※ 特別機動捜査隊 まえがき

捜査担当班の詳細については、wiki特捜隊-キャストを参照、また、(本放送)とはNETでの放送、(再放送)とは東映chでの放送を指します。出演者については配役名を略していますが、本文で書くこともあります。なお、出演者をもっと知りたいときは、リスト特捜隊で検索。

また(出演者)は、エンディングで、一列~三列で表示された男優・女優に限定しました。

1963年公開の、映画版・特別機動捜査隊全2作とは趣が異なることに注意。

 

【#607  砂の塔】

 

(本放送)1973年6月20日

(再放送)2016年9月15日

(脚本)横山保朗

(監督)吉川一義

(協力)無し

(協賛)御宿 ハック田園

(捜査担当)三船班+高倉主任

鑑察医(仲原新二)、鑑識課員(田川恒夫)、関根部長刑事(伊沢一郎)、

倉岡刑事(倉岡伸太朗)、石原刑事(吉田豊明)、松木部長刑事(早川雄三)、

畑野刑事(宗方勝巳)、三船主任(青木義朗)

 

(出演者)

木下清、中川三穂子、鍋たかし、本田圭子、成田次穂、山口千枝、亀井三郎、

久松夕子、大阪憲、萩原信二、宮田洋容、ふじ由起江、花岡菊子、小林裕子、

目黒幸子、吉田義夫、里見浩太朗

 

 

(あらすじ・予告篇から) 

※当時のナレーションをそのまま聞き写しています

 

1年前の雨の夜、

定年間近の老刑事が犯人逮捕の際、刺されて死んだ。

残された遺族を、三船刑事に託して・・・。

皮肉にも、殺人者の娘と被害者の息子が、愛し合うとは・・・。

そしてまた、娘の母の変死体が発見された。

殺人者の汚名と暗い宿命から逃れようと、

若い2人は千葉県・御宿(オンジュク)へ向かった。

愛とは・・・?

死とは・・・?

生きることの尊さ、厳しさを、

三船主任は心を鬼にして教えるのであった・・・!

次回、「砂の塔」に御期待ください。

 

 

(備考)

・高倉主任(里見浩太朗)の表記が、オープニングでなくエンディングにされる。

・特捜隊常連女優、山口千枝の貴重なヌードシーンが「#603 同棲の軌跡」に引き続き有り。

(追加)R4.1.22

→エンディング表記で、後年、矢崎班・岩本刑事を演じる萩原信二が「中村=萩原信二」とあるが、劇中にはそれらしき場面が見当たらない。

 

 

(視聴録)

 

三船主任の先輩に当たる久保田刑事(吉田義夫)が、捜査中に殉職した。小坂ゆうきち(亀井三郎)逮捕の際刺されたもので、妻(目黒幸子)、娘・雅子(本田圭子)、息子・克哉(木下清)を三船主任に託して逝った。その後、雅子は榎本(成田次穂)と婚約して順風だが、克哉はあろうことか小坂の娘・慶子(中川三穂子)と男女の関係に。さらに、慶子は義母・郁子(イクコ、小林裕子)の店・ちどりの売春婦で、克哉は家の金を持ちだし、ちどりに入り浸りであった。

 

立ち直らせようと努める三船主任であったが、今日もまた、克哉が家から抜け出したという連絡を受けちどりに向かう。が、店外で新聞配達(未詳)が死体発見したと驚いているところ、店内に入ると郁子が頭から血を流して死んでいた。新聞配達から男が逃げて行ったという証言、階段に落ちていた久保田刑事の写真入りのペンダントから、三船主任は克哉が関与しているのではないかと考える。

 

克哉は慶子と逃げている中、実家がクリーニング店で、そこで働く友人・倉持武志(鍋たかし)を頼るが、いつの間にか、当の慶子が行方不明になっていた。克哉は慶子を捜索中に、松木部長刑事、畑野刑事に見つかるが、武志の機転で逃げることに成功する。残された武志は、駆けつけた三船主任に叱責されるも、かつての同級生である慶子、克哉を追いつめたのは三船主任だと反駁する。

 

その後、慶子は御宿に向かったことが判明。慶子は、警官(宮田洋容)から職務質問を受けるも、ハック田園に女中として働きに向かう途中だと説明。ハック田園に行くと、女将(花岡菊子)のとりなしや、警官も知己の芸者(ふじ由起江、山口千枝)の手前、深く追及するのをとりやめたが、それを秘かに見聞きしている休暇中の高倉主任の姿があった・・・。

 

 

当作は、本篇中盤までは「つまらない」作品として見ていたのですが、実はその「つまらない」部分があるからこそ、三船主任の大きさ、ラストの盛り上がりがあったのだと感じました。

これは人間ドラマ部分の特捜隊であり、刑事ドラマとしてはどうかというと、これもまた趣向が凝らされているのです。単純な郁子の死体状況ですが、克哉・慶子が逃走するとき、三船主任が立ち入ったとき、この2つを見比べると、何気に事件の真相が隠されています。

そして、「殺人犯の娘」と言われることへの写し鏡的事情が、事件の動機になっている点も見逃せないところです。さりげない伏線、実はこれが特捜隊ならずとも刑事ドラマのスパイスになっているのですが、特捜隊近作のイマイチ感が強かったため、初見のときは気づきませんでした。再見時の冷静な観賞で、初めて気づいたところであり、それだけ当作は(近作の中では)見どころがあったと思われます。

 

さて、「つまらない」部分とは何か? それは、ひとえに武志の態度に他なりません。慶子を殺人者の娘としか扱わなかったとして、三船主任を糾弾するのですが、正直アタマ大丈夫?と感じました。久保田刑事の通夜の席に、慶子が来て焼香をお願いする場面ですが、いくらなんでもそんなお願いするのが無茶であり、それに対して憤る武志もオカシイ。せめて、人目につかないところで焼香をお願いするのでは?

第一、焼香を断ったのは久保田の妻、娘・雅子であり、三船主任は黙ったままでした。焼香させるよう言い出さない三船主任が悪いとばかりに、食ってかかっているのです。十中八九、拒絶されることを受け入れろと言うに等しく、「自分たちはマイノリティだ」と強弁して、思想も無いのに思いついたことを認めさせようとする児戯そのものに見えました。

 

しかし、この部分があったから、対照的に三船主任の大きさが強調される効果を生み出しています。特に、ラスト、海岸(松木部長刑事の話通りならいすみ市の岩船海岸ですが、現在は立入禁止になっているようです)での場面は圧巻。これは、再々放送で是非とも見ていただきたいところなので、内容には触れません。ただ、個人的に武志の豆鉄砲を喰らったような表情というか、間が抜けたような表情は印象的でした。

そして、みんなが歩いている最後方を、三船主任がポツンとひとりきり、トップに立つものの孤独感の意味合いもあるのでしょうか? ここでは完全に、青木義朗>里見浩太朗であり、時代劇で斬られている青木義朗の姿は微塵もありません。

 

さて、かなり以前に触れた、高倉主任と畑野刑事の微妙な空気ですが、当作ではこの2人の絡みがまったくありません。ストーリー的に接点を持たないようにしたのか、リアル世界での里見浩太朗と宗方勝巳の問題なのかはわかりませんが、非常に興味深いところです。まあ、後年、長七郎江戸日記や水戸黄門で共演しているので、後者ではないとは思うのですが。

 

(2018年1月13日 全面追加)