妄想最終処分場 -20ページ目

妄想最終処分場

好きなジャンルの二次創作ブログです。
現在はス/キ/ビメインです。
ちょいちょい過去活動ジャンルも投入予定。

*出版者様、作者様とは一切関係ございません。
*禁:無断転載、二次加工、二次利用

発掘品です。

これ…ごく初期おそらく2012.12頃のですね。何が書きたかったのか良く分からないんですが、本誌を読み返してモー子さんだったら内心こんなかな?って思って書いたモノ…だったはず。


結局モー子さん&キョコさんのやりとりが大好き!ってことでw



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



ーーーーー私は思わずにはいられない。


あの子の密室での大告白劇を聞いた時から。

あの時はあまりにもな青筋だって恐怖を浮かべる顔に、仕事に厳しい紳士っていうイメージのキーワードから、嘘をついている後輩に教育的な態度を取ったんじゃないかって別見解も述べたりもしたわ。


でも良く考えれば、

たとえ嘘をついた後輩に不快な思いを抱いたからといっても、あの子が言うような態度を取るはずないじゃないの。

その時、あの子から聞いた「先輩」の言動やら、あの子の持つ先輩のイメージって、はっきり言って私にはまったくピンとこなかった。

あの子ほど接点は多くないにしろ演技の道をゆく先輩ですもの、後学の為に主演しているドラマや映画だって拝見することもあるし?事務所の先輩ですからちゃんと粗相のないようにチェックもしてるわよ?


超美形で抱かれたい男ナンバーワン(もちろん私には何の興味もないステータスだけどね)

「温厚」で「紳士」、「人当たりが良くっていい人」

事務所的にもスキャンダルもなく超優等生じゃない?

事務所で顔を合わせた時や、ドラマで共演した時だって私は世間一般に流れている先輩の印象通り・・・というかそれ以上もそれ以下も何も感じなかった事務所の売れっ子優等生な先輩俳優。


そんな先輩を「似非紳士」とか「大魔王」といってはばからない親友の口から語られる先輩とのエピソードの数々。


これってもしかしなくても・・・?

推測は確信へと変わっていく。


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

いい加減この目がいかれるようなドピンクツナギを来てこんな雑務をするような状況ではないはずなんだけど。

幸いなことに少しずつ女優としての仕事をいただけるようになってきた今日この頃、まだ俳優部門に正式登録されていないこの状況が腹立たしい。


午前中は正式な仕事が入っていなかったため、二人でラブミー部室で事務所の書類整理の雑務を引き受けている。



「でね、今BOX-Rの撮影で・・・」


事務仕事をしながらの雑談。主に1号と呼ばれている私の親友、最上キョーコがしゃべりたいことをしゃべり、聞き役をしていることが多い。

今日の話題は今撮影中のドラマのこと。


「モー子さんにプレゼントしてもらった魔法のアイテムが「ナっちゃん」の完成を助けてくれたのよ!これってなんかもう親友の証って感じでしょ!」


目をキラキラさせて、紆余曲折あっても上手くいった役作りのことを嬉しそうに語る親友。

同じ演技を愛する者としては喜ばしいことで胸の奥がほんのり温かくなるけど、メルヘンに浸りきった相手のリアクションに素直に反応を返してやる気になんてなれない。


「はいはい、良かったわね。って、只の化粧品なのに何よその魔法のアイテムって!!止めてよね、そんな気色悪い表現!」


嬉しくもあるはずなのに、それ以上にざわざわと鳥肌が立ってしまう。

このトンチキメルヘン癖は私とは全く相いれない真逆の性質を持つモノだわ。


「えー?モー子さんが私の為にくれたモノじゃない~!!コスメキットでなくても十分私にとって魔法のアイテムよ!?親友の気持ちのつまったプレゼントってだけで~」


私の反応が不服らしい親友はなおもしつこく言い募ってくる。

キョーコは素直に女友達とのじゃれ合いに憧れをもっているだけだろうが、同じようにそんなものとは無縁であった私は無縁であったが故慣れずに、くすぐったいのを通り越して鳥肌が立ってしまう。


「~~~~っ!!あんたねぇ、そういうんだったら「プリンセス・ローザ様」とやらの方がよっぽど魔法なんでしょ、あんたのナツにとっては!」


なんとか話の矛先をそらしてしまいたくて、ナツ誕生にかかわるもう一つのアイテムの名前を出す。

誕生日であるクリスマスに、敦賀さんからプレゼントされたバラに仕込まれた爆弾。

喜々としてメルヘン全開で浮かれて見せてくれた「ソレ」

また無駄に凝ったスキルで手作りに見えないネックレスに仕立てられた宝石はおぼろな推測だった考えをより確信に近づけるモノだった。


そういえば、つい先日社長の前でバレンタインの感想を聞かれうっかり心の思うままに「社会迷惑の公害日」と叫んでしまった私の横にいたキョーコ。

「平穏と平和を脅かす忌むべき悪夢の厄日」って言ってたわね。そして敦賀さんの話題を振ったら「迷惑甚だしいお礼」って・・・


連想ゲームで芋づる式に引っ張り出されたキーワード。

そういえばどうなったのか詳細は聞いてなかったなと思い、ほんのちょっとの興味から何気なく聞いてみる。


「そういえば、あんた。敦賀さんにはバレンタインに何あげたの?」


「へ?」


急に出てきた先輩の名前に呆けた顔をした親友。なんで?って顔をして私を見ている。


「プリンセスローザとやらをもらったんでしょ?世間一般のイベントだし、お礼を伝えるのにちょうどいい機会だったんじゃない?チョコは用意してないって言ってたから、チョコじゃないものでも用意したんでしょ?お礼されたって言ってたし」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


私の言葉にフリーズした彼女。

予想しなかった反応に私も思わず目を丸くしてしまう。

どうやらフリーズの先、彼女の脳内ではいろんな場面がプレビューされているらしい。


表情は固まっているものの、瞳の奥が百面相を始めている。


ビキッ…!!!


