当院の師長とある物品メーカー担当者の会話を聞きました。

エコー下穿刺をする施設が以外と増えないのはなぜでしょうね?と言う話題です。

 

しかし、技士さんがエコーでシャントを評価する施設は確実に増えているそうです。

私見としては、「エコーで見た血管は深いけれど、血管径は割とあるので、穿刺しても大丈夫だろう、よし穿刺だ」と言う気分にならないからだろうなと思います。

 

ところで、開業前はシャント作成もグラフト移植も、PTAも自分でやっていた我が身としては、クリニックの狭さ故にメスを捨てた時の気分といったら、アドレナリンの分泌量が減少して辛いものでした。

 

その結果、紹介したアクセス専門医からの3行返書を読みながら、行間を味わいながら読んできました。かつて手術を受けた患者が「何処に穿刺したらいいのですか」と問うと「主治医に聞いてください」との返事だった事もありました。

 

PTAやグラフト移植後のエコー検査はそれなりに楽しい検査で、特にグラフト移植後はグラフトから漏れた漿液で浮腫った前腕にどう走行して、穿刺はどうすれば可能かを判断する楽しみがありました。

 

ところで、エコーガイド下穿刺が普及しない理由を考えてみると、対象患者がいつもいないというのが1番の原因かもしれませんね。

 

そういう患者が現れても、一部のエコーの使い手が左手でプローベを持ち、右手で穿刺してしまう。これを出来る人が数人で回して2週間も経つとブラインド穿刺の感覚が理解出来て、皆がいつの間にか穿刺出来るようになる。あるいは再度治療対象として治療してもらう。。

 

その結果エコーを扱えないスタッフは近寄る事もなく、そしてエコーも視界に入らない。っていう現象が起きているでしょうか?。

 

うちの看護師さんも当然エコー下穿刺はできません。

先日、エコー下穿刺が必要な患者さんに技士がエコー画面を見ながら、看護師が穿刺だけに集中して、「もう少し右、今血管の内膜が切れた。内筒を抜いて、先にすすめて。。。」と誘導しながら、ふたりで穿刺するという光景を観ました。

 

これが、エコー下穿刺の第一歩となれば良いなーと、嬉しく思った景色でした。

透析量のガイドラインがありますね。

 

Kt/Vっていうあれの事です。

KT/V=BUNの除去率=前BUN-後BUN/ 前BUNに相関

します。

 

2017年度のJSDTの統計調査を見ると見事に75歳以上の患者

さんも90歳以上の患者さんも平均で見事に、1.5を確保して

います。

 

結局の所、40歳代も平均すれば同じです。

4時間・Qb200がまだまだ全国平均なんだなー--と 

10年ぶりにデジャヴな瞬間でした。

 

この10年変わってないなー。

むしろ、70歳以上の患者が増えたにも関わらずです。

(一方70歳未満の患者数はほぼ横ばいです)

 

 

当然の結果として、高齢になればアルブミン値が低下してBMIも低下する事になっています。(GNRIが低下=予後不良)

 

これでいいのか日本透析医学会!

(JSDT統計調査には感謝しています)

 

80歳以上の患者の消化・吸収能力は低下しています。内科医・外科医からの認識です。

蛋白質摂取を励行しても、むりですよ。

リンの値は高い方がむしろ褒めてあげましょうよ。

 

リン吸着剤は消化器症状が出るので、高齢者には敢えて出さない方が良い患者もいます。

 

 

それより問題なのは、朝から食事が摂れていないので、低カリウムで来院する患者ですね。

透析前カリウムが3.5なんて言う患者はざらにいます。

こうした患者にQb200の4時間透析を行えばカリウムはどうなるか? 2.0に限りなく近づきますね。

 

透析後低カリウム血症は恐ろしやです。

不整脈による突然死の原因になっているかもしれません。

(日本だけです。透析液組成のカリウム値が2.0なのは)

 

透析間の体重増加が少ない患者が要注意です。

お昼にお弁当を持参してもらいましょう。

そうでなければ、カリウム内服製剤を飲んでもらいましょう。

 

カリウムやリンはまだコントロールが内服薬でできます。

(無機リン内服薬もあります)

 

 

理学療法士や管理栄養士は、透析中のアミノ酸の喪失はどう認識しているのでしょうか?

 

分子量が100から250Daと小さな物質ですが、尿素より簡単に抜けてゆきます。

 

技士さんも忘れていませんか?

栄養士さんは知っていますか?

理学療法士さんは。。。。??????????????

