助講会という組織がある。
助教授(今は准教授と言う)と講師という身分の人達の集う会。
実際には集まって何するわけでもない。
教授会のような政治的パワーもない。
せいぜい情報交換や実務円滑化に益がある程度か?
なので,そんなに盛り上がっているとは言えないというか,はっきり言えば形骸化している。
しかし,特に大学病院においては実質的に診療・実務の大半をこなしている層とも言える。
この会の人脈は,毎日の仕事のしやすさにつながる。
なので,実務的には重要だ。
その助講会の忘年会があって参加した。
ここ数年は,忘年会はおろか毎月の定例会にも顔を出したことはない。
久し振りに気が向いて参加してみたが,出席者は30人程度。
会は総勢100名ほどと思われるので,出席率は3割程度か?
まぁこんなもんだろう。
出席者は臨床系(病院主体)の先生が大半で,基礎系(研究主体)の先生は少ない。
やはり臨床系の先生は,この会の実務的な意義を感じているのだろう。
中には,見たことも聞いたこともないヒトが居る。
同じ大学という一つ屋根の下で生活しているわけだが,皆が皆しょっちゅう顔を会わすワケではない。
あんなに狭い場所で仕事しているのに,やっぱ閉鎖的なんやと実感する。
来賓として医学部長先生も参加されている。
一番の上座で挨拶されたのもつかの間,ビール片手に一人ずつ順番にお酌をして廻っている。
「最近どうですか?」とか「あの件ではお世話になりました」とか,感謝と激励の言葉をかけている。
順番になったヒトは,正座し直してかしこまって聞いている。
こんな政治家のような役回りも,学部長の仕事ではある。
いよいよ自分の番。
「いつも病理診断,ありがとうございます」と声をかけて頂く。
「エエ加減な診断ばかりで申し訳ありません」と自分。
医学部長先生の診療領域の病理が特に苦手なのは自覚している。
それを「育てよう」として,大きな視点で見て頂いているのを感じる。
ありがたいなと感謝する。
それにしても,乾杯してほんの少しカニを食べてから,すぐにお酌の旅に出かけた学部長先生。
主の居なくなった席に次々に運ばれ続けるカニ料理が気になる。
食べられずにそのまま残っているカニ料理。
多分もう食べられないですよねとも言えんし・・・
代わりに平らげておきましょうかとも言えんし・・・
学部長先生の直後には,某外科M先生が巡回してくる。
このM先生のキャラは豪快だ。
ヒトを食ったような行きすぎたおおらかさがあるが,憎めない愛らしさもある。
学生時代に宴会隊長だったのは,皆のよく知るところだ。
そう言えば今年は,このM先生の術中迅速でミスしてしまったっけ。
「M先生,その節はすいませんでした」
「いやいや,あれな,論文にしよかて思ってんねん」
「あれは教育的ですよね」
「まぁ,その時はまた写真頼むわ」
まぁ,大事に至らずよかったか。
M先生の「両手ビール」はおもしろい。
二本のビール瓶を両手に持って,注ぎ廻っている。
コップを差し出すと,その二本のビール瓶から同時にビールが注がれる。
こんな注がれ方をされたことはないので,ちょっとおどろく。
考えてみれば,注いでまわっているのでビールがたくさん要る。
ので,できるだけ多くのビールを持っていた方が良い。
そうすれば,ビールが足りなくなって中座したりする回数が減る。
それに,自分のコップは持たないので,注がれることはない。
なので,飲まされてへべれけになってしまうこともない。
さすが宴会隊長だ。
妙に感心してしまう。
なんやかんやでM先生一派に同行し,3次会まで延々とおつき合いする。
この会をもっと盛り上げなきゃな・・・と思った次第。
近所の学習塾に通い始めたちー(長女・小4)。
この日は塾から帰宅するなり,眠い・・・と言ってソファーに直行。
ちーの帰りを待ち望んでいたみーがちょっかい出すも無視。
ちーに話しかけても,すぐに「うるさい!」と拒絶。
だいぶん機嫌が悪い。
しばらくそっとしておいたら,ちーはつかつかと母のところへ。
「お母さん・・・・・」
そう言った途端に,溜めてたらしい涙をポロリポロリとこぼし始めた。
「どうしたの?ちー」と,びっくりする母。
時節柄,いじめやら不審者やらいろんな親の心配事が増えている。
まさかうちの子に限って・・・という時代でもない。
いったいどうしたんだろう?