「!!??」


幻聴が聞こえてくるくらいに、般若の面が表情に浮きででる。

5秒ほどだろうか・・・般若がはがれ一瞬だけ赤面。そしてスーッと冷気が下りてくる。

あまりにもな表情の変化に、興味も沸くがそれ以上に背筋に恐怖が這いあがってくる。


・・・怖い。


「ちょっと、なんて顔…してるの・・・?」


空気に耐えかねて私の口から出た言葉に、はっとしたように私の顔を見る。


「そ、それよりっ、・・・モー子さんはっ?」


「え?」


「飛鷹君、どんな反応してた??」


思いっきり話題転換にきた親友をみて、私の中にこみ上げてきたのはむず痒いような、何とも言えない感覚。

これって、あの人も感じている感覚なのかしら??


「・・・・ふーん、私にはそんなに言いたくないようなことでもあったの?」


あからさまに不機嫌な表情をして見せる。そしてふっと寂しさを含ませた視線を投げかけてみる。


「キョーコは私に話したくないのね…」


私は知っているのだ、この子が私をどれだけ好きなのか。名前呼びなんてしようものならイチコロだ。

親友宣言や姿を見れば飛びついてくる暑苦しい友情に、面映ゆくもなんだかんだ言って心地よく感じている自分が居ることもほんとは認めている。

余計暑苦しくなるから絶対に本人にはいってやらないけど。


私の演技にあからさまにうろたえて口ごもっていた言葉が出てくる。

ほら、こんなにも簡単。あからさまな演技でだってこの子を操るのは。


「そんな、・・・そんな事無いわよ?敦賀さんの誕生日、私だけ勘違いしてて遅れて誕生日プレゼントを渡して…チョコは貰いすぎるだろうから、デザートを差し入れしただけで…」


「で?」


ついつい意地悪をしてみたくなる。あんなにフリーズして百面相しているんだから、とてつもなく何かあったに違いない。

役者をしてるくせに、ほんとに素では嘘といか演技が下手くそなんだから。



「まあ、誕生日プレゼントはイイとして、チョコだってスイーツでしょ。デザートってどういうこと?」


私の投げかけに訥々と親友の口から言葉がこぼれる。



「チョコ…それこそ食べきれないくらい貰うだろうし、ただでさえ食も細いから食べないんだろうな…と思って」


…それって食べてもらえないチョコは作りたくないってこと??



「私までチョコをあげたら困らせてしまうような気がして・・・」


・・・何で相手が困るって思ってるのかしら?



「それで軽く食べれるようなもの・・・と思ってワインゼリー作ってみたの」


・・・ゼリーって日持ちしないわよね?あげたその場で食べてもらえること前提??

ちょっとまって、あんたそれって只の先輩後輩の域超えてない?

すくなとも同じ只の後輩の私には想像つかない状態よ?



「作ってる時、結構楽しかったな…味見何度もして・・・」

「!!??」


そのセリフの直後、目の前には般若顔。

ちょっと・・・楽しかったって言葉のあたり少し赤くなって乙女チックな表情してたはずなのに!?

何!?何が起きたの??


「ちょっと…なんでその話の流れでそんな顔してるのよ?」


聞かずにいられなかった疑問を投げかけると、あからさまにビクリ!と背筋を伸ばして固まる。



「・・・あ、アリクイに・・・」

「はぁ????」


なぜアリクイが出てくるのかわからない。相変わらず変てこな曲解思考に怒りすら沸いてくる。

感情のままに不機嫌な声色をにじませると、ぶわっと涙をにじませた目でマシンガントークのように憎っくき幼馴染の不破尚の奇天烈行動から、「迷惑甚だしいお礼」と称されたほっぺにチューまでのことの顛末を聞かされることとなった。


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


「ね、ヒドイでしょ、モー子さん!!乙女の肌をなんだと思っているのかしら!似非紳士だけじゃなくてプレイボーイだなんて!!人で遊ぶにもほどがあるわっ!」

「ふぅ~ん」


怒涛の報告のあと、いかに自分で遊ぶ先輩に不満を持っているかを切々と語る親友にチラリと呆れの視線を投げかける。


…そりゃ目の前で昔心底惚れたた幼馴染とのディープキスを見せつけられれば、好きな相手なら怒り心頭どころじゃないわよね・・・


…役者としての気持ちの切り替えは当然だけど、それにかこつけてあの危険分子をアリクイ扱いにリセットさせてるし

…チョコじゃなくて食後のデザート特別提供のお礼に頬にキス…ねぇ。キスでもされたのかしらって私の予想的中じゃない!


結構なことをしつつされつつなな奇妙な親友と有名な先輩のやり取りにため息しか出てこない。



・・・これって犬も食わないなんとやら・・・じゃないの



「あんたねぇ…頬にキスされてそんなに動揺したのってなんでだかわかってるの?」

「だって敦賀さんよ!?夜の帝王なのよ?動揺なしにいられる人間なんているはずないじゃない~!!」


顔を真っ赤にして反論が返ってくる。確かに正論なのかもしれないけど、わたしが言いたいのはそこじゃない。


ああ、もうめんどくさい。

本当にめんどくさい。


怒りとか不機嫌な感情には敏感なくせに・・・!



ふつふつと呆れよりも、怒りが込み上げてくる。ばかばかしい、どうして私がこんな思いをしなきゃいけないのかしら?


