(『新・人間革命』第4巻より編集)
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〈春嵐〉11
「いろいろ指導して差し上げたいが、ご婦人は家庭が大事ですから、今日は、お帰りなさい」
「家族には断って来ていますので、大丈夫です。ぜひ、お願いします」
「では、みんなで行きましょう」
伸一は、八戸支部の数人の幹部たちと一緒に、大舘に向かった。
途中、奥羽本線に乗り換えのため、青森駅に降りると、地元の支部の同志が待っていた。
「先生!」
伸一を見つけ、青森支部の支部長の金木正が駆け寄ってきた。
「八戸支部の結成、おめでとう。青森県は、また強くなるね」
八戸支部、青森支部から分かれ、誕生した支部であった。
伸一が言うと、周囲にいた青森支部の同志が、金木とともに一斉に「はい!」と元気な返事をした。
そのピタリと合った呼吸が、伸一には嬉しかった。
彼は、前回、青森を訪問した時のことが思い出された。
それは、伸一が総務であった昭和三十三年の十一月三日のことである。
彼が青森にやって来たのは、青森支部結成の準備のためであった。
伸一は、まず、金木の自宅で開かれた、男女青年部の幹部の人事面接をした。
ここで、彼は訴えた。
「このたび、青森支部が結成されますが、皆さんの手で、新しい広布の扉を開いてほしい。
青森の”青”は青年の青です。また”森”は人材が陸続と育ちゆく森です。
若き闘将が世界に先駆けて立ち上がる天地こそ、この青森であると、私は信じております」