PIC-NIC
PSY・S/Sony Records
「さんまのまんま」エンディングだったというイントロ79秒の『WOMAN・S』は、私が初めてコンピューターで鳴らした音楽だった。MSXファン掲載SOUND文の英字をひたすら打ち込み、RUNで鳴り出すPSG3和音+ノイズ1音の8bitサウンド。ピアノ代わりのピコピコ音とスネアだけのリズムでも大興奮。エンベロープ値を変えて音色変更を体験。この時まだ原曲を聞いていなかった。タイトなドラムに斬新なコーラス、豊かなシンセサイザー。「メリハリのあるアレンジはこうやるのだよ」と語る、先生に対する憧れに似た尊敬が湧いた。そして、雑誌編集部でライターがピックアップした紹介文で音楽と出会うという、私の原体験だった。→
嘘のような本当の話 第二集
なぎら健壱/テイチクエンタテインメント
2005年発表。歌無し漫談のみ!一つは「電車の席で居眠りしていた男性のチャックの上に、つり革で立っていた女性のハンカチが落ち、目を覚ました男性が慌ててハンカチをチャックの中に締まった」という完成度の高いネタ。嵐の相葉雅紀が目撃談として同じ内容を話していた。そもそも彼は電車に乗るのか?パクリ?いやこれは、落語として師匠に稽古をつけてもらったではないか。相葉君に二代目なぎら健壱を襲名する覚悟はあるのだろうか?もっと現実的に推察すると番組で一緒になった時に、この漫談を気に入った彼に「よそで使ってもいいよ」と、ライセンス料を取って売ったのではないか。ともかく盗作疑惑を晴らす為にも明らかにして欲しい。→
POWERS OF TEN
YUKI/エピックソニー
ソロ活動10周年記念ベスト盤。特筆すべきは新曲で収録された『世界はただ、輝いて』。歌手は自分が唄うことを歌にしたなら、その曲は絶対感動が命題で、またこの曲は10年の結晶を体現する使命があった。歌詞には歴代ヒットタイトルが織り込まれる。ハミングバード、ハローグッバイ、ワンダーライン、長い夢、汽車に乗って、惑星に乗れ、ランデヴーと10年の走馬灯状態の只中に語りかけてくる。そう、語りかける。ステージやミュージックビデオで踊っていたスクリーンから、生身のYUKIが腕を伸ばしリスナーを掴んで力強く宣言する「悲しい気分なんてベイビー吹き飛ばしてやるんだ!」。懐古から不意打ちのフレッシュな衝撃、これこそがポップスター。→
百合
スイートウォーター/ノーブルママレコード
ノーベル文学賞作家川端康成のコピーバンド、スイートウォーター。ノーブルママレコード数年越しプロジェクト「おんこう」進行中の2011年「コピーバンドやります!」と出現。川端康成短編集『掌の小説』から『百合』を完コピ。主人公の女性は、愛した人そっくりになりたい。小学校でクラスの可愛そうな子を真似て鉛筆を短く切り、しもやけの子を真似て寒風の中でしもやけになり、結婚後には夫と同じくヒゲを付けて軍にも志願しようとするが、その同化したい愛は夫に理解されず。愛に憤る百合子はついに神様の声を聞く。無垢な神秘ボーカルであるヨーコの活動atatakanashigusaよりリリースされ公開期間は1年程であった。→
ロブスター
THE HIGH-LOWS/キティ
2022年4月から12月までNACK5の深夜番組に、毎週テーマに沿う3曲セットをリクエストするコーナーの投稿にハマっていた。自分だけのルールとして持っている音源か、最新の曲を含める場合には購入した。適度に放送向きのポピュラリティを含めつつ自分だけの基準で桜、月夜、異国情緒、海、怪物などのリストを作成し3曲に絞る。夜中に元気が出るのようなテーマのときに、引出し総ざらい手持ちの音源再評価で、バッチリ掘り起こしたのがブルーハーツ『月の爆撃機』、ハイロウズ『真夜中レーザーガン』、クロマニヨンズ『ナンバーワン野郎』だった。オンエアは最終回までに複数回採用され、それらの曲を更に好きになるいい思い出で終えた。→
DJX is you.