 

リハビリの主体は体幹と下肢筋力にあると思います。

透析中のアミノ酸喪失を補うためには、骨格筋の30%から40%

を占めるBCAAが分解されて、グルタミンとアラニンを放出して

ます。

 

こうした透析中のアミノ酸代謝の基礎を透析に関与する栄養士さん理学療法士さんはどこまで理解しているのでしょうか?

(生化学での勉強はしていますが、臨床的な意味あいは誰も教えてはくれません)

 

 

さて、80歳の自力歩行できる患者さんに基準どおりの蛋白質を摂取させる努力をする事も重要ですが、透析効率を低下させて、アミノ酸喪失量を低下させる事が必要な患者もいると思います。

 

高齢者は、透析性の骨格筋の分解(異化)によるサルコペニアの可能性を考える必要があります。

 

リンの吸着材を内服していないのに、リンが正常な患者さん達がまずは候補に挙がりまね。。。!

CRPが正常なのに、低アルブミン血症を呈している患者さんもでしょうね。

 

 

高齢者のKt/Vを標準の1.4以上に無理やり合わせているのが今の日本の高齢者透析の現状だと個人的には考えています。(JSDTの統計調査の結果から見てとれます。)

 

透析条件について知らないままに、指導という名の「仕事している感満載の方」に送る言葉があります。

 

「床屋の仕事」

「いかにも散髪しました感」を出す昭和の小学生が大嫌いだったあの髪型です。

 

そろそろ、床屋の仕事の見直しを他の職種と「多くの職種」で共有できる時代を望んでいます。

 

今年の学会もこの「多職種連携」がテーマに挙がっているのは皆さんはご存じだと思います。。。。。!

 

 

透析業界に入って15年目が始まります。

 

10年前に開業した2010年6月の患者数は8名でした。時間は十分にありました。

 

透析室にカウンターの机とPCを持ち込んで、回診後にブログを書いていた事を思いだします。

 

 

あの頃「いい治療って何?」

「なぜ透析患者の予後は短いのか」を根本から勉強していました。

 

いい治療をすればその地域で無名でも患者は集まるだろうと楽観していましたが。。。!

その年の暮れに母親に電話で「資金ショート150万 すまんが入金してくれ」これで救われましたが、振り込み詐欺が蔓延するのも無理ないな。。と笑うしかありません。

 

 

その一方で、思いついたのは勉強するための方法論です。

 

勉強するためのブログ=インプットする方法としてのアウトプットする=ブログを書く!

 

元消化器外科医の自分は知っています。手術書・解剖学書を100回読むよりも、

虫垂炎の手術を1例自分で執刀する事で体得できる知識・技術は大きい事を!

 

知りえた知識と技術をすぐに実践する事を10年繰り返してきました。

有効例・失敗例を臨床的な視点から発表を継続しています。

 

さらにこの10年の間に高齢者人口増加と加齢による腎機能低下患者の透析導入で一気に患者数は30万人を突破しました。透析以外の領域の広い知識と経験が問われる時代と変化しています。

 

高齢者の年金支給は65歳となり、医療費負担も10%です。

70歳支給の方がお得ですよのコマーシャル。

人生100年時代には80歳支給もありかな。。。?

 

高齢者の多くは核家族世帯で老々夫妻が多く、その配偶者にも何等かの医学的問題を抱えている事が大きいのが事実です。

 

加齢による腎機能低下はすなわち内臓機能の低下、脳機能の低下、筋力低下を意味しています。

消化機能低下・認知症・サルコペニアという意味です。

 

 

日本の国家予算は100兆円を越えています。赤字国債も30億円。

どこまで、高齢者の透析医療にお金が使えるのかが疑問に思います。

 

今年、戦後75年を迎えます。

すなわち、団塊の世代が後期高齢者になる事を意味しています。

彼らが戦後のこの国を焦土から作り上げた世代です。まだまだ若年寄りの自分としては団塊世代を応援したい!

