ジュラシック・ワールド/復活の大地

JURASSIC WORLD:REBIRTH

 

〔勝手に評価 = ★★★ = もうジュラパじゃなくてもいいんじゃない?〕

 

2025年/アメリカ映画/134分/監督:ギャレス・エドワーズ/製作:フランク・マーシャル、パトリック・ローリー/製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、デニス・L・スチュワート、ジム・スペンサー/キャラクター創造:マイケル・クライトン/脚本:デヴィッド・コープ/撮影:ジョン・マシソン/出演:スカーレット・ヨハンソン、マハーシャ・アリ、ジョナサン・ベイリー、ルパート・フレンド、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、ルナ・ブレイズ、デヴィッド・ヤーコノ、オドリーナ・ミランダ、フリッピーヌ・ヴェルジュ、ベルシ・シルヴァン、エド・スクライン ほか

 

【気ままに感想】

 

振り返ってみると、間違いなく、現在のCG技術、映像技術の進展の原点、起点の1つとなったと言える『ジュラシック・パーク』シリーズの新たな展開となる本作!!

このシリーズがなければ…というか、天才スピルバーグが「恐竜で映画を創りたい!」と思わなければ…あの記念すべき第1作目の『ジュラシック・パーク(1993)』がなければ…今この世に溢れる「AI YouTuber」も居なかった…かもしれない!!(それは言い過ぎか??)

そんな“偉大な”シリーズの3部作の第3弾の始まり!!

…ん!!

それって、まるで訳アリ家族・親族が宇宙の大混乱を巻き起こす、迷惑なお話、“星々戦争”の構造と一緒じゃ…。まさか、あのシリーズと同様に、3部作の3番目になった途端に“残念!”な結果になってしまうのでは…。

う~ん!

何となくそんな予感が的中してしまいそうな、新シリーズの幕開けとなった本作!

やっぱり(笑)、ちょっと困った内容というかクオリティというか、そんな感じになっています。

忘れないうちにきっぱり言っておきたいですが、

「人気シリーズに安心しきって、油断したり手抜きしたり、ご都合で話を結びつけたり、主人公が『実は“例のおっちゃん”の娘でした~』みたいな拍子抜けの取ってつけたようなオチにしたり、そんなことは絶対!するなよ!!力入れて行けよ~!!」

もうそれだけで十分です。

でも、そうはならないのだろうな~。

そんな不安を掻き立てる作品です。

恐竜が出て来なくったって、もうそれだけでドキドキです。

 

前3部作の主人公スター・ロードことクリス・プラットから、本作ではブラック・ウィドウ姉御、スカーレット・ヨハンソンにバトンタッチ。

スカーレット・ヨハンソンは、ブラック・ウィドウと化して以降、どんどんタフマッチョになって行って、本作ではすっかり頼もしい、元特殊工作員経験者としてのストレートな戦闘スキルの持ち主です。

人体改造してない草薙少佐。キャラは全く被っています。

もう、恐竜とはこれっぽっちも関係ありません。

主人公の専門分野がどんどん恐竜から離れていっている(笑)。

いやいや、もう本作においては出て来る“生物”が“恐竜”であるのかすら分からなくなってしまっています。というのは、本作では、人工的に遺伝子配列を組み立てていって“新種”の…というより“新型”の恐竜を作り上げている…というお話です。

ごくまれに自然に保存されて残っていた恐竜のDNAの欠けた部分を他の生物(爬虫類や両生類)のDNAで補って卵から育てていたシリーズの原点『ジュラシック・パーク(1993)』からは、文字通り飛躍的に科学が進歩して、自由に(適当に)ゲノムを創作して新種の“生物”を作っていっちゃう。

このコンセプトは、前シリーズ最終話『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者(2022)』でも全面的に取り入れられていましたが、本作はさらに進んで行ってしまって、恐竜は単なる実験動物になってしまっています。

DNAではない、“恐竜”そのものには全く興味も関心もない(見世物としての価値すら見出さない)人々しか(除くジョナサン・ベイリー)出てこないこの新しい『ジュラシック』シリーズ…いったいどこに向かっているのか??

 

増えすぎた恐竜たちも、環境変化にはついていけなかった…。何せ、あっという間に熱中症やら線状降水帯やらが出現する地球ですからね~。

それに加えて、ブームの移り変わりも激しくて、みんなすっかり恐竜には興味を失っている。一旦、増えすぎて社会に迷惑をかけるようになってくると、現代日本の「クマちゃん達」くらいに、迷惑生物になってしまう。人気の移り変わりは残酷です。

で、ありがたみが薄れてしまった(商売ネタにならなくなった)恐竜たちは人気一転、世間の嫌われ者になって、再び絶滅の危機に晒されています。

そんな恐竜たちにビジネスチャンスを見出したのは、グローバルな製薬会社。

手広いのかニッチなのかわかりませんが、恐竜を新薬開発に利用しよう…あんまりよいアイデアに聞こえないのですが、まあ、そんなことを大企業が考えた!

