【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

のVoL.1-6の全巻は、2020年12月から2022年11月の間、約2年かけて視聴録アップを終えました。当方としては、あとは、自分の調べられる範囲で「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」を編年的にまとめ、のんびり記述するつもりでした。

 

ところが、2023年の1月になり、コメント欄高校教師さんより

>第7弾5枚組30話収録。立石班のみの構成

で新たにDVD-BOX発売の情報が寄せられ、急遽、突貫工事で「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」をまとめる方針に変更、終了次第、新たなDVD-BOXを観賞・視聴録をつくることとしました。

「特捜隊のDVD未収録回・収録回・欠番回」は幸いにも2023年8月に書完しましたが、今回の新たなDVD-BOX(結局、VoL.7,8の立石班2巻が発売)を観賞することで、さまざまな箇所に訂正・追加・削除等が出ると思いますが、その点はご了承ください。書き方は、従前の方式を踏襲することを原則とします。

 

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・#347  ゆきずりの女

特別機動捜査隊(第347回)ゆきずりの女

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL7、disc6、2023年4月12日発売

(本放送)・・・1968年6月19日

(脚本)・・・元持栄美

(監督)・・・田中秀夫

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・坂本太郎

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(佐藤敏子)、橘部長刑事(南川直)、

荒牧刑事(岩上瑛)、森田刑事(北原隆)、岩井田刑事(滝川潤)、

松山刑事(松原光二)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

藤本三重子、日高ゆりえ、榎本陽介、松風はる美、国方伝、山崎猛、岩城力也、

小瀬朗、水原ゆかり、美弥たか子、九重ひろ子、泉幸恵、守屋俊男、榎本英一、

清見晃一、下川清子、都健二、安田隆、二宮恵子、八合昇、伊藤慶子、萩原正勝、

英美枝、木内房代、高橋正夫、奥野匡、村上不二夫、野々村潔

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

わずか三百万の退職金を、今はただ、家に運ぶだけの気力しかない疲れた男と、

偽りの世界にあって、生きる術(スベ)を忘れた哀れな女が、

偶然にも再び生きる喜びを感じた一夜(ヒトヨ)も、儚く消えていったのであった!

この、ただひとつの真実を手がかりに、立石班の捜査は開始されたが、

そこに暴かれたものは、夫婦の愛も、親子の愛も、名誉も意地も、

金という飽くなき力に、すべてをかなぐり捨てていく醜い人間の姿であった!

立石班は、こうした現代の真空地帯を鋭く追及していくのであったが・・・。

次回、「ゆきずりの女」に御期待ください。

 

※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。

 

 

(備考)・・・

【1968年】(2)特捜隊の収録回・未収録回・欠番回で、当該回の事前調査済み。

・当作は、約5年後に#630 声なき女 ある娼婦の詩でリメイクされた、原型作である。原型作(当作)の脚本・元持栄美に、リメ作では柳節也が加わり、監督は「田中秀夫→北村秀敏」と変更されている。また、捜査班は「立石班→高倉班」と変更、メインゲストの美江を両作とも藤本三重子が演じている。

・DVD収録された田中秀夫監督作品としては、#201 怒りの大地【スペシャルセレクション】#209 狂った旋律【スペシャルセレクション】#297 第七天国【スペシャルセレクション】#338  狂った季節【スペシャルセレクション】 に続く5作目となる。その間にも、欠番回、未収録回があることに留意されたい。

・現場は、北区中十条の若宮八幡神社付近で行なわれたと推察される。さらに、現場から見下ろす貨物庫らしき風景は、赤羽駅高架線工事のため、現在では「北区立特別養護老人ホーム清水坂あじさい荘」になったものとも考える。まっぷるトラベルガイド|赤羽の台地に延びる謎の線路 【東京都北区】(2022年11月10日更新)に引用された地図(1968年)により、わずかながらも本放送時の高架線の無い赤羽駅周辺の雰囲気を味わえる。

