若い患者で自宅で血圧を測定しない患者がいます。

 

子供の時から慢性腎炎で高血圧があったそうで、恐らく思い出したくないために血圧を測定しないのだろうと想像しています。決して怠け者ではなさそうなのですが。

 

無理に測定しなくても、今は冬場で寒いと言う事もあり、透析開始時の血圧と終了時の血圧から何とか想像するしかないと思っていますが。。

 

DWの方は、胸のレントゲンの心胸比からCTRも出せます。心エコーから心室径の測定やIVCの測定も出来ます。

 

心エコーと胸部レントゲンとMLT(体組成計)での体水分率、透析後のhANPの測定を同一日に検査しておおよその関連を見る事が出来ると思います。

 

DWはそれで決まるとして、さて、降圧剤の投与量をどうモニターするかですね。

 

これは、経験値から月曜日の透析開始時の血圧/ 終了時血圧と水曜日の開始時/終了時血圧くらいで見るしかないでしょうね。最初は座位での血圧を測定するのも良いでしょう。

 

DWは推測するのは容易く、血圧のコントロールは難しです。

 

 

 

 

#DW #心胸比 #心エコー #hANP  #体組成計

今年の2月に、新しい透析患者用の新薬が発売になります。

 

この薬の面白い所は、小腸上皮細胞の腸管との接する細胞膜にある「ナトリウムイオンとプロトンポンプ交換輸送体3」をブロックする事で、ナトリウムイオンが細胞内に入るのを阻害する事で、小腸内にナトリウムイオンが留まる事です。

 

小腸内に留まったナトリウムは、当然のように水も引き付けます。小腸内の水分を引き付ける。

 

そういえば、アミティーザの作用機序を思い出します。

小腸上皮にある「クロライドチャネル」と呼ばれる構造を活性化し、腸管内への水分の分泌を増加させ、便を柔らかくすることによって、排便作用を促します。

 

クロライドとはクロールの事で、ナトリウムと結合するとNaCl(塩化ナトリウム)と言う訳です。その保持によって便が柔らかくなると言う機序です。

 

フォゼベルが高リン血症治療薬と銘打って発売するのは、ナトリウム・プロトンポンプ交換輸送体阻害によって、小腸上皮細胞と細胞の間の隙間(タイト・ジャンクション)が狭まって小腸内のリンが上皮細胞内に移動する事を抑制するそうです。

 

臨床的には、使用出来る人は、便秘があって何等かの下剤を飲んでいる人を対象とするのが良いでしょう。作用としての腸管内の水分保持をして排便がスムーズになっる事を期待しています。

 

これで排便コントロールが出来れば、副次的にリンの吸収を抑える事で少しリンの値も少し下がる。あくまで、リン吸着剤がベースラインです。

 

便通の悪い患者さんが、投処方の適応となると思います。

リンの値は、ベースラインのリン吸着剤を飲む事が基本です。

あまり期待しないようにしましょう。

 

#下剤 #高リン血症治療薬

東海大学の駒場先生の講演会にライブで聴いてきました。

深川先生が神戸大学から東海大学に移動した時に一緒に移動された先生です。

 

神戸大学の卒業ですので、神戸での講演会はホームのような暖かい感じです。

駒場先生を有名にしたのは、JSDTの統計調査を使って、PTX後の患者の予後がそれ以外の患者より良い事を発表した事にさかぼります。

 

レグパラ(シナカルセト)が発売されたのが、2008年ですから、それ以後の内科的治療によって劇的にPTXを受ける患者が減少した事は良く知られている事実です。

 

それでは、PTXとシナカルセト治療の患者さんの予後はどうでしょうか?

彼は、それでもPTXを受けた患者の予後が良い事を示してくれました。

 

神戸大学の後藤先生の発表されたカルシメテイクス(カルシウム受動態作動薬)時代のCaやPTHの予後研究にも言及してくれました。

 

PTHはほぼ直線的に上昇するほど予後は不良になり、減少すれば予後は良好になるとの結果でした

 

後藤先生のデータもPTHのリファレンスを39<と最小値としており、それより上昇すると予後不良と述べています。

 

その原因として、彼はPTH上昇に伴うエネルギーを消耗する事が原因で透析患者の痩せの原因の一つではとデータを示してくれます。

腎不全のPTHと癌の悪液質患者のPTHrPの受容体が同じである事の論文を紹介してくれました。この二つは、同じ似た病態と指摘しています。

 

また、PTH上昇による骨折の増加、特に大腿骨頸部骨折の増加を指摘します。

PTH上昇によって、皮質事の破壊が起こるそうです。大腿骨頸部骨折が増えるのはこの皮質骨折の破壊による所が大きいようです。

 

その一方で、海面骨からなる椎体骨折はPTHの増加でもあまり変わっていません。

 

さらにPTHの上昇はFGF23の増加と心室肥大を招き心不全の増加のリスクと推測していました。

 

骨折や、痩せは高齢者で多く、BMIが低い患者で多く、女性に多いとまとめてくれました。

 

骨折も痩せも解りやすい予後因子です。

高齢で、痩せた患者で女性には特にPTHの厳格なコントロールが必用でしょう。

駒場先生の更なる研究に期待したいものです。

 

#PTH #骨折 #痩せ #心不全 #石灰化

A社は膜面積に関わらず、すべて一緒。ただし最大の膜面積だけは価格が高い。

B社は1.5㎡と2.1㎡で同じ価格だったのを、1.5㎡の膜の価格を下げて頂きました。

 

