※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#629  美しく生きたい】

 

(本放送)1973年11月21日

(再放送)2016年12月1日

(脚本)横山保朗

(監督)天野利彦

(協力)無し

(協賛)無し

(捜査担当)三船班

田中係長(山田禅二)、鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(西郷昭二)、

鑑識課員(田川恒夫)、関根部長刑事(伊沢一郎)、水木刑事(水木襄)、

石原刑事(吉田豊明)、畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

木下清、橋本たか子、杉浦真三雄、松本紘一、延山陽子、田端孝、曽根秀介、

森今日子、恩田恵美子、加藤三和、小高まさる、奥野匡、神田正夫、

美弥たか子、外野村晋、村田知栄子

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

トルコ風呂に2人組の強盗が押し入り、

マダムを人質に立てこもった。

急行した三船主任らに逮捕された2人組のうち、

1人の男は婦女暴行で少年院に送られ、

出所したばかりの少年であった。

そして、同じころ、少年の母親が隣のビルで殺されていた。

尋問を始めた三船主任は、

この少年が2つの事件に関連しているとみて追及するが、

少年は頑(カタク)なに口を閉ざし、何も話そうとしなかった・・・。

次回、特別機動捜査隊、「美しく生きたい」に御期待ください。

 

 

(備考)

・「掲示板特捜隊 6」にて、当作は「(第345回)濁った大都会の天使」(当方未見)のリメイクであるとの指摘有り((第345回)濁った大都会の天使は【第2回再放送】で欠番を免れ、2010年7月ごろに再放送された模様)。

→(追加)R5.10.19

スペシャルセレクションシリーズ】の Vol.7に収録していたことで、約5年前に本放送された原型作#345  濁った大都会の天使【スペシャルセレクション】で観賞。当作は、明らかにリメ作と認識出来た。

なお、常連女優の美弥たか子は、2作ともに出演している。

・舞台となる「トルコ・ニュー山手」は、現在の「ソープランド・池袋角海老」で、Googleのストリートビューからは塗装・配管追加・窓目隠しその他改装されている。しかし、建物全体は撮影時のままで、近隣風景の中では、小さな道路分離帯とともに当時の面影を残している。

・特捜隊車両を自ら運転する三船主任は、#451以降ではたぶん初めてと思われる。

・バーはるホステス、洋服店の店主は、エンディング表記の真佐子=延山陽子、節子=加藤三和のどちらかと思われるが判別不能。なお、#345では(とある方のブログから)バーはるホステスを真佐子としている模様だが、前述の通り#345は当方未見。

→(追加)R5.10.19

リメ作を観賞したことで、バーはるホステス=延山陽子、洋服店の店主=加藤三和、と確定できた。

・ラスト近くの舞台は大田区羽田としているが、街並みの電柱から練馬区豊玉北での撮影とみられてしまうのは御愛嬌。

 

 

(視聴録)

 

窃盗が始末書で済んだ京子(橋本たか子)、胸をなでおろす姉・康子(美弥たか子)の姿が、所轄署で見受けられた。しかし、康子がトルコ・ニュー山手の社長(未詳)の妾であり、トルコのマダムをしているからか、京子は康子に反抗的な態度をとる。所轄署の小杉刑事(田端孝)のとりなしもあり、なんとか送り出すところに、保護司・イタクラ(曽根秀介)が少年院を出所したばかりの、たけなか弘志(木下清)を連れ挨拶に来た。そのとたん、京子は弘志に唾を吐く。京子には弘志に2年前乱暴された過去があったからである。

 

弘志は、ニュー山手に隣接するフードセンター内にある小料理屋兼自宅「ちくま」に、母・咲子(村田知栄子)を訪ねるが、咲子は半狂乱状態だった。同棲していた、板前・田代けん(杉浦真三雄)が新しい女(未詳)の元に行くという。田代は弘志を一瞥して出て行くが、咲子は包丁を振り回し追いかける。さらに、止めようとする弘志の右手に怪我を負わせてしまう。

 

その翌日の午前4時30分、トルコ・ニュー山手で事件が起こる。京子、康子が口論しているところに、ストッキングを被った2人組強盗が侵入、ライフルを突きつけ金を要求する。康子は金庫室に行くと見せかけ京子と逃走、康子は右肩を撃たれるが、京子は宿直員・清水(神田正夫)と脱出に成功、事件が明るみに出る。

