発掘品です。
これ…ごく初期おそらく2012.12頃のですね。何が書きたかったのか良く分からないんですが、本誌を読み返してモー子さんだったら内心こんなかな?って思って書いたモノ…だったはず。
結局モー子さん&キョコさんのやりとりが大好き!ってことでw
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ーーーーー私は思わずにはいられない。
あの子の密室での大告白劇を聞いた時から。
あの時はあまりにもな青筋だって恐怖を浮かべる顔に、仕事に厳しい紳士っていうイメージのキーワードから、嘘をついている後輩に教育的な態度を取ったんじゃないかって別見解も述べたりもしたわ。
でも良く考えれば、
たとえ嘘をついた後輩に不快な思いを抱いたからといっても、あの子が言うような態度を取るはずないじゃないの。
その時、あの子から聞いた「先輩」の言動やら、あの子の持つ先輩のイメージって、はっきり言って私にはまったくピンとこなかった。
あの子ほど接点は多くないにしろ演技の道をゆく先輩ですもの、後学の為に主演しているドラマや映画だって拝見することもあるし?事務所の先輩ですからちゃんと粗相のないようにチェックもしてるわよ?
超美形で抱かれたい男ナンバーワン(もちろん私には何の興味もないステータスだけどね)
「温厚」で「紳士」、「人当たりが良くっていい人」
事務所的にもスキャンダルもなく超優等生じゃない?
事務所で顔を合わせた時や、ドラマで共演した時だって私は世間一般に流れている先輩の印象通り・・・というかそれ以上もそれ以下も何も感じなかった事務所の売れっ子優等生な先輩俳優。
そんな先輩を「似非紳士」とか「大魔王」といってはばからない親友の口から語られる先輩とのエピソードの数々。
これってもしかしなくても・・・?
推測は確信へと変わっていく。
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いい加減この目がいかれるようなドピンクツナギを来てこんな雑務をするような状況ではないはずなんだけど。
幸いなことに少しずつ女優としての仕事をいただけるようになってきた今日この頃、まだ俳優部門に正式登録されていないこの状況が腹立たしい。
午前中は正式な仕事が入っていなかったため、二人でラブミー部室で事務所の書類整理の雑務を引き受けている。
「でね、今BOX-Rの撮影で・・・」
事務仕事をしながらの雑談。主に1号と呼ばれている私の親友、最上キョーコがしゃべりたいことをしゃべり、聞き役をしていることが多い。
今日の話題は今撮影中のドラマのこと。
「モー子さんにプレゼントしてもらった魔法のアイテムが「ナっちゃん」の完成を助けてくれたのよ!これってなんかもう親友の証って感じでしょ!」
目をキラキラさせて、紆余曲折あっても上手くいった役作りのことを嬉しそうに語る親友。
同じ演技を愛する者としては喜ばしいことで胸の奥がほんのり温かくなるけど、メルヘンに浸りきった相手のリアクションに素直に反応を返してやる気になんてなれない。
「はいはい、良かったわね。って、只の化粧品なのに何よその魔法のアイテムって!!止めてよね、そんな気色悪い表現!」
嬉しくもあるはずなのに、それ以上にざわざわと鳥肌が立ってしまう。
このトンチキメルヘン癖は私とは全く相いれない真逆の性質を持つモノだわ。
「えー?モー子さんが私の為にくれたモノじゃない~!!コスメキットでなくても十分私にとって魔法のアイテムよ!?親友の気持ちのつまったプレゼントってだけで~」
私の反応が不服らしい親友はなおもしつこく言い募ってくる。
キョーコは素直に女友達とのじゃれ合いに憧れをもっているだけだろうが、同じようにそんなものとは無縁であった私は無縁であったが故慣れずに、くすぐったいのを通り越して鳥肌が立ってしまう。
「~~~~っ!!あんたねぇ、そういうんだったら「プリンセス・ローザ様」とやらの方がよっぽど魔法なんでしょ、あんたのナツにとっては!」
なんとか話の矛先をそらしてしまいたくて、ナツ誕生にかかわるもう一つのアイテムの名前を出す。
誕生日であるクリスマスに、敦賀さんからプレゼントされたバラに仕込まれた爆弾。
喜々としてメルヘン全開で浮かれて見せてくれた「ソレ」
また無駄に凝ったスキルで手作りに見えないネックレスに仕立てられた宝石はおぼろな推測だった考えをより確信に近づけるモノだった。
そういえば、つい先日社長の前でバレンタインの感想を聞かれうっかり心の思うままに「社会迷惑の公害日」と叫んでしまった私の横にいたキョーコ。
「平穏と平和を脅かす忌むべき悪夢の厄日」って言ってたわね。そして敦賀さんの話題を振ったら「迷惑甚だしいお礼」って・・・
連想ゲームで芋づる式に引っ張り出されたキーワード。
そういえばどうなったのか詳細は聞いてなかったなと思い、ほんのちょっとの興味から何気なく聞いてみる。
「そういえば、あんた。敦賀さんにはバレンタインに何あげたの?」
「へ?」
急に出てきた先輩の名前に呆けた顔をした親友。なんで?って顔をして私を見ている。
「プリンセスローザとやらをもらったんでしょ?世間一般のイベントだし、お礼を伝えるのにちょうどいい機会だったんじゃない?チョコは用意してないって言ってたから、チョコじゃないものでも用意したんでしょ?お礼されたって言ってたし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
私の言葉にフリーズした彼女。
予想しなかった反応に私も思わず目を丸くしてしまう。
どうやらフリーズの先、彼女の脳内ではいろんな場面がプレビューされているらしい。
表情は固まっているものの、瞳の奥が百面相を始めている。
ビキッ…!!!