・劇中歌に「雨の銀座」(黒沢明とロスプリモス、1967)が流れる。

・現場遺留品の、「定年退職の辞令」の記載は以下の通り。

>辞令

>庶務課係長 畑中良介

>停年により解職する

>退職手当金300万円を給する

>昭和43年6月18日 北城産業株式会社

 

 

 

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)。

 

※役名男優・女優の?は、リメ作のエンディング表記からの推察である

 

〇北城産業・部長・高木・・・・・・高橋正夫

〇同・課長・酒井達也・・・・・・・奥野匡

○同・警備員・滝川ごいち・・・・・岩城力也

○同・女性社員

〇同・庶務課係長・畑中良介・・・・野々村潔

〇畑中の妻・民江・・・・・・・・・日高ゆりえ

〇畑中の息子・靖夫・・・・・・・・山崎猛

〇畑中の娘・光子・・・・・・・・・松風はる美

〇光子の夫・為吉・・・・・・・・・小瀬朗

〇クラブモンターレ・ボーイ・・・・安田隆?

〇同・ホステス(短髪)

〇同・ホステス(長髪)・・・・・・美弥たか子

〇同・ホステス・藤木美江・・・・・藤本三重子

〇同・客(黄服男性)・・・・・・・榎本陽介?

〇同・客(通称・おーさん)・・・・八合昇?

○美江の義父

〇三友商事・木村哲次・・・・・・・国方伝

〇同・木村の部下・・・・・・・・・守屋俊男

〇同・派遣女性・奈々・・・・・・・下川清子

〇同・派遣女性(多数)

〇ラーメン屋台・女性店主

〇同・客・・・・・・・・・・・・・清見晃一?

〇協和不動産・社長・・・・・・・・榎本英一?

〇同・社長の妻・・・・・・・・・・九重ひろ子?

〇新風荘・女性管理人

○毎朝新聞記者・村上・・・・・・・村上不二夫

 

 

6月19日、祠のある小高い丘の上で男性死体の発見されたのが、事件の発端だった。

「通報を受けた特捜隊・立石班は、直ちに、現場に急行した」

「死亡推定時刻は昨夜の12時前後、死因は、高所からの墜落による脳底骨折と推定された」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

荒牧・鑑識上田は、煙草の箱、マッチ箱発見を立石主任に報告、さらに、定年退職の辞令をみせる。

「被害者は、北城産業株式会社に勤務していた畑中良介と判明した」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

そして、森田は畑中のワイシャツ襟首に、口紅の跡を発見したことを立石主任に報告。岩井田も、橘・松山に、突き落とされたと思しき箇所を指摘する。

しかし、

「昨夜の雨で、足跡・指紋など捜査の決め手となるようなものは洗い流されていた」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

そこで、

「立石・岩井田の両刑事は、直ちに、被害者の勤務先であった北城産業株式会社へ直行した」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

畑中の上司部長・正木によると、昨日の午後4時すぎ、畑中と会い、退職辞令と希望を受け現金で300万を渡したという。そして、退職金で夫婦での温泉旅行を奨め、そのうち畑中の嘱託の件も進めておくと励ましたということだった。

ところが、女性社員に聞きこむと、正木の部長職も危うい状態なのにと、暗に批判。さらに、課長・酒井が廊下で畑中に、人事は自分が握っているから、(退職後のことを考え)退職金を自分に投資しないかと持ち掛けていたと締めくくった。

ただ、酒井は大阪へ主張中であり、立石主任・岩井田は北城産業から退去しようとすると、警備員・滝川から声をかけられる。滝川は、元刑事で立石主任を知っており、昨年退職のため、現在は北城産業警備員として働いているということだった。

そして、昨日の午後5時すぎ、巡回中の屋上での出来事を語り始め、畑中を息子・靖夫が訪れ50万の無心をしていたという。どうやら靖夫は畑中の退職金をあてにしていたようだが、畑中はきっぱり断ったとのこと。しかし、靖夫は証文を書かされたから、代理人が畑中のところに来ると、脅し紛いの言葉を発し去ったということだった。