イライラし始めた思考に、ぽっとこの騒動の中心人物のことが思い浮かんだ。

グレートフルパーティーの帰り際、25日を迎えた瞬間にこの子に豪華なピンバラを手渡していた件の先輩。


つい買ってしまった恥ずかしいコスメキットに、その時知ったあの子の誕生日。

ほとんど目にしたことのないくらいやわらかい笑顔の先輩と照れたようにはにかんだ笑みをこぼした親友。

誕生日と知って、手渡すいい口実ができたと思った。

つい買ってどういう名目で渡すか迷ったコスメキットとそれを手に入れるまでにした恥ずかしさは、どこかで代償をもらわなければ落ち着かない。


コスメキットを目の前で広げてやったらもくろみ通り鼻血を出すほど喜び浮かれた反応に優越感を覚え溜飲が下がった。喜々として私にまとわりつく親友をみて背中にかすかな嫉妬の視線が向けられたのも知っている。



でもあの子の手にあった一輪の薔薇を見て、どうにも腹が立ったのはどうして??

優越感って・・・??


「モー子さ~ん?どうしちゃったの??」

「ひゃあ!!!」


どうやら思考の小部屋に迷い込んだらしく、気が付けば私の顔を覗き込むあの子のどアップに心底おどろいて変な声を上げていた。

どうやら人の存在を無視して自分の世界に入ってしまう親友の悪い病気は強い感染力を持っているらしい。


「なによ、いきなり顔近づけてきて!びっくりするじゃない」

「モー子さん、突然黙り込んじゃうんだもん。こっちが心配したわ」


至極当然な返答に、自分でもバカじゃないかって思う。

自分でも思っている以上に親友を名乗る彼女に、親友として自分も接していることに気が付いてしまったのだ。自分でもびっくりなその事実に動揺する。



何コレ、私が敦賀さんに妬いてるみたいじゃない??


”コン、コン”


不意に部室のドアをノックする音響く。


「はい、なんでしょうか?」

対応に出た親友の前には所属事務所の社員。


「ラブミー部にお使いを依頼したいんだけど、13:00までに富士に資料を届けてもらいたいんだ。

確か琴南さんは午後富士で仕事は言ってたよね?」


資料の入った紙袋を受け取り、時間と場所を確認する。


「モー子さん、この後の仕事って富士だったんだ」

「ええ、今出てるドラマの撮影で・・・って、あら?」


依頼のメモを確認するとそこにはちょっと意外な文字。

チラリと目線をやりあの子の顔を見る。


「モー子さん?」

「仕事が増えたし、そろっと行く事にするわ」


ラブミー部への依頼なので、富士までこのピンクツナギで行かなければならない。

ラブミー部の仕事を終えてから着替えて撮影に行くことを考えると時間が無い。

さっさと荷物をまとめ、足早に部室を出る準備をする。


「・・・え、あ、行ってらっしゃい」



急な出来事に少しさみしそうな表情で手を振ったあの子を背に、ふっと笑みがこぼれた。


届け先は某先輩の某マネージャー。

運が良ければ某先輩もいるかもね?


ラブミー部のおつかいと聞いて、このドピンクツナギの色を視界に入れて、連想するのは誰なのかしら?

私が来たのを見てどんな反応をするのか見に行くのも見物だし、尻尾でも出そうものならそこを引っ付かまえて弄ってみるのも楽しいかもしれない。


「じゃーね、キョーコ」


悪戯心でウインクを一つ。

ちょっと頬を赤らめて、満面の笑みで私を送り出したキョーコに思わず頬が緩む。


意地悪に浮足立つ足元は早足に変換して、私は事務所を後にした。

“チーン”


深夜の広い店内に響いた呼び鈴の音に、ビクリと肩を震わせた店員が一人。

しばしの間空耳だったハズという願望から、小さく身をかがめて少なくなった商品の陳列を続けようとしたが、二度目の呼び鈴が鳴るのを恐れて意を決してその場から立ち上がった。


呼び鈴のなった方向であるレジの方に足を向ければ視界に映らなくても、その呼び鈴を押した人物が発する雰囲気に足がすくむ。

恐怖に顔を強張らせた店員は、数日前に上司に掛け合った時のことを思い返していた。

『あのっ…夜のシフトなんですけど、しばらく外してもらえることできませんか!?』

『え?どうして?困ったな、夜間シフトに入れる人がすごく少なくて何とかお願いしたいんだけど。どうしても出てこれない?』

『いや…どうしても…というか…』

『時間帯の問題じゃなきゃお願いしたいんだ。君、学生だろう?テスト期間?それなら前もって伝えてもらわないと。今日言ってすぐは無理だよ』

『時間は…大丈夫なんですが…』

『何?夜間対応に困る変な客とかいるの?』

『いや…あの…その…』

『正直に言って。もし問題なら、店でも対処しなきゃ』

『困るのは…確かですけど…』

『商品の破損や汚染?』

『いえ』

『何?万引き常習?』

『いえ、支払いはちゃんと…(むしろ釣銭なんて受け取らずにお札だけおいて出ていきますが)』

『じゃあ、クレームとか?』

『いえ…(むしろ一言も話しません)』

『まさか暴力?』

『いえ…(肉体的には)』

『じゃ、大丈夫でしょ。今のところレジチェックしても問題ないし、頼むよ』

『………』


仕事仕事、バイト代のため!と自分を奮い立たせて彼はレジに向かった。


(やっぱり…!!!)