ヒックヒックしながら,涙の理由を話し始めるちー。
「今日さ,塾でテストあってぇ・・・」
「うん,あったねぇ」
「このテストって,学校で一度やったことあるテストって言うてたやん?」
「そうやったね」
「あたし,その学校のテストの答え,全部覚えとったけどね」
「うんうん」
「ぜったい百点取れるハズやったのに,一問だけ間違えて98点でさ」
「あらあら・・・・・」
「でも,S君(同じ学校の同級生)は百点やったらしくってね」
「そう」
「あたし,口惜しくって口惜しくって・・・ウェーーン」
「・・・たった一問やないの,ちー」
こんなちっぽけなことで泣いてるんだなぁ,子供って・・・・・
っと,父としては妙に感心して感動する。
こんな感受性なんて,今の自分は持ち合わせていない。
自分が子供の頃って,どうだったんだろう?
そう言えばとひとつ思い出したのが,幼稚園の頃の出来事。
お遊戯会の劇があって,自分の演じる役は「カラス」だった。
ほとんど内容は忘れてしまったが,どちらかと言えば「悪役」。
最後に悪い「カラス」が居なくなって,めでたしめでたし・・・で終わるような筋。
あまり格好良くない真っ黒な衣装を身につけて,みんなに追われて舞台を去るカラス。
大勢の前で退場を命ぜられる悪者。
そんな役回りが,何故かイヤでイヤでしかたなかった。
お遊戯会当日。
ズル休みをしそうな気持ちと戦って,母に連れられてなんとか出席した。
永遠に来なければいいと思っていた本番をいよいよ迎える。
劇は滞りなく進んで,クライマックスになる。
そして,自分たち「カラス」が退場を命ぜられた時・・・・・
自分は舞台上で,台詞を言うのも忘れて泣いていた。
泣きながら退場して,舞台脇でベソをかいていた。
こんなちっぽけなことで自分も泣いてたんだなぁ,そう言えば・・・・・
この日は塾から帰宅するなり,眠い・・・と言ってソファーに直行。
ちーの帰りを待ち望んでいたみーがちょっかい出すも無視。
ちーに話しかけても,すぐに「うるさい!」と拒絶。
だいぶん機嫌が悪い。
しばらくそっとしておいたら,ちーはつかつかと母のところへ。
「お母さん・・・・・」
そう言った途端に,溜めてたらしい涙をポロリポロリとこぼし始めた。
「どうしたの?ちー」と,びっくりする母。
時節柄,いじめやら不審者やらいろんな親の心配事が増えている。
まさかうちの子に限って・・・という時代でもない。
いったいどうしたんだろう?
ヒックヒックしながら,涙の理由を話し始めるちー。
「今日さ,塾でテストあってぇ・・・」
「うん,あったねぇ」
「このテストって,学校で一度やったことあるテストって言うてたやん?」
「そうやったね」
「あたし,その学校のテストの答え,全部覚えとったけどね」
「うんうん」
「ぜったい百点取れるハズやったのに,一問だけ間違えて98点でさ」
「あらあら・・・・・」
「でも,S君(同じ学校の同級生)は百点やったらしくってね」
「そう」
「あたし,口惜しくって口惜しくって・・・ウェーーン」
「・・・たった一問やないの,ちー」
こんなちっぽけなことで泣いてるんだなぁ,子供って・・・・・
っと,父としては妙に感心して感動する。
こんな感受性なんて,今の自分は持ち合わせていない。
自分が子供の頃って,どうだったんだろう?
そう言えばとひとつ思い出したのが,幼稚園の頃の出来事。
お遊戯会の劇があって,自分の演じる役は「カラス」だった。
ほとんど内容は忘れてしまったが,どちらかと言えば「悪役」。
最後に悪い「カラス」が居なくなって,めでたしめでたし・・・で終わるような筋。
あまり格好良くない真っ黒な衣装を身につけて,みんなに追われて舞台を去るカラス。
大勢の前で退場を命ぜられる悪者。
そんな役回りが,何故かイヤでイヤでしかたなかった。
お遊戯会当日。
ズル休みをしそうな気持ちと戦って,母に連れられてなんとか出席した。
永遠に来なければいいと思っていた本番をいよいよ迎える。
劇は滞りなく進んで,クライマックスになる。
そして,自分たち「カラス」が退場を命ぜられた時・・・・・
自分は舞台上で,台詞を言うのも忘れて泣いていた。
泣きながら退場して,舞台脇でベソをかいていた。
こんなちっぽけなことで自分も泣いてたんだなぁ,そう言えば・・・・・
2~3日前からお腹が痛かったが,仕事を休むわけにはいかぬ。
よなか中お腹出して寝てたんちゃう?