 

「一方、橘・松山の両刑事は、被害者・畑中良介の住む北区東赤羽寿町○-○に急行したが・・・」(ナレーションから、一部をボカして抜粋)

妻・民江は、開口「退職金はどうなったか」と発声。橘・松山は、この態度に顔をしかめるが、民江は退職金が現場に見当らなかったことを知ると、2人に遺体確認とのんびりしたことを言わずに、早く犯人を捕まえ、退職金を取り戻すよう怒鳴り、玄関から追い出そうとする。そこに、娘・光子、その夫・為吉が来訪、騒ぐ民江をとりなす。しかし、光子・為吉も退職金を盗まれたと知るや、絶叫。呆れる橘・松山だが、無線連絡のブザーが鳴ったので、玄関から特捜隊車両に向かう。

橘が無線をとると、相手は立石主任で、畑中の息子・靖夫をあたるようとの指示であった。そして、2人が玄関に戻ると、民江・光子・為吉の間で何かあったようで3人とも上機嫌。橘が、民江に靖夫の居所を聞いてみると、それには無関心な返事で、光子・為吉とお茶を飲むのを優先させる始末だった。これに、松山は畑中が気の毒な感になり、橘もこちらも滅入ってしまうと呟き、引き揚げようと外に出る。

と、そのとき、民江の「泥棒!」という声が、響き渡ったのである・・・。

 

 

例により、上記本文冒頭に繋がる「立石班の知らない場面描写」があるのですが、約5年後のリメ作#630 声なき女 ある娼婦の詩で概要を書いていますので、この点は省きます。ただ、「何かあったようで」という点は、当初、光子は畑中亡きあとの民江の面倒には困惑気味でしたが、為吉が、自宅は畑中名義(註・土地、建物の所有権が畑中であると解される)と知るや、老後の面倒を見ると言い出し、その意味を知った光子も笑顔で前言撤回。そして、何はともあれ、老後の安定を確信した民江も笑顔になり、橘・松山がみた「3人とも上機嫌」の場になるというものです。

 

 

当作は、どうしてもリメ作の比較無しでは観ることが出来ません。リメ作は、粗が有りながらも

>佳作といってもいい出来で、特に再見時は、最初から最後まで集中して見れました

と評した通り面白い作品で、実は、リメ作を直前に再見したうえで、当作の観賞になった経緯があります。上記で、かつて、リメ作を「佳作といってもいい出来」と述べていますが、今回の再見では佳作以上の出来にあると感じました。

つまり、リメ作では、絶望感に打ちひしがれる美江、それを演じる藤本三重子が「疲れ果てた年増」と言われようとも、やっと幸せを掴みつつある姿(そして、それが儚く崩れ去る現実に絶望する姿)を好演したものと感じ、藤本三重子のためのストーリーとも見える設定に大きく頷くものがありました。

そういうこともあり、約5年前の原型作の出来はどうだったのか、リメ作で完全昇華したイメージがあるため、原型作は落ちる出来だったのではとも考えていました。

 

そして、当作を観賞したところ、上記は杞憂に過ぎなかったことがわかりました。結論からいえば、当作は「傑作に近い出来」であり、高いレベルで「原型作 > リメ作」の評価になります。これは、特捜隊後期には、ストーリーを越えようとする技法が目立った田中秀夫監督が、当作では、ストーリーに沿った技法で、刑事ドラマ以上に人間ドラマとしての面白さを描き切ったと感じたからです。

まず、リメ作の粗とでもいう小道具の瑕疵は当作ではみられません。そして、リメ作では美江の単独ストーリーともいえる、藤本三重子を前面に出す設定でしたが、当作では、美江、それを影ながら支える畑中のストーリーとして構築、藤本三重子、野々村潔の好演が、当作の面白さのポイントになっています。

 