計画の内容は、陸・海・空のそれぞれ最もサイズのデカい恐竜のDNAをかけ合わせれば、寿命延長の妙薬が開発できる!…ほんとかいな???ちゃんと脚本の科学的なチェックがあったのでしょうか???にわかには信じがたいプロジェクトが着手されます。

冷静に考えれば、それで画期的な新薬が開発できるのであれば、何も“恐竜”にこだわらず、ゾウさんとシロナガスクジラさんとダチョウさんのDNAを使えばそれなりの新薬もできそう…。

まあ、そんな野暮なことは考えず、とにかく恐竜さんたちのDNAを採取することとなります。

ちなみに、おっきな恐竜さんは長命で、DNAの良いとこどりをすれば不老長寿の薬ができる…ちょっと頭が痛くなるようなお話です。前作ではすでにクローン人間だってできそうな技術力があるのに、そんな中坊の考えたような技術がうまくいくのか…。

ということで、計画主導者のグローバル製薬企業のエリートサラリーマン、ルパート・フレンドは、3大恐竜のDNA(血液)を採取するため、恐竜さんの島に行くことにします。

参加メンバーは、戦闘能力に長けたスカーレット・ヨハンソン、その傭兵時代の仲間で密航船の頼れる船長マハーシャラ・アリ、専門家が全くいないのはどうかな~…ということで連れ出されたかのアラン・グランド博士!の弟子、ジョナサン・ベイリー(今までどこに居たの?)。

いずれにせよ、恐竜が放置されて生き残っている“島”に行くことにしますが、実はその島は世界中から立入禁止になっていて、人類の迷惑にしかなっていない“恐竜”との接触は誰もが禁止されています。

つまり、本作のメインキャラはみんな「犯罪者」というか「違法行為」を犯してます。スカーレット・ヨハンソンですら。

実は、本作の主役はもう1組あって、それは、クルーザーで世界一周に挑んでいる一家。

何のバックアップもなしに、娘2人とお父さん、そして上の娘の彼氏の4人だけで大海原を行く…やっぱり無謀な人々です。

もちろん、こちらは違法行為という訳ではないと思いますが、それでも、恐竜さんたちのエリアに迷い込んでしまうのは“お約束”

一家のクルーザーはでっかい海の恐竜「モササウルス」に襲われてあえなく沈没。

そして、マハーシャラ・アリらの船に救出されます。

ここから先のお話は…。

う~ん、語るべきこともないような、予定調和なお話です。

もちろん、あの人は「〇んで~」、その他の良い人たちは「生きて~」、この人はどっちかな~って人はやばいけど「生きて~」…みたいに、全く道を外れない。

お話に関しては、もうあまり語るところのない本作…です(爆)

 

それでも、本作は全く観る価値がないのか??…というとそうでもなくて、評価したいところは、やっぱり何と言っても、映画界にCG革新をもたらした、このシリーズ。

「腐っても鯛」とまでは言いませんが、ビジュアルと冒険譚には手に汗握ります。

このビジュアルをボ~っと観ているだけでも、本作を鑑賞する価値はあるかも。もっとも、小さなデバイスで観るよりも、やっぱり映画館で観た方がいいようです。

                       

とはいえ、本作の最大の脅威であるディストータス・レックスのビジュアルは賛否両論…というより、ズバリ!批判だらけでしょう。

何せ、作り方からビジュアルまで、何から何まで“某残酷宇宙生物”シリーズの第4作に出てきた“あの”遺伝子操作生物とそっくり。せっかくここまで培ってきたオリジナリティが、そのパクリ1回で台無し…と言ってよいくらい、批判が氾濫しています。

でも、正直、色々言っている人々の言葉にも聞くべき意味があります。

実際、何でこんな映画…というかキャラを撮ってしまったのでしょうかね~。

名前こそ「レックス」と命名されているのですが、すでに出自も立場も“恐竜”ではない“生物”。

悲哀感があればまだしも、すっかり“おばけ”“怪物”扱い。

生命をもてあそんだ(もっとも、悪いのは主人公たちではないですけどね)人間たちの反省もこれっぽっちも描かれない。

それでいて、ビジュアルやハラハラドキドキ感は半端ない。

ホントウに…!

このシリーズ、どこに行くの????

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

★     失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5

ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング

MISSION:IMPOSSIBLE—THE FINAL RECKONING

 

〔勝手に評価 = ★★★★☆ = お見事!!〕

 

2025年/アメリカ映画/169分/監督:クリストファー・マッカリー/製作:トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー/脚本:クリストファー・マッカリー、エリック・ジェンドレセンス/撮影:ブレイザー・ダガート/出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、イーサン・モラレス、ポム・クレメンティエフ、ヘイリー・ツェーニー、マリエラ・ガリガ、ニク・オファーマン、ハンナ・ワディンガム、シェー・ヴィガム、グレッグ・ターザン・デイヴィス、ロルフ・サクソン、ルーシ・トゥルガリュク、アンジェラ・バセット ほか

 

【気ままに感想】

 

すっかり遅くなりましたが…もう、しっかり楽しみました~!!

といえる作品でした。

本シリーズほど、手に汗握りながらも最後はスッキリして観終わることができる作品って…もう、他にないかもしれません???少なくとも“(小屋で観る)映画”では。

そういうまさに“映画としての楽しみ”をガッツリ、しっかり味わえるという点では、「満点!」といってもよいのではないか??

正直に思います。

ちょっと寂しいけど。

本シリーズでも、途中で重要なキャラがぽっくり死んだり、前作では「つづく…」という形式だったし、本作でも、水中アクションは何だか“もったり”していて、全てにおいて完璧!という訳ではないのですが、それでも「とりあえず面白そうなシーンは何でも入れちゃおう!!」みたいなノリの良さが大事!!

少々お話が荒唐無稽だったり、物語がちゃんとつながってなかったり、おかしな点もあるけれど…

「だから、何??(So What?)」

楽しめるからこそ“エンタメ”

そんな原点を、すっかり振り返らせてくれる作品…そんなにないのではないですか??

 

ふと気づくと、映画の面白さがなくなっているのでは?と感じる。

特に、洋画作品は心躍る大作映画がかなり少なくなっているように思います…感覚的だけど…アニメとかはあるけど(実際統計を見ても2023、2024年の洋画は厳しい…(除くトムクル))。

特にコロナ後は巣ごもり需要という名のNET配信サービスの種類や映画に負けない迫力、ビジュアルのドラマが増え、映像産業の投資規模も(正確ではないけど)小屋にかかる映画からそちらの方にシフトしているのでしょう。

これだけ通信、ICTが進んだ世界で、映画館で映画を観る…というビジネスモデルがもう限界に来ているのかもしれません?

