高血流透析の利点と危険性

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高血流でのHDやHDFはダイアライザーやヘモダイアフィルターで何を使おうと、とりあえず尿素からβ2mgまでは拡散効率を上げるのでしっかりと抜くことが可能になります。

 

 

これを最初に行ったのはもう10年前の大阪での経験でした。

当時、夜間透析でどうしても仕事の都合と透析終了時刻が午後10半のために4時間しか出来ない50代の仕事をしている患者さんのためでした。DWはちなみに65kgくらいありました。

 

さて、時間を延ばす訳にはいかない。当時血流量は230ml/min程度だったので、2.1㎡の膜を2.5に変えても意味はない.....。さてどうしたものか?

 

当然、血流量を上げるのが最も効果的であり、すぐにでも出来る事でした。

QB230を250にすぐに上げても患者さんには体感では解らず、問題なく変更できました。

 

リンの問題などもあり300まで上げてもまったく問題ないと思いましたが、なんとその施設では「血流量300は過去に例がない」という理由で看護師さんの総スカンを食らって反対されちゃいました。

 

過去に例がないから反対するの?

だって、血圧が落ちるたら。

針が抜けたら?

 

こういう問答は何処の施設でもあるでしょうね。だから技士さんがわざわざ、QB250で制限をかけている施設もあるくらいです。

 

これを打破するには、除水速度の問題も絡んできます。無理なギリギリの除水速度で透析効率を上げて血圧低下が起きれば、「そらみたことか」になります。

 

まあ、そこで思案したのが前置換オンラインHDFです。これをすれば、血圧安定効果があるからと!

 

250を280にし問題なし。

 

280を300にして、問題なし。

 

置換液量も15L/Hくらいに上げて、透析液流量も600に上げました。

 

慣れとは恐ろしものです。

 

何事も起こらず、検査データが改善すれば誰も何も言わなくなる。

過去に例がないからやらない。

 

不合理の極みですが、「人は自分の経験から抜けられない」のも事実です。

 

 

しかしながら、血流量300で丁度良かった患者さんが、何等かの理由で食欲が落ちたのに、QB300、5時間治療を継続しているとどんどん痩せてきたらどうでしょ?

 

「高血流がいい、時間は長いほどいい」とこれまたバカの一つ覚えのようにその条件に固執するとBNU前値は30を切り、リンは2を切ることになるでしょう。

 

恐らくアミノ酸の欠乏も生じて、体蛋白代謝にも異常を来す可能性があるのです。

 

高血流の必要な患者は元気で食事も制限しないといけないくらい食べて、DWも60kg以上あって、透析不足になる可能性のある患者には必要ですが、食事が摂れない患者にこれをすると、低リン血症まで作ってしまう。

 

同じように長時間透析がいいと言って、DW50gで85歳の患者に6時間治療を行うとさて、何が起きるでしょう。

 

尿素も、カリウムもリンも抜けますが、アミノ酸も大量に抜けてゆきます。

 

透析治療の危うさは、「抜く治療しかできない」ところにあります。

 

「食べた分だけ、抜く治療」これが原則。

 

そのために、どれだけ蛋白質を摂っているか、カロリーは....を聞き取りやら、世間話やらデータや透析間の体重増加の傾向や残りの尿量(残腎機能)を把握しながら透析量を調整して、春も夏も秋も冬もほぼ同じデータになるように、血流量も治療時間も設定してゆく必要があります。

 

「そんなのできるかよーーーー!」

と言う医師が行っているのが標準透析+α(30分延長など)だと思います。

 

患者の治療前BUNが30まで落ちたりしない、リンが2.5まで落ちないように、如何に食べさせるかが大きな問題になってきたのが現状でしょう。

つまりは、動かない高齢者の患者さん達です。

 

彼らには、高血流や長時間は不要な人の方が多い。

 

今、この日本人の高齢化に伴って、透析患者の高齢化がどの施設でもおきていると思います。

 

そう言った高齢者をいかに元気にするかの知恵と柔軟性が医師には求めれれる時代になって来ています。

病院勤務時代の透析室のことを思い出しています。

 

当時は外科医が透析室を管理していました。これは広島県では、初めて透析と腎移植を導入したのが外科の教室だったからです。

 

朝は、皆が透析室に集合して患者の穿刺に当たります。特に人工血管や穿刺困難な患者は医師が穿刺していましたね。

 

15年くらい前の話ですが。

 

4時間の標準透析です。血流がいくらだったかも覚えていませんね。ましてや透析液流量はみんな500だったでしょう。

 

 

穿刺と、定期処方くらいしかしていなかった。受け持ち患者であってもエポもオキサロールも部長が指示を独占していましたから、シャント手術くらいしか興味がわかないのも仕方がないですね。

 

 

標準透析(血流200,透析液流量500)が今でも病院透析の標準になっているには理由があります。

 

腎臓内科医であろうが、外科医であろうが、一日透析室にいる事が出来ないからです。

 