「!!??」
幻聴が聞こえてくるくらいに、般若の面が表情に浮きででる。
5秒ほどだろうか・・・般若がはがれ一瞬だけ赤面。そしてスーッと冷気が下りてくる。
あまりにもな表情の変化に、興味も沸くがそれ以上に背筋に恐怖が這いあがってくる。
・・・怖い。
「ちょっと、なんて顔…してるの・・・?」
空気に耐えかねて私の口から出た言葉に、はっとしたように私の顔を見る。
「そ、それよりっ、・・・モー子さんはっ?」
「え?」
「飛鷹君、どんな反応してた??」
思いっきり話題転換にきた親友をみて、私の中にこみ上げてきたのはむず痒いような、何とも言えない感覚。
これって、あの人も感じている感覚なのかしら??
「・・・・ふーん、私にはそんなに言いたくないようなことでもあったの?」
あからさまに不機嫌な表情をして見せる。そしてふっと寂しさを含ませた視線を投げかけてみる。
「キョーコは私に話したくないのね…」
私は知っているのだ、この子が私をどれだけ好きなのか。名前呼びなんてしようものならイチコロだ。
親友宣言や姿を見れば飛びついてくる暑苦しい友情に、面映ゆくもなんだかんだ言って心地よく感じている自分が居ることもほんとは認めている。
余計暑苦しくなるから絶対に本人にはいってやらないけど。
私の演技にあからさまにうろたえて口ごもっていた言葉が出てくる。
ほら、こんなにも簡単。あからさまな演技でだってこの子を操るのは。
「そんな、・・・そんな事無いわよ?敦賀さんの誕生日、私だけ勘違いしてて遅れて誕生日プレゼントを渡して…チョコは貰いすぎるだろうから、デザートを差し入れしただけで…」
「で?」
ついつい意地悪をしてみたくなる。あんなにフリーズして百面相しているんだから、とてつもなく何かあったに違いない。
役者をしてるくせに、ほんとに素では嘘といか演技が下手くそなんだから。
「まあ、誕生日プレゼントはイイとして、チョコだってスイーツでしょ。デザートってどういうこと?」
私の投げかけに訥々と親友の口から言葉がこぼれる。
「チョコ…それこそ食べきれないくらい貰うだろうし、ただでさえ食も細いから食べないんだろうな…と思って」
…それって食べてもらえないチョコは作りたくないってこと??
「私までチョコをあげたら困らせてしまうような気がして・・・」
・・・何で相手が困るって思ってるのかしら?
「それで軽く食べれるようなもの・・・と思ってワインゼリー作ってみたの」
・・・ゼリーって日持ちしないわよね?あげたその場で食べてもらえること前提??
ちょっとまって、あんたそれって只の先輩後輩の域超えてない?
すくなとも同じ只の後輩の私には想像つかない状態よ?
「作ってる時、結構楽しかったな…味見何度もして・・・」
「!!??」
そのセリフの直後、目の前には般若顔。
ちょっと・・・楽しかったって言葉のあたり少し赤くなって乙女チックな表情してたはずなのに!?
何!?何が起きたの??
「ちょっと…なんでその話の流れでそんな顔してるのよ?」
聞かずにいられなかった疑問を投げかけると、あからさまにビクリ!と背筋を伸ばして固まる。
「・・・あ、アリクイに・・・」
「はぁ????」
なぜアリクイが出てくるのかわからない。相変わらず変てこな曲解思考に怒りすら沸いてくる。
感情のままに不機嫌な声色をにじませると、ぶわっと涙をにじませた目でマシンガントークのように憎っくき幼馴染の不破尚の奇天烈行動から、「迷惑甚だしいお礼」と称されたほっぺにチューまでのことの顛末を聞かされることとなった。
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「ね、ヒドイでしょ、モー子さん!!乙女の肌をなんだと思っているのかしら!似非紳士だけじゃなくてプレイボーイだなんて!!人で遊ぶにもほどがあるわっ!」
「ふぅ~ん」
怒涛の報告のあと、いかに自分で遊ぶ先輩に不満を持っているかを切々と語る親友にチラリと呆れの視線を投げかける。
…そりゃ目の前で昔心底惚れたた幼馴染とのディープキスを見せつけられれば、好きな相手なら怒り心頭どころじゃないわよね・・・
…役者としての気持ちの切り替えは当然だけど、それにかこつけてあの危険分子をアリクイ扱いにリセットさせてるし
…チョコじゃなくて食後のデザート特別提供のお礼に頬にキス…ねぇ。キスでもされたのかしらって私の予想的中じゃない!