これまでの従来型の映画の楽しみを持続していくためには、映画館で観る、魅せるという特色をいかにしっかり考えて作品を創り、作品のみならずビジネスモデルそのものの差別化を図っていかなければ、もうアニメ作品や子ども向けを意識した作品しか、成り立たないのではないか??と思ったりします…というか、本作を観て実感しました。

 

繰り返しになりますが、本作でも、アクションシーンやストーリーがすべてパーフェクト!…という訳ではありません。

潜水艦の中で解決のカギとなるユニットを探すシーンでは、潜水艦に侵入しようとしてドアを開ける度に水が浸入してウエイトのバランスが崩れ、ゴロゴロと深海に向かってころがっていく…。

発想としては、よくもそこまで考えましたね~と思うし、セットの中で演じるトムクルにしてみれば、文字通り“命がけ”の撮影シーンになっている…少なくとも絶えず不規則に回転するセットの中で泳ぎながら演じる(しかも、いかにも重くて身動きができなさそうな深海用の耐圧スーツを着て)のは至難の業…だったでしょう!!

ですが、ビジュアルとしてはゆっくり回っているドラム式洗濯機を“ボーッと”観ている感じで、思わす睡魔が襲ってくる??

何せ、ゆっくりクルクル回るものを見続けるのは、睡眠術の常とう手段ですからね。

それから、どういう原理か、知見の無い者にはすっかり理解できない人工知能は、これまたよくわからない、すごい容量のUSB??が接続されたらそれにシステムが飲み込まれてしまう(正確には、AIは“穴”があったら覗き見しないと気が済まない?…どこかのおっちゃんと同じですね(笑))…という原理?

よほど賢いAIっていうのは好奇心旺盛なのでしょうね。もしかしたらすごく正しい現象なのかもしれませんが(そうであればゴメンナサイ)、AIがデバイスの中身を覗きに行くのに“0.1秒も”かかったり、そうして外部にシャットアウトされると、世界中のシステムが一斉に復帰(ウィルスだったら“増殖”してしまって意味がないかと思いますが、AIは自分で勝手に増えたりはしないのでしょう??)したり…。

お約束の“はらはら時限爆弾”もしっかり出てきて、正直詰め込み過ぎが、滑稽な感じさえしてしまいます。

でも!

「スリはタイミング!」って言われたとたんに「オオッ」ってなってしまうのは、さすがに手馴れたシリーズ!

今作で一番の見せ場!イマドキ何で?と思ってしまう、複葉機のセスナを使っての逃亡(辺鄙な場所ですから滑走路が必要なセスナを利用するよりヘリの方が合理的)とその追いかけっこ…に続く、飛行機の羽の上での格闘技。

すごく原始的(笑)で、まるで、ハロルド・ロイドかバスター・キートンのようなアクションシーン。

本シリーズ第1作目での新幹線の屋根でのジョン・ボイドとの格闘シーンの飛行機版とも言える、いかにも“インポッシブル”なミッションのアクションシーンですが、第1作よりも遥かに“実写感”のある本作では、思わず手に力が入っちゃう。

延々とレトロな飛行機の上や下で繰り広げられる(実際は“広い”というより“狭い”ですが)格闘は飛行機好きなトムクルでこそのシーンだと言えるでしょう。

今ならスタジオ撮影とCG処理でお手軽に作っちゃうシーンを、生身の人間で実際に飛びながらやってしまうのは、何だか時代遅れのような感じもしてしまいすが、さすがにこの臨場感はCGではでない…ような気がする。

どんなに安全策を講じていたとしても、生身の人間が飛行機に乗って撮影する、というのはムリができない。ちょっと手違いで事故も起こり得るし、計画通りであっても人間が耐えきれるかどうかはその時のコンディションでも変わって来る…何があるかわからない。

一方で、そのムリのギリギリ限界を見せなければ作品としては面白くないわけですし、どんなムリでもへっちゃらなCGキャラに負けないシーンは実現しない。

生身の人間がやることは、決してヴァーチャルなデジタル世界では表現できない、実写映画の面白はそこに尽きる…トムクルはそれを証明しようとしてるかのようです。

ホントウに最近のトムクルには頭が下がります。

もうすでに還暦も過ぎてしまい、同じようなシーンを撮り続けるのは難しいかもしれませんが、可能であれば本作も“シリーズ最終作”とせずに継続してもらいたい。

それが無理であれば、次世代のトムクルの育成に、トムクル自身のみならず、映画界がこぞって取り組んでいただければ、と切に願います。

本シリーズの魅力の1つで忘れてならないのは、登場人物のキャラクタです。

 

これも、本シリーズが本作で8作目と積み重ねることで、キャラクタの個性が丁寧に積み重ねられてきたことと、特に、5作目『ミッション:インポッシブル/ローグネイション(2015年)』からずっとクリストファー・マッカリーがメガホンをとっているという一貫性によるもの。

それまでは、毎回監督も変わり、その度に作風が変化しているので、回を重ねるごとにキャラクタの変化もあったのですが、かえってこれが逆にキャラクタを生きたものにしています。

というのも、主人公のイーサン・ハントも含めて、毎回すこしずつ描き方が変わることで、キャラクタの多面性が加わっているように感じられるし、実際の人間も、年齢や経験を重ねていくと、以前とは違う、変化していくことが当たり前だし、それが人間としての成長でもあって、リアリティを与えています。

実際に、胡散臭い、とっつきの悪いおじさんだったヴィング・レイムス(ルーサー・スティッケル)は頼れる気の良い相棒となり、どこか抜けててオタクなサイモン・ペッグはふわふわとした(『宇宙人ポール(2011)』はじめ、いつもの、見慣れたサイモン・ペッグな)人物として登場するものの、シリーズを経ていくと、コメディ・リリーフとしての立ち位置を続けつつも、なくてはならないイーサン・ハントの片腕となっていって、本作ではカッコいいヒーロー的な役割も果たしている…。

こんな印象的なキャラクタを育ててきたシリーズが本作で“おしまい”では超~もったいない!