 

高血流で回していて、事故や血圧低下が起きた時にはそうするの?食事摂取さえ抑制しておけば、それが食事指導と言えたわけです。

 

つまり患者の生活の把握など医者がする前提ではない状況下では、標準透析しか出来ないのが現実だったのだと今冷静に思いだします。

 

クリニック透析で、日がな一日患者と接していて、昨日は何を食べたのかとか、何をして過ごしていたのかとか、そういう患者の日頃の暮らしぶりを世間話風に聞くような時間があるのは、クリニックで一般外来もやらない(せいぜい予約は1日1人)専門透析クリニックをしていて初めて、高血流やオンラインHDFや長時間透析が出来るのだとようやく解りました。

 

 

患者が食欲が無いのに高血流にするわけにもいかず。

 

特に、愁訴もないにのオンラインHDFにする必要もなし。

 

高齢者の栄養状態の良くない患者に長時間透析の必要もない。

 

 

つまり、患者の状態が手の内に把握出来て初めて、こうした治療条件のバラエティーに富んだ治療選択が出来るのだな....と。

 

患者をコメデイカルに任せている医者はやらない方がいい。

 

条件の違いが結果として検査データに反映しても同じ条件ならコメデイカルにも理解はしやすいでしょうが、治療時間の違い、血流量の違い、膜の異なったオンラインHDFでは、その結果をどう評価していいのか解らなくなるのも無理はないでしょうね。

 

患者を診ていない施設では、テーラーメイドが出来ない理由がようやく解ってしまった。

 

 

外科医時代に、術後の患者を週末の土日でも診ていた習慣で透析患者を診始めたので、個々の患者の条件が変わってゆき、皆違うのが当たり前になってしまったのですよ!

 

条件が全くおなじオンラインHDFをしている施設もあるそうです。HDでもそうですね。

 

そうか、そうだったのか。

 

テーラーメイド透析治療が異端である理由のなぞがようやく溶けた。

今日80歳後半の末期腎不全の患者さんを自宅で看取りました。

 

80歳半ばからの3年のお付き合いです。

 

糖尿病性腎症に加齢が加わって、徐々に腎機能は悪化してゆきましたが、初診時にきっぱりと「透析なんかしないよ」と言われたのを覚えています。

 

認知症もなく、週3回デーサービスに通っている大柄で明るい方でした。

 

いつも息子さんと通院していましたが、体重が80kgくらいあるせいで膝が悪く、息子さんが車で通院を介助してくれていました。

 

 

3年は長くて短い時間です。

 

恐らく、もう十分に生きたと思っていたのでしょう。まだ長生きして同居している息子夫婦に迷惑をかけたくないとも感じていたような気もします。

 

クレアチニンが8㎎/dLを超えても、最後の通院は出来ました。

 

10月の初旬に、食欲がなくなり通院が出来なくなり、デーサービスにも通院できなくなったのを機に、介護のための訪問看護師に週3回、自宅に通ってもらって、主に身の回りの事や清潔を保つことをして頂きました。

 

食事が取れなくなった時には体重は60kgくらいまで落ちていましたが、これが1月半の水分と栄養になったと思われるます。

 

水しか喉を通らなくなるとアシデミアもアンモニアも高くならないのでしょうね。

 

脱水ぎみの体液が溢水にもならずに低酸素血症もおこさずに経過した事は幸いでした。

 

 

今週になり、血圧は低下し、身の置き所のない倦怠感に襲われ、身内の人が耐えがたい気持ちを抱いたと思います。

 

不安から看護師さんを呼ぶようになりましたが、何が出来るわけでもなく、往診して医療をする事もななくただ電話で家族と看護師を励励ますだけです。

 

訪問看護師さんからも、これが自宅での看取りである事に耐える事だ、家族を励ましてもらいました。

 

 

昨日には意識レベルは低下して、応答もなくなったと連絡が入りました。

 

今日から息子さんには仕事を休んでもらています。

 

午後になり、異常があればまずは看護師さんを呼ぶという手筈どおりに看護師さんをよび、呼吸停止を確認してから私を呼んでもらいました。

 

 

心肺停止を確認して、息子さん、お嫁さん、そして訪問看護師さんに「これまでの1月半の自宅での闘病」をねぎらいました。

 

 

初めての自宅での看取りをだった息子さんには大きな経験となったと思います。

 

 

すぐに、ベッドの用意や身体の清潔を保つべく、週3回の訪問看護師さんの連携には本当に感謝しています。

 

 

点滴も酸素も何もなし。

自然死です。

 

 

外来に紹介される80歳以上の患者には必ずお聞きしています。

導入をする意思があるか否か?