オッドアイ/おんこう(noble mama record)
左スピーカー用と右スピーカー用に60分MIXを別々に用意。右と左同時スタートし噛み合い溶け合う。ヘッドフォンでは分からない。左右のスピーカーは離れているほどよい。例えば広いイベント会場の端と端。その間を歩いて移動すると、曲がLからRにシームレスに切り替わる。自由にグルグル走り回ると2つのレコードをクロスフェードで操っているのと同じ様なもの。アイディアの最終形は、1F化粧品、2F婦人服、3F紳士服、4Fキッズフロア、5Fレストラン、6F屋上遊園地、階ごとに別だが噛み合い溶け合う音楽を再生し、エスカレーターで移動しながら途切れずに階に合った音楽が変わってゆくビジョンであった。→
HOLIDAY
PSY・S/ソニー・ミュージックレコーズ
サイズの圧倒的な懐の深さを魅せつけられる。1、2曲目で、今回はこんな風なのねとストリングスアレンジが全体のムードをつくるアコースティックなポップス。『Moonshine』には歪んだギターも『最後の楽園』では街のノイズも入っているのに、耳の後ろあたりでシンセの不思議な音が回り込んで柔らかくフワフワしている。メロディ、コーラス、言葉を置くように唄われることで醸成される寂しさと混ざりあった優しさは、まるで眠って見る夢の中の納得。シンプルなイントロから聴き始めてから最後に壮大な風景が広がるなんて思いもしなかった『ひみつ~perspective lovers』は、アルバムラスト1分の奇跡的感動体験。→
BLUE-YELLOW
オッドアイ/おんこう(noble mama record)
DJXの完全記録『DJX1 BLUE-YELLOW』は、1998年発売のYAMAHA DJX PSR-D1、青と黄色のキーボード1台のみで作られた。テンキーで呼出す100スタイルの全プリセットと283ボイスで、思いつく限りのプレイを60分に集約。ダンスサウンドをスタートさせ、直感的な5つのノブ、リボンコントローラー、フットペダルで過剰なサウンド加工とトリッキーなリズムの変化も可能。DJの名を初めて冠したこの鍵盤楽器はチープなグルーヴマシーンと評されたが、実際の功績は家庭向けポータトーンの流通経路でテクノ、ハウス、ヒップホップの重低音バスブーストを体験させた意欲作であった。→
手塚治虫講演CD集 〜未来への遺言〜
手塚治虫/日本音声保存・エニー
CD6枚組の手塚治虫トーク集。医者になった経緯を面白く話す。戦争中で医者不足。死体はあるので医者見習い5人に1体くらい割り当てられ、よく知る前に解剖してた。医者になるつもりは無かったが身体小さくよい兵隊にならないとみられてた。出会い似顔絵書いた先生に呼ばれ医師になった。冨永一郎先生らとスペイン旅行のはなしとエロマンガ島へも行ったエピソードはオリジナルの落語としてレパートリー化してる感じ。漫画ブームが来て自分だけ5日徹夜できるのでバリバリ仕事をこなしたという。成人式の講演では、国際化社会になってゆく、小さい組織の肩書で調子に乗るな、誰に対しても威張るな、そして「君たちが選挙へいくのは仕事だよ」と言う。→
SILVER-RED
オッドアイ/おんこう(noble mama record)
DJX IIの完全記録『DJX2 SILVER-RED』は、2000年発売のYAMAHA DJX II、銀と赤色のキーボード1台のみで作られた。パターン0~69の全プリセット、全ライブエフェクト、本体機能のスクラッチ、アクティベーター、思いつく限りのプレイを60分に集約。ディレイ、ディストーション等をオンオフレバーで、エフェクトの深さをツマミで、BPMやノイズをスクラッチパッドで演奏。初代DJXが家庭向けポータトーンとして初年度販売予定台数10万台に対し、IIはテクノ、ハウス、ヒップホップ、ダンスグルーヴサウンドを即興で演奏する先鋭的マシンとして5,000台販売された。→