目視はもはや予感の確認でしかなかった。

レジには黒づくめの長身の凶悪な雰囲気をまき散らす男が一人。

何をされるわけでもないが、とにかく精神的ストレスがハンパない。


「お…お、お待たせしました…っ」


ここの所連日、ほぼ深夜にこのスーパーを訪れるようになったこの客の雰囲気もさることながら買い物内容が奇怪で更なる恐怖を煽られているのだ。

このスーパー出入りするようになったのはちょっと前からで、初めての来店であろう時から無視できない存在感を否応なしに感じていた。

でも、当初は彼女…?いや妹か。

確かこの凶悪な男を『兄さん』と呼ぶ、可愛いけれどイカれたファッションとキツイ雰囲気の黒い女と一緒で女の方が会計をして男の方はさっさと店を出てしまうのでまだよかったが、ここ数日はこの男だけだ。

当初は近づいただけで射殺されそうな殺伐とした雰囲気に、会計対応で嫌な冷や汗をたくさん掻いた。


ストレスがハンパないが、連日続くと恐怖の中にも購入していく品物に疑問が沸く。

およそ料理などしそうにないこの黒づくめの男。

レジに持ってくるのは、酒・栄養補助食品、せいぜいサンドイッチ程度でそのまま口にするものばかりなのだが、何故だか1つどうにも疑問な商品を毎回購入していく。

どう見ても開けてそのまま口にするものではないと思うその食材。

きっと連れ合いの女に頼まれた買い物なんだ!と思いたいが、当初この黒衣の男女が買い物に来ていた時の購入商品はいたって普通に、むしろバランスがいい食事が作られること間違いなしのラインナップだったことにその線はないと確信してしまう。

どうしてそれを買うのか、誰がどうれを使うのか…等々気になりすぎる疑問が店員の中に渦巻くが、とてもじゃないが聞くどころか規定セリフ以外口にすることなんてできない。


「お、お会計は…」


『1288円になります』と口にする前にレジカウンターにポケットから取り出しただろうくしゃくしゃの千円札が2枚放り投げられ、袋に詰めた商品を無造作に引っ掴んだ男はそのままふらふらと出口に歩いていく。


「お、お客様っ…おつ…り…」


接客義務から受け取らないと分かってる釣銭を握りしめて店員は恐る恐るその後ろ姿に声をかけるが、やっぱり男が立ち止まることも振り返ることもなく夜の街に消えていった。


(ああああ~!!!もう、ヤダー!!!???)


店員の叫びは誰に聞かれることもなく、彼の中にストレスとして蓄積されていった。




****


(…………私がいる)


キョーコは思わず開いた冷蔵庫の扉をパタンとしめ、頭を振った。

見間違いであってほしい、それがどうしてこんな状態でここにあるのか考えたくない。

っていうか、私じゃないし!


(そう、きっと見間違いよ。うんうん、そうそう、何かのマ・チ・ガ・イ!!!)


弾みをつけて『イ』のタイミングで再度冷蔵庫の扉を開いてみるものの、さっきと同じ光景が目に飛び込んできて、キョーコはセツカの扮装のままガクリと床に手をついて脱力した。


「…………なによ、これぇぇええ~……」


叫びだしたい気持ちには違いないけれど、それ以上に脱力してしまいへなへなと床に座り込んでしまった。


テスト期間中、セツカはお休みだったためキョーコは1週間ぶりにヒール兄妹の過ごすホテルの部屋に戻ってきた。

当初の予定では明日現場で落ちあうはずだったが、早く終わった学校とその後の仕事のキャンセルで1日早くキョーコはセツカとして戻ってきた。

1週間前、セツカとして兄に『私のいない間、出来合いのものでも何とかinゼリーでも許すからとにかくお酒だけじゃなくて何か食べて!』ときつく言い残して別れたのだ。

敦賀蓮としても心配な食生活だが、カインならなおさらだ。お酒とタバコ以外自主的に何か取ろうなんて考えられない。

早く合流できるのならば、今日の夜からでもちゃんとした食事をしてもらわなきゃ!と食材を購入した上でホテルの部屋にキョーコは来たのだった。

久しぶりのセツカに緊張しつつ、でも相手はいなくてもこの部屋のドアの前に立てば自然とセツカになっていたのに冷蔵庫を開けた途端にキョーコはセツカの仮面を剥がされることになる。


冷蔵庫に鎮座していたのは、件の忌々しき食材。

白くて、四角くて、ふわふわしたアイツ。

しかも、セツカがいなかった日数と同じ数だけ積み重なっている。

見れば賞味期限は1日ずつずれており、一番下のものは賞味期限は昨日で切れている。


食事関連を心配していたのは本当だが、1週間ぶりにヒール兄妹としてでも蓮に会えることをキョーコは密かに喜んでいたのだが…


(…っもう!!今回こそはこれを食べきるまでぜ~~ったいに!!本体(※注キョーコ)なんか食べさせてやらないんだから!!!)