気合い入れれば何とかなるか。
しかしこの日は勝手が違った。
腹痛は誤魔化せないほどにひどくなる。
しかも午後になると熱っぽくなりフシブシがだるい。
頭もガンガン痛くなってくる。
顕微鏡を覗いてもまったく集中できない。
もう限界だ・・・・・
早退して,近所で開業中の同級生ランのところへ向う。
最近,やたら流行っている「ラン・クリニック」。
流行っているのは,駐車場を見ればわかる。
クリニック前をたまに通り過ぎると,駐車場が満車状態のことが時々ある。
今頃はインフルエンザ予防接種の時期。
これからは,実際のインフルエンザや風邪の患者さんで更にごった返すだろう。
ヒトが病むのを喜ぶワケではないが,やはり友人のクリニックが流行るのはうれしい。
午後の診療開始5分前に着いたにも関わらず,クリニック待合室は3歳くらいの子連れ夫婦・風邪ひいた女子高校生・仕事を休んだ紳士・仕事帰りのおっさん・近所のおばちゃんなどで既に混み合っている。
「・・・シノさん,お入り下さい」
ようやく看護婦さんに呼ばれて,診察室に入る。
「流行っとるね」
そう言いつつ,ラン先生に目で挨拶する。
「ありがと」
と答えるラン先生は,すっかり“この街のお医者さん”風情が身に付いている。
「点滴してくれ」
「どうしたの?」
「腹痛が3日前からで,発熱が今日の午後からで7度5分ね。
腹痛は右側腹部で,蠕動運動に伴ってギューっていう感じ。
やや下痢気味で食欲まずまず。呼吸器症状なんかも無しね。
そう言えば,さっきから頭もガンガン痛いわ」
なるべくカルテに書きやすい感じで症状を伝える。
たぶん問題なのは右側大腸か回腸末端あたりだろう。
「胆嚢とかアッペやない?」とラン先生。
「腸炎やと思うけど」
「一応お腹触らせて」
「オーケー」
マクバーネイ点と呼ばれる右下腹部を押さえてもらったが痛くはない。
けっきょく診療は1分ほどで終わり,診療時間短縮に大きく貢献する。
クリニック奥の部屋は,リハビリ室になっている。
ランの専門は外科だが,腰痛・膝痛などの整形外科領域もカバーしている。
手広くやっているのも,流行っている理由の一つか?
そのリハ室の隅に,診察用ベッドが4つほど殺風景に並べてある。
カーテンで仕切られたそれらのベッドに寝っ転がって,点滴を受けるために。
風邪をこじらせた患者さんが一人,また一人と,自分と同じように点滴を受け始める。
その横では,リハの患者さんが患部に電気を当ててもらっている。
それらをサポートする看護士さん・療法士さんは,皆テキパキしていてすがすがしい。
しかし・・・・・
風邪でゴホゴホしているのを傍目に見ながら,リハビリをするのもちょっとなぁ。
リハの患者さんが,風邪を拾ってしまわないか?
まぁどこまで気を使うかは難しいけれど,何かの対策はするべきだろう。
今度,ランにレポートすることにする。
抗生剤点滴は,30分以上かけてややゆっくりと入れる。
隣の患者さんは,ものの10分も経たないうちにクークーいいながら眠っている。
時間が空いたリハ担当の療法士さん達が,世間話をし始める。
このクリニックのヘンな噂をしていないかどうか,聞き耳を立てる。
それにしても・・・・・
この部屋は誰もが手持ち無沙汰だし,ヒマだ。
なんか改善できんやろか?
そう言えば,献血する時は,DVDを見るようなサービスが椅子に付いていたっけ。
あんなもんでもあったらなぁ・・・
今度,ランに提案してみよう。
患者として来院した際に,クリニックの円滑な運営に協力しつつ,職員の風紀・意識にも目を配る。
こんな模範的な患者やけど,見方を変えればスパイ行為をするタダのワガママ患者か?
