【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

の作品から抽出しました。

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・297  第七天国

特別機動捜査隊(第297回)第七天国

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL3、disc3、2021年2月10日発売

(本放送)・・・1967年7月5日

(脚本)・・・元持栄美

(監督)・・・田中秀夫

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・加島忠義

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(佐藤敏子)、橘部長刑事(南川直)、

荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、

松山刑事(松原光二)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

霧立はるみ、六本木真、義那道夫、加川景三、美弥たか子、森幸太郎、加藤土代子、

大泉滉、若山みち子、稲吉靖、九重ひろ子、川上正夫、小池明義、石井淳、西島一、

高峰竜三、朝倉宏二、堀真奈美、清水美保、磯野のり子、小金井秀春、高坂真琴、

滝江里子、西村俊長、小野川公三郎、綿貫勝男、田内加代子、鈴木錦司、

相沢富士子、ダイヤモンド・シンガー、江見俊太郎

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

今日もまた、酒と女と賜宴(シエン)の渦巻く歓楽街に、

男の欲望が疼(ウズ)いていた。

そして、ほど近いビルの谷間で、男の転落死体が発見された!

被害者は、明晰な頭脳と異常なまでの行動力で、将来を約束されている男だったが、

その非情さゆえに恨みをいだく者も多かった・・・。

都会の底辺に、貧しいながらも文学にしがみつく、

幸せの階段を一段ずつ上ろうとしている貧乏作家に容疑がかかった。

次週、「第七天国」に御期待ください。

 

※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。

 

 

(備考)・・・

・正式題名は「㐧七天国」で「第」ではない。漢字の歴史的には旧字は「第」、新字は「㐧」であるが、戦前から現在に至るまで、標準漢字・常用漢字・当用漢字は一貫して「第」である。パソコンの普通検索でも検出が難しく、当稿で文字化けする可能性もあり、「第」で統一した。

・当作は、約9年後に#778 天使の乳房に泣く でリメイクされる(後述)。

・死亡推定時刻を、当初は昨夜11-11時半としていたが、解剖結果により、昨夜12時前後と訂正している(後述)。

・中根の新人賞応募作品と思われる「第七天国」の一節は以下の通り。

>愛は哀しい

>生きることも哀しい

>死ぬことは更に哀しい

・現在声優の高坂真琴が、エンディング表記に女事務員として出演とあるが、風貌・面影から田所プロダクション・女事務員を演じたと思われる。ただ、100%の確信が持てないため、以下本文では「?」を付加した。

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物を、人名のみリメ作を参考にまとめますと、以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)。

 

〇四菱商事貿易輸出課・課長

〇同・係長・浜田裕二・・・・・・・・・・・・・・・・・六本木真

〇同・浜田の部下・山岡和彦・・・・・・・・・・・・・・石井淳

〇同・浜田の部下・大原・・・・・・・・・・・・・・・・西島一

〇クラブアクロン・支配人・野島・・・・・・・・・・・・森幸太郎

〇同・ボーイ

〇同・ホステス・加納時子・・・・・・・・・・・・・・・美弥たか子

〇同・ホステス・時子の同僚

〇同・司会者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・稲吉靖

〇同・クラブ歌手・ダイヤモンドスティンガー・・・・・・ダイヤモンド・シンガー

〇同・バンドマン(6人)  ・・・・・・・・・・・・・・・西村俊長、他

〇同・ヌードダンサー・ローズマリー(通称・マリー)

○同・店前のラーメン屋台店主

〇マリーのマネージャー・田所久三 ・・・・・・・・・・・江見俊太郎

〇田所プロダクション・女事務員 ・・・・・・・・・・・・高坂真琴?

