【第4回再放送】が終わって市販された、

特別機動捜査隊 スペシャルセレクション<デジタルリマスター版> [DVD]

の作品から抽出しました。

市販品なので、

(あらすじ)などストーリーの本質にかかわるところは伏せ、

スタッフやキャスト、また(備考)・(ネタバレしない範囲での一般的感想のみ

にとどめます。

将来、東映chなどで、一般的視聴されるようになったら書き加えていく予定です。

 

※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また、1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

なお、オープニングやエンディングで配役名表記がされない作品については、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」の原則だと平仮名だらけの文面となります。そこで役名・地名等は、検証本その他を引用、あるいは当方での当て字により、以下表記します。

配役名表記が有るため、従来の「発声のみの役名については平仮名表記」「オープニング・エンディングの表記と、劇中発声・表記が異なるときは、後者を優先」する原則に戻り、以下本文を表記します。例外は、その都度(備考)で示します。

 

☆・・・#296  九年目の女

特別機動捜査隊(第296回)九年目の女

 

 

 

(収録DVD)・・・VoL3、disc3、2021年2月10日発売

(本放送)・・・1967年6月28日

(脚本)・・・三浦大介

(監督)・・・奥中惇夫

(協力)・・・警視庁

(協賛)・・・無し

(助監督)・・・徳井一行

(劇中ナレーター)・・・島宇志夫

(捜査担当・オープニング表記)・・・藤島班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、事務員(佐藤敏子)、南川部長刑事(菅沼正)、

大村刑事(森山周一郎)、笠原刑事(伊達正三郎)、森田刑事(北原隆)、

内藤刑事(巽秀太郎)、藤島主任(中山昭二)

 

(出演者・オープニングまたはエンディング表記)

・・・劇中優先のため配役名表記を省略

白石奈緒美、池田昌子、住吉正博、柳田清美、田上洋子、岩城力也、安藤三男、

稲葉まつ子、池田忠夫、石垣守一、依田英助、神山卓三、辻しげる、浜こうじ、

大友町子、松平有加、石川十郎、大川義幸、菅原壮男、米地政英、伊藤慶子、

八神淳、高田正裕、雪比呂志、赤池義昭、片山由美子、

琉球舞踊(酒礼門)・上馬實・金城道子・山内えみ子、

東家菊燕、山川顕、武藤英司

 

 

(あらすじ・予告篇から)

・・・ ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています。

 

雨の激しく降った夜、ひとりの女が神社の境内で殺害された!

被害者(ガイシャ)の背後に横たわる暴力組織・・・。

東京に憧れ、女優になれるという甘い言葉を、

いともたやすく信じて上京して来る娘たち・・・。

さらに、それを操る黒い罠・・・。

現場に残されたペンダントを手がかりに、特捜隊・藤島班の捜査は続けられる。

売春は禁止されながらも、今なお残る東京の夜の恥部を赤裸々に描き出した、

次週、「九年目の女」に御期待ください。

 

※ストーリーの本質に触れる部分はボカします。

 

 

(備考)・・・

・送り屋とは、ここでは死者を見送るということでは無く、出入国仲介人の意と解される。

・以下本文での、「黒柳の義理の娘・かおる」というのは、黒柳が栄子と結婚する前の先妻の連れ子ということで、かおるは栄子とも黒柳とも血縁が無いことを指す。

・同様に、「森崎の義理の娘・ふみ子」というのも、森崎の妹夫婦が戦災死した際に、遺児・ふみ子を引き取り育てていることを指し、実際には伯父と姪である。

・題名の「九年目」というのは、1957年4月施行の売春防止法が、約1年後に実質施行(罰則有効による取締化)され、9年目の現在(1967年6月本放送)に至ったことを反映したものである。

・被害者の名前が原田栄子と判明するのは、ナレーションのみで具体的な映像は無い。しかし以下本文では、ストーリーの流れを重視して、便宜上、「お茶漬・北ぐに」の聞きこみで判明したものとして表記した。

・劇中で発声される「パン女(スケ)」は差別用語としては不明瞭であるが、「売春婦」と置き換えて、以下本文では表記する。

・劇中で、公衆電話に貼られているビラの内容は、以下の通り。

>1000円でOK!

