのに、長野県の諏訪湖サービスエリアからの夜景だけ郷愁を感じ覚えている。あの時がどんな時だったのか、思い出の答え合わせが出来る人はもういない。→
Beat Planet Music 100 Loops
Terra Terminal/おんこう(noble mama record)
ビンテージシンセでもファミコンのチップチューンでもない。2000年発売のプレイステーション『BEAT PLANET MUSIC』で2007年に制作した100ソング60分の音楽。ゲームプレイでは音ネタを集めて地球を4周。白藤女史のフランス語音声はCDRにした後ゲーム内にサンプリング。ビートプラネットミュージックは、シンセ、シーケンサー、サンプラー機能も備えていた。メモリカード5個を満タンにし、フルスペック使い切り。海外のマニアにも届いた。スイープステーション制作関係者に繋がり、裏技を教えてもらった。音楽完成をクリアし世界とつながるゲームが現実まで拡張した。→