ヴィング・レイムスは本作でもって自らの命と引き換えに世界を守ったのだけれど、「実は生き延びていました~!!」

って感じで、シリーズ継続と仲良し3人組の復活を期待したい。

ハリウッドでは“よくある話”だと思いますからね!

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

★     失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5

サブスタンス

THE SUBSTANCE   R15+

 

〔勝手に評価 = ★★★ = 閲覧注意!!〕

 

2024年/アメリカ映画/142分/監督・脚本:コラリー・ファルジャ/製作:コラリー・ファルジャ、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー/製作総指揮:ニコラス・ライアー、アレクサンドラ・ローウィー/撮影:ベンジャミン・クラカン/出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド、エドワード・ハミルトン=クラーク、ゴア・エイブラムズ、オスカル・ルサージュ、クリスティアン・エリクソン、ヒューゴ・ディゴ・ガルシア ほか

 

【気ままに感想】

 

本作については、スタンリー・キューブリック、デヴィッド・リンチ、デヴィッド・クローネンバーグ、ジョン・カーペンター、ポール・バ―ホーヴェンなどなどのホラー巨匠へのオマージュや影響について多くの人が述べられていますが(「ああ、これか~」みたいな声が思わずでちゃうシーンが満載!)…。

やっぱり!!最もテイストがピッタリくるのは、『ホラー』というより『スプラッタ―』…いややっぱり『ゴア映画』って呼ぶのが良さそうな、ルチオ・フルチ…いやいや、むしろフランク・ヘネンロッターの申し子!!!

…みたいな作品!!です。

そんな本作が、カンヌ国際映画祭では脚本賞、ゴールデングローブ賞では主演女優賞、さらにアカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、メイク賞の5部門にノミネートされてメイク賞を受賞。

作品のジャンル、というかスタイル自体はすっかりB級『ゴア映画』なのに、作品としてはこれだけ評価されているのは、“女性の美の追求”というテーマ性が認められたからでしょうね。

とは言うものの、スタイルそのものが『ゴア映画』の猥雑性を前面に押し出したものとなっているし、えげつなさはまさに、フルチやヘネンロッターなどの諸兄のそれとも負けずとも劣らない。思い切り振り切っているので、多分賛否両論…と配給側も判断したのでしょうか??

作品自体はすでに1年前にカンヌ国際映画祭で発表されているにもかかわらず、日本での公開がようやく今頃(2025年5月)になったのは、受けるかどうか読めなかった…のでしょうね。日の目を見たのはアカデミー賞でそれなりに評価をされたからだと思いますが、それくらい、ちょっと「ぶっ飛んだ」映画であることは間違いありません。

なお、交通の利便性の高いシネコンで鑑賞したとはいえ、平日の公開1週間後にもかかわらず、それなりにお客さん…中高年中心で女性も結構な割合…だったのは、久しぶりにデミ・ムーアが主演をして演技が評価された作品である、ということが往年のファンに届いたのではないと思うのですが、一方で、「途中退出した人も多かった」というNETでの書き込み(この時はほとんど途中退席はなかったですが)があるのは、何となく納得です(笑)

何しろ、本作でのデミ・ムーアの老醜さ、というのも目を覆うほどの過激な描写で、特に中高年の同性の皆さまには心にグサッ!!刺すくらいです…と言いながら、冒頭からしばらくの間のデミ・ムーアは(最近はパッとしないものの(笑))往年のアイドルスターとしての片りんをしっかり見せていて、「さすが、歳をとってもそれなりに美しいものですね~」と感心するくらい。もっとも、物語が進んでいくにつれて、どんどん醜くなってしまうので、そのギャップが“痛い!”のですが…。

ただ、前述のとおり、過激…醜悪なのはデミ・ムーアに限りません。

周辺の人々にしても、本当に「美しい」キャラは皆無…といってよいほど徹底した描写が本作の特徴です。

あ、映像的には「美しい?」ものも多いのですが、中身がドロドロ…という意味での「美しくない」という趣旨ですので、よろしくご理解を。

本作は「美しいビジュアル」と「ゲロゲロのシーン」とが交じり合った作品ですが、お話としては、女性蔑視社会のメタファ…全編に渡って悪意の塊りのような作品です。

と、いうことで…本作を家族や恋人同士で鑑賞するのは控えた方がよろしいでしょう。

 

一時は誰からも愛されるアイドルスターだったデミ・ムーア(演じる主人公)も50歳の誕生日。

さすがに衰えは隠せないものの、レオタードに身を包んで大胆なポーズを披露するエアロビクス番組では長い間レギュラーを勤めていました(というか、看板アイドルだった)。

が、それも誕生日のその日に突然降板を告げられます。

番組視聴者の若返りを狙うプロデューサー(デニス・クエイドが怪演)は、デミ・ムーアに代わる若手のタレントの発掘に取組むことに。

降板させられたデミ・ムーアの心はかき乱されるが、番組(自分)の看板が撤去されるところを車で通りかかり、それに気を取られて赤信号に突入、派手に横転する事故に遭うが奇跡的に軽症で済む。が、ショックで呆然としているデミ・ムーアに、若い男性看護師から『サブスタンス』という違法民間療法のPRデータが入ったUSBを渡されます。