○小説家・中根宏 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・義那道夫

○中根の妻・美佐 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・霧立はるみ

○中根夫婦の部屋の間貸し人・川村はる ・・・・・・・・・加藤土代子

○おおにし医院・医師 ・・・・・・・・・・・・・・・・・小金井秀春

○中根の知人・吉川 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・加川景三

〇椎名荘の山岡の隣室夫婦

〇時子の年輩パトロン

〇喫茶店ロンド・ウエイトレス(2人)

〇教会の神父

〇国立下瀬療養所・看護婦

〇エメラルドホテル・フロント

〇同・女中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・若山みち子

〇浦上商事ビル・宿直・細川・・・・・・・・・・・・・・・大泉滉

〇同・宿直・寺西・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高峰竜三

〇現場の死体発見者・男女4人組 ・・・・・・・・・・・・・綿貫勝男、他

〇現場の警官・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木錦司

 

 

「110番より通報を受けた特捜隊・立石班は、直ちに現場に急行した」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

現場は、エメラルドホテルと浦上商事ビルとの谷間にある敷地で、男が目を開き血を流して絶命していたのを、朝帰りの男女4人組が発見したものであった。鑑察医の解剖前所見は、死因が高所墜落による脳底骨折、死亡推定時刻が昨夜11-11時半であった。立石主任は、橘・桃井をホテルへ、荒牧・岩井田をビルへ、それぞれ聞きこみに行くよう指示。併行して、松山は死体周辺から被害者の財布・名刺入れを発見。財布には現金が残されているため物取りの犯行とは考えられなかったが、名刺に四菱商事貿易輸出課・係長・浜田裕二とあった。

ビルへの聞きこみでは、宿直の細川・寺西によると、昨夜7時には表門を、9時には通用門を閉めたこと、外部から屋上には上がれないという。そして、屋上に案内してもらうと、屋上からは死体発見現場が見下ろせるほか、岩井田が屋上床にカフスボタン1個を発見する。この遺留品について聞いてみると、細川・寺西はなぜか動揺の体で知らないと答えるのだった。

 

ホテルでは、被害者の写真を女中に見せると、昨夜の513号室宿泊者だと答える。引き続き、橘は女中に聞きこみ、桃井は屋上を捜査する。そして女中からは、被害者は昨夜10時半ごろ来訪、それから30,40分後、慎ましい感じの女性が被害者あて訪れたことを聞き出す。さらに、部屋を捜索すると、ハイライト1箱、喫茶店ロンドのマッチ箱を発見する。

一方、荒牧・岩井田からカフスボタンの報告を受けた立石主任は、被害者のつけているものと一致していないことに気づく。と、そこに、桃井がホテル屋上から被害者が宿泊していたと叫んだことで、立石主任・荒牧・岩井田・松山は、非常外階段でホテル屋上に向かう。そして、立石主任は荒牧・松山を513号室へ向かわせ、屋上から見下ろすと、ビルの階下の窓枠壁に血痕らしき付着物を目にする。被害者は窓枠壁に接触後に墜落した可能性、を岩井田が述べたこともあり、立石主任は犯行現場はホテルの非常外階段辺りと判断、桃井・岩井田とビルに向かう。そこで実際に調べてみると、血痕のほかに、指輪の台座から外れた様相の宝石(註・後にサファイアと判明)をも発見する。

 

513号室の橘と合流した荒牧・松島は、513号室の階の非常口の鍵がかかっていないことに気づく。女中によると、いつも締まっているのにと、納得がいかない表情を見せる。このことから、橘は、被害者を訪ねてきた女性は非常口から逃げた可能性を考え、タバコ・マッチ箱の件と併せ、立石主任に報告する。このことから、立石主任は、非常外階段・非常口の指紋検出を鑑識に指示。

 

その後

「直ちに特捜隊・立石班の聞きこみ捜査が開始され、立石・松山の両刑事は、被害者・浜田裕二の四菱商事を訪れた」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

浜田の上司課長への聞きこみでは、浜田の女性関係は普通並み、常務の娘の婿養子になり、若くして係長昇進、如才無い男でもあり変な噂のたつことは滅多にないと、絶賛気味の評価であった。しかし、同席していた浜田の部下・大原は何か言いたそうな雰囲気であった。