無駄な決意かもしれないが、キョーコことセツカは兄が帰ってくるまでの間にはんぺんフルコースのメニューを考えるのであった。


~~~~~~

本誌のテストでセツカお休みバージョンを、白くてふわふわ世界で妄想したらこうなりましたw

さて、セツカ(本体)は本日食べられずに済む…??




………済むはずないよねw

スランプの海に潜っています、こんばんは。


更新の滞っているうちのブログにそれでも毎日アクセスをいただいて恐縮至極です。

リハビリとまで行きませんが、この書けないひねり出せない状況を打破するためにいろんなところで愚痴を聞いてもらったり、読み専門に走ったり、脳内妄想にひたすらはげみ、そしてなんか「書けるかも??」と思ったはずのものを忘れるという・・・ダメじゃん。


とりあえず現在のところの予定(あくまで予定は未定です!!)をつらつら整理してみようと思います。


<連載中>

Mondlandshaft

(パラレル、ヴァンパイアモノ)

これがいけないのか…!!!止まりまくり。ラインはできてるんですがどうも急だったりエピソードのつなぎが美味いこといかず手が動かない状態です。無駄に長くなりそしてまだ先が長い事にへこたれております。

当初の宣言どおり不定期更新中。忘れたころに続きがぽろりと思っていただけるとありがたいです。

で、これに関しては書きあがってから大幅修正を入れて改定する予定でいます。大規模改修の予定~(まだ書き終わってもいないのにそんなことを言ってみる)


連載…??

無題シリーズ。こちらはアメンバー限定です。桃色にアラズ。作品として意識せず一場面切り取りでもいいよ!書く練習!!って感じで書き散らかしてる感じのものです。

ちなみにエッセンスがマニアックでスキビファンの皆さんが100%楽しめる訳ではないという不親切っぷり!一緒にニヤリとできるのは1割程度かもしれませんねぇ~。

それでもなぜか3まで来ちゃって、微妙に連載くさい雰囲気を醸し出してますが、

連載ではございません!!


その他の予定

頂いたリクエスト。

夏が舞台になりそうなので、夏休み中には…!!

ただ今頑張って整理中。でも全く書けてませんw

目指せ8月アップ。




そうそう、こっそりですが

ここ数日捧げモノという名の

自己満足の押し付けという迷惑行為を働いてます。

自分とこがうまくいってない反動かしら~???


こっそりお知らせ。

実は大ファンである某様宅で、押し付けたモノが手を入れていただいた状態で公開されております。(やな汗出てきた…)

ファンの多い作品が多い方なので、石投げられないか心配であります・・・・





今日は(昨日)気づけば何故か記事連投という良く分からない事態になっております。


今日の午後からずっとカタカタ作業をしているのですが、やっぱり文章の書き方を忘れているみたいです。いやそもそも書き方なんて知らないんだなきっと。


水面下活動は苦手で書いたら即アップな感じが強い私なのですが、このところの纏まらさ加減にどうにもなりませんw

とっ散らかって書くので書いた後に削ったり、直したりの作業を強化しないといけない。

なら最初からまとまるように書く作業をしたいのに~!


リクエストとか捧げモノとかいろいろ書き散らかしてみましたが、収集が付かない…の一言です。

ま、脳内妄想でアウトプットできなかったので、強制アウトプットと銘打ってカタカタ作業をしたのですが苦痛でたまりません。

帰ってこい1月頃の私!!!


そんなわけで非常に文章が不安定です。

見切り発車はどうにもならないので、現在公開できてないリクエスト作品はあらかた完成させてから順次アップの方向でいこうかなーと思っています。

(ようやく形が見えてきたのになぜか最終話から書いているという暴挙っぷりwひどい話だ)


そんなわけでまた潜ります…。次の浮上はいつになるやら・・・。


気が付けば5万ヒット!

皆さまありがとうございます。

2万ヒットと22222ヒット、リク募集したところ22222ヒットはリクをいただいております。(2万ヒットはスルーされた模様…多分変態仮面絡みだなw)

スイマセン、倍以上の5万ヒットに達したのに22222ヒットリクをまだ書いてないというダメっぷり!!

B様!!!ゴメンナサイ

最初とラストは決まってますが、中ほどの過程が全くどうしていいもんだかつながらずまだ着手できておりません~!!リク内容から夏中には!と思ってはいるのですが・・・

現在連載の教訓から見切り発車すると悲惨な目に遭う(しかも連載コースになりそう…)こと確定なのでもう少し道筋が見えてから着手したいと思ってます。

もうしばらくお待ちくださいませ!


さてと、5万ヒット御礼なのですが。

春以降どうにも更新の滞り気味の当ブログですが、遊びに来ていただき感謝です!

・・・まぁ、検索ワード・アクセス解析みるとどうも一般読者さんが多そうですけどね!

ネタバレ感想のヒット数が大半です!


書きはじめるよ余計なことまで思いつく限り書いてしまうこの性格からか、

ネタバレ感想を書くと本誌の内容すべて(一通りの本誌の流れってことで)書いてしまう性格が災いしてると思いますけどね~…


さて!最近の事。


相変らず更新は滞っております!!←威張るな

えっと・・・過去最大級のスランプの大波にのまれております(汗)

最近に至っては文章の書き方すら忘れたサルっぷり…!!!

妄想はしてるけど、まとまらない。

書いてみてもただダラダラ続けるだけ。そして自己嫌悪・・・。

自分的に納得できるまとめ方なり、最後までもって行けない感じです。どうしたもんだか。

ちなみに連載はなぜか別。

ラインはできているくせに書けない。いや、正確にはできてないのか・・・。

それすら分からなくなってきてます。早く折り返し地点に到達したい!!そうすれば一時的に進むはず…なのですが。


妄想はしてるんです。ええ。

どうしてこうなってしまったのか、まったくの謎です・・・。

リハビリ企画すら立ち上がらないくらい!


うん、時間とともに解決してくれることを願ってます。

ほら・・・しばらく麻雀打たないと雀力たまるように(オイ)