一度はゴミ箱に捨てたものの、お約束どおり(笑)、我慢ができずに手を出して、怪しげなキットを怪しげな場所から手に入れます。

で、やってみたら「あ~ら不思議!」

急激な細胞分裂?が起きて、背中が裂けるとデミ・ムーアの中から若くて美しいマーガレット・クアリーが出てきます。まるで忍法『魔界転生』!ですが、デミ・ムーアも意識を失っているけどしっかり生きていて、“栄養”によって1週間眠り続けます。

新旧の肉体は1週間ごとに眠りと活動を入れ替わるのですが(ここが本作の目玉部分ですが、全く説明できるものではありません。『山田忍法』もびっくり)、入れ替わりがピッタリ1週間を超えてしまうと母体であるデミ・ムーアの肉体の一部が醜く老化してしまいます。

若々しいマーガレット・クアリーは、心機一転リニューアルされたエアロビクス番組の主役に抜擢され、人気も急上昇!老いたデミ・ムーアと入れ替わるのが惜しくなるし、そのだらしない行動にも嫌気がさしてきて、ルールを破って1週間以上にわたって入れ替わりをしないままになるのですが、ところが!

実は若い肉体を維持するには母体の脊髄から栄養を取り出して補給しなければならないのですが、そのうちに、長い間ほったらかしにされたデミ・ムーアの肉体からは栄養が枯渇してしまいます。

その影響で若い肉体が維持できなくなり、仕方なく久しぶりに入れ替わりをするのですが、目覚めた母体(デミ・ムーア)は、すっかり面影もない醜い老婆の姿になってしまうのですが…。

 

美貌とナイスボディが唯一の?評価基準のショービズの世界ですが、その世界でずっと生きてきたデミ・ムーアの精神はすっかり毒されていて、若い肉体を取り戻したい!という願望も、復活したい!という欲望も、全ての基準が“それだけ”

若さを活かして別の道に進もう!なんて発想はこれっぽっちもありません!!

どこまでもセクシー(死語)に、お○りをプリプリ振り回しておっちゃんたちの注目を浴びることしか人生の価値を見出せない。

びっくりするほど徹底した女性蔑視感に満ちた世界です。しかも、当人はその世界でしか生きられない。それを見事に許容しています。

そんな性的差別が徹底した、男女平等参画社会…なんて微塵もない世界を描いているのは、女性監督ならではの皮肉…でしょう。

劇中の『サブスタンス』にしても滑稽なほどに荒唐無稽です。

本作は、ほぼ全編に渡ってキッチュでグロテスク、女性の人格を全く顧みない世界を描き切っています。

でも、描写が極端であればあるほど、この世の中がいかに男女差別、人権が尊重されていないかが、浮き彫りになってきます。

そして、恐くて気色の悪いはずなのに、寂しい世界観です。

文字通り、デミ・ムーアが裸一貫になって真剣勝負で挑む演技なのですが、デミ・ムーアが真剣になればなるほど、迫真の演技になればなるほど、コメディな世界観を感じてしまうのは…ファルジャ監督の思惑通り…ということになるのでしょうか?

少なくとも、在りし日のデミ・ムーアをイメージして鑑賞しようとする往年のファンにとっては…すっかり置いてきぼりの作品…といえそうです。

 

とは言うものの、御歳還暦を超えて、衰えたる…といえども(もしかしたら??画像処理もあったのかもしれませんが)、派手なレオタードに身を包んでプルンプルンするデミ・ムーアには極めて感心!とても歳を感じさせない。

「参りました…」という感覚です。

また、デミ・ムーアの影武者??を演じるマーガレット・クアリーも、しっかり、若返って欲望の塊りとなった中高年女性の性を、違和感なく表現しました。

こちらも熱演。

ちなみに、『サブスタンス』によって、分離した、若い肉体と母体とは、分離の時点では意識・記憶が共通していますが、分離して別の肉体になってからはそれぞれが自我、意識を持っているので、同じ人間(のはず)なのに、行動や思惑が次第にバラバラになっていき、ついにはお互いを憎み、争ったりするようになります。

これも、己の欲望の深さとそれに対する「自己嫌悪」の醜さをストレートに表現していて、この点でも結構鑑賞に際して“覚悟”が必要な…“痛い”内容です。

そんな「処方注意!!」…な作品です(笑)

 

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品

★★★★  傑作!こいつは凄い

★★★   まあ楽しめました

★★    ヒマだけは潰せたネ

★     失敗した…時間を無駄にした

 

☆は0.5

ツイスターズ
TWISTERS

 

〔勝手に評価 = ★★★★ = 直球勝負!〕
 

2024年/アメリカ映画/122分/監督:リー・アイザック・チョン/製作:フランク・マーシャル、パトリック・グローリー/製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、トーマス・ヘイスリップ、アシュリー・ジェイ・サンドバーグ/原案:ジョセフ・コシンスキー/脚本:マーク・L・スミス/撮影:ダン・ミンデル/出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル、アンソニー・ラモス、モーラ・ティアニー、ブランドン・ペレア、ダリル・マコーマック、サッシャ・レイン、キーナン・シプカ、ニック・ドダーニ、ハリー・ハデン=ペイトン、トゥンデ・アデビンペ、ケイティ・オブライアン、デヴィッド・コンスウェット ほか
 