 

そして彼らが10年後に85歳になる手前から高齢者透析人口も減少に転じてゆくでしょう。

実態は年金受給を受けていない患者や孤独に生きる高齢者、栄養?食費にいくらお金がかけられるのか、知っとるか!という貧困問題。

 

高齢者医療の実態は現在の格差社会の縮図でもあります。

資本主義と民主主義の限界が見えています。

 

自宅さえあれば、年金で静かに生活できる彼らに透析医療が必要となった場合に、本当に必要なのは身内・家族であり、介護を素直に受け入れられる人格や知性です。

 

最近の学会で多く取り上げあれる「多職種連携」が必要な理由がそこにあります。

 

透析の患者層の急激な変化に対応するためには、その患者の社会状況を把握する事が一番大切になってきます。

 

若い看護師さん、技士さん、透析はもう簡単に出来る時代になっています。

 

透析技術を磨く事も重要ですが、歩く姿を見る事や、体重が増えない理由を気にする事の方が評価される時代になりつつあります。

 

家族やケアマネにすぐに連絡が取れる体制が自施設に出来ているかを再度確認しましょう。

 

透析業界は急速に斜陽業界となり、クリニックの仕事の基礎は「高齢者の地域でのセイフテー・ネット」としての役割です。

 

これから、この業界には理学療法士、管理栄養士、薬剤師、介護福祉士(ケアマネージャー)

と家族関係を再構築してゆく院内のシステムが重要となるでしょう。

 

 

 

若者よ、ぼやぼやしてれば、10年後に君らの透析技術や知識は、「時代遅れではなく、不要」になっているかもしれない事を忘れてはいけないよ。。と若年寄りの自分はささやいています。

AIと自動モニタリングで穿刺だけが必要な時代が10年後に見えています。

 

 

「勉強せよ」<<<<<<

「こう改革しましょう」<< などの提案のクダラナサ!!!!

 

 

「君は透析という仕事を続けてたいですか、何がやりたいですか」?

もうそれしか質問はしない自分に10年で変わりました。

 

 

「今時の若者は。。。。」という言葉はギリシャ時代からあったそうです。

「自分の頭で考える事」=「議論をする事」

「知らない事に眼をそむけない事」=「無知の知」

プラトンがソクラテス爺さんとおしゃべりしていたテーマです。

 

「知りたくない事実は人は見ないものだ」ローマ時代のカエサルもつぶやいていたそうです。

 

さて、もうすぐ学会・研究会のシーズンは始まります。時代の流れは速度をましつつ、透析知識と技術の格差も広がりを感じています。

 

君は透析の仕事を続けたいですか?

今日もシモン K はつぶやきます。

 

 

 

 

高血流でのHDやHDFはダイアライザーやヘモダイアフィルターで何を使おうと、とりあえず尿素からβ2mgまでは拡散効率を上げるのでしっかりと抜くことが可能になります。

 

 

これを最初に行ったのはもう10年前の大阪での経験でした。

当時、夜間透析でどうしても仕事の都合と透析終了時刻が午後10半のために4時間しか出来ない50代の仕事をしている患者さんのためでした。DWはちなみに65kgくらいありました。

 

さて、時間を延ばす訳にはいかない。当時血流量は230ml/min程度だったので、2.1㎡の膜を2.5に変えても意味はない.....。さてどうしたものか?

 

当然、血流量を上げるのが最も効果的であり、すぐにでも出来る事でした。

QB230を250にすぐに上げても患者さんには体感では解らず、問題なく変更できました。

 

リンの問題などもあり300まで上げてもまったく問題ないと思いましたが、なんとその施設では「血流量300は過去に例がない」という理由で看護師さんの総スカンを食らって反対されちゃいました。

 

過去に例がないから反対するの?

だって、血圧が落ちるたら。

針が抜けたら?

 

こういう問答は何処の施設でもあるでしょうね。だから技士さんがわざわざ、QB250で制限をかけている施設もあるくらいです。

 

これを打破するには、除水速度の問題も絡んできます。無理なギリギリの除水速度で透析効率を上げて血圧低下が起きれば、「そらみたことか」になります。

 

まあ、そこで思案したのが前置換オンラインHDFです。これをすれば、血圧安定効果があるからと!

 

250を280にし問題なし。

 

280を300にして、問題なし。

 

置換液量も15L/Hくらいに上げて、透析液流量も600に上げました。

 

慣れとは恐ろしものです。

 

何事も起こらず、検査データが改善すれば誰も何も言わなくなる。

過去に例がないからやらない。

 

不合理の極みですが、「人は自分の経験から抜けられない」のも事実です。

 

 

しかしながら、血流量300で丁度良かった患者さんが、何等かの理由で食欲が落ちたのに、QB300、5時間治療を継続しているとどんどん痩せてきたらどうでしょ?