そして、立石主任・松山が席を立ち、会社の外に出ると、大原が追いかけて来て、浜田の裏の顔の話をする。浜田は、女に手が早く、昨年バイトしていた女子大生・加納時子に手を出したことがあり、現在、時子はクラブアクロンに勤めているという。さらに、昨夜は商談がまとまったことで、浜田は山岡・大原を連れクラブアクロンに行き、時子・同僚ホステスを交え飲んでいた。が、人気ダンサー・マリーの踊りのとき、浜田がいなくなったばかりでなく、時子の姿も見えなくなったことで、時子に首ったけの山岡が血相を変え何処かへ走り出した事件があったという。そして、その山岡は本日休みということだった。

「そのころ、橘・桃井の両刑事は、被害者が泊まった部屋に残されたマッチの線を追って、喫茶店ロンドを訪ねた・・・」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

 

当作は(備考)にも挙げた通り、#778 天使の乳房に泣く (以下、リメ作と略称)の原型作です。ですので、リメ作の視聴録(過去のブログ記事)にある通り、上記本文直前には、立石班の知らない場面が描写されており、それを立石班がどのように追及していくかというプロットは、当作、リメ作とも変わりはありません。そのこともあり、ストーリーの詳細は、リメ作に譲るとして、当作の特徴を述べていきます。

 

当作では、刑事ドラマの側面を重視した傾向が強く、死亡推定時刻から、各容疑者のアリバイ、物証である指紋検出をポイントとしてストーリーが進行します。アリバイについては、供述・証言により時系列を明らかにさせる手法は良いのですが、(備考)で指摘したとおり、死亡推定時刻の変更(昨夜11-11時半⇒昨夜12時前後)により、アリバイに齟齬が発生するのですが、この点は触れられていません。

指紋検出については、2か所で発見された同じ物証からの検出指紋と、「ある場所の検出指紋」との比較になります。そのとき、1か所目の物証には2つ指紋が有り、1つは浜田のものですが、もう1つは「別人の指紋」となるのですが、「別人の指紋」は「ある場所の検出指紋」とは異なると鑑識・上田から指摘されます。このことで、立石主任は「残された指紋」が決め手となると確信するのですが、実は、「残された指紋」が「別人の指紋」なのか「ある場所の検出指紋」なのか明らかにされません。

さらに、現場捜査でのサファイアの発見場所が、上記本文を読んでも明らかなのですが、墜落時にビルの窓枠近くに残ることは、万有引力の法則からみても可能性が低い。犯行現場がビルの窓枠付近であるなら多少なりとも納得がいくのですが、これらは立石主任や岩井田の発言からも否定されます。

 

要は上記3点

(1) 死亡推定時刻

(2) 指紋

(3) サファイア

が刑事ドラマの点で歪みをみせており、リメ作を先に観賞したことから、非常に目立ち、これら3点はリメ作では「是正」された形跡が有ります。

(1)については、死亡推定時刻変更による齟齬と思われる場面は見当たりません。当作では、終盤近くに「ある人物」に聞きこみをした橘から立石主任に向けての発言が代表的なものですが、これに似たような場面はリメ作ではありません。

(2)については、2か所で発見された同じ物証の場面は無く、その2か所の映像描写もされていませんでした。当作とは違い、リメ作では指紋検出は終盤に触れられる程度で、大きなポイントではなかったと記憶しています。

(3)については、リメ作では発見場所を事件現場の死体の側に改定しており、自然な感じとなっておりました。

以上のように、、リメ作では刑事ドラマの体裁を整えるための修正が行なわれ、これがもうひとりの脚本・柳節也によるものか、監督・鈴木敏郎によるものかはわかりませんが、?とならなかった点では高評価。

また、リメ作では「登場人物の過去の関連」を明らかにするために、不明瞭であった「中根の知人・よしかわ」を新聞記者(文科部)として、新人賞応募作品を「天使の乳房に泣く」と明らかにすることで、題名との関連もわかります。それでいくと、当作の新人賞応募作品は「第七天国」なのでしょうが、吉川の職業が不明のため、ここいらへんはまったく描写されていません。その点でいくと、クラブアクロンを出た浜田を、なぜ「ある人物」が追跡したのかと理由も、当作では明らかにされていませんでした。なお、リメ作では追跡する設定ではなく、気づいたあと別の人物と遭遇、ロンドの場面も削除されています。