【気ままに感想】

30年近く前の名作の続編…ってだれのための作品なの??
まあ、これは本作に限らずアメリカ映画にはこんなのばかり…というのは言い過ぎではなく、この手の作品は多いですよね~。
本作について言えば、若い人はもちろん前作を知らないし、実際にもお話の内容として“続編”という意味はほぼない…というか「全くない」作品なのだから、そういうことにどんな意味があるのだろうか??
主張したいのは『スピルバーグ印!』ということで、宣伝にも「ジュラシックワールドの…」みたいな文句があって、もうこれはスピルバーグの名声を使ったPR戦略に過ぎない…のでしょうね。
こういう売り方をしないとハリウッドでも商業的に成り立たないのでは??という危機感というか不安感に襲われるのでしょうか???
おそらく、そんな風にアピールしないと、製作費の資金調達も(が)難しいのでしょうね。堅実なリターンを求める投資家を相手にすると、どうしてもこんな風にチグハグなことになってしまうものですかね。
製作に携わる人たちは大変です。

でも、本作は、内容については極めて真面目に災害に向き合った、かつ、ラブストーリー、デザスター映画としても直球な内容の、王道作品…悪く言えば予定調和が崩れない、とてもまとまりの良い作品になっています。
人が竜巻にビュンビュン飛ばされていくシーンをリアルに描いているので、子どもたちにもおすすめ!…と言う訳にはいきませんが(映倫はGですけど)、お話としては決して俗悪にならない、悪者も居ない、甘いお菓子のようなだけど良心的な作品です。

主人公は、デイジー・エドガー=ジョーンズが演じる気象学者…というか、気象学、特に“竜巻”を研究テーマとしている学生として登場し、後にアメリカの気象庁?で予報官として働く人物です。
後に明らかになっていくのですが、この人の「竜巻好き」は筋金入りで、中学校の夏休みの自由研究からして精巧なミニチュアを活用した「竜巻のシミュレーション実験」…って、そんな子ども居るの???
なので、学生時代の事故のトラウマ?で現場主義からすっかり足を洗っているものの、仕事ではやっぱりきっかり“竜巻”に関わっている。
何せ、それだけ筋金入りなので、竜巻の動きが読めちゃう人(その原理は別にして)で、そんな特技を備えています。
大学生だったときに、研究仲間と一緒に竜巻の観測をしに出掛けるのですが、その研究内容は、竜巻の中に水分を吸収する素材を投げ込んで、竜巻の勢いを制御できるか…という、何とも野心的なものなのですが、そのためには“ほどよい規模”の竜巻の中に入って素材を竜巻に吸い込ませる必要があります。
小さくてもダメ、大きいと危険なのでなおさらダメなわけですが、お約束通り、とても大きな竜巻に入ってしまい、観察をしていた仲間たち4人のうち、デイジー・エドガー=ジョーンズを除いて3人が竜巻に飲まれて、お空にピューッと飛んで行ってしまう。
残された仲間は、デイジー・エドガー=ジョーンズと竜巻の外で観察作業をしていたアンソニー・ラモスの2人のみ。
お約束のとおり?3人のうちの1人が当時の恋人でやっぱりピューッと飛んで行ってしまいます。
5年後、恋人と仲間を失ってから竜巻地帯から離れて、都会生活を満喫していたデイジー・エドガー=ジョーンズのもとに、未だに竜巻の研究をしているアンソニー・ラモスが事故以来久しぶりに訪れ、研究の協力を求めます。竜巻とは関わりたくない…と思いながら、天性の竜巻少女のデイジー・エドガー=ジョーンズは、いやいやながら(でも内心ワクワクしながら)数日限定という条件で協力を承諾する。
オクラホマの竜巻発生地帯に赴いたデイジー・エドガー=ジョーンズは、アンソニー・ラモスの研究チームと合流するが、そこには、ユーチューバーのストーム・ハンター(竜巻追っかけ)のグレン・パウエル一行も居合わせて、お祭り騒ぎをしてフォロワーにグッズを売ったり、研究チームにちょっかいを出したりしています。
後は、絵に描いたように(笑)、研究チームとストーム・ハンターチームの竜巻追っかけ競争、相次ぐ竜巻の脅威があって、実は研究チームが悪役で、ならず者のハンターチームが善玉だった!というビックリ?なお約束展開。
もちろん、デイジー・エドガー=ジョーンズはハンターチームに鞍替えして、グレン・パウエルとの関係が…という流れです。

お話としても破綻のない、スムーズな流れの作品…という点が好感的。
最初は胡散臭いならず者として登場するストーム・ハンターたちも、商売第一主義的な行動は、実はその資金を被災者支援のボランティア活動費として活用していて、炊き出し(アメリカなので“焚いて”はないけど)にも積極的に取り組んでいて、実はイイやつだった…展開は観客にもやさしい。気持ちが良い作品です。
一方で、これもお約束ですが、研究チームが研究資金を得ていたのは、実は被災者を食い物にしている不動産業者からで、不動産業者は被災地に赴いては被害者の土地を二束三文で買いあさっていた…という真相が後に明らかになる。
デイジー・エドガー=ジョーンズは、研究チームのリーダーであるアンソニー・ラモスを攻めるのですが、当然ながら(笑)、最初は“大人の都合”を振りかざすアンソニー・ラモスも良心に目覚め、研究チームと決裂する。
そして、当然ながら(!)最後は、壊滅的な打撃力を持った超大型竜巻の襲来に対して、学生の頃にやっていた、“竜巻の勢いを制御する”実験の発展形で人々を救おうと奔走します。
猛烈な勢力を持った竜巻が刻一刻と街に襲来しようとする、まさに危機一髪の事態に、デイジー・エドガー=ジョーンズ、アンソニー・ラモス、そしてグレン・パウエルたちは、竜巻の威力を制御することができるのか…???
もう、お分かりですね!