よなか中お腹出して寝てたんちゃう?
気合い入れれば何とかなるか。
しかしこの日は勝手が違った。
腹痛は誤魔化せないほどにひどくなる。
しかも午後になると熱っぽくなりフシブシがだるい。
頭もガンガン痛くなってくる。
顕微鏡を覗いてもまったく集中できない。
もう限界だ・・・・・
早退して,近所で開業中の同級生ランのところへ向う。
最近,やたら流行っている「ラン・クリニック」。
流行っているのは,駐車場を見ればわかる。
クリニック前をたまに通り過ぎると,駐車場が満車状態のことが時々ある。
今頃はインフルエンザ予防接種の時期。
これからは,実際のインフルエンザや風邪の患者さんで更にごった返すだろう。
ヒトが病むのを喜ぶワケではないが,やはり友人のクリニックが流行るのはうれしい。
午後の診療開始5分前に着いたにも関わらず,クリニック待合室は3歳くらいの子連れ夫婦・風邪ひいた女子高校生・仕事を休んだ紳士・仕事帰りのおっさん・近所のおばちゃんなどで既に混み合っている。
「・・・シノさん,お入り下さい」
ようやく看護婦さんに呼ばれて,診察室に入る。
「流行っとるね」
そう言いつつ,ラン先生に目で挨拶する。
「ありがと」
と答えるラン先生は,すっかり“この街のお医者さん”風情が身に付いている。
「点滴してくれ」
「どうしたの?」
「腹痛が3日前からで,発熱が今日の午後からで7度5分ね。
腹痛は右側腹部で,蠕動運動に伴ってギューっていう感じ。
やや下痢気味で食欲まずまず。呼吸器症状なんかも無しね。
そう言えば,さっきから頭もガンガン痛いわ」
なるべくカルテに書きやすい感じで症状を伝える。
たぶん問題なのは右側大腸か回腸末端あたりだろう。
「胆嚢とかアッペやない?」とラン先生。
「腸炎やと思うけど」
「一応お腹触らせて」
「オーケー」
マクバーネイ点と呼ばれる右下腹部を押さえてもらったが痛くはない。
けっきょく診療は1分ほどで終わり,診療時間短縮に大きく貢献する。
クリニック奥の部屋は,リハビリ室になっている。
ランの専門は外科だが,腰痛・膝痛などの整形外科領域もカバーしている。
手広くやっているのも,流行っている理由の一つか?
そのリハ室の隅に,診察用ベッドが4つほど殺風景に並べてある。
カーテンで仕切られたそれらのベッドに寝っ転がって,点滴を受けるために。
風邪をこじらせた患者さんが一人,また一人と,自分と同じように点滴を受け始める。
その横では,リハの患者さんが患部に電気を当ててもらっている。
それらをサポートする看護士さん・療法士さんは,皆テキパキしていてすがすがしい。
しかし・・・・・
風邪でゴホゴホしているのを傍目に見ながら,リハビリをするのもちょっとなぁ。
リハの患者さんが,風邪を拾ってしまわないか?
まぁどこまで気を使うかは難しいけれど,何かの対策はするべきだろう。
今度,ランにレポートすることにする。
抗生剤点滴は,30分以上かけてややゆっくりと入れる。
隣の患者さんは,ものの10分も経たないうちにクークーいいながら眠っている。
時間が空いたリハ担当の療法士さん達が,世間話をし始める。
このクリニックのヘンな噂をしていないかどうか,聞き耳を立てる。
それにしても・・・・・
この部屋は誰もが手持ち無沙汰だし,ヒマだ。
なんか改善できんやろか?
そう言えば,献血する時は,DVDを見るようなサービスが椅子に付いていたっけ。
あんなもんでもあったらなぁ・・・
今度,ランに提案してみよう。
患者として来院した際に,クリニックの円滑な運営に協力しつつ,職員の風紀・意識にも目を配る。
こんな模範的な患者やけど,見方を変えればスパイ行為をするタダのワガママ患者か?
▼ アミ先生の場合
顕微鏡を覗くなり,アレって思った。
この腎癌はいつもの腎癌の細胞とは違う。
しかもこの患者さんは20歳で,腎癌になるには若すぎる。
泌尿器科の先生も,腎癌にしてはヘンだと思っているらしい。
でも,最初に病理診断した後輩のアミ先生は「通常の腎癌の範囲内」という意見。
診断してて,なにも感じなかったのか?
