【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

の作品から抽出しました。

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・#318  怪奇の家

特別機動捜査隊(第318回)怪奇の家

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL4、disc1、2021年3月10日発売

(本放送)・・・1967年11月29日

(脚本)・・・小川記正

(監督)・・・中村経美

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・上杉健

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・立石班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(佐藤敏子)、橘部長刑事(南川直)、

荒牧刑事(岩上瑛)、桃井刑事(轟謙二)、岩井田刑事(滝川潤)、

松山刑事(松原光二)、立石主任(波島進)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

夏海千佳子、浜口久美、原ひさ子、磯野秋雄、花岡菊子、浅沼創一、笠間雪雄、

石井竜一、高橋正夫、加茂嘉久、黒丸良、小井戸利行、菅原ちね子、片山滉、

下村和男、蟹江敬三、山ノ内修、溝呂木但、中村洋子、芳村浩明、藤村裕子、

小野進也、高田正裕、星紀市、刈野典子、瀬戸清美、浅野いずみ、高坂真琴、

大島まり子、佐川二郎、荒井千津子、林寛、清水一郎、沢村宗之助

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

奇っ怪な宙づり死体に端を発した、殺人事件の捜査は難航した。

捜査が進むにつれ、呼び起こされるように異常な出来事が次々と起こった!

時価一千万円といわれる、写楽の版下絵(ハンシタエ)を巡る色と欲の醜さが、

錯綜する現代の死角を突いて、異様な姿を現わした瞬間、

人間性の尊厳は失墜し、悲痛な絶叫を上げて、燃え尽きんとした!

特捜隊・立石班の目に映った、怪奇の家とは一体何か・・・!?

それは遠い古(イニシエ)の物語ではなく、現代の私(ワタクシ)たちの物語である!!

 

※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。

 

 

(備考)・・・

・劇中の「きたおおいずみ」は、昭和7年(1932年)に練馬区の大泉村が「東・西・南・北大泉町と大泉学園町の五つに分かれた」(練馬区HP・大泉町の項)ところから、「北大泉(町)」のことと思われる。なお北大泉町は昭和55年(1980年)の住居表示変更に伴い、「大泉町」となった。

・劇中の山梨県北都留郡藤代村については、当作本放送(1967年11月29日)時点で、北都留郡に属する町村は小菅村、丹波山村しか存在せず、過去にも藤代村という町名も存在しなかったことから、ドラマ上の架空名称である。

・版下絵(ハンシタエ)とは、「浮世絵版画を作る際に、絵師が元になる絵を薄い和紙に描いたもの」(ブログ・もさくの浮世絵はじめました の「肉筆浮世絵・版下絵・武者絵」の項目より引用)とある。おそらくは、絵の下書きのようなものであると推測され、当作では、これが写楽の肉筆であるかどうかがポイントとなっている(後述)。

・車輪跡を発見した桃井が、物証に対する所見を述べるが、以下本文では省略した。

・ロープの荷札に書かれていた内容は、以下の通り。

>届け先

>八高線村山駅行

>山梨県北都留郡藤代村字中田○○○○(註・住所のためボカす)

>倉持酒店 殿

>荷送人

>広島県安佐郡西条町

>加茂正宗酒造

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)。

 

〇城南美術大学・講師・竹永精一・・・・・・・・・・沢村宗之助

〇竹永の娘・ゆき   ・・・・・・・・・・・・・・・・夏海千佳子

〇青山の岩橋美術・社長・岩橋・・・・・・・・・・・清水一郎

〇同・社員・内山・・・・・・・・・・・・・・・・・溝呂木但

〇山村浮世絵研究所・所長・山村・・・・・・・・・・高橋正夫

〇同・顧客・里見・・・・・・・・・・・・・・・・・笠間雪雄

〇元華族そうま家・夫人・・・・・・・・・・・・・・原ひさ子

〇同・夫人の孫・ゆかり   ・・・・・・・・・・・・・浜口久美

〇同・奉公人の爺や・弥作・・・・・・・・・・・・・林寛

〇赤坂の料亭・揚巻・女将・・・・・・・・・・・・・花岡菊子

〇同・養女

〇同・仲居・よっちゃん・・・・・・・・・・・・・・菅原ちね子

○同・芸妓(2人)

○倉持酒店・店主・倉持・・・・・・・・・・・・・・磯野秋雄

○倉持の妻

○倉持の息子・直助・・・・・・・・・・・・・・・・蟹江敬三

○直助の仲間・鈴木・・・・・・・・・・・・・・・・浅沼創一

○同・斉藤・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小井戸利行

○倉持酒店近隣の雑貨店・店主

〇新宿のバー・キック・常連の若者・・・・・・・・・

小野進也、高田正裕、星紀市、刈野典子、瀬戸清美

〇同・歌手・ちづ ・・・・・・・・・・・・・・・・・荒井千津子

〇くんぷんかん道場・師範 ・・・・・・・・・・・・・山ノ内修

〇同・門弟・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

浅野いずみ、高坂真琴、大島まり子、他

〇竹永宅の近隣主婦

〇事件現場近隣のハンター(2人)