ということで?
お話自体は“それなり”なのですが、何ともすごいのが“竜巻の描写”
もちろん、映像技術が格段に進化している現代…どんなシーンでも表現できるし、スゴイ映像が溢れかえっている今日この頃ですが、本作の“竜巻”は“これまでの竜巻”に比べても決して劣らない…というか、最高の出来!と言ってもよいのでは?(まあ、竜巻作品がこれまでどれだけあったかは…よくわかりませんが(笑))
少なくとも、人間がピューッ、ピューッと飛んでいく描き方はちょっとビックリ、多少心臓に悪いくらいに衝撃的です。
竜巻を、自然現象として描いているというよりも、怪獣映画の“カイジュウ”扱い。情け容赦のない破壊神として描かれています。
まるで、神の意思が自然現象に宿っているかのごとく。
主人公はそれを“読んで”対峙していくのです。
その点では一見の価値ある作品ではないか??…と思います。

本作でよかったのはグレン・パウエル。
『トップガン マーヴェリック(2022)』の、いかにもなライバル役に続いて?本作でも悪役と善玉との中間の微妙な役回り(でも、最後は美味しいところを持って行く人)をそれらしく演じていて、立ち位置的には『スターウォーズ』のハン・ソロ。
結局オイシイ役を嫌味なく演じました。
この嫌味なく…ってところが大事なところですね。
傷心のヒロインの心をガッチリつかんで、かつ、大事なところで活躍する人…1作の中でガラッと印象を変える役を納得感もって演じられるところは、この人のもって生まれた天性なんでしょうね。なかなか得難いキャラです。
すでに30代半ばを過ぎた遅咲き?(子役から役者をやっててキャリアは長いですけど)の俳優さんですが、今後の活躍は結構期待…です!

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品
★★★★  傑作!こいつは凄い
★★★   まあ楽しめました
★★    ヒマだけは潰せたネ
★     失敗した…時間を無駄にした

☆は0.5

ビーキーパー
THE BEEKEEPER   (PG12)

〔勝手に評価 = ★★★★ = ちからコブ!!〕

2024年/アメリカ映画/105分/監督:デヴィッド・エアー/製作:ビル・ブロック、ジェイソン・ステイサム、デヴィッド・エアー、クリス・ロング、カート・ウィマー/脚本:カート・ウィマー/撮影:ガブリエル・ベリスタイン/出演:ジェイソン・ステイサム、エミー・レイヴァン=ランプマン、ジョシュ・ハッチャーソン、ボビー・ナデリ、ミニー・トライヴァー、フィリシア・ラシャド、ジェレミー・アイアンズ ほか

【気ままに感想】

冴えない“おじさん”(ときには“おばさん”)が、実は元凄腕の特殊工作員、あるいは殺しのプロで、巨悪(大抵はグローバル企業か政府機関)に1人で立ち向かって、凄腕テクニックで次々と敵を倒していく…。
という、お話…いったいいくつあるのか???
何度も何度も何度も何度も…使われてきたこの筋立てですが、よく飽きずに出てきますよね~。およそアクション俳優であれば、一度は演じたことのあるお話、と言っても過言ではない、「金太郎あめ作品」
余りにも、話の中身がない(笑)、当然ながらツッコミどころ満載の「元凄腕特殊工作員『分野』」(もう、ひとつの「分野」と言ってもよいでしょう!)ですので、このツッコミ以外に触れるべきところはない(と言っても過言ではない)ので、今回は“すっかり”ネタバレ注意でお願いします!!

まずは何と言ってもこの題名!!
『ビーキーパー』(『養蜂家』と和訳されている)って何かと思ったら、ズバリ!誰も知らない政府の秘密組織(正確には組織から独立した役職?のようです)の元工作員の「コードネーム」。
つまり“今回の”元凄腕の特殊工作員の元職業名が『ビーキーパー』というものだそう。
よく理解できないのですが(笑)…政府などの様々な機関が機能不全に陥ったり、危機的状況に面したときに“発動”されて、キレイさっぱり片付けてくれて、組織を立ち直らせるための状態に整理してくれる役職?の人を『ビーキーパー』と言っているそうですが、なんでも、「蜂」は巣に危機が訪れると場合によって働き蜂が女王蜂(トップ)を殺したりして「巣」を守るそうで、いわば組織や機関にとって面倒な人を始末する役割を「蜂」に例えて呼んでいる、とのこと。勉強になりますね???
で、もちろん、ジェイソン・ステイサムはこの元『ビーキーパー』なのですが、引退した後、何をしているか…と言えば『養蜂家』…。
ええっ???
元『ビーキーパー』が仕事を引退して今は実際に『養蜂家(ビーキーパー)』してますって…どういうこと??
まったく、これっぽっちも、身分を隠してない…。どこが秘密の役職?…。
確かに、政府の秘密の役職?に『ビーキーパー』なんてものがあるのは、CIAの長官になるまで知らなかった…ほどの(ほんとかよ)、ごく限られた人のみが知る存在なので、一般に『ビーキーパー』を名乗ってもほぼ全く何の支障もないのかもしれませんが、でも、飛行機の搭乗記録まで抹殺されている“秘密の人”が堂々と実際に『養蜂家(ビーキーパー)』しちゃダメ!でしょう!!
少なくともCIAの長官だった人とかには、一発で居場所や身分がバレちゃう。
そういえば、CIAの長官になるような人ですら知らなかった役職?っていったい誰がどう管理したり育成したりしているの???
謎は深まります…(爆)

とまあこのように、冒頭に述べましたように、ほぼ全編に渡ってツッコミどころ満載ですし、室内でバリバリと機関銃を撃たれても、頭を低くして走ったらデスクとかにしか弾が当たらない…というお決まりのシーンもちゃ~んとあって、この「分野」の作品としては、申し分のない設定です。