 

こちらも評価しています。

認知症のある患者はね。家族も本人も希望しません。

 

フレイルでADLの極端に悪い患者にも生きる辛さをますだけで後悔するでしょうね。

 

「自然死」の選択が出来る程、認知症のない高齢者はこれから増えるでしょうね。

 

本人は死は怖くはないけれど、死への苦しみを看取る家族を支援するには、やはり経験のある看護師さんが必要です。

その家族の忍耐と覚悟に敬意をはらいつつ、見守ってくれた訪問看護師にあらためて感謝の意を伝えたいと思います。

今日は水曜日、回診中に気が付いた事を少し書きます。

 

中1日なのに、3kg 増えてくる患者さん数名います

 

皆さん、80歳以上です。

 

「先生がしっかり食べなさいと言ったから食べています」と!

 

こういう言葉を聴くとこちらもニッコリして、「さあちゃーんと透析しないとね」と時間は4.5 時間から5時間に延長となります。

 

そのかわり、QB200から150へ落とします。Qs200で、QD300に落とします。

 

2名の85歳の患者5時間から6時間の患者が「しっかり食べた」と言う時には、「何も考えずにただ飲み食いした」という事を意味しています。

決して、過剰に蛋白質を取ったとか、カロリーを取ったとかではありません。

 

塩分制限もなく、普通に腎不全に至る前の食事をしたと心得ています。

 

 

透析効率を下げて、ほとんど除水メインにして時間を延長するのが、こういう時には必要です。

 

50歳のDW90kgの男性が5kg~6kg増えたのとは食事内容が違います。

 

 

それは、調べようもありません。

 

それでもいいんです。

 

今、食べなくていつ食べるの?

 

こうして良く食べて、時間の延長をしても対して疲れない患者さんは基本元気です。

 

伊達に年齢を重ねたわけではありません。

 

「先生がいうように、しっかかり食べたよ」

 

「いいね、それでは今日から5時間ね」

 

「ありがとう」

 

これですべては解決です。

 

管理栄養士よりも理学療法士が先だな。。と思う長時間透析室です。

1985年に透析アミロイド症の原因蛋白がβ2ミクログロブリンだと日本人の研究者が発見したそうです。

 

当時の透析アミロイド症患者は大変だったようです。

 

現在も長期透析患者さんのアミロイド症は、結局手術しか手がない...と残念ですが思います。

 

さて、原因蛋白質が同定出来ても、それが関節や健に沈着してアミロイド線維になって、神経を圧迫したり、神経や関節の痛みを発症するまでには10年以上かかると言われたものです。

 

1990年代の透析前のβ2ミクログロブリンの血中濃度は40~80くらいあったのでしょうね。

 

現在は25未満を目標にしていますが。

 

さて、本題に戻りましょう。β2ミクログロブリンは身体のどこから来るのか?

 

 

これは意外と知っているようで、腎臓内科の先生も知りませんね。

技士さんはほとんど知らないと思います。

 

 

知っている方は良く勉強されていると思います。

 

血液中の細胞は白血球と赤血球で占められていますが、白血球にはリンパ球や好中球と言った免疫担当細胞が控えています。

 

ヒトは体内には免疫力を持っていますが、基本となるのは細菌やウイルスに感染した時に、感染細胞のみを攻撃する事ですが、それを識別するために赤血球以外のすべての細胞にはHLA-1抗原を細胞外に出して、その上に自分のペプチド(蛋白質)か、感染した場合にはその感染ウイルスないし細菌の蛋白質をペプチドにして抗原に乗っけています。

 

免疫系の細胞に知らせるためですね。

 

こうして、免疫系の細胞に自分を攻撃して良いか、自分は感染していないから攻撃しちゃだめ!を提示している仕組みがあります。

 

そのHLA-1抗原の一部がβ2ミクログロブリンで構成されている。

 

ご存知のように分子量が12800程度なので、今では拡散で抜けてしまいますが、昔昔はこれを抜くために、膜の改造やらオンラインHDFやらを一生懸命に治療していたわけです。

 

しかしながら、血液中に入りこむ透析液が汚染されていると免疫細胞は刺激されて増加する。

 

好中球なぞは1週間くらいしか寿命が無いので、壊れてはまた作られるを繰り返す。

 

膜抗原蛋白も壊れるわけですが、透析患者はβ2ミクログロブリン蛋白を排泄できないから血液中に貯まってしまいます。

 

ある濃度以上になれば、関節などに沈着していいますね。

 

透析液の清浄化によって、β2ミクログロブリンの産生が抑えれるのも当然の事です。

 

除去も大事ですが、産生抑制も大事です。

 

 

慢性炎症の原因疾患を有する患者のこの蛋白が高値をとるのは仕方ありません。

一番多いのは肝炎患者ですね。

 

その他、原因がよくわからない慢性炎症を有する患者の値も高くなります。

 

抜いても、抜いても高値をとる。

 

透析患者の予後因子でもあるβ2ミクログロブリンの濃度の背景は炎症の有無にあり。

少なくとも透析治療でこれを惹起しない努力をするのが、医療者の最初の仕事になります。