「こんな診断でええんか?」とアミを問いつめてみる。
すると,「ハァ・・・そうですねぇ」という気の無い答え。
どこ吹く風だ。
そもそも病理診断は,最終診断として扱われる。
自分たち病理医が「ガン」と診断したら「ガン」になる。
この背負えばズシーンとくる「重み」をアミは感じているんだろうか?
「オレがアレ?って思うような変化なら,お前のレベルでこれって絶対に普通ちゃうわ~・・・って思ってもらわんと困る!」
「そんな絶対ムリですって」
「オレの診断なんて全然ダメって思ってるようじゃないと,オレ以上にはならんぜ」
「そんな滅相もないことは,思っておりません」
・・・・・こりゃダメだ。
放っておけば一日中でも飽きずに顕微鏡を覗いているアミ先生。
かたや,顕微鏡を集中して覗くのは朝と夕のそれぞれ2時間くらいしか持たない自分。
好きこそモノの上手なれ。
アミを見てると,病理医としてかなり伸びるんじゃないか・・・と期待してしまう。
直に自分なんぞ追い抜かれてしまうかもしれん。
イヤ,そういう気持ちを持ってもらわないと困る。
▼ ランの場合
言っちゃなんだが,ランの師匠は自分だ。
同級生で開業中の外科医ラン先生。
そんな第一線で働く医師の師匠を自認するのは,医療分野なんかではなく「競馬」。
学生時代に,初体験なランを京都競馬場に連れて行った自分。
パドックの見方や連複馬券の買い方までを教えてやった。
その日の重賞レース。
自分が託したのは,軽量を背負う「ファンドリポポ」という牝馬。
うまく逃げていたが,第四コーナーを廻ったところで失速。
もう少し粘れると踏んでいたが,何ともあっけなく勝負は決まった。
まぁこんなもんだ。
同じく馬券が外れたはずのランも,隣でションボリしているだろう。
ところが・・・・・
気落ちしているはずのランが大声で叫んでいる。
「いけー・・・うりゃー・・・おー・・・○△×・・・」
何か知らんが,心の底から沸き上がってくるような興奮を覚えたらしい。
そんなこんなで「ハマッテ」しまったラン先生。
ギャンブルに夢中じゃなくって「お馬さん大好き!」なのでまだマシか・・・・・
その後には,乗馬クラブに通ったり,
北海道までちょっと「オグリキャップ」を見に行ったり,
とあるパーティーで武○騎手に握手してもらったり,
まぁよくやるわ・・・と,こちらが感心して呆れるほどの熱の入れよう。
結局,師匠をはるかに凌駕する境地にまで到達してしまった弟子。
その秘訣は「アッホみたいに好き!」。
顕微鏡を覗くなり,アレって思った。
この腎癌はいつもの腎癌の細胞とは違う。
しかもこの患者さんは20歳で,腎癌になるには若すぎる。
泌尿器科の先生も,腎癌にしてはヘンだと思っているらしい。
でも,最初に病理診断した後輩のアミ先生は「通常の腎癌の範囲内」という意見。
診断してて,なにも感じなかったのか?
「こんな診断でええんか?」とアミを問いつめてみる。
すると,「ハァ・・・そうですねぇ」という気の無い答え。
どこ吹く風だ。
そもそも病理診断は,最終診断として扱われる。
自分たち病理医が「ガン」と診断したら「ガン」になる。
この背負えばズシーンとくる「重み」をアミは感じているんだろうか?
