(『新・人間革命』第4巻より編集)
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〈春嵐〉 11
さらに、このあと、支部結成の打ち合わせがもたれた。
青森支部の誕生により、これまでの幾つかの支部が属していた青森県の組織は、一つに統合されることになる。
そして、支部長が金木正、支部婦人部長は妻のキヨに内定し、支部には九つの地区がつくられることになった。
しかし、一口に青森県といっても多様であり、古くは津軽藩と南部藩の二藩に属し、伝統的に双方は、犬猿の仲とも、ライバル同士とも言われてきた。
もともとは、豊臣秀吉の時代に、津軽に領地を持つ、南部氏の武将が独立してしまったことから、それが住民感情にもなり、尾を引いていたのである。
いい意味での競い合いは発展の力となるが、感情的な対立は、広布の組織を破壊する要因となる。
それだけに、新支部が、一つにまとまり、触発し合っていけるかどうかに、今後のいっさいがかかっていた。
伸一は、内定した人事を発表すると、言った。
「長時間の会合で腰も痛そうですから、金木さんと地区部長になられる皆さんは、立って前に来ていただけますか」
伸一は、その壮年たちに言った。
「では、金木さんを真ん中にして、みんなで囲み、肩を組んでください」
皆、不可解そうな顔をしながら、金木を囲んで、円陣を組んだ。
会場にいた、他の参加者も、何が始まるのかと、目を光らせていた。
壮年の一人が確認した。
「これで、いいんでしょうか」
「はい、結構です。皆さん、どうか、この姿を忘れないでください。これが、今後の青森支部がめざす団結の姿です。
支部長を中心にして九人の地区部長がバラバラになれば、すぐに攪乱されてしまいます。団結が力なんです」