 

成功、不成功に関係なく、

・当作=刑事ドラマに重点

・リメ作=人間ドラマに重点

が特徴であります。この点は、ラストの情感あふれる場面が、当作では冷静沈着な立石主任ゆえに、警察という枠組みの中で見守るというシビアな形になっていること。対してリメ作では、ある場所を遠くから見つめている戸川(一の瀬玲奈)、駆けつける松木(早川雄三)・水木(水木襄)、ある場所の近くで沈痛な表情の畑野(宗方勝巳)・石原(吉田豊明)、そして単身乗り込む三船主任(青木義朗)を介在させることで当事者に寄り添う三船班という形でした。

そして、リメ作観賞の当時は、ここでの寡黙な三船主任に物足りなさを感じたことは事実で、

>「情の男・三船主任」のカラーにすることは出来なかったのか

とまで考えていました。ところが、当作での立石班からみたラストがしっくりこなかったせいもあり、リメ作を再見したところ、自分の見方が甘かったことに気づきました。三船主任は寡黙でありつつも、目、動作で「ある人物」を見つめる場面は、まさに「情の男」でありました。そして、ラストは、三船主任と「ある人物」が相対する形をとっていません。むしろその場所の外で、畑野・石原そして関係者の2人が、三船主任と「ある人物」が出てくるのを沈痛な思いで待つ場面に仕上げ、直後のエンディングテーマとあわせ抒情溢れる場面に昇華させていました。

つまり、当作を観賞することで、改めてリメ作の良さ、三船主任の個性を再認識する結果になったというパターンなのです。

 

また、当作での「曖昧な場面」をリメ作では削除して、人間ドラマ的な膨らみを持たせているのもポイント。浦上商事ビル・宿直2人の「屋上でのよくわからない証言」、アリバイ齟齬を解消させるための「喫茶店ロンドの場面」を削除するなどが挙げられます。

これらから、当作は特捜隊四天王のひとり・田中秀夫監督作品ではありますが、全体的には「リメ作>当作」が、自分の評価になるのは致し方ありません。

 

しかし、ゲスト出演者の個性でいきますと、実は当作のほうに魅かれます。ミサを演じた霧立はるみですが、【スペシャルセレクション】では、観賞順に

(4) #292 青春の追憶【スペシャルセレクション】 

(5) #249  乾いた海【スペシャルセレクション】

の登場。いずれもお金持ちのお嬢さんの役柄でした。本放送順では(5)の「現在置かれた自身・家族の状況に、悩み苦しむ18歳の美樹」、(4)の「自由奔放なテーンエイジャー・麻里子」、そして当作では、川村はるの言葉を借りれば「今どき、金のわらじを履いても見つからない出来た若奥さん・美佐」を演じているから驚きです。

本放送では、わずか2,3ヵ月前に、やりたい放題の麻里子を演じたとは思えないほどの落ち着き(台詞を含め)をみせ、メイクもあるのですが、人妻らしいふっくら感も醸し出しています。これが開始約37分後半以降の、ストーリーの転換に一役買うわけで、リメ作を観賞していなかったら、このインパクトはもっと大きなものに感じたでしょう。この点では、リメ作で同役を演じた山科ゆりも良かったですが、それよりも存在感が大きかったのが霧立はるみで、自分としても前2作以上の評価をつけなくてはなりません。

これは、同様に夫・中根を演じた義那道夫にもいえることで、胸が悪いというと、つい新選組・沖田総司を連想するのですが、そのイメージに近いのではという雰囲気を醸し出していました。どうやら舞台を主流に活躍した俳優さんのようで、もっと表に出てきても良いと思いました。

以前、コメントをいただいたシャザーンさんによると、

>ウルトラQであのセミ人間の異様に印象に残る人間体を演じた俳優

ということです。