 

駆けつけた所轄署、三船班に、犯人は康子を人質に籠城、「10分以内に包囲を解いて、車を用意しろ」と要求。三船主任は、ダストシュート内の金梯子が3階まで通じていることから、畑野刑事、石原刑事に侵入を指示、残る三船班、所轄署は正面から犯人を引きつけることにした。が、侵入に成功するも、部屋には怪我を負っている康子がいるだけで、犯人の姿は無い。

と、そのとき隣接するフードセンター内から銃声が響く。三船班が駆けつけると、「ちくま」の前で弘志と男とがライフルを奪い合いながら争っており、2人組の犯人とみて緊急逮捕した。

 

その後、ライフルを持っていた男は花房としお(松本紘一)と判明するが、「ちくま」内で新たな発見があった。咲子が背後から扼殺され、死後約1時間が経過していた(註・三船班が駆けつけたのが午前6時30分過ぎとみられるため、午前5時30分前後が死亡推定時刻か?)。さらに、2人組は店と隣接している「ちくま」の窓から侵入したとみられることから、三船主任は、もう1人は花房を囮にして咲子を殺害したのではと考え、水木刑事が主張する弘志犯人説には疑問を持つ。しかし、当の弘志は取調室では黙秘を貫いていた・・・。

→(追加)R5.10.19

上記下線部について、原型作#345  濁った大都会の天使【スペシャルセレクション】で観賞にあわせリメ作を再見したところ、再考察が必要な箇所が出てきました。詳細は、原型作の拙稿にて・・・。

 

当作は、その後、花房の自供、弘志、イタクラの証言により、弘志のアリバイが立証され、もう1人の犯人の行方を、特捜隊、弘志が追うという展開になります。なお、#345(以下前作と称します)では、京子と弘志とは少年院で知り合ったこと、ラスト近くの舞台が川崎であること、そして立石班のストーリーであることが異なっています(とある人のブログ・あらすじから)。

推測になりますが、前作よりも青春群像を描いたのが当作ではないかと感じます。弘志に運命を変えられた京子が、逆に、弘志の行動に影響を与える流れになっています。2人がお互い惹かれ合う関係に変わっていくのも、その表れかもしれません。

 

しかし、後味の悪いラストはいただけません。前作の配役であれば多分に納得はできますが、当作の配役であれば、弘志の恨み節に似た絶叫はなんとかならなかったかと感じました。演じたのが木下清だからこの程度で済んではいますが、これでは、三船班、三船主任が悪者に等しい扱いになります。罪には違いないですが救済する展開にできなかったものか? これは、初見、再見、いずれのときも感じたもので、脚本がそうであっても、天野利彦監督ならなんとかできたような気もするのですが・・・。

 

また、本来なら、ニュー山手とちくまとの隣接窓に、何らかのトリックがあったのではという気もします。関根部長刑事が指摘した侵入経路、逃走経路の話が、何となく浮いているようなところがあり、前作では犯人追及の決め手の部分を、当作では青春群像を描きたいがゆえに縮小したとも考えられなくもありません。前作未見のため推測になってしまうので、やはり【第2回再放送】を再度放映してしていただきたい気持ちですね。

そして、上記本文では、「三船主任は、もう1人は花房を囮にして咲子を殺害したのではと考え」と書きましたが、実際には?がつくような発言を三船主任はしているのです。詳しくは、再々放送でご覧いただければと思います。

→(追加)R5.10.19

上記下線部について、原型作#345  濁った大都会の天使【スペシャルセレクション】で観賞にあわせリメ作を再見したところ、再考察が必要な箇所が出てきました。詳細は、原型作の拙稿にて・・・。

 

前作との比較を別にすれば、当作は流れ、勢いという点では特捜隊の本領発揮の作品ですが、後味の悪さ、そして京子の気持ちが描き切れていない点で大きくダウンするのは否めません。特に、いくらフィクションとはいえ、京子の気持ちがそう簡単に切り替わるか、病室での康子に対する態度はどうにも意味不明など、マイナス面が目立ちます。

その反面、再出発のエンジンがかかりそうでかからない弘志の描き方は、特捜隊近作で出演の多い木下清の「#627 十七才心中」「#613 転落の愛」「#607 砂の塔」での役柄と相まって、なかなか興味深いものがありました。木下清だからこそ、ラストの後味の悪さがあの程度で収まったものともいえそうです。