 

「高血流がいい、時間は長いほどいい」とこれまたバカの一つ覚えのようにその条件に固執するとBNU前値は30を切り、リンは2を切ることになるでしょう。

 

恐らくアミノ酸の欠乏も生じて、体蛋白代謝にも異常を来す可能性があるのです。

 

高血流の必要な患者は元気で食事も制限しないといけないくらい食べて、DWも60kg以上あって、透析不足になる可能性のある患者には必要ですが、食事が摂れない患者にこれをすると、低リン血症まで作ってしまう。

 

同じように長時間透析がいいと言って、DW50gで85歳の患者に6時間治療を行うとさて、何が起きるでしょう。

 

尿素も、カリウムもリンも抜けますが、アミノ酸も大量に抜けてゆきます。

 

透析治療の危うさは、「抜く治療しかできない」ところにあります。

 

「食べた分だけ、抜く治療」これが原則。

 

そのために、どれだけ蛋白質を摂っているか、カロリーは....を聞き取りやら、世間話やらデータや透析間の体重増加の傾向や残りの尿量(残腎機能)を把握しながら透析量を調整して、春も夏も秋も冬もほぼ同じデータになるように、血流量も治療時間も設定してゆく必要があります。

 

「そんなのできるかよーーーー!」

と言う医師が行っているのが標準透析+α(30分延長など)だと思います。

 

患者の治療前BUNが30まで落ちたりしない、リンが2.5まで落ちないように、如何に食べさせるかが大きな問題になってきたのが現状でしょう。

つまりは、動かない高齢者の患者さん達です。

 

彼らには、高血流や長時間は不要な人の方が多い。

 

今、この日本人の高齢化に伴って、透析患者の高齢化がどの施設でもおきていると思います。

 

そう言った高齢者をいかに元気にするかの知恵と柔軟性が医師には求めれれる時代になって来ています。

病院勤務時代の透析室のことを思い出しています。

 

当時は外科医が透析室を管理していました。これは広島県では、初めて透析と腎移植を導入したのが外科の教室だったからです。

 

朝は、皆が透析室に集合して患者の穿刺に当たります。特に人工血管や穿刺困難な患者は医師が穿刺していましたね。

 

15年くらい前の話ですが。

 

4時間の標準透析です。血流がいくらだったかも覚えていませんね。ましてや透析液流量はみんな500だったでしょう。

 

 

穿刺と、定期処方くらいしかしていなかった。受け持ち患者であってもエポもオキサロールも部長が指示を独占していましたから、シャント手術くらいしか興味がわかないのも仕方がないですね。

 

 

標準透析(血流200,透析液流量500)が今でも病院透析の標準になっているには理由があります。

 

腎臓内科医であろうが、外科医であろうが、一日透析室にいる事が出来ないからです。

 

 

高血流で回していて、事故や血圧低下が起きた時にはそうするの?食事摂取さえ抑制しておけば、それが食事指導と言えたわけです。

 

つまり患者の生活の把握など医者がする前提ではない状況下では、標準透析しか出来ないのが現実だったのだと今冷静に思いだします。

 

クリニック透析で、日がな一日患者と接していて、昨日は何を食べたのかとか、何をして過ごしていたのかとか、そういう患者の日頃の暮らしぶりを世間話風に聞くような時間があるのは、クリニックで一般外来もやらない(せいぜい予約は1日1人)専門透析クリニックをしていて初めて、高血流やオンラインHDFや長時間透析が出来るのだとようやく解りました。

 

 

患者が食欲が無いのに高血流にするわけにもいかず。

 

特に、愁訴もないにのオンラインHDFにする必要もなし。

 

高齢者の栄養状態の良くない患者に長時間透析の必要もない。

 

 

つまり、患者の状態が手の内に把握出来て初めて、こうした治療条件のバラエティーに富んだ治療選択が出来るのだな....と。

 

患者をコメデイカルに任せている医者はやらない方がいい。

 

条件の違いが結果として検査データに反映しても同じ条件ならコメデイカルにも理解はしやすいでしょうが、治療時間の違い、血流量の違い、膜の異なったオンラインHDFでは、その結果をどう評価していいのか解らなくなるのも無理はないでしょうね。

 

患者を診ていない施設では、テーラーメイドが出来ない理由がようやく解ってしまった。

 

 

外科医時代に、術後の患者を週末の土日でも診ていた習慣で透析患者を診始めたので、個々の患者の条件が変わってゆき、皆違うのが当たり前になってしまったのですよ!

 

条件が全くおなじオンラインHDFをしている施設もあるそうです。HDでもそうですね。

 

そうか、そうだったのか。

 

テーラーメイド透析治療が異端である理由のなぞがようやく溶けた。