しばらく書かないと文章力もたまるかしら???

(最近同じことしか書いてないな、自分)


それともショック療法でエロしかないガッツリ桃色でも書けばスイッチ切り替わるかしら~??

どっちにしても素面じゃどうにもなりません…!!


更新の方はのんびりお待ちいただければ幸いです。


(あー、もう…)


事務所に向かう帰りの車の中、社さんはニマニマと嬉しそうな視線を俺にちらちらと投げかけていた。


「着きましたよ。どうぞ」


なんとなく癪だったので、事務所の駐車場でなく裏口の前に車を横付けして社さんに声をかけた。


「え…?」


シートベルトを外さずに、ただ送りました的な態度で社さんを促すと、彼は眉尻を下げてひどく困惑した顔をした。


「お前は行かないのか?」

「だって事務所に用があるのは社さんでしょう?俺は帰りますよ」


わざとにこやかに返してみれば、社さんは絶望的な顔をして泣きついてきた。


「れ~ん~!!悪かったよ、いじりすぎたって反省するからそんなに怒らないでくれ!!」

「何を言ってるんですか?怒ってなんてないですよ?」

「分かってるぞ、その笑顔は怒ってるんだ!頼むから機嫌なおしてくれよー」


どうしてなかなか、最上さんに負けず劣らず最近の社さんは俺の機嫌をかなり察するようになってきた。

表面上は何もおかしい事も言っていないし、、間違っても不機嫌だなんて言われない笑顔を作ったのにこの人は俺が怒っているという。

確かに、当然俺も一緒に最上さんのところに行くと思っている社さんの思惑通りに行くのが少し癪だっただけだ。


結局彼女に会えるかもしれない、いや社さん情報でほぼ確実に会えると分かってるチャンスをこんな些細なことでつぶす気などないのだ。


「頼むから一緒に行こう!なっ!?」

「はいはい、分かりましたよ」


形だけは社さんのお願いを聞くスタイルを作って、駐車場に車を移動させて事務所内に入った。


***


「これはまた…」


事務所のエントランスに入れば吹き抜けの2階部分は悠に超える巨大な笹が鎮座しており、昼間感じた笹の香が満ちている。


「笹の大きさは社長の気持ちの大きさだよなぁ」


想像より遙かに巨大なそれに、社さんが相槌を打ってきた。

撮影が少し押したせいで、時刻はちょうど夕飯時。人の切れ間なのかエントランスには人影が少ない。

1階フロアの笹の下に目を向ければ、織姫の扮装だろうか天女のような衣装の人影が目に映った。

長い黒髪からあれは琴南さんと認識すれば、自然と会いたかった自分の織姫を探してしまう。


「琴南さん、お疲れ様!」


社さんが声をかけると黒髪の織姫はこちらを振り返り、一瞬だけ顔を顰めたがすぐにぺこりと頭を下げた。


「綺麗だね!織姫の衣装。似合ってるよ」

「どうも。それにしても社長のコスプレ強要ってどうにかならないんでしょうかね?」


社さんと琴南さんの会話を聞きつつ、視線は自然と最上さんを探してしまう。


「キョーコならあそこですよ」


溜息とともに琴南さんから声をかけられ、彼女の方を見れば琴南さんの指は上を指していた。

指先に視線を向ければ、2階部分に笹の陰からちらりちらりと動く茶色の髪を見つけることができた。巨大すぎる笹は2階の吹き抜け部分からも手が届き、書き終えた短冊を最上さんがつるす作業をしていた。


「おー、やってるやってる。キョーコちゃんのことだから、今回のイベントは楽しんで仕事してるんでしょ?」

「こういうイベントや行事、最上さん好きそうですからね」


忙しく動いている最上さんの表情は1階からは遠くて伺えない。

日中話していた彼女のイメージのままにそんなことを社さんは投げかけると、琴南さんは思いっきり渋い顔をした。


「…そんなわけないですよ」

「「え?」」

「人と接しているときは仕事だからって営業スマイルですけど、気を抜くと般若の形相でブツブツ文句言ってます。仮にも女優がそんな顔するなって叱ってるんですけど」


そうは言われても風流な行事に、ロマンチストな最上さんが好きそうな天女のような衣装。

どうして彼女がそんなにも不機嫌になる要素があるのだろう?


首をひねっていると、琴南さんが何かをずいっ筆ペンと差し出してきた。


「こちらも仕事なので。どうぞ、短冊に願い事を書いてください。敦賀さんは短冊をキョーコから貰ってくださいね」

「あ…ハイ」


有無を言わせない琴南さんに思わずペンを受け取ってしまった。俺にペンを持たせいうだけ言うと今度は社さんにペンと短冊を渡している。


(この子もおせっかい…なんだろうか?)


短冊を渡すのはなにも最上さんじゃないくてもいいはずなのに、俺には最上さんから直接貰えという。

それはそれで最上さんに接触する理由になるので嬉しいのだけれど。

どうにもこの2人には俺の気持ちは駄々漏れらしい。


2階に向かう途中、思わず笑みが漏れる。

なんだかんだ言って『会いたい気持ち』を応援してもらえるのはくすぐったい。


吹き抜けに面する2階廊下で笹の葉にせっせと短冊をつるす織姫の背中を見つけて、会いたい気持ちから抱きしめたい衝動に駆られた。

琴南さんと同じく天女の扮装の彼女に思わず今日になぞらえて『織姫』と読んでみようかと思った矢先、俺に気づかないままの最上さんの独り言が耳に入ってきた。


「もうっ!今日なんて雨が降ってしまえばいいんだわ!」


俺の想像と異なる、そして琴南さんの言うとおりの不満いっぱいの声色。


「大体から言ってこんな願い事なんて、お願いするんじゃなくて自分で努力しなさいよ!」


(ま、正論だけど。どうしてそこまで??)


「そもそも、短冊に書く願い事って豊作とか裁縫の上達とか…そういったもののはずなのにぃ~」


心の声が駄々漏れな最上さんの表情といえば、綺麗な衣装と対照的に苦虫をかみつぶしたような不機嫌いっぱいといったもの。確かに琴南さんが嗜めるのも分かる。

そんな表情すら、可愛いと思う自分は相当参ってるなと思うが、やっぱりどうしてここまで最上さんが不機嫌なのかとても気になった。


「そんなに怖い顔してどうしたの、織姫様?」

「ふえっ!?」


やっぱり全く気付いてなかった最上さんは声をかけると、驚いた表情でこちらを振り返った。