一例を挙げれば、美江・畑中の馴れ初めを立石主任(註・リメ作では高倉主任)に語る回想場面。当作では約7分(開始約31分半ば-38分後半)、リメ作では約5分(開始約32分前半-37分序盤)と違いがありますが、当作で、黒沢明とロスプリモスの「雨の銀座」が流れるなかでの会話、畑中がその歌詞を語る場面、美江が学生のときに経験した嫌悪感、それを慰める畑中。これらは、リメ作では描かれていないところであり、トータル放送時間、当作=49分53秒、リメ作=46分10秒、という時間短縮の要請があったからとも思えますが、その短縮部分が、実は人間ドラマに面白さを加える箇所でもあったわけで、そこを田中秀夫監督は上手く活用出来たともいえます。

そして、上記の「美江が学生のときに経験した嫌悪感」というのも、後年の、小林幸子の#548 影を追う女(奇しくも、田中秀夫監督作品!)を思い起こし、それを当作ですでに描いていたという事実にも驚かされます。

 

そして、この回想場面は雨の降る晩であり、クライマックスはクラブに立石班が来た雨の降らない晩であります。これがリメ作では、回想場面は雨の降らない晩であり、クライマックスはクラブに高倉班が来た翌日の、雨の降る昼間であり、両作とも、意識しているかの対比させています。

しかし、クライマックスは好みが分かれますが、雨の降らない晩でありながら、美江の顔は涙で濡れまくり、雨に打たれたかの表情、そして、それを見つめるかのように、立石主任に美江・畑中の馴れ初めを話したときに添えた花・線香の跡が、まるで畑中が優しく見つめているようにエンディングになるなど、当作の方が自分の好みでもありました。

→(追加)R6.5.31

涙で濡れまくりの箇所は、再見したところ、実際には「汗」と思われるのですが、直前にある人物と対峙する場面、直後に立石班が駆けつけたときカメラが下部から見上げる場面、の対比により「涙」に見えるよう演出しています。この点も、自分がカメラワークを含めた田中秀夫監督の演出に惹かれたところであります。

 

藤本三重子は、おそらく、当作が特捜隊に出演したなかでは代表作になるのではという熱演でした。これは、リメ作より約5年前、つまり5歳若く、男に利用される人生というより、「堕ちていった人生のきっかけ」を持つ若い女性を演じるには、年齢的にも合致していたこともあるのでしょう。リメ作のときにつけていたイヤリングを、原型作のときにすでにつけていたというのも、面白い符号です。

これを、畑中を演じた野々村潔が上手くフォローするなど、特に、上記の約7分の回想での優しさ溢れる場面は、リメ作より格段に印象的。当作は、この2人のために構築された作品といえます。

 

では、リメ作、すなわち北村秀敏監督はどうだったかいうと、美江単独ストーリーとなった当作(註・柳節也による改稿)をコンティニューするとき、田中秀夫監督の当作を念頭に置いたと思います。そして、人間ドラマの点では、おそらく当作にかなわないと感じたゆえに、刑事ドラマでの盛り上げに力を注いだと感じます。それが、

>「謎の靴の人物」がキーポイントで出てくるアクセント

であり、個性のある靴、アップの回数は当作以上であり、誰が犯人かを考えさせるポイントを上手く掴んでいると思います。特に、犯人が畑中殺害を思い立った場面は、両作とも犯人の回想で間接描写されるのですが、直接に「これは?」というのは、リメ作の開始約17分前半場面のボーイ証言(回想場面)であり、これがあることで、犯人に直接動機が生まれたと解することも可能です。

まあ、当作の田中秀夫監督も「靴」について、クラブの中での「ある動作」により、靴をオブラートに包んでいる技法を用いていますが、靴に個性を持たせていないという点ゆえに、リメ作の北村秀敏監督に一日の長があると感じます。

 

個人的には、これからも【スペシャルセレクション】が発売されるのか、東映chでリフレイン放送されるのかはわかりませんが、当作、リメ作とも視聴・観賞出来る機会があってほしい。その結果、昭和の名残ともいえる特捜隊が着目される機会ともなってほしいとも考えています。。。