他施設から3時間透析ゆえに、全身の浮腫と倦怠感のため当院の長時間透析目的で転院して来た患者さんのグラフトの話です。
その施設には確かアクセスを作る医師はいないはずのなのですが、なぜか右の上腕にグラフトが移植されていました。肘より少し中枢に上腕動脈の枝があったからかもしれません。また表在に静脈が無いのも事実です。
これまであまり見た事のないグラフトです。肘上の上腕動脈の枝にグラフトを端端吻合して、コの字型に上腕の上外側上に延びて、それを動脈吻合部より約5㎝中枢側の尺側深部静脈に端側吻合したグラフトシャントでした。
こうした短いグラフトは穿刺部位は動脈側にも、静脈側にも近くなります。
またグラフトの吻合部は狭窄を繰り返します。
特に静脈側のグラフト吻合部が狭窄すれば、静脈圧は亢進して止血も困難になってきます。
このグラフトの興味深い点は上腕動脈に直接グラフトの断端を吻合していない点でした。つまり橈骨・尺骨動脈の分岐部の中枢側に枝があったのです。いわゆる橈側反回動脈なのでしょうか?
(解剖学書には載っていますが、いままで実際の血管は見たた事がありません)
1年に3度もPTAを繰り返していて前回のPTAから1月で狭窄・止血困難となった時の事です。上腕反回動脈は尺側の深部へ向かい橈側側副動脈となり、上腕深部動脈とつながる血管です。
この上腕反回動脈を上腕のグラフトから離断して、前腕のループグラフトと端端吻合し、ループしたグラフトは上腕の尺側深部静脈と端側吻合するという設計です。
要らない上腕グラフトは動脈とも静脈との離断すればよく、置いておいても良し。抜去しても良しです。
この通常の前腕ループグラフトを依頼した時は、実際に執刀するアクセス専門医と同様に出来上がりが楽しみでした。
出来上がりは当然、前腕部の腫脹や、皮下出血があって見苦しい状態でしたが、それは時が解決してくれます。
今では、止血しやすいグラフトシャントとして患者さんも喜んでくれています。造ってくださった先生に感謝です。
#前腕グラフト #橈側反回動脈 #尺側深部静脈