つるそうとしていた短冊がはらりと手から滑り落ち、ひらひらと舞い落ちていった。


「っ・・・つ、敦賀さん…」

「こんばんは。ラブミー部の仕事だってね。お疲れ様」


慌ててこっちに向き直り、綺麗なお辞儀をする最上さんについ、さっきの言葉の真意を聞きたくなった。


「まったく、女の子がそんな怖い顔して…。しかも雨が降ればいいだなんて最上さんらしくないね」

「へ…?雨…?」

「うん、全部声に出てたから」

「………!!!」

「七夕、嫌いなの?」

「いえ…、あの嫌いというか、気が付いてしまったというか…」


ごにょごにょと言い淀む姿に、無理に追及してみてもすんなりとは教えてくれなそうだ。

仕方がないので、当初の目的を口にする。


「最上さんから短冊を受け取ってって琴南さんに言われたんだけど…」
「えっ?あ、…ハイ」


矛先が反れたことにほっとしたのか、でもその表情はすぐにまた固まった。


「…敦賀さんは当然、普通の短冊でいい…ですよね?」

「普通?普通のと普通じゃないのがあるの?」


恐る恐る絞り出された言葉に、疑問符しか出てこない。短冊と行ったら普通に長方形の何の変哲もないもののはず。

最上さんの手の中からつるされるはずの短冊がバラバラとこぼれた。

予想に違わない長方形の短冊の他に、変った形の紙があった。


「これは?」

「…・…」


拾い上げた変わった形のそれは、よく見れば織姫と彦星らしき男女の人型がつながったようなもので

笹に吊り下げ待ちだった短冊には『渡辺君と両想いになれますように!H』とハートが飛んでいる様な可愛らしい文字が躍っている。相合傘よろしく、男女の名前と思わしきイニシャルも織姫、彦星のシルエットの中心にある。


「変った形の短冊?だね」

「っ…!敦賀さん!!いけません!」


恋愛成就の願い事の記されたそれに、なんだか微笑ましくて笑みがこぼれた。なのに急に強張った表情で制止され、はて短冊の願い事を勝手に見たことを怒られたのかと思ったが、そもそも誰の目にも見える笹につるすんだから見られてもいい事しか書かないだろうと最上さんの反応に疑問しかわかない。


「ああ、ラブミー部の君のことだ。短冊に恋愛成就の願いを書くことが間違いだと?」


そういえば俺の愛しの織姫は愛を否定するラブミー部員だった。それを思い出してそう問いかけてみると、最上さんは胸の前で拳を握って力いっぱい『そうです!!』と叫んでいた。


(でもどうして他人の願い事までそこまで全否定なんだ?)


愛を取り戻すためにラブミー部にいる彼女は、最近は自分のことは置いといても他人の恋愛ごとまでひどく否定するのはなりを潜めてきたように思う。しかも、今回の短冊なんてどこのだれが書いたか分からない、彼女と交流が薄い人間のモノのがたくさんのはず。


「しかし、どうしてそこまで…」

「敦賀さんなら分かってくれますよね!?こんな愚かしい二人に他力本願でこんな願い事を書くのが愚かな行為だって!」


なおも畳みかけられたセリフに訳が分からない。願い事を書いて努力をしなければ確かに他力本願だけれども、『愚かしい二人』とは?


「だってそうでしょう?織姫と彦星はあんなに働きものだったのに恋に落ちた途端、お互いしか見えなくて仕事をさぼってばかりだったから、天帝の怒りに触れて離れ離れにされたんですよ?2人が年に1回会えるのだってお情けで許してもらえるだけなんですから!」


力説してくる最上さんに、そうかその二人が隔たっている理由はそういうことかと調べようと思っていた内容をここで理解する。

最上さんからしたら、仕事を放棄して恋愛に夢中になった二人は愚の骨頂といったところか。


「お仕事に厳しい敦賀さんなら分かってくれるはずです!こんな愚かな2人の逢瀬を応援するなんて!あまつさえそんな二人に恋愛成就のお願いごとなんて、自ら馬鹿になりたいと言ってるも同じです!!」

「最上さん、何もそこまで…」


グイグイと力説して迫ってくる天女の扮装の最上さんに嬉しい反面、その勢いに押されて少し引いてしまい勿体無い事をしたな。

一通り主張すると、最上さんははたと我に返ったようでさっきの勢いを引っ込めてしゅんとうなだれてしまった。


「…?どうした?」

「……バカ、ですよね」


ぽつりと呟かれた言葉に、どう返していいものか分からない。

きっと感情のままに突っ走ってみて、一人で振り返って自己完結したのかもしれない。


「七夕…昔はごく自然に、雨が降らずに天の川、渡れればいいのにって思ってたのに」


その言葉に、昼間社さんと想像した通りの最上さんが、過去いたことを確信する。


「この、短冊見たら…なんだかそんなことに気が付いてしまって。昔は素直に楽しめた七夕だって…」


手にした人型の短冊に目を落として、最上さんはぽつりとつぶやいた。

最上さんが言うに、この短冊は好きな人と結ばれるために相手と自分の名を書くモノらしい。好きな人がまだいない人は好みのタイプを書くといいとか…。


(これは社長の用意した物だな…)


「普通の短冊をもらえるかな?」

「え?…あ、はい」


長方形の短冊を受け取って、願い事を一つ。


「何を書いたんですか?」

「最上さんが来年の七夕は楽しめますように」


恋愛に対して、もう少し前向きになれればいいんだけど。

願わくば、目を輝かせて夜空を見上げる君と一緒にいたいと思う。


最上さんは複雑な表情をしたが、最後は擽ったそうに笑ってくれた。


「まだたくさんあるんだろう?手伝うよ」

「え、そんな…」

「俺の身長なら上の方にもバランスよくつるせるだろう?」


笹に飾られるのを待っている短冊の束を最上さんの手から抜き取り、笹に結わえつけていく。

最初は遠慮していた最上さんも、どうたら笹の一角のみに短冊が集中していることを気にしていたらしくおずおずとお願いしますと言ってきた。


(これくらいなら、いいよな?)


手にした短冊の中に、まだ未記入の人型の短冊を見つけて最上さんに見つからない様にこっそりと筆を走らせた。

人型の中にアルファベットを一文字ずつ。


『K・K』


今日の天気は晴れても雨でもどちらでもいい。

願い事は、叶えるための努力がつきものなのだから。



