
日本における少子化は、数十年まえから有事下のようにだんだんと着実に進行している。
男女が結婚したいと思える、女性が子どもを産みたい産みやすいと思える環境を作っていくことだ。
日本の人口が減る一方で、だからこそ同感するものであった。
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総じていえば、最優先の少子化対策、あるいは少子化「社会」対策は、出生率を上げることではなく、出生数が増えないことを前提としても機能する社会をいかに構築するかにある。次に、それを前提としつつも、できる範囲で出生率と出生数を増やすように工夫することである。いずれの論点においても、まだ政治やメディアにおける議論が成熟していないように思える。
少子化問題については、データや統計等から搬出される知見を丁寧に整理し議論の土台を提供していた。少子化対策を考えていく上で有益な本だった。
少子化対策と子育て支援を別物として考えておくべきだと。
政府の少子化対策は子育て支援の充実化に傾きがちであるが、少子化の根本要因は未婚化にあるため、未婚率を解消できるような政策を立てる方が合理的だと思われた。
39P どういう社会をつくりたいのか
岸田文雄政権の「異次元の少子化対策」が話題になっていたころ、ロザンの宇治原史規則さんから質問をいただいた「結局は、我々がどういう国を作りたいのかの話になるのではないか、それに応じて必要な対策も違ってくるのでは」といった趣旨だった。
63P いずれにしろ50年に及ぶ出生率低下の大きな部分が晩婚化・未婚化によるものは間違いない。「有配偶者出生率が下がる」ことは無視できない重大な変化だが、このことと「未婚化が低出生率の大きな要因である」ことは両立する。
37P 晩婚化・未婚化の大きな要因のひとつは、特に経済的要因に起因するミスマッチである。条件が合う相手に巡り合わない。愛さえあれば結婚するという状況にはなっていない。
82P 安定した所得、あるいはそれをもたらす仕事があることが、結婚にとって持つ意味の重さである。
158P 安定した雇用・賃金や住居など、若い人向けの生活保護に向けた対策が必要である。自治体ごとに見た場合、働き口があること、住居コストが高くないことが、出資率や人口規模の維持において重要になる。
多面的に、長期的に、根本を考え総合的に少子化に対処していくべきであり議論を進めていくべきだと。
177P 少子化には、総合的か持続的な取り組みが必要だ。ウエブ記事にありがちな「○○を解決するたったひとつの方法」みたいなものは存在しない(あればもう解決している)私が政治家なら、国民に「すぐには成果が出ないだろうが、長期的に取り組むので見ていてほしい」と訴えかけるだろう。ただ、そんな歯切れの悪い対応だと、間違いなくウケは悪いだろう。
次に、総合的かつ持続的な取り組みをするために、少子化についてのバランスの取れた見方を広げることが重要である。
<目次>
はじめに
第1章 少子化の何が問題か(少子化問題を整理する、国の人口と経済の規模、数字を比較することの注意点、的国内の地域的不均衡、出生数も人口も減ることはほぼ確定、どういう社会をつくりたいのか)
第2章 何が出生率の低下をもたらしたのか(戦後の出生率の推移を詳しく見てみる、現在に続く少子化は1970年代から、晩婚化と未婚化、政府の対応のちぐはぐさ、「こどもまんなか」は少子化対策ではない、結婚したくてもできないのか、結婚したくないのか、晩婚化・未婚化の要因)
第3章 少子化問題と自治体(自治体の多様性、人口規模、出生率、人口増加率ごとの特性、雇用と住居費が鍵、自治体の人口動態から見えてくること、自治体の出生率の誤解、自治体間の移住をどう理解するか、移住しなくてよい状態は可能か?)
第4章 グローバルな問題としての少子化(少子化対策の背景はいろいろ、婚外出生と子どもの格差、「婚外出生」をめぐる誤解、少子化と移民の関係、移民による出生の影響)
第5章 少子化に関わる政策と数字の見方(財源論への傾注は避けるべき、政策をバランスよく理解する、少子化対策としての働き方改革、そもそも出生率をどう計算しているのか)
おわりに
筒井淳也 さん
立命館大学産業社会学部教授。1970年、福岡県生まれ。一橋大学社会学部卒業。同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。博士(社会学)。専門は家族社会学・計量社会学
【No1690】未婚と少子化 この国で子どもを産みにくい理由 筒井淳也 PHP研究所(2023/12)