>今夜も美女が貴方をお待ちしています

>お気軽にお電話下さいませ

>○○○-○○○○(註・電話番号のため、ここでは伏せる)

>女性グループ 青空会

>(BG、学生、未亡人等多数急募)

・上記のビラ、いわゆるピンクチラシについては、「街にピンクチラシがあふれていた頃」(MEN'S CYZO 2019年05月17日記事)に詳しい。ただし、2005年の風俗営業法改正により、現在ではピンクチラシをみることは稀になったということである。

・出演者に山内えみ子とあるが、観賞したところ、東映ピンキーバイオレンス女優の山内えみ子とは別人で、本放送が本家のデビュー前の1967年ということからもこれを後押ししている。

 

 

(視聴録)・・・開始約分半まで

(ネタバレしない範囲での一般的感想)

主な関連人物をまとめますと以下のとおりです。

(演者は・・・の次に、判明出来る俳優名を表記)。

 

〇青空会主催・原田栄子・・・・・・・・・・・・・白石奈緒美

〇栄子の雇人・きよし・・・・・・・・・・・・・・石川十郎

○栄子の前夫・黒柳勘三・・・・・・・・・・・・・池田忠夫

○黒柳の義理の娘・かおる   ・・・・・・・・・・・田上洋子

○丸井新宿家具センター社員・南里次郎・・・・・・住吉正博

○同・次郎の同僚

○緑風荘・管理人・・・・・・・・・・・・・・・・大川義幸

〇暴力団員・中野健次・・・・・・・・・・・・・・安藤三男

○送り屋

○賭博場で逮捕されたチンピラ

〇バー夏江・バーテン・・・・・・・・・・・・・・雪比呂志

〇同・ホステス(3人)

○同・流し(2人) ・・・・・・・・・・・・・・・山川顕、他

○お茶漬北ぐに・女将・・・・・・・・・・・・・・稲葉まつ子?

○同・仲居

○同・板前・定(サダ)さん ・・・・・・・・・・・辻しげる

○同・常連客・・・・・・・・・・・・・・・・・・東家菊燕

〇森崎靴店・森崎・・・・・・・・・・・・・・・・武藤英司

〇森崎の義理の娘・ふみ子・・・・・・・・・・・・池田昌子

〇劇団よろこび・座長・中村橋造・・・・・・・・・岩城力也

〇同・女座員(2人)

〇中村の住むアパートの大家

〇レストラン若月・社員

〇同・ウエイトレス・北島美代・・・・・・・・・・柳田清美

〇琉球料理酒礼門・マスター

〇同・踊子(2人) ・・・・・・・・・・・・・・・上馬實・金城道子・山内えみ子

〇廃品回収業・星川六郎・・・・・・・・・・・・・石垣守一

○新宿駅西口のサラリーマン

 

 

大雨が降った翌朝のこと、

「坂上(サカノウエ)観音堂の境内において、変死体発見との通報を受けた特捜隊・藤島班は、直ちに現場へ急行した」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

笠原は和服姿女性の死体の側に千枚通しを発見、これが凶器で心臓を一突きしたものと藤島主任に報告。鑑察医は、昨夜の降雨のため死亡推定時刻は解剖結果待ちながらも、硬直状態から昨夜12時前後ではないかと所見を述べる。

そして、南川は発見者・星川六郎を連れ、星川は現場から離れた箇所でハンドバッグを発見したと語る、中の財布は手つかずであったが、笠原は煙草を吸う星川が似つかわしくないライターを持っていることに気づく。星川は廃品回収業ゆえ手に入りやすいと語るが、笠原が手に取り見てみると、イニシャル「J.N」と書かれていた。

また、内藤は野次馬の、流し歌手らしき男2人がどうやら被害者を知っているようなので聞きこむと、被害者はよく暴力団員・中野健次と飲んでいたという情報を得る。

さらに、森田が発見した番傘を、藤島主任・南川が調べてみると「お茶漬・北ぐに」と書かれてあることから、南川・森田は「北ぐに」に向かう。死体写真を見た女将によると、被害者は原田栄子、常連客ではあるが昨夜は来ていないことを証言した。

 

「南川・森田の両刑事は、昨夜、被害者が賭博場にいた事実から、その足どりを追った結果、その仲間が新宿東警察署に留置されているのを探しあてた」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

そのチンピラによると、栄子は売春婦上がりで、青空会というグループを主催、コールガール斡旋をやっていたことが判明。さらには、栄子に批判的なコールガールには、女だてらに暴力で押さえつけていた場面を目撃したことも語る。

 

「一方、そのころ、藤島主任と内藤刑事は、原田栄子のアパートに急行していた」

(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

流し2人に案内されアパート・緑風荘に着いた藤島主任・内藤は、管理人に部屋を案内され聞きこむ。部屋には豊富な家具が目立つが、栄子は月賦で様々買っていたらしく、昨夜は降雨だったこともあり人の出入には気づかなかったという。そして室内を捜索すると、内藤は筆圧の残るメモを発見、鉛筆でなぞると「北島美代」という名前と電話番号が見い出せた。また藤島主任も、「琉球料理・酒礼門」のマッチ箱、そこに「ふみ子に用心」とメッセージが書かれているのを見い出す。これらから、藤島主任は南川に「琉球料理・酒礼門」をあたらせることにする。

「連絡を受けた南川・森田の両刑事は、"琉球料理・酒礼門(シュレイモン)"を訪れた・・・」(ナレーションから、訂正無しで抜粋)

 

 