~~~~~~~


むあー!!スランプ継続中!

織姫と彦星の逸話から、きっとラブミー部カラー全開のキョコさんなら全否定するだろう!!ってぽっと思った七夕だったのですがどうにもこうにもうまくまとまりませんでした。(←しかも七夕すぎたし!)

最近ダメダメだなぁ・・・

さわやかな青い香りに気づく。

その香りのもとを目で探せば、風に揺られて笹の葉が揺らめいているのが目に入った。

笹の下には小さなテーブルと短冊が置かれており、セルフサービスで願い事を書いてつるしてくださいと案内が出ていた。


「七夕か~。時季モノだけあって、結構笹が飾られてるんだなー」


俺の視線の先を目で追った社さんが、そう口にした。そういえば7月7日は七夕だったか。


とはいっても、アメリカ育ちの俺は詳細に行事の内容や意味を知っている訳ではなく、ごく一般的に・・・日本に来てから何度か経験した季節行事の一環として知っているのみだった。


笹を飾って、それに飾りやら願い事を書いた短冊をつるす。

七夕は天の川を挟んで離れ離れになっている織姫と彦星が、晴天ならば年に1度会える日のため晴天を願うのが常。

俺の中の七夕の知識といえばこれくらいのもので、そういえばこの行事についてあまりよく知らない。


(時間のある時に、七夕行事について少し調べてみようか・・・)


相変らず日本の文化に関しては穴が大きい。

特にモチーフにされた芝居に当たったこともないし、この程度の知識で仕事で困ることもなかったから時折こんな風に不勉強なところがポロリと出てくる。


そんな事を考えながら、空を見上げれば梅雨時期に入った日本の空は雨こそ降らないものの雲が出ており青空は見えなかった。湿度も高いようで、これはいつ雨が降ってもおかしくないばと思う。


晴天に恵まれれば、織姫と彦星になぞらえてある星と天の川が綺麗に夜空に見えるのだろうけれど・・・。


(そもそもどうして雨だと会えないんだろうか?)


「蓮、願い事でも書いてみるか?」


野外ロケで出番待ち中。

休憩場所に借りた施設の一角にある笹を見て、社さんがそういってにやりと笑った。


「願い事、ですか」

「そうそう!色々あるだろう?いや、色々じゃないか…。仕事は順調だし、順調にいかなくて思わず願い事にしたくなるようなこと」


いつもの俺で遊ぶ気満々の表情で彼が振ってくる話題なんて一つしかない。

もう否定しても躱してみても、決めつけで動かない社さんの相手をする気なんて等に失せているんだ。

そうですねぇなんて生返事をすれば、社さんは俺の答えなんて聞いてはいなくていそいそと用意されていた短冊に書きこみを始めていた。


「この天気じゃ、せっかく七夕なのに夜は晴れないかもなぁ」

「この梅雨時期に晴天って結構厳しくないですか?」

「でもさぁ、雨が降ったら天の川が増水して渡れなくて、二人は会えないんだろう?かわいそうじゃないか」


社さんとの会話の中で、そういうことかとさっきの疑問が解消した。


「そうそう、お前の場合は雨とか関係ないな」

「なんですか?それ」


急に投げかけられた言葉の意図が見えず、思わず聞き返せば相変らずあの笑みを浮かべた社さんに最上さんがらみの事か合点がいく。

それと同時に、雨と会える会えないの話題をしていたのできっと彼のことだろう最上さんに会える接点を先に見出した上でこんな話をしてきているのだ。


俺が喜ぶのを分かっていて、こんな風にからかってくる。

社さんのおもちゃになるつもりもないけれど、こんな彼の様子を見るとどうにも期待して、そして最終的には感謝して、優秀なマネージャーを持った自分を幸せに思ってしまうのだ。


「ほらさ、うちの社長ってイベント好きじゃん?」

「ですね。愛が絡めばなおのこと」

「しっかり絡んでるだろ!離れ離れの恋人の、年に一度の逢瀬のチャンスなわけだし」

「ああ、確かに…」

「ちょっと前に事務所で見たんだけど、エントランスに馬鹿でかい笹が飾ってあったぞ」

「だから、それがどう…」

「こんな風に短冊を書いて飾ったり、時季モノイベントを盛り上げるのって要は雑用…だよな」

「………」

「ラブミー部員、駆り出されてるんだって」

「止めてください。その顔…」


にやぁと笑みを深めた社さん。

マネージャーをしているのが不思議な位、このヒトだって端正な顔立ちをしているのにどうしてこういった表情がとても似合うのだろう?


「今日のロケは夕方には終わり。お前はそれでオフだけど、俺は事務所に用事があるんだ」

「そうですか」

「お前は疲れてるよな?俺はタクシーか電車で戻るから気にしなくてもいいぞ?」


(……俺の車で行くって決まってるくせに)


「事務所までなら帰り道ですし、一緒に行きましょう」

「事務所の中までの間違いじゃないか?」

「……」


もうこのヒトにはかなわないな。


「キョーコちゃん、こういった行事とか好きそうじゃないか?雨降らないか空見上げたり、短冊に願い事をどうぞって、いい笑顔で仕事してそうだよな~」


行事ごとに楽しんで取り組んでいそう最上さんの様子が容易に想像できる。

きっと、彼女は満天の星空を期待して夜空を見上げるんだろう。


「じゃ、俺はこれをつるしてくるから。お前はそろっと出番だから行って来い!」


時計を確認した社さんは俺の眼前に、さっき書いたばかりの短冊をずいっとつきだした。


「雨が降っても降らなくても、願い事は叶えばいいんだけどな~」


俺に反論の隙も与えず、社さんは笹の方に歩きだしていた。

目の前につきだされた短冊。


『大事な弟分の恋が成就しますように』


書かれていた願い事はとてもおせっかいで、温かいものだった。