〇事件現場近隣の木こり

〇時計店・店主(開始約19分半ば)

〇時計店・店主(開始約43分前半)  ・・・・・・・・・片山滉

○所轄署刑事・市川・・・・・・・・・・・・・・・・・芳村浩明

 

 

事件は、狩猟中のハンター2人が、ロープで足首を括りつけられ、木に宙づりにされた男の死体を発見したことから始まった。

「通報を受けた特捜隊・立石班は、都下・西多摩郡たけやまの犯行現場へ急行した」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

午前8時半、立石班に所轄署刑事・市川が合流、現場捜査に入る。鑑識医は、死亡推定時刻を昨夜10時前後、数カ所の刺傷があるが致命傷は頸動脈へのものであり、凶器は傷口から普通のナイフ・短刀とは異なる刃物だろうと所見を述べる。また、橘は遺留品の名刺から、被害者は城南美術大学講師・竹永精一と立石主任に報告、盗難の形跡が無いことから痴情・怨恨の線を考える。荒牧も、死体の近くに、帽子飾りにみられる鳥の赤い羽根を発見する。

そして、鑑識・新田も、ロープに「倉持酒店」と書かれた荷札を発見、立石主任・橘が確認する。と、そこに、桃井から、宙づり現場から離れた場所にリヤカーらしき車輪跡と4,5人の乱れた足跡とを、松山から、近くの木の根元に鉄ブチの眼鏡を、それぞれ発見したと報告される。

これらから、立石主任は、橘・桃井に荷札の酒店を、荒牧・岩井田に付近の聞きこみを、それぞれあたるよう指示。自らは、松山と城南美術大学に向かうことにした。

 

「城南美術大学に赴き、竹永精一の住所を聞き出した立石・松山の両刑事は、その足で直ちに北大泉の竹永宅を訪ねた」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

不在のため、近隣主婦に聞きこむと、竹永の妻はだいぶ前に病死、娘はいるものの別居してアパート住まいらしいが、どこのアパートかはわからないとのことであった。

「一方、山梨県北都留郡藤代村に飛んだ、橘・桃井の両刑事は・・・」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

倉持酒店に聞きこんだところ、店主・倉持の妻が、息子・直助の車の中にロープを見かけたと話そうとしたところ、倉持はそれを遮り、橘・桃井に非協力的な態度を見せる。憤慨する桃井だが、橘は直助の友人関係をあたろうとたしなめる。そして、近隣の雑貨店店主に聞きこむと、直助は2浪しており、そもそも勉強嫌いのため大学に行く気は無く、いつも東京へ遊びに出ているという情報を得る。そして、直助には、鈴木・斉藤という仲間がおり、昨日この店に寄ったが、そのまま3人で東京に行ったのだろうと締めくくった。この情報は大いに役立ち、桃井は直助が2浪ということから、受験票に添付する写真に発想を巡らせ、近隣の写真店に聞きこむと、直助の写真提供を受けることになる。

一方、荒牧・岩井田に松山が合流、現場付近を再び調べることにするが、林の中で岩井田がスケッチケース(ブック?)を発見、その中には1枚の浮世絵が挟まれていた。荒牧は、松山に鑑識に持ち込み鑑定してもらうよう頼み、自らは岩井田と聞きこみを再開する。

 

特捜隊本部では、立石主任が西本捜一係長に、今後の事件の見通しについて話していたところ、鑑識・上田から、スケッチケースと版画から竹永の指紋を検出、眼鏡の指紋は竹永とは別人のものだが前科者リストには無いこと、車輪跡はリヤカーのものであること、が報告される。立石主任は、版画は(写楽画ということだが)本物なのか? とふとした疑問を覚えるが、浮世絵に多少造詣のある西本捜一係長は、思い出したかのように、あるところに電話をかける。

そして、西本捜一係長、立石主任は、連絡先の山村浮世絵研究所を訪れ、所長・山村と面会。山村は、遺留品の版画は本物と鑑定する。写楽の浮世絵は大半が国外流出、国内現存は約30~35枚とみられるが、所有が個人・美術館と所在がわかってるものを除いた10枚は未だに見つかっていないということだった。そして、遺留品の版画は、その10枚のうちの1枚であり、竹永はその10枚を秘かに所蔵している人物と関係があったらしいと示唆する。

そして、立石主任は竹永のことを聞き出そうとするが、山村は、直接のつきあいは無いものの、仲間うちではとかく噂の多い人物だったと語る。その噂とは、大学の先生としては「当世風」という意味であり、竹永は岩橋美術社長・岩橋と親しいことを話すにとどまった・・・。

 

 

