真夏の海のA・B・C…D -12- | 妄想最終処分場

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ぼの様のリクエスト作品になります。蓮さんがかなり性格違います。スマートで紳士な蓮さんがお好きな方はご注意ください。


これまでの話

真夏の海のA・B・C…D                   10  11



真夏の海のA・B・C…D -12-



今日も今日とて賑わうホテルのプライベートビーチ。

昼前の繁忙タイムにキョーコは忙しく厨房とホールを行き来しつつも、どこか上の空でいた。


「ね、イイ男いた?」

「そうね~、ビーチのスタッフとか、ホテルのスタッフはレベル高いと思うけど…」

「あ~…、仕事のヒトだとなかなか…ね。このビーチレベル高いけど有料だけあって変に浮ついたあからさまなナンパが無くていいけど、出会いが欲しい時はちょっと残念よね」

「マナーが良すぎると、こっちからの逆ナンもちょっとやりづらいしねー」


きゃいきゃいと賑やかな会話が聞こえてきて、その内容にキョーコは顔を顰めた。チラリと視線を向ければ、店内で寛ぐ女性ばかりの4人グループ。


「さっき見かけたグループなんてどう?超イケメンじゃないけど、そこそこじゃない?」

「あー…、いい体してたよね?どっかの実業団グループだったりして」

「うーん、私見る分にはいいけどあんまマッチョとか無精ひげとかとかちょっとね…」

「えー?イイじゃん。無精ヒゲだってワイルドで似合ってれば!」

「見る分にカッコいい人はいいけど、なんていうか…自分の彼氏とか相手には生理的に無理!」

「生理的って…ヒゲが駄目なら剃ってもらえばいいじゃん。ヒゲ無くてもイケメンはイケメンでしょー」

「無理なもんは無理!いくらカッコよくてもさ。なんか、ザワザワするっていうか、鳥肌が立つっていうか…とにかく受けつけないの!」


周囲を憚らず盛り上がるガールズトーク。

その内容に、キョーコはぴたりと手を止めてしまった。


その会話内容に思い出したのは先日の告白。


『好きなんだ』


世の女性を甘いマスクと言葉で弄ぶ女の敵と思っていた、自分の命の恩人。

いつもだるまやで見せる異なる真剣な表情や、神々しい微笑…それすら蓮の女遊びの手管なんだろうかと考えては見るものの、そうではないと否定したいキョーコがいた。


あんな風は真剣な愛の告白なんてものが自分の身に降りかかるなんて思ってもみなかった。



「…私は二度と恋なんて愚かなことはしないと心に決めてるんです。だから…」

「待って。返事は…今は要らない」


キョーコの唇をなぞった親指で、蓮は再度唇の中央を軽く抑える。

先の言葉が十分返事なんじゃ?とキョーコは思ったが蓮は蓮なりの解釈をしているようだ。


「ってことは、今好きな人や付き合ってる人はいないって事だよね?」

「あの…」


確かにそれは事実だ。二度と恋なんてしないんだから。

キョーコは今だけでなくこれから、一生そのつもりだ。


「ひとつ聞いてもいい?」


キョーコの頬に触れていた手が離れて、空気がキョーコの頬を撫でた。夏の熱い空気にもかかわらず、蓮の手が離れた瞬間、僅かにひんやりと感じた気がしたのは蓮の手が熱かったから。


「俺の事、生理的に受け付けないとか…そういうことある?」

「……へ?」


ちょっとだけ怯んだように視線を彷徨わせた蓮から出た言葉に、キョーコは目を丸くした。

まるで脈絡が掴めず、戸惑うしかない。必死にその意味を考えていると、キョーコは自分の手に熱を感じそれにまた気を取られる。

頬から離れた蓮の手が、自分の手を取っていたのだ。


「…あ、あの?」


意味が分からず、キョーコは自分の手を取る蓮を見つめる。

蓮はキョーコの指先から手首へ、手首から肩へと、肩からキョーコの顔へと視線を巡らせた。そこには戸惑ったキョーコの表情。


「……敦賀さん?」


自分を映したキョーコの瞳に、蓮は抑えがきかなかった。


「抱きしめても、いい?」

「なっ…!」


キョーコの返事を待たずして、蓮が掴んだキョーコの手を引いた。そんなに強い力でなかったが、不意をつかれてバランスを崩したキョーコは蓮の方に倒れ込む。当然のように蓮の腕はキョーコを受け止めて、ぎゅっと抱きしめられる。

触れられた手のひら以上に熱い蓮の腕の中。


「つつつ、敦賀さん!なななな、なにを…っ!」


突然の抱擁に慌てたキョーコの声が大きくなる。

腕の中のキョーコの感触に蓮の表情は崩れきっているのだが、抱きしめられているキョーコには蓮の顔は見えない。


「キョーコちゃん?おい、蓮!まさかお前…!」


キョーコの声を聞きつけたのか、救護室のドア越しに社の声が飛んでくる。

その声に蓮は苦笑し、すぐさまキョーコを解放した。

不意をつかれたキョーコは蓮から離れてから事の事態を飲み込んだようで、いつものだるまやでの応酬の時ようにかーっと耳まで赤くなってわなわなと震えはじめていた。


「うん、今はこれで十分」

「な…なっ……なっ……」


一度腕の中に収めたキョーコの感触を確かめる様に、自分の腕を見て満足気ににっこり笑った蓮。


一体何が、十分なのか。


キョーコは思わず片手を振り上げたがその様子すらニコニコ笑って受け入れ態勢の蓮に、以前同じように平手をお見舞いしようとしてどうなったのかを思い出して慌てて手を引っ込めた。


「…俺のここは君のモノだからね。いつだって待ってるよ?」


にやりと、艶のある色を含んで持ち上がった蓮の唇を撫でたのは、さっきキョーコの唇に触れていた蓮の親指。その親指の腹をチラリと蓮の舌先が舐める。

振り上げた手を引っ込めたキョーコが、何を思い出したか気づいた蓮はいつもの調子で。


だからキョーコもいつもの調子で


「知りません!」


と言い捨ててその場から身を翻した。



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セクハラ蓮さん・・・orz