それでは、いったい本作の特色…っていったい何?
と問われれば、ズバリ!!
“やたらと強いジェイソン・ステイサム”…に尽きると言ってもよい、と思います。
まあ、“やたらと強い”主人公は、この分野の作品には必須ですが、そんな数多いる“やたら強い”人々にも決して引けを取らないのが、本作のジェイソン・ステイサムです。
身長178センチ、体重80㎏前後の普通~の人体型からしても特別にすごい感じはないジェイソン・ステイサムですが、本作においては、とにかく強い。
FBIやCIA、政府要因用のシークレット・サービスが、文字どおり“束になって”かかっていっても、全く歯が立ちません。
ガトリング・ガンまで常備している、“ぶっ飛んだ”現役の『ビーキーパー』や、「ビーキーパーを殺した経験がある」と豪語する“ぶっ飛んだ”傭兵すらも、ほとんど問題になりません。
銃やブービートラップでやっつけられる人も沢山いますが、何と言ってもジェイソン・ステイサムの鉄拳制裁が素晴らしい。
アクションが軽くなくて、ジェイソン・ステイサムの拳で殴られたら「本当に痛そう~!!」と相手の痛みが直接観客に届くような、重たいゲンコツで「力いっぱい」殴ります。
それは、相手が戦いのプロだろうか、ヘタレなハッカーやベンチャー企業の青臭いエグゼクティブだろうがお構いありません。
一応政府の公務員の皆さんは防弾チョッキを着てはいるものの、その上から容赦なく至近距離で弾丸を撃ち込まれたらあばら骨の1、2本、多少の内臓や筋肉は傷ついているでしょうから、やっぱり“痛いはず”。
ジェイソン・ステイサムの通った後は文字通り「ハリケーンが通った跡」みたいになって、床には呻き苦しむ人が累々と横たわっているのです。
観ているだけで思わず“ゲンコツを握りしめてしまう”臨場感にきっと酔いしれるでしょう。
まあ、それに尽きる!と言えば尽きてしまう(笑)
そんな作品です。

すでに述べたように、ジェイソン・ステイサムはちょっとしょぼくれた感じの養蜂家です。
養蜂家…と言い切ってしまっていいのか、ハチを買う巣箱も沢山あるわけではないみたいで、わずかに?7、8箱くらいのようなので、趣味の範囲かもしれません。退職年金があるのか退職金がいい金額なのか、孤独に生活しています。
おそらく、唯一交流があるのが、同じく孤独な老女フィリシア・ラシャド。慈善団体の資金管理をしている女性ですが、あるときパソコンに、“手当”をしないとデータが全て消えてしまう…という警告メッセージが。
思わずコールセンターに連絡をして、言葉巧みな説明に従って、ポチポチとキーボードを叩いていくと…あっと言う間に、慈善団体の資金200万ドルの銀行残高が“0”に!!
まんまと「詐欺」に逢ったことを悟った老女は、拳銃自殺…。
夕食を誘われていたジェイソン・ステイサムは、手塩にかけた蜂蜜の瓶とともに訪問したところが第一発見者に。
運が悪い(あるいは都合が良い)ことに、たまたま滅多に(というか全然)実家に顔を出さない娘(エミー・レイヴァン=ランプマンが好演)と居合わせて、たまたまこの娘がたまたま凄腕のFBI捜査官だったことから、現行犯逮捕(冤罪)。
一応、誤認逮捕だったことが分かり釈放されたジェイソン・ステイサムは、ビーキーパーの組織に連絡をして、詐欺組織の洗い出しを依頼(OBでも依頼できるんだ~)。巧みなネットワークシステムで正体がバレないように仕組まれた『ユナイテッド・データ・グループ(UDG)』といういかにもな会社名が浮上する。
詐欺通話の発信元のUDGの支社に出向いたジェイソン・ステイサムは、会社に雇われただけの警備会社職員やへなちょこなハッカー社員などにもお構いなしで、怒りの鉄拳を食らわせた上に、オフィスにガソリンをまいて爆弾を仕掛けて、結果、オフィスは粉々に。
黒幕を吐かせるために支社を仕切っていたチャラい兄ちゃんの指をチョンパした上で車ごと海にダイブ!させて他の支社について吐かせて、さらに突撃!!
止まることなく、お年寄りを毒牙にかける輩を片っ端から成敗していきます。もうすでにフィリシア・ラシャドの敵討ちの範囲を超えています。
そんなジェイソン・ステイサムの敵となったUDGの親会社トップは、チャラいベンチャーCEO(ジョシュ・ハッチャーソンがチャラい好演技)。ですが、そのお守り役には上記のとおり元CIA長官がしっかりガードしていながら、甘々のお母さまは実は!○○○だった!!というビックリ??設定。
さて、ジェイソン・ステイサムは、見事に生き延びてチャラいベンチャーCEOに一矢…というか天罰を下せるのか???

この、ビックリ設定が、ビックリになっていないのは、すでに予告編でそれとなくネタバレになってしまっているとこが、今風の映画。どうしてこうも我慢できないのでしょうかね~。
まあ、ネタばれててもそれほど大きなダメージがない…のですけど(笑)

本作では、何と言ってもジェイソン・ステイサム!
どんなに攻撃を受けても最後の方まで“無傷”なのはご愛敬ですが、アクションスターとしての本領をいかんなく発揮しています。
お話のスジはイマイチですが、途切れないアクションシーンにおいて、常にピンッ!!と緊張感あるジェイソン・ステイサムの暴力は、まるで研ぎ澄まされた包丁のようにスマートです。
ジェイソン・ステイサムに痛めつけられると、何とも痛そう。相手を倒す…というよりまさに“痛めつける”アクションは、なかなかに「他との差別化ができている!」といえます。

★★★★★ 完璧!!生涯のベスト作品
★★★★  傑作!こいつは凄い
★★★   まあ楽しめました
★★    ヒマだけは潰せたネ
★     失敗した…時間を無駄にした

☆は0.5