「オレがアレ?って思うような変化なら,お前のレベルでこれって絶対に普通ちゃうわ~・・・って思ってもらわんと困る!」
「そんな絶対ムリですって」
「オレの診断なんて全然ダメって思ってるようじゃないと,オレ以上にはならんぜ」
「そんな滅相もないことは,思っておりません」
・・・・・こりゃダメだ。
放っておけば一日中でも飽きずに顕微鏡を覗いているアミ先生。
かたや,顕微鏡を集中して覗くのは朝と夕のそれぞれ2時間くらいしか持たない自分。
好きこそモノの上手なれ。
アミを見てると,病理医としてかなり伸びるんじゃないか・・・と期待してしまう。
直に自分なんぞ追い抜かれてしまうかもしれん。
イヤ,そういう気持ちを持ってもらわないと困る。
▼ ランの場合
言っちゃなんだが,ランの師匠は自分だ。
同級生で開業中の外科医ラン先生。
そんな第一線で働く医師の師匠を自認するのは,医療分野なんかではなく「競馬」。
学生時代に,初体験なランを京都競馬場に連れて行った自分。
パドックの見方や連複馬券の買い方までを教えてやった。
その日の重賞レース。
自分が託したのは,軽量を背負う「ファンドリポポ」という牝馬。
うまく逃げていたが,第四コーナーを廻ったところで失速。
もう少し粘れると踏んでいたが,何ともあっけなく勝負は決まった。
まぁこんなもんだ。
同じく馬券が外れたはずのランも,隣でションボリしているだろう。
ところが・・・・・
気落ちしているはずのランが大声で叫んでいる。
「いけー・・・うりゃー・・・おー・・・○△×・・・」
何か知らんが,心の底から沸き上がってくるような興奮を覚えたらしい。
そんなこんなで「ハマッテ」しまったラン先生。
ギャンブルに夢中じゃなくって「お馬さん大好き!」なのでまだマシか・・・・・
その後には,乗馬クラブに通ったり,
北海道までちょっと「オグリキャップ」を見に行ったり,
とあるパーティーで武○騎手に握手してもらったり,
まぁよくやるわ・・・と,こちらが感心して呆れるほどの熱の入れよう。
結局,師匠をはるかに凌駕する境地にまで到達してしまった弟子。
その秘訣は「アッホみたいに好き!」。
▼始めが肝心
なんでもそうだが,始めは肝心だ。
だれもが始めは無難にこなしたい。
できればビギナーズ・ラックに恵まれて,
なんか知らんが,あれよあれよとうまくいく・・・・・
そんな「始め」を誰もが望む。
周りにも始めだというのを悟られずに終えるのがカッコイイ。
「えっ?あれ,最初やったん?」と驚かれるのも悪くはない。
しかし・・・・・
現実にはそうはうまくはいかない。
それまではうまく出来てたのが失敗したり,
想定外のことが起こったりで,
もうしどろもどろ,あたふたってなってしまう。
下手するととんだケチがついたりして,その後にもずっと引きずったりする。
まぁ始めがうまくいくかつまずくかは運次第・・・
それはそれで受け止めるしかない。
▼帰ってきたJO
同級生で某外科助教JOが,今更という感じの国内留学から帰ってきた。
突然,病理部に顔を出したJO。
「おう,シノ。帰ってきたで」
「あれ?JO・・・もう帰ってきたん?」
「ホンマに,あっという間やねん。もうちょっと居りたかったわ・・・」
たった数ヶ月の国内留学。
まぁ多方面のいろいろな状況が許す範囲内というか,諸事情を鑑みて,こういう結末になったらしいが・・・
とにかくこの留学,短期でもよかった・・・と考えるしかない。
▼自分の術中迅速の場合は・・・
振り返えれば,自分が経験した最初の術中迅速は,「胆管ガン断端」だった。
この「胆管断端」っちゅーのは実はクセモノ。
ベテランでも手こずることがある。
それが初っぱなに当たる・・・・・・
これっていったい,どうゆうことやねん?
もうそれこそビビるのを通り越して,
この身の不幸を嘆きつつ,
呪いの言葉を吐き続け,
でもやるしかない・・・
そんなもうやけくそな気持ちだけで,辛うじて逃げ出さずにいた。
っで,結局提出された術中迅速検体がどうだったか?
