※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#548  影を追う女】

 

(本放送)1972年5月3日

(再放送)2016年3月3日

(脚本)山本雪夫

(監督)田中秀夫

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

関根部長刑事(伊沢一郎)、石原刑事(吉田豊明)、白石刑事(白石鈴雄)、

鑑察医(仲原新二)、水木刑事(水木襄)、畑野刑事(宗方勝巳)、

三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

小林幸子、田中淑隆、佐竹一夫、伴藤武、浅草陣太、田中筆子、青野平義、

霧島八千代、野々浩介、南風夕子、徳大寺伸、前田通子、藤岡重慶

 

 

(あらすじ・予告篇から)

※当時のナレーション(=青木義朗)をそのまま聞き写しています

 

深夜、泥酔したサラリーマンの不慮の死・・・。

高度成長の波に押しつぶされていく、

下町のとある飲み屋街が事件の舞台となる。

荒んでいく住民たちの心、

そんな街に珠子(タマコ)という名の少女が流れ着いた・・・。

狂気のように海に憧れる、彼女の暗い過去には、

いったい何があったのか?

愛と憎しみに汚れてしまった、この街の中で、

珠子が求めるものは何か?

次回、特捜隊、「影を追う女」に御期待ください。

 

 

(備考)

・ロケ地は、当作が終焉の予告であるかのような、2008年7月に閉鎖された東池袋1丁目の「人世横丁」。とあるブログには、当作にも登場する飲み屋・松舟の写真も出ています。

・海辺にて、小林幸子(吹替え?)の貴重なセミヌード有り。

・強姦罪は、2017年6月の通常国会にて、強制性交等罪と名称変更、法定刑の下限が3年から5年に引き上げられ、親告罪ではなくなりました。

 

 

(視聴録)

 

ある横丁で、流しを生業とする老婆(田中筆子)が徘徊しながら人間観察をしている。飲み屋・浦島では、ママ(前田通子)、店員・関口珠子(小林幸子)、清水食品社員・吉田たち3人(田中淑隆、佐竹一夫、伴藤武)、革ジャンバーの男(藤岡重慶)。ラーメン屋では主人(青野平義?)、女店員(立林秀子)。飲み屋・松舟では、女将・早苗(南風夕子)。外では、次期直木賞受賞とくだを巻く浮浪者・岡やん(浅草陣太)。そして、珠子は船長の父(滝波錦司)が航海中に事故死した後、母(霧島八千代)の再婚相手(石垣守一)から強姦され、母の怒りの矛先が珠子に向いたことに絶望、家出してこの横丁に流れ着いた過去があった。

 

その翌日、神社境内下で、後頭部の頭蓋骨骨折により墜落死した会社員・船山(野々浩介)の死体が発見された。死亡推定時刻は深夜1時30分、唇の傷は殴られたときにつけられたもので、会社上司(片山滉)への聞きこみでは、船山は酒で失敗を重ねていた男で一部から馬鹿にされていたという。三船班は、船山が1人で飲みに行く横丁一帯に捜査網を敷いた。

所轄刑事・梅本(徳大寺伸)の協力も得て聞きこみを開始、ラーメン屋主人の証言では、船山は知人である内村けんきち(平松慎吾)と店で言い争いをしていたという。また、浦島のママと松舟の女将・早苗とは仲が悪く、お互いに中傷し合っているが、船山が事件当夜浦島へ飲みに訪れたことが明らかになった・・・。

 

 

当作は、なぜ船山が殺害(?)されたのか追及は甘いものの、

当人たちのアリバイ

0:00前後~船山が浦島を出る

0:00過ぎ~清水食品社員・吉田たち3人が、サウナに行くため浦島を出る

 ※珠子1人で店に残る

2:20過ぎ~清水食品社員・吉田たち3人が戻り、珠子も交えて再度飲む

4;30過ぎ~上記4人で海に出かける

を挙げることによって、物理的に犯行が可能であったのかを描いたこと。さらに、この時間帯に浦島のママの行動を漂わせたこと。

また

・珠子の過去

・横丁の立ち退き

が微妙ながらも、事件に影を落としているところを描いたのは、面白い点でした。

 

そして、それらがラストにいたるところで、飲み屋・浦島、松舟、海辺を舞台にまとめあげるなど、いい終わり方をしたと思います。特に、革ジャンバーの男が正体を明かし、珠子にあるものを託そうとママに「すべてわかってますよ」「帰ってくるまで珠子さんのことをよろしく」と言うものの、丸めた紙切れが転がったことで、その後の横丁で暮らす人たちの運命を暗示させ、田中秀夫監督らしい演出は健在です。

 

ただ以前に、三船主任の描き方は田中秀夫監督が上手いと評したものの、今回は三船主任の「情」の部分を表に出すタイミングがズレ気味で、これは事件関係者との直接接触が岡やんだけという事情もあるのでしょう、今回は「鉄の男」のイメージが強かったですね。

もう少しほかの関係者と接触している脚本(今回は初登場か?山本雪夫が担当)だったら、田中秀夫監督はより上手く三船主任を描けたのではと思われ、少し残念です。

 

そして、今回は浦島のママ役で前田通子がゲスト出演しています。ネットで検索すると出てきますが、「続・若君漫遊記 金比羅利生剣」(加戸野五郎監督、1957年)の撮影中、裾まくりのシーンを拒否して降板(代役は宇治みさ子)、いわゆる「前田通子裾まくり事件」とよばれ新東宝退社の憂き目にあいました。1934年生まれですので、この事件のときは23歳、その前田通子が当作で松舟の女将・早苗役の南風夕子との喧嘩シーンでは、裾をまくりあげているのですからわからないものです。

当作出演時は38歳であり、共演の小林幸子は当時19歳なのに吹替え?とはいえセミヌード、あるいはシュミーズ姿を演じたのですから、もしかして田中秀夫監督が意図的に狙ったものかもしれません。あなたが断った仕事以上のことを、当時のあなたより若い人が演じているのですよ・・・とか。

 

また、「#547 絞首台の青春」を思い出しましたが、関口珠子の年齢設定は16歳であり、少年法51条(死刑と無期刑の緩和)と関連させるなら、むしろ当作のほうがソフトに表現できたような気もしました。

 

(2017年12月18日 全面追加)