石油そのものの価格が高騰して、電気代も石油から作る製品(ヘモダイアフィルター)も価格高騰のおりに、面積の小さな膜の価格を下げてくれるとは有り難いです。

 

しかし、ここでHDF用のヘモダイアフィルターの膜面積の使い分けが重要になってくるのです。

 

C社は随分昔に3.0㎡の膜(ヘモダイアフィルター)を作りましたが、どのような患者に使うのでしょうか?と疑問に思いってQb300で膜面積だけを変えて、排液検査を行いましたが、2.5㎡の膜とパフォーマンスは変わらずでした。

 

これは、メーカーの作成技術を誇った事以外に意味はなさそうです。

 

かつて、ある施設から紹介となったDW100㎏の患者さんに2.5㎡の膜を使用してQb200の i-HDFをしているという条件の患者さんがいました。これも2.5㎡の膜

が必用なのかと大いに疑問に思った事を覚えています。

 

またある学会での発表で、自施設でのヘモダイアフィルターの選択についての発表で、DWが80㎏から90㎏代の若くて、体格が大きい患者に3.0㎡や2.5㎡の膜を使用しているとの発表がありました。Qbは250から300程度です

 

置換液は前置換40L/Sから60L/Sくらいです。つまり10L/Hから15L/Hくらいです。

 

小分子の透析量を多くするために、血流量を上げて、さらに膜面積も大きくするのは理にかなっています。

 

体格の大きな患者はたくさんタンパク質も摂取するでしょうから、透析量も大きくする必要があるでしょう。

 

透析量は、血流量に相関しますが、同じ血流でも透析膜を大きくすれば除去する量は増加します。しかし、小分子に限ればQb200であれば、1.5㎡の膜も2.1㎡の膜もクリアランスはほぼ変わりはありません。

 

血流量が400と言った高血流の患者は我が国では少数だと思いますが、その時には2.1㎡と2.5㎡の差が出て来るでしょうが、僅かだと推測します。

(欧米の後置換のHDFでは膜面積はせいぜい1.8から2.0㎡です)

 

こうして、色々な事をシュミレーションすると体格差の違いよりも、除去したい透析量(小分子)を考えて、血流量と膜面積を決めれば良いという事になります。

 

また分子量の大きな蛋白質結合尿毒素やアルブミン漏出は、膜質の違い(アルブミンの篩係数)を選択し、置換液量を決定すれば良いという事です。

 

その場合は、前置換置換液に対する膜に対する圧(TMP)が上がれば除去性能も上がります。

 

つまり、膜面積は、血流量+前置換液量の合計と置換液量とTMPの関係を総合的に考える必要が出てきます。例えば、同じ置換液量でも膜面積が小さいとTMPは上がります。

 

高齢化が進む透析室でのヘモダイアフィルターの膜面積を再考する時だと思います。

 

アルブミンはあまり抜きたいくないし、小分子はまずまず抜きたい。Qbはせいぜい

200から250です。

 

2.1㎡の膜を無駄に使っている患者さんはいないかな?

製造コストとゴミ処理のコストを考える透析室でありたいと思います。

 

#膜面積 #血流量 #小分子透析量 #アルブミン篩係数 

透析患者さんの貧血は、慢性炎症がない場合にはエリスロポエチン製剤の投与で改善します。

 

しかしながら、毎回の透析後の回路内に微量の赤血球は残りますし、月2回の採血もあります。赤血球内のヘモグロビンというタンパク質が酸素と二酸化炭素のガス交換をすると言う重要な働きがありますが、赤血球の減少がすなわちヘモグロビンの減少であり、貧血です。

 

ヘモグロビンは鉄を含有したタンパク質であり、貧血はすなわち鉄欠乏が一番大きな原因の由縁です。

 

さて、3か月に1度の採血で、フェリチンを採血しています。

フェリチンは、赤血球の分解後のヘモグロビン由来の鉄を脾臓や肝臓内に貯蔵している鉄蛋白質の形態です。この体内の細胞内にため込んだ鉄はフェロポンチンという細胞膜の穴から血液中に出て血清鉄になります。

 

しかし、このフェロポンチンの開け閉めをコントロールしているのが、ヘプシジンです。

 

ヘプシジンはサイトカンの刺激で上昇します。ヘプシジンの上昇でフェロポンチンは閉鎖してフェリチンは細胞内に閉じこめられて、血清鉄として上手く利用できません。慢性炎症が貧血の原因となる理由です。これが機能的鉄欠乏という状態です。

 

さて、鉄剤の内服でも、フェジンの点滴投与も気分が悪くて出来ない患者さんがいます。

 

思い切って1/4Aを5% ブドウ糖50mlに入れて4時間で点滴投与する事にしました。

患者さんもここまで薄めて時間を延長して静脈内投与すると副作用も起きませんでした。

 

フェリチンの推移は、最低 14.8, 54.6, 70.2, と上昇しています。もう少しで100を超えます。

 

週1回1/4Aですから月に1A、12か月1年で13A投与です。

 

当院では、フェジンはワンショット静注をさけて、5%ぶどう糖50mLに混注して

透析時間をかけた点滴で投与しています。ワンショットよりヘプシジンの上昇が抑えられるとの報告があるからです。ワンショットより、気分不良は抑制できます。

 

また週に1回の投与に抑えています。これもヘプシジン抑制効果を狙ってです。

 

 

#フェリチン #ヘモグロビン #鉄欠乏性貧血 #フェジン少量投与