当作の本放送は1967年6月28日。(備考)に挙げた記事では、ピンクチラシについて

>いつ頃から登場したのか、筆者は現在も調査中である。ただ、ホテトルが登場した

>昭和50年(1975)以降であることは、ほぼ確実ではないかと思われる。

ということですが、写真表示の有無を問わずなら、当作が「協力・警視庁」となっていることから、1975年を8年ほど遡る1967年、あるいは#123 夜の女【スペシャルセレクション】 が本放送された1964年の東京オリンピック前から存在していたと思われます。

それを考えると、古き良き時代の昭和は、風俗においても善悪の是非は置いといてオープンな感があり、特捜隊が本放送されていたころから存在していたのも頷けるようであります。そういえば、#629 美しく生きたい に至っては、本物の風俗店を使って撮影したことがありました。

そんなオープンな時代、売春防止法の実質施行の9年目に、風俗を題材に描いた作品が当作であります。正直、令和のご時世では、製作困難であるのは間違いはないのですが、戦後、公娼→私娼→コールガールの転身を見てきた敗戦国としての日本国民が、1958年の売春防止法実質施行を経て、どのよう気持ちで当作を観賞したか。。。沖縄がまだアメリカ軍に統治されていた時代背景も含め、非常に興味ある設定でした。

 

この人間ドラマとしての膨らみを持たせたのは、栄子を演じた白石奈緒美にあるといってもいいでしょう。この女優さん、善悪どちらを演じても絵になる人で、特に身内への憎悪を持つ女性を演じるのがとても上手い。当作では、「人間ではない」と呼ばれるほどの所業を義理の娘に対して行ないますが、#502 親なき子 では実の息子に対しても行なっており、三船主任(青木義朗)からも突き放される役柄を演じていました。かと思えば、鹿児島県桜島噴火前三部作(#452 母恋し1,500キロ 、#454 霧の中の聖女 、#456 ハイビスカスの女 )での、か弱い一女性の姿など、硬軟演じ分けられるところが、やはり女優といわれる所以なのでしょう。

さらに、当作は「義理の娘」が2人登場(かおる、ふみ子)しています。この2人を直接対比させる手法は採っていませんが、間に栄子を介することで、かおるには次郎、ふみ子には森崎という理解者を浮かび上がらせ、ストーリーの盛り上がりに一役買うことになります。

ちなみに、ふみ子を演じたのは、現在声優の大御所ともいわれる池田昌子で、この頃はまだ女優業に軸足を置いていたようです。当作と同じような構成には、#487 花咲かぬ春 がありますが、そこでも池田昌子と武藤英司が共演しているのは面白い符号です。池田昌子というと、若い人には「銀河鉄道999」のメーテルあるいはテレ東「ありえへん∞世界」のナレーションでしょうが、自分にとっては、いつまでもオードリー・ヘップバーンであります。

 

とまあ、人間ドラマとしては上記のように面白いと評価できるのですが、それでも粗はあるものです。というのが、犯行動機にまつわる描写なのですが、予告篇にそれを示唆する映像が残されていました。ところが、本篇ではその予告篇映像はまったく採用されず、「ある人物」の数秒の台詞、すなわち文章的表現にとどまるだけです。そこには人間的な深淵が認められず、贔屓目に観賞していても「可哀そう」としか感じられない、浅いものに仕上がっているのです。これは、作品にとってもマイナスで、なぜ予告篇映像を用いなかったのか、時間不足なら、削っても良い場面はありました(たとえば、序盤の藤島班の知らないバー夏江の場面など)。ですので、せっかく盛り上がった人間ドラマの抑揚が、最後でガクッときた感は否めません。

あと、刑事ドラマにしても、脚本・構成が甘かったのか、流れが途切れる箇所が目立つことがあります。たとえば、

・上記本文では修正しましたが、栄子の名が突拍子もなくわかること

・藤島主任が「ある人物」の名を気にしていても、終盤まで話題に出てこないこと

・結果的ではありますが、手つかずの栄子のハンドバッグや財布に納得しずらいこと

があり、さらには場面と場面がつながらず、どうやら編集でカットした形跡がみえることも同様です。これは、エンディングでの「配役名=俳優名」の表記に、「あれ、こんな配役の人、出ていたかな?」と思うところが多々あったこととも関連します。

 

まとめますと、せっかく秀作の領域ゴールが見えながらも、途中失速。俳優さんたちの健闘虚しく、佳作に至るかどうか微妙なところでゴールインといったところかもしれません。。。

脚本の三浦大介は、検索すると1975年生まれの同姓同名の舞台監督さんが出てきますが、もちろん別人です。特捜隊脚本の三浦大介は、どうも、ちぎっては投げ、ちぎっては投げの構成の印象が強く、興味ある題材を取りあげながら「惜しい」の内容と見えました。

奥中惇夫監督も時間的制約があったのか、脚本を上手く練り上げてくれれば、秀作クラスまで行ったのではとの印象。。。しかし、当作より間もない、#306 土と金と女【スペシャルセレクション】 では、教訓的ながらも現代的視点で、上手くまとめあげることに成功しています。