※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

 

【#487  花咲かぬ春】

 

(本放送)1971年3月3日

(再放送)2015年8月6日

(脚本)村田武雄

(監督)中村経美

(協力)警視庁

(協賛)無し

(捜査担当)藤島班

西本捜一係長(鈴木志郎)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(上田侑嗣)、

鑑識課員(新田五郎)、山崎刑事(高島新太郎)、山口刑事(山口暁)、

荒牧刑事(岩上瑛)、内藤刑事(巽秀太郎)、関根部長刑事(伊沢一郎)、

藤島主任(中山昭二)

 

(出演者)

加藤春哉、池田昌子、柏木緑、伊藤敏孝。宮映子、小沢澄江、春江ふかみ、

岸井あや子、沢井三郎、山岡徹也、幾野道子、武藤英司

 

 

(あらすじ・予告篇から)

 ※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

新築の建売住宅の床下から、男の変死体が発見された。

倉庫街の一隅(イチグウ)に隠されていた被害者のオートバイ、

事件の凶器である血のついたナイフを持ち歩く気の狂った女・・・。

明日の幸せを夢見ながら、細々と生活する人々。

林立する工場の谷間に、

今日もまた、その公害と闘い悩み苦しみながらも、

転居することもかなわぬ人々の焦燥が、

殺人という惨事を生んだ。

次回の特別機動捜査隊、「花咲かぬ春」に御期待ください。

 

 

(備考)

・現在大物声優の池田昌子が、長女・和子役でゲスト出演。

 

 

(視聴録)

廃品回収を営む中西甚六(沢井三郎)は、気のふれた状態が続く孫・ハナ(柏木緑)が血のついたナイフを持ち歩いていることに不安を覚え、通報する。捜査に当たった藤島班はナイフを回収、流血現場も特定する。同じころ新築工事中の建物床下から、近所の一軒家に住んでいる相良増吉(山岡徹也)の息子・隆(平井忠)の刺殺死体が発見される。

相良の住まいは借地・借家で、地主・家主はアパート住まいの田代郁次(武藤英司)。郁次には妻(幾野道子)、長女・和子(池田昌子)、次女・英子(小沢澄江)、長男・繁(伊藤敏孝)がおり、繁は公害の影響で入院中。その繁を実妹・加代(岸井あや子)と見舞った郁次は、その帰り、就職を斡旋した毛利信彦(加藤春哉)と妊娠中の妻・早苗(宮映子)に会い言葉を交わす。

藤島班は、隆の交友関係、流血現場からの遺留品から、犯人を絞りこんでいく。

 

相良家と田代家との関係で「供託所」という用語が出てきましたが、法務局がこれを認めたということは、田代家に賃料受領拒否の事実が前提となります。田代家は受取るか、裁判に訴えるかの道を選ぶことになります。受け取ったら(多少の例外はあるものの)従前の賃貸借を認めたことになるので、認めたくないなら訴訟となります。訴訟前夜の出来事と解することもできますが、相良家が「供託」に踏み切った理由を考えると「強い借主、弱い貸主」を強調する場面ともいえそうです。これは、田代家・妻からの発言とも符合します。

しかし、毛利家の事情からすると、あのアパート管理人の態度から「強い貸主、弱い借主」が浮き彫りとなり、極めて好対照な描き方をしています。

 

また、戦争の焼け跡も、(この当時)戦後26年ではありますが、中西家の実情を照らし合わせ、間接的には相良家、田代家の実情にも影を落としています。また、戦後26年の成長の裏側には公害という問題がこのころから指摘され、これも田代家の実情とリンクされています。

これらのことから、かなり社会的事象に突っ込んだ作品とみることができます。

 

とはいうものの、刑事ドラマとしてみるなら、あまりいい出来とは思えません。証言、証拠が思いついたように突発的に出てきて、さじ加減でどうとでも解釈できる場面が多すぎるのです。人間関係にしても伏線無く、あの人とこの人がどういう関係だとか、証拠品の辻褄が合わなかったり、ラストシーンにしてもいくら警察(藤島班)でもあそこまで無粋な真似をするかとか、指摘するところは多々あります。

 

特に、ラストについては、どこかのマンガではないですが

関係者全員を、死体がそのまま置かれている殺人現場に集めた警部さんが、

「・・・犯人は・・・お前だろっ!!」

と死体を指さしたら、死体が

「・・・ふふふ、バレちゃしょうがねえな」

と言いながら立ち上がり、間髪入れず部下の刑事さんが

「け、警部・・・!・・・壁の中から死体がっ!」

と叫びだす場面を思い出しました(笑)

これを思い出すような、「ええっ」と驚くというか、口あんぐりのシーンでした。

 

さて、ハナ役の柏木緑にはインパクトがありましたが、そのお爺さん・中西甚六を演じた沢井三郎も、新東宝の映画を見ると脇役だけでなく準主役でも出てきます。「人形佐七捕物帖 妖艶六死美人」「女奴隷船」、出演場面は少ないものの「怪談海女幽霊」ではインパクトがありました。調べたら、戦前から舞台をはじめとして各社の映画に出演されていたようでしたが、惜しくも1987年に83歳で亡くなられたようです。

息子さんは、後に特捜隊にゲスト出演(#521  ある沖縄の女)、笑点の座布団運び・松崎真で、こちらも2015年に83歳で亡くなられました。

 

(2017年11月25日、全面追加)