当作は、「捜査班の知らない序盤の場面」は描かれず、いきなりの死体発見から立石班の捜査に入ります。そして、物証・証言からストーリーは進行、本放送当時の若者の生態、題名の通りの「怪奇の家」も描かれます。さらにラストは、まさしくジャッロの世界で、後年作品になりますがダリオ・アルジェント監督の「サスペリア」(1977年)「インフェルノ」(1980年)を思い起こすようであり、小川記正ワールドに溢れた内容です。

そもそも、刺殺死体をわざわざ宙づりにするということ自体が異様で、登場人物も、「人付き合いの悪い酒屋のおやじ」「白昼堂々闊歩する同性愛者」「身の丈もわきまえない放蕩者」「(当時としては異端だったか)フリーセックス論者」「#298 女の館 を思い起こす欠損者」などが続々と現れます。これは、妖しげな世界と現実とを交互に描くことにより、当該事件とその周辺・裏側を強調させる効果を出し、小川記正ならではの構成であります。

 

再度、【スペシャルセレクション】での小川記正脚本を並べると

(1) #200 女の終着駅【スペシャルセレクション】 監督・龍伸之介

(2) #238 深夜の銃声【スペシャルセレクション】 監督・中村経美

(3) #285 拾った女【スペシャルセレクション】 監督・奥中惇夫

(4) #291 豚と栄光【スペシャルセレクション】 監督・中村経美

(5) #298 女の館【スペシャルセレクション】  監督・龍伸之介

(6) #308 流転の旅路【スペシャルセレクション】 監督・奥中惇夫

(7) 当作・#318  怪奇の家【スペシャルセレクション】 監督・中村経美

(8) #404 待っていた人【スペシャルセレクション】 監督・奥中惇夫

(9) #504  乱れた女たち【スペシャルセレクション】 監督・伊賀山正光

になります。

そして、(5)に至って

>後年の#463 黒い遺言状 、#550 ある異常人間 、#610 恐るべき幽霊 、に匹敵

>する「おどろおどろしい世界観」が初めて登場した

と評したのですが、その点でいくと、当作は(5)の踏襲作品ともいえます。

 

しかしながら、オープニング表記の「脚本・小川記正」にワクワクしながらも、「監督・中村経美」に少し不安感を覚えたという、後年からの先入観。さらに、かつてジャッロ映画と特別機動捜査隊 において、「ジャッロ」を

>非科学的事象を背景に残虐な事件が発生するが、精神的問題・女性の存在を介入

>させながらストーリーが展開、最後には論理的解決を追求するミステリーとサス

>ペンスの融合作品

と、考える自分からは、どうにも納得がいかない作品となりました。

先入観という点では、「怪奇の家」が開始約18分後半に話題になるものの、本格的に登場するのが開始約35分後半と、ラストまで約15分しかありません。「焦らし」の構成か演出なのかわかりませんが、「これで事件解決できるのか?」と考えてしまう設定でありました。

 

ジャッロの点では、宙づり死体の真相について、「こんなのありか?」と思うものの、それは置いておきましょう。ところが、それを間接的に証明する「物証への考察」が、実は桃井から述べられているのです。この点に全く触れないまま、簡単に真相を黙認してしまうのは、論理的解決とは言いにくい。

これは、鑑察医の死体所見にもいえることで、事件の真相通りなら、犯人の特徴からどうやって頸動脈まで至ったのか、さらには回想では「一撃必殺」となっているので、死体現況とも不一致。さらには、その際、なぜケースを回収しなかったのかも触れていないことや、いつもの立石班なら凶器から真相にたどり着くだろうと感じるところなど、気になります。

それに、事件の発端となる「ある場所」での竹永の行為と所業についても、「目的は果たしたはずなのに、その行為に至るのはなぜ?」「所業に至ったのは、故意か過失か?」というところも説明不足です。

 

粗ばかりになるのですが、小川記正ワールドは、多少の矛盾、辻褄が合わないところがあっても、描かれる幻想的世界が包み込んでしまう特徴があります。それでいくと、当作は欠点が目立ち、幻想的世界の隙間から欠点がこぼれ落ちているようで、観終わってもなかなか合点がいかなかったと感じられました。これは、実は上記(5)の作品にもいえたことで、終わってみて「少なからずの物足りなさ」は共通、出来はほぼ同じくらいか。

おそらく、「おどろおどろしい世界観」というのが、1967年時点では演出する監督陣には100%理解されない状況で、まだ時代的に早すぎたのかもしれません。ですので、「悲劇」を強調した異様な運命譚 (6) #308 流転の旅路【スペシャルセレクション】 のほうが、この時点では完成度が高いと評されると感じます。

自分は【第3回再放送】からの特捜隊視聴もあり、全体を網羅していないものの、小川記正ワールドが「らしさ」を醸し出すのは#463 黒い遺言状 (アメンバー記事#463 黒い遺言状 エピソード真相追及 も参照)になってからかな?とも思いました。