・・・それは,もう忘れてしまっている。
▼JOの復帰第一戦
復帰したJOが最初に執刀した手術。
病理学的にはけっこう「ワルい」腫瘍に対する全摘術。
それなりに準備をして,それなりに注意をして望んだんだろうが・・・
その病理結果は,断端陽性。
手術して摘出した検体の端っこに,腫瘍が顔を出している。
多分,完全には取り切れていないだろう・・・・・
こりゃいかんということで,すぐにJOを呼び出す。
すっ飛んできたJOに,断端陽性の部分を顕微鏡を覗きながら説明してやる。
「・・・ここの断端に腫瘍細胞があるやん?」
「ちょっと待て,シノ。どれやねん?」
「これこれ,この細胞」
「んーー・・・・・ここの断端は○○があって,実際には大丈夫やと思うけど・・・」
「それに,ここも危ないよ」
「んーー・・・・・そこには△△があって,温存したんやねん・・・」
「とにかく,病理学的には断端陽性とせなアカンねん・・・悪いな」
「んーー・・・・・断端陽性か・・・こんなことってそうないよな」
「一年に一度あるかないかくらいかなぁ・・・」
「なんでよりによって・・・・・・」
「まぁ,相手(=腫瘍の種類)が悪いねん」
納得がどーしてもいかんJOの気持ちがひしひしと伝わってくる。
自信を持って挑んだ復帰後最初の手術に「ダメ出し」。
しょーがないとこれを受け入れて,次なる最善の手を考えていくしかない。
それは誰もがわかっているんだが・・・
その受け入れにはやっぱ誰もが時間がかかる。
なんでもそうだが,始めは肝心だ。
だれもが始めは無難にこなしたい。
できればビギナーズ・ラックに恵まれて,
なんか知らんが,あれよあれよとうまくいく・・・・・
そんな「始め」を誰もが望む。
周りにも始めだというのを悟られずに終えるのがカッコイイ。
「えっ?あれ,最初やったん?」と驚かれるのも悪くはない。
しかし・・・・・
現実にはそうはうまくはいかない。
それまではうまく出来てたのが失敗したり,
想定外のことが起こったりで,
もうしどろもどろ,あたふたってなってしまう。
下手するととんだケチがついたりして,その後にもずっと引きずったりする。
まぁ始めがうまくいくかつまずくかは運次第・・・
それはそれで受け止めるしかない。
▼帰ってきたJO
同級生で某外科助教JOが,今更という感じの国内留学から帰ってきた。
突然,病理部に顔を出したJO。
「おう,シノ。帰ってきたで」
「あれ?JO・・・もう帰ってきたん?」
「ホンマに,あっという間やねん。もうちょっと居りたかったわ・・・」
たった数ヶ月の国内留学。
まぁ多方面のいろいろな状況が許す範囲内というか,諸事情を鑑みて,こういう結末になったらしいが・・・
とにかくこの留学,短期でもよかった・・・と考えるしかない。
▼自分の術中迅速の場合は・・・
振り返えれば,自分が経験した最初の術中迅速は,「胆管ガン断端」だった。
この「胆管断端」っちゅーのは実はクセモノ。
ベテランでも手こずることがある。
それが初っぱなに当たる・・・・・・
これっていったい,どうゆうことやねん?
もうそれこそビビるのを通り越して,
この身の不幸を嘆きつつ,
呪いの言葉を吐き続け,
でもやるしかない・・・
そんなもうやけくそな気持ちだけで,辛うじて逃げ出さずにいた。
っで,結局提出された術中迅速検体がどうだったか?
・・・それは,もう忘れてしまっている。
▼JOの復帰第一戦
復帰したJOが最初に執刀した手術。
病理学的にはけっこう「ワルい」腫瘍に対する全摘術。
それなりに準備をして,それなりに注意をして望んだんだろうが・・・
その病理結果は,断端陽性。
手術して摘出した検体の端っこに,腫瘍が顔を出している。
多分,完全には取り切れていないだろう・・・・・
こりゃいかんということで,すぐにJOを呼び出す。
すっ飛んできたJOに,断端陽性の部分を顕微鏡を覗きながら説明してやる。
「・・・ここの断端に腫瘍細胞があるやん?」
「ちょっと待て,シノ。どれやねん?」
「これこれ,この細胞」
「んーー・・・・・ここの断端は○○があって,実際には大丈夫やと思うけど・・・」
「それに,ここも危ないよ」
「んーー・・・・・そこには△△があって,温存したんやねん・・・」
「とにかく,病理学的には断端陽性とせなアカンねん・・・悪いな」
「んーー・・・・・断端陽性か・・・こんなことってそうないよな」
「一年に一度あるかないかくらいかなぁ・・・」
「なんでよりによって・・・・・・」
「まぁ,相手(=腫瘍の種類)が悪いねん」
納得がどーしてもいかんJOの気持ちがひしひしと伝わってくる。
自信を持って挑んだ復帰後最初の手術に「ダメ出し」。
しょーがないとこれを受け入れて,次なる最善の手を考えていくしかない。
それは誰もがわかっているんだが・・・
その受け入れにはやっぱ誰もが時間がかかる。