結構なことをしつつされつつなな奇妙な親友と有名な先輩のやり取りにため息しか出てこない。
・・・これって犬も食わないなんとやら・・・じゃないの
「あんたねぇ…頬にキスされてそんなに動揺したのってなんでだかわかってるの?」
「だって敦賀さんよ!?夜の帝王なのよ?動揺なしにいられる人間なんているはずないじゃない~!!」
顔を真っ赤にして反論が返ってくる。確かに正論なのかもしれないけど、わたしが言いたいのはそこじゃない。
ああ、もうめんどくさい。
本当にめんどくさい。
怒りとか不機嫌な感情には敏感なくせに・・・!
ふつふつと呆れよりも、怒りが込み上げてくる。ばかばかしい、どうして私がこんな思いをしなきゃいけないのかしら?
イライラし始めた思考に、ぽっとこの騒動の中心人物のことが思い浮かんだ。
グレートフルパーティーの帰り際、25日を迎えた瞬間にこの子に豪華なピンバラを手渡していた件の先輩。
つい買ってしまった恥ずかしいコスメキットに、その時知ったあの子の誕生日。
ほとんど目にしたことのないくらいやわらかい笑顔の先輩と照れたようにはにかんだ笑みをこぼした親友。
誕生日と知って、手渡すいい口実ができたと思った。
つい買ってどういう名目で渡すか迷ったコスメキットとそれを手に入れるまでにした恥ずかしさは、どこかで代償をもらわなければ落ち着かない。
コスメキットを目の前で広げてやったらもくろみ通り鼻血を出すほど喜び浮かれた反応に優越感を覚え溜飲が下がった。喜々として私にまとわりつく親友をみて背中にかすかな嫉妬の視線が向けられたのも知っている。
でもあの子の手にあった一輪の薔薇を見て、どうにも腹が立ったのはどうして??
優越感って・・・??
「モー子さ~ん?どうしちゃったの??」
「ひゃあ!!!」
どうやら思考の小部屋に迷い込んだらしく、気が付けば私の顔を覗き込むあの子のどアップに心底おどろいて変な声を上げていた。
どうやら人の存在を無視して自分の世界に入ってしまう親友の悪い病気は強い感染力を持っているらしい。
「なによ、いきなり顔近づけてきて!びっくりするじゃない」
「モー子さん、突然黙り込んじゃうんだもん。こっちが心配したわ」
至極当然な返答に、自分でもバカじゃないかって思う。
自分でも思っている以上に親友を名乗る彼女に、親友として自分も接していることに気が付いてしまったのだ。自分でもびっくりなその事実に動揺する。
何コレ、私が敦賀さんに妬いてるみたいじゃない??
”コン、コン”
不意に部室のドアをノックする音響く。
「はい、なんでしょうか?」
対応に出た親友の前には所属事務所の社員。
「ラブミー部にお使いを依頼したいんだけど、13:00までに富士に資料を届けてもらいたいんだ。
確か琴南さんは午後富士で仕事は言ってたよね?」
資料の入った紙袋を受け取り、時間と場所を確認する。
「モー子さん、この後の仕事って富士だったんだ」
「ええ、今出てるドラマの撮影で・・・って、あら?」
依頼のメモを確認するとそこにはちょっと意外な文字。
チラリと目線をやりあの子の顔を見る。
「モー子さん?」
「仕事が増えたし、そろっと行く事にするわ」
ラブミー部への依頼なので、富士までこのピンクツナギで行かなければならない。
ラブミー部の仕事を終えてから着替えて撮影に行くことを考えると時間が無い。
さっさと荷物をまとめ、足早に部室を出る準備をする。
「・・・え、あ、行ってらっしゃい」
急な出来事に少しさみしそうな表情で手を振ったあの子を背に、ふっと笑みがこぼれた。
届け先は某先輩の某マネージャー。
運が良ければ某先輩もいるかもね?
ラブミー部のおつかいと聞いて、このドピンクツナギの色を視界に入れて、連想するのは誰なのかしら?
私が来たのを見てどんな反応をするのか見に行くのも見物だし、尻尾でも出そうものならそこを引っ付かまえて弄ってみるのも楽しいかもしれない。
「じゃーね、キョーコ」
悪戯心でウインクを一つ。
ちょっと頬を赤らめて、満面の笑みで私を送り出したキョーコに思わず頬が緩む。
意地悪に浮足立つ足元は早